
「ぷくぷく界隈」「赤ちゃん界隈」「自撮り界隈」「風呂キャン界隈」・・・このような言葉が流行していることをご存知でしょうか?
界隈とは、共通の関心や価値観を持つ人たちが集まる小さなコミュニティのことを言います。
ちなみに筆者は筋トレ界隈に属しているのですが、今回はそこで体感したマーケティングの事例をシェアしたいと思います。
そろそろトレーニングウェアを買い替えたいなぁと思いながらジムに行ったとき、ふと目に入ったのが、かっこよくウェアを着こなしている人。思わずチラチラ見てしまいました。
その人が着ていたのは LÝFTというブランド。YouTubeでトレーニング動画を公開している人たちも着用していて、筋トレ界隈ではすでに圧倒的な存在感を放っています。
スポーツブランドといえば、アディダスやナイキを思い浮かべる人が多いと思います。そんな中、まだ新しい存在に近いLÝFTが、なぜ短期間でここまで認知を広げられたのでしょうか。
その背景にあるのが、「界隈マーケティング」 という戦略です。
界隈マーケティングってなに?
一言でいうと「特定のコミュニティ(界隈)に狙いを絞り、熱量の高いファンを起点に広げる戦略」です。
ちなみに「界隈」という言葉は、もともとネットスラングの一つです。
マーケティングの文脈では、単に趣味や関心が同じ人たちの集まりというだけでなく、強い結びつきを持つ小規模なコミュニティと置き換えて考えるとイメージしやすいでしょう。
こうした界隈にフォーカスすることで、大手ブランドのように「広く浅く」認知を狙うマスマーケティングでは届きにくい層にも、効率よくファンを作ることができます。
広く浅く vs 狭く深く|マスマーケティングとの違い
界隈マーケティングっていうのは「狭く深く刺さる戦略」です。
一方で、マスマーケティングは広く浅く、大勢にアプローチするスタイルです。

今だから界隈マーケティングが効く!その理由とは?
界隈マーケティングの面白いところは、大勢に向けるのではなく、特定の小さなコミュニティで強い支持を得ることにフォーカスしている点です。
一度熱量の高いファンを作ると、そのコミュニティ内で口コミが生まれ、自然に認知が広がっていきます。
では、なぜ今この戦略が注目されているのでしょうか?理由はいくつかあります。
大手企業は広告を独占している
大手企業は巨額の広告費でテレビや新聞、交通広告を独占しています。
そのため、新しいブランドは存在感が出にくい状況です。
SNS時代の情報拡散
SNSの登場で、情報の広がり方は大きく変わりました。Twitter(X)、Instagram、YouTube、TikTokでは、趣味や関心ごとに基づく小さなコミュニティがどんどん形成されています。
ここで口コミやインフルエンサーの投稿がきっかけになると、その界隈内で一気に広がり、他の界隈や一般層へも波及していくんです。
消費者心理の変化
消費者心理も大きく変化しています。今は「みんなが使っているから安心」というマスの論理よりも、自分が憧れる人や共感できる存在が選んでいるから欲しいという動機が強くなっています。
たとえばLÝFTの場合、筋トレ界隈でかっこよくウェアを着こなす人を見て、「自分もこうなりたい」「このスタイルを目指したい」と思った人が購入につながるわけです。
特にZ世代やミレニアル世代では、こうした「憧れや共感による自己投影」が購買の大きな後押しになっています。
技術・環境の追い風
技術や環境の面でも界隈マーケティングを後押ししています。SNS広告はピンポイントでターゲティングできるので、界隈に効率よくアプローチが可能。
さらに、ECの発展によって、ニッチな商品でも購入のハードルが下がり、界隈で火がついた商品を簡単に手に入れられるようになりました。
こうした背景から、今は 「マスを狙う前に、まず界隈で火をつける」 のが合理的な時代です。新しいブランドでも、界隈に刺さることができれば、大手に勝てるチャンスは十分にあります。
重要なのは、まず小さなコミュニティで熱狂的なファンを作ること。その熱量が口コミやSNSを通じて自然に拡散され、最終的には一般層にも波及していきます。
まずは、自分たちが狙う界隈を特定し、課題や欲求にフィットした価値を届けることから始めましょう。