近年、顧客のニーズや価値観がますます多様化しています。こうした時代において、サービスや商品の売上を伸ばすには、「誰に」「何を」「どのように届けるか」を見極めたマーケティング施策が欠かせません。その鍵を握るのが「顧客分析」です。

顧客分析とは、顧客の属性や購買行動などを分析することで、顧客理解を深める手法です。

本記事では、実務でもよく活用されている8つのフレームワークを紹介します。自社の顧客理解を深め、売上向上につながるヒントとして参考にしてください。

顧客分析とは?

顧客分析とは、顧客の属性や購買行動、嗜好などのデータをもとに顧客のニーズや傾向を把握するマーケティング手法です。一人ひとりの顧客を理解することで、より効果的なアプローチが可能になります。

主に既存顧客を対象とした分析が中心ですが、見込み顧客(リード)の獲得や新規顧客の開拓、さらには一度離れてしまった休眠顧客の掘り起こしにも活用されます。

顧客分析の必要性

顧客分析の必要性

顧客分析が必要とされるのは、既に販売されている商品やサービスと、顧客のニーズのズレを明確にできる点にあります。

顧客ニーズや市場環境は、時代やトレンドとともに常に変化しています。そのため、従来の提供価値では顧客のニーズに対応できなくなっているケースも少なくありません。

顧客分析を通じて、商品やサービスの価値と顧客ニーズのギャップを把握・調整することで購買率の向上や顧客満足度の改善といった成果に繋がります。

顧客分析の目的

顧客分析の目的

顧客分析にはさまざまな活用方法がありますが、特に重要なのが「ターゲットの特定」と「顧客ニーズの深掘り」です。
どんな人に商品やサービスを届けるべきかを明確にすること、そしてその人たちが本当に求めている価値を理解することは、成果につながるマーケティング施策を打つうえで欠かせません。

ここからは、顧客分析の代表的な目的であるこの2つのポイントについて、詳しく解説していきます。

ターゲットの特定

顧客分析の目的のひとつは、「どのような顧客に向けて商品やサービスを提供すべきか」を明らかにすることです。つまり、最も価値を提供できるターゲット層を特定することが重要です。

ターゲットが明確になることで、無駄のないマーケティング施策を打つことができるようになり、顧客のニーズにマッチしたコミュニケーションやプロモーションが可能になります。結果として、費用対効果の高いアプローチが実現し、事業の成長にも繋がります。

特に、売上への貢献度が高い顧客や、継続的な関係構築が期待できる顧客を見極めることは、長期的なマーケティング戦略の設計において欠かせないポイントです。


顧客ニーズの深堀

顧客分析のもうひとつの目的は、「顧客ニーズを深く理解すること」です。

自社の商品やサービスが「誰にあうのか」を特定することも大切ですが、「市場にどのようなニーズが存在するのか」を把握することも重要です。顧客の声や行動からニーズを読み解くことで、より市場にフィットした商品・サービスの提供が可能になります。

たとえば、「なぜ商品やサービスが購入されたのか」「なぜ購入されなかったのか」といった購買行動の背景を分析することで、購買に至った理由、逆に購買を妨げた要因を明確にすることができます。

価格が高くて購入されなかったのか、それとも商品の魅力が伝わらなかったのか。この違いによって取るべき対策は大きく変わります。前者であれば価格調整が効果的かもしれませんが、後者の場合は商品の改善や訴求方法の見直しが必要になります。

このように、顧客分析を通じてニーズを深堀りすることで、より的確なマーケティング施策を展開し、顧客満足度や購買率の向上につなげることができます。

顧客分析の主な対象項目

顧客分析の主な対象項目

顧客分析では、さまざまなデータをもとに顧客の特徴や行動を把握します。分析対象となる主な項目には、以下のようなものがあります。

  • 顧客の属性(年齢、性別、職業、地域など)
  • 購買履歴(購入商品、頻度、金額、時期など)
  • 顧客との接点で得られた情報(問い合わせ履歴、カスタマーサポートの記録など)
  • 顧客が抱えている課題やニーズ
  • 実施済のマーケティング施策とその反応
  • 顧客満足度やクチコミ、アンケート結果など
  • 購入に至るまでの意思決定プロセス


これらのデータを組み合わせて分析することで、より精度の高いターゲティングや顧客ニーズの把握が可能になります。

顧客分析に役立つ8つのフレームワーク

顧客分析に役立つ8つのフレームワーク

ここからは顧客分析を行う際に役立つフレームワークを紹介します。

1. デシル分析

デシル分析とは、顧客を「購入金額の高い順」に並べて10のグループに分け、それぞれがどれだけ売上に貢献しているかを分析する手法です。主に「優良顧客の特定」や「効率的なマーケティング施策の立案」に活用されます。

デシル分析の基本ステップ

  1. 顧客全体を購入金額の高い順に並べる
  2. そのリストを購入金額ベースで10等分(デシル)する
  3. 各グループが売上全体にどのくらい貢献しているかを可視化する


たとえば、上位1〜2グループが売上の大半を占めている場合、そこに集中してマーケティング施策を展開すれば、効率よく売上を伸ばすことが可能です。とくに「既存の優良顧客を囲い込みたい」「LTV(顧客生涯価値)を高めたい」といった場面で効果的な分析手法です。

デシル分析を行う際の注意点

一部の顧客が異常に高額な購入をしている場合、グループ分けが偏る可能性があります。そのようなケースでは「外れ値」として除外し、より正確な分析ができるようにしましょう。
また、優良顧客の動きは時間とともに変化するため、定期的にデシル分析を実施することが重要です。継続的に売上貢献度の高い顧客層を把握することで、施策の精度も高まります。

2. セグメンテーション分析

セグメンテーション分析とは、顧客を属性や特性に基づいて分類し、それぞれのグループに最適なアプローチを見極める顧客分析の手法です。ターゲットの選定や自社の市場におけるポジショニング戦略を立てるうえで、欠かせないプロセスとして広く活用されています。

近年は顧客のニーズの多様化が進んでおり、「誰に・何を・どう届けるか」を明確にするために、セグメンテーションの重要性がますます高まっています。

セグメンテーション分析で使われる主な分類軸

分類方法
地理的変数 地域、気候、人口密度
人口動態変数 年齢、性別、職業、年収、家族構成
心理的変数 正確、価値観、ライフスタイル、嗜好
行動変数 購入経路、購入頻度、購入時間帯



3. 購買傾向分析

購買傾向分析は、時期や時間帯ごとの売上変動に注目し、顧客の購買行動のパターンを可視化する分析手法です。季節ごとの売上変化に加えて、曜日や時間帯、さらには数年単位の長期的なトレンドまで幅広く分析します。

たとえば「夏に需要が高まる」「週末に購入されやすい」「夜間にWebサイトへのアクセスが集中する」など、顧客の行動傾向を把握することで、最適なタイミングでのプロモーション施策が可能になります。

ただし、年間を通じて安定して売れる商品・サービスの場合は顕著な変化が少ないため、購買傾向分析が有効に働かないケースもあります。

購買傾向分析は、販促のタイミング最適化やキャンペーン設計に役立つ分析手法として、特に季節性や時間帯によって売上が左右される商品を扱う企業におすすめです。

4. RFM分析

RFM分析とは、顧客の購買行動を「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3つの要素で分類し、マーケティング施策を最適化する手法です。

指標 日本語訳 指標のランク付け
Recency 直近の購入日 購入日が直近であるほどスコアが高い
Frequency 購入頻度 購入頻度が多いほどスコアが高い
Monetary 購入金額の合計 購入金額多いほどスコアが高い


上記3つの要素をもとに、顧客を「優良層」、「見込み層」、「新規層」、「離反層」に分類します。顧客を分類することで、それぞれの顧客層に応じたマーケティング施策の立案が可能になります。

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5. CTB分析

CTB分析とは、商品やサービスの特徴に着目し、顧客の購買行動と関係性を明らかにする分析手法です。特に「どのような商品が、どのような顧客に選ばれているか」を把握したい場合に有効です。

主な分析項目は以下の通りです。

指標 観点
Category 商品やサービスの種類(例:飲料、化粧品、家電など)
Taste 商品やサービスの色や形状、サイズ、仕様
Brand 商品やサービスのブランド名やイメージ


CTB分析を行うことで、各顧客層が好むカテゴリやテイスト、ブランドを把握でき、「購買されやすい商品」「購買されにくい商品」を明確にできます。
その結果、商品ラインナップの見直しやターゲティング精度の向上、効果的なプロモーション設計につなげることができます。

6. パイプライン分析

パイプライン分析とは、営業活動の流れを「パイプ」に見立てて可視化する分析手法です。一般的にはtoBビジネスで用いられ、商談の進捗やボトルネックの発見に役立ちます。

ただし、toCビジネスであっても、購入までに検討や比較が必要な高額商品(例:住宅、自動車、ブライダルなど)を扱う業界では、この手法が有効な場合があります。

顧客との接点を整理し、どの段階で離脱が起きているかを把握することで、改善策を立てやすくなります。

7. 定性情報の分析

定性情報の分析とは、数値化が難しい顧客の感想や意見、営業現場の声などをもとにした分析手法です。

文章や画像、音声などのデータを扱い、定量ではみえにくい感情や印象、潜在的なニーズを捉えることができます。
顧客の「なぜそう思ったのか」や「なぜ買わなかったのか」を深掘りしたい場合に有効で、商品改善やコミュニケーション戦略の精度向上につながります。

8. LTV分析

LTV(Life Time Value)は、一人の顧客が自社と取引を始めてから終了するまでに生みだす累積利益(顧客生涯価値)を分析する手法です。
顧客ごとのLTV分析を把握することで、どの顧客を継続的にフォローすべきか、どこに投資すべきかといった判断が可能になります。

また、LTV分析は過去の分析結果との比較も重要です。
急激な増減がある場合は、商品単価や広告コスト、離脱要因の変化などが考えられます。そうした変化を捉えてボトルネックを特定し、改善に役立てましょう。

LTVとは

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顧客分析を行う手順

顧客分析を行う手順

顧客分析を効果的に行うためには、いくつかのステップに沿って進めることが重要です。まずは必要な情報を集める「データ収集」からスタートし、集めたデータを目的に応じて整理・分析します。そして最後に、得られた分析結果をチーム全体で共有しやすくする「可視化」のプロセスへと進みます。

この流れを押さえておくことで、より正確で実践的な顧客理解が可能になり、マーケティング戦略や施策にも説得力が生まれます。
ここでは、顧客分析の全体像をこの3つのステップに分けて解説していきます。

1. データ収集

顧客分析を行う前提として分析対象となる顧客データを収集する必要があります。一般的に収集する顧客データは以下の通りです。

  • 顧客アンケート
  • 顧客属性データ
  • Web上の顧客行動データ
  • 購買データ
  • 名刺データ
  • 国内調査データ
  • 調査会社データ


これらのデータを総合的に分析することで、顧客のニーズ、意思決定プロセス、顧客満足度、市場の把握などが可能になります。

2. データの整理と分析

収集した顧客データは、そのままだと分析に使いづらいケースがあるため、まずは「分析可能な形」に整理します。たとえば重複しているデータを削除したり、日付や数値のフォーマットを統一したりといった前処理を行います。これらの処理を行うことで分析ツールとの連携もできるようになります。

データの準備が整ったら、いよいよ分析に入ります。先ほど8つの代表的な分析手法を紹介しましたが、分析の目的に応じて、最適な手法を選び、必要に応じて複数を組み合わせて活用することが大切です。

3. 分析結果の可視化

分析結果は可視化することで分析担当者以外にも共有することができるようになります。Excelによってグラフ化したりPowerpointで図式化したりすることで、より多くのステークホルダーと共有し戦略を立案することができるようになります。

また、顧客データが膨大な場合はCRM(Customer Relationship Management)ツールなどを利用することで、簡単に分析結果を可視化することができます。

CRMとは

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CRMとは「Customer Relationship Management」の略語で、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。


まとめ

まとめ

近年、ECサイトやSNSなどの販売チャネルの多様化により、顧客の行動やニーズはますます複雑になっています。
その中で売上を伸ばしていくためには、顧客のインサイトを正確に捉え、顧客一人ひとりに応じたマーケティング施策を展開する必要があります。つまり、顧客分析は「売れる仕組みづくり」に欠かせない重要なステップであるといえるでしょう。

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GENIEE CX NAV1 編集部

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