OMOとは

OMO(Online Merges with Offline)は、「オンラインをオフラインと融合する」という意味を持つマーケティング手法です。顧客がチャネルの違いを意識せずにサービスを受けられるよう、オンライン・オフラインを分けずに一緒のものとして、戦略を構築する考え方を指します。具体的には、スマートフォンなどのモバイル端末を利用したデリバリーサービスや、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用したサービスが含まれます。

従来、実店舗とネットショップは別々に発展してきましたが、デジタル技術の進化やライフスタイルの変化により、その境界は徐々に曖昧になっています。特に、2020年の新型コロナウイルスの影響で、デジタル化が進んだことで、顧客体験の向上を目的としたOMOは、消費者の購買意欲を促進する施策として注目されています。

O2Oとオムニチャネル

OMOと混同されやすい用語として「O2O」や「オムニチャネル」が挙げられます。

ここではOMOとO2O・オムニチャネルの違いについて解説していきます。

O2Oとは

O2Oは「Online to Offline」の略で、インターネット上の情報をきっかけに実店舗への来店を促す販売戦略を指します。具体的には、TwitterやInstagram、LINEなどのSNSからセール情報を配信したり、顧客の位置情報を利用して近隣店舗のクーポンを発行したりすることが挙げられます。O2Oはあくまでもオンラインから実店舗への誘導を目的とした施策のため、オンラインとオフラインを融合させるOMOとは異なります。

オムニチャネルと

オムニチャネルは、企業が持つすべての販売チャネル(実店舗やECサイト、アプリ、テレビショッピングなど)を連動させ、消費者との接点を増やす販売手法です。
消費者は買い物をする際に販売チャネルの違いを意識する必要がなく、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ったり、実店舗の在庫がない場合にECサイトから購入して好きな場所で商品を引き取ったりすることができます。
オンラインとオフラインを区別することなく顧客接点を統合するという意味では、オムニチャネルはOMOに似た概念ですが、オムニチャネルはあくまでも「顧客との接点」に着目した考え方であり、企業側を主軸にした概念です。

OMOのメリット

ここではOMOを実施することで得られるメリット8つをご紹介します。

お客さまのニーズを高い精度で把握できる

OMOの最大のメリットの一つは、すべてのチャネルの顧客データを統合することで、お客さまのニーズを高い精度で把握できる点です。顧客データをリアルタイムで連携させることで、オンラインとオフラインの境界を意識させないシームレスな購買体験を提供できます。

しかし、統合できない顧客データが存在すると、OMOのメリットは十分に得られません。店舗やオンラインでの購入履歴、問い合わせ内容、商品の在庫状況など、さまざまなデータを例外なく連携できる仕組みを整えることが重要です。より高い精度でお客さまのニーズを把握するためには、顧客接点を増やす施策や、収集したデータを活用するための分析手段も必要となります。

お客さまの体験価値が向上する

OMOに対応することで、お客さまにパーソナライズされた体験を提供することが可能になり、体験価値が向上します。現在、あらゆる市場でコモディティ化が進んでおり、商品そのもので差別化することが難しくなっています。また、価値観の多様化により、お客さま一人ひとりに合わせた体験を提供することが求められています。その中で、OMOを活用することで、オンラインとオフラインを統合し、パーソナライズされた体験を提供することができます。

LTVを最大化できる

OMOに対応し、お客さまの体験価値を高めることで、LTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できます。体験価値が高まると、お客さまが自社のファンになる可能性が高まります。ファンになれば、同じ商品を購入する際に「どこで買っても同じ」と思うのではなく、「またこの店で買いたい」と感じてもらえるようになります。このようなファンが増えることで、自社のLTVの最大化につながっていきます。

顧客視点でのサービスを提供できる

お客さまは自らの購買行動において、オンラインとオフラインの境界線を意識することは少ないです。しかし、多くの企業ではオフライン事業とオンライン事業の担当部署が分かれていたり、データが分離したままであることが見受けられます。OMOでは、すべてのチャネルのデータを分析し、オンライン・オフラインを超えた顧客体験を設計することで、より顧客視点でのサービスを提供できるようになります。

機会損失を最小化できる

OMOによって、企業は購入前後も顧客の動向を把握できます。顧客がどのチャネルにいても、「商品(サービス)がほしい」と思う瞬間を適切に捉えてアプローチできるため、機会損失の最小化につながります。

ブランドイメージの向上や新規顧客の獲得に繋がる

OMOによって、顧客はECサイトでもリアル店舗でも統一感のあるブランドメッセージを受け取ることができます。そのメッセージは、顧客の興味や嗜好を踏まえてパーソナライズされ、適切なタイミングや頻度で送られてきます。質の高い顧客体験を提供し、高い満足感を得ることで、ブランドイメージの向上に繋がります。また、満足度の高い顧客体験がSNSなどの口コミを通じて広がることで、新規顧客の獲得につながることも期待できます。

OMOの代表的な施策

実際にOMOを実施するにあたり具体的な手法について説明します。

モバイルオーダー

近年、お客さまが自身のスマートフォンから商品を注文するモバイルオーダーが増加しています。来店前にスマートフォンから注文しておけば、店舗で受け取るだけで買い物が完了するものや、レジに並ばずに注文と決済ができるものなど、使い方もさまざまです。

モバイルオーダーにはお客さまと事業者、両者にメリットがあります。お客さまは、注文から商品の受け取りまでにかかる時間を削減することができ、事業者は、お客さまのIDに来店時の情報を紐付けてマーケティングに活用することができます。

モバイルペイメント

QRコードを用いた決済サービスのモバイルペイメントは、自社が提供するスマートフォン向けアプリでの決済も可能となります。これにより、実店舗でのレジの無人化も進めやすくなりました。また、実店舗やECサイトでの購入履歴から顧客データを収集できるため、お客さまに合わせたおすすめ商品の提案などもしやすくなります。

ポイント・クーポン

スマートフォン向けアプリを提供することで、実店舗とオンラインで共通のポイントやクーポンを付与することが可能です。例えば、実店舗で購入した商品のレシートをスマートフォンのカメラでスキャンするとポイントが付与されるシステムを導入している企業もあります。また、オンラインとオフラインのどちらでも共通のポイントを獲得できる仕組みを提供できれば、お客さまの利便性向上にもつながり、利用率を高める効果も期待できるでしょう。

スマートフォン向けアプリ

スマートフォン向けの買い物アプリで注文から決済までを完結できるようにすれば、スムーズなキャッシュレス購入が可能となります。さらに、近年は無人スーパーへの入店にスマートフォン向けアプリを活用しているケースもあります。これは、専用アプリをダウンロードして無人スーパーのアカウント情報(決済情報)を紐付けることで、入店が可能になるというものです。

自動接客

OMOを活用した自動接客の手法についてです。

1つ目はチャットボットの活用です。チャットボットとは、お客さまが入力した質問に対して自動的に会話を行うプログラムです。店舗に入店したお客さまがスマートフォンからチャットボットを利用することで、気になる商品の在庫を調べたり、購入履歴からおすすめ商品を提案してもらえたりと、スタッフにつきっきりで接客してもらえるような顧客体験が得られます。

2つ目はサイネージの活用です。店頭などに設置されたサイネージの前に顧客が立つと、分析された結果によっておすすめの商品が提示される仕組みです。例えば、渋谷PARCOでは、店頭に商品をレコメンドするサイネージを設置し、訪れた利用者はQRコードからオンラインで商品を購入することもできます。

商品の受け取り方法

OMOを活用した商品の受け取り方法は2種類です。

1つ目は店頭受け取りです。これは、ECサイトやモバイルアプリで注文した商品を店頭で受け取れるサービスです。店舗に在庫がない商品も購入できるほか、店頭での待ち時間がない点がメリットです。

2つ目は自宅配送です。これは、近隣店舗の商品をオンラインで注文できるサービスです。自宅で購入できるうえ、店舗からの距離が近い分、到着までの時間が短い点がメリットです。物流フローを整備する大変さはありますが、配送元から配送先までの距離が短いため、配送コストを削減できます。

顧客データを活用した価値提供

OMOによってオンラインとオフラインのチャネルを連携できると、顧客データを収集・管理しやすくなります。その結果を用いて、サービスを提供できれば、さらなる顧客満足度の向上につながるでしょう。特に、個々の顧客のデータに応じてパーソナライズ化した提案や販促ができる点は大きな強みです。

OMOを成功させるポイント

OMOを成功させるためには、オンラインとオフラインの融合を図り、顧客のニーズに応えることが不可欠です。このためには、顧客の視点を常に意識し、柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。

長期的な視点に立った体制作りと方針決定

OMOを実現するには、店頭やECなどチャネル別に積み上げたデータを連携させるため、システムの統合や改廃が必要となります。導入後も顧客の行動データの蓄積や分析、新たな課題の洗い出し、対策・改善のために継続的にPDCAを回すことが重要です。短期的な視点だけではなく、長期的な方針を共有し、運用までを踏まえた組織や体制を構築することが求められます。

ICTの活用

OMOを実現するには、複数のICTの活用が不可欠です。自社で保有するすべての販売チャネルの商品・顧客データを一元管理し、全チャネルの担当者が集約したデータを分析しなければなりません。分析結果を商品やサービスに反映させるためには、CRM(顧客管理)、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援)などのツールを駆使する必要があります。

販売チャネルのマルチ化

オンラインと実店舗の融合を図るOMOでは、販売チャネルをマルチ化させる必要があります。インターネットやSNSの普及により、企業と消費者の接点が増えてきました。例えば、消費者は購入前に商品比較サイトやSNSから口コミを調べ、複数メーカーの製品を検討した上で購入します。購入前にチャットやメールで直接メーカーや販売店に問い合わせる人も少なくありません。こうした背景から、OMOでは実店舗やECサイトに加え、SNSやチャットなど様々な販売チャネルを展開し、顧客ニーズに応えると同時に、消費者の購買データを収集・分析する必要があります。

良質な顧客体験が得られる店舗づくり

OMOでは、ユーザーファーストの視点でオンラインとオフラインを融合した良質な顧客体験が求められます。実店舗の役割も変化しており、単に商品をレジに持っていき決済するだけでは顧客体験は向上しません。例えば、あるファストフードのモバイルアプリは、事前に注文内容を確定してから店舗を訪れることで、来店と同時に商品を提供できる工夫をしています。また、商品棚に陳列されている食材のQRコードをスマートフォンで読み込むと、産地や流通経路などの詳細情報が確認できる生鮮食品店もあります。このように、サプライチェーンの情報を届けることで、消費者に食品の安全性や信頼性を提供しています。

OMOの新たな取り組みと事例

ここでは、OMOの最新の取り組みと成功事例をご紹介します。

1. BEAMS

BEAMSでは、実店舗とECサイトの会員データを統合することで、オンラインとオフラインで一貫したサービスの提供を可能にしました。さらに、購入した商品のスタイリングを提案するなど、購入後も役立つ情報を発信しています。このようなパーソナライズ体験を提供することで、顧客のエンゲージメントを高め、OMO戦略の成功を実現しています。

2. ウォルマート(Walmart)

アメリカの小売大手ウォルマートは、「ピックアップタワー」というOMOソリューションを導入しました。これは、お客さまがWeb上で事前に購入した商品を店舗で受け取れる商品受け渡しの機械です。注文後に発行されるバーコードをかざすだけで、わずか10秒以内に商品を受け取ることができるため、顧客の利便性を大幅に向上させました。

3. アイメガネ

埼玉県を中心にメガネやコンタクトレンズを販売するアイメガネは、ECサイト上でメガネやサングラスのシミュレーションができるサービスを提供しています。顧客はフレームやレンズを選択すると、イメージ画像や価格の見積もりを確認できます。さらに、購入を検討している商品の店頭試着を予約することができ、近隣に店舗がない場合は自宅への配送も選択可能です。このように、オンラインとオフライン融合させたサービスを展開しています。

4. サントリー

飲料メーカーのサントリーは、LINEで注文して商品を受け取れるカフェ「TOUCH-AND-GO COFFEE」をオープンしました。このカフェでは、ベースとなるコーヒーやフレーバーなどを自由にカスタマイズでき、組み合わせの総数は200種類以上にものぼります。カスタマイズ性の高さや受け取りまでのスピードが特徴で、デジタルとリアルを融合した新しいカフェ体験として人気を集めています。

まとめ

OMOを成功させるためには、ユーザーファーストの視点、長期的な戦略、ICTの活用、販売チャネルのマルチ化などが重要です。また、モバイルオーダー、テーブルオーダー、モバイルペイメント、ポイント・クーポンシステムなど、様々な施策を組み合わせることで、より効果的なOMO戦略を構築できます。

今後、デジタル技術の進化と消費者行動の変化に伴い、OMOの重要性はさらに高まると予想されます。企業は顧客のニーズを的確に捉え、オンラインとオフラインを融合させた革新的なサービスを提供することで、競争力を維持・向上させることができるでしょう。

GENIEE CX NAV1 編集部

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