マーケティング業務において、特定の担当者だけがノウハウを持っている状態は大きなリスクです。担当者が休んだり退職したりすると、キャンペーン運用や顧客対応が止まってしまいます。
BtoC企業では顧客接点が多く、対応スピードが売上に直結します。そのため属人化の解消は、組織の成長に欠かせない課題といえるでしょう。
本記事では、属人化が起こる原因から具体的な解消方法まで解説します。マーケティング部門で活用できる実践的な手順もお伝えします。
目次
属人化とは何か
ここでは属人化の定義とBtoC企業で起こりやすい業務について解説します。
属人化の定義と標準化との違い
特定の担当者だけが業務の進め方や判断基準を把握している状態を指します。この状態では、その人がいないと仕事が回りません。
対義語は「標準化」です。標準化とは、誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できる状態を意味します。マニュアルや手順書が整備され、ノウハウが組織全体で共有されている状態といえるでしょう。
属人化と専門性の高さは異なる概念です。専門スキルを持つ人材は組織にとって貴重な存在ですが、その知識が共有されていなければリスクになります。一方で、知識を形式化して共有できていれば、専門性を活かしながらリスクを軽減できます。
BtoC企業で属人化が起こりやすい業務
BtoC企業では、顧客との接点が多い業務で属人化が発生しやすい傾向があります。以下の表は、属人化が起こりやすい業務とその特徴をまとめたものです。
| 業務領域 | 属人化の例 | 発生しやすい理由 |
| SNS運用 | 投稿内容の判断基準が担当者の感覚に依存 | トレンド対応のスピードが求められる |
| 広告運用 | 入札調整やクリエイティブ判断が特定者に集中 | 専門知識と経験が必要 |
| CRM施策 | セグメント設計やシナリオ作成が一人に依存 | ツール操作の習熟に時間がかかる |
| カスタマーサポート | 特定の問い合わせ対応が一人しかできない | 過去の経緯を把握している人が限られる |
これらの業務は顧客体験に直結するため、属人化による品質のばらつきが売上に影響します。そのため早期の解消が求められます。
属人化が発生する主な原因
ここでは属人化が起こる3つの主要な原因について解説します。
情報共有の仕組みが整っていない
ナレッジを蓄積・共有する仕組みがないと、知識は個人の中に留まります。共有するためのツールがない場合、口頭での引き継ぎに頼らざるを得ません。
また、情報共有を評価する制度がないことも原因です。共有しても評価されなければ、担当者は自分のノウハウを独占しがちになります。むしろ「自分だけが知っている」状態が、社内での立場を守る手段になってしまうケースもあるでしょう。
リモートワークの普及も影響しています。オフィスでの何気ない会話から得られていた情報が、テレワーク環境では共有されにくくなりました。意識的に共有の場を設けなければ、暗黙知は伝わりません。
業務の専門性が高く引き継ぎが難しい
マーケティング業務は専門性が高く、習熟に時間がかかります。広告運用やデータ分析は、ツールの操作方法だけでなく判断基準の理解も必要です。
教育に十分な時間を割けないことも問題です。日々の業務に追われると、後任の育成は後回しになりがちです。結果として、特定の担当者に業務が集中し続けます。
さらに、レガシーシステムの存在も引き継ぎを困難にします。古いツールやシステムは、操作方法を知る人が限られています。ドキュメントが残っていないケースも多く、担当者が退職すると対応できなくなるリスクがあります。
多忙でマニュアル作成の時間がない
業務量が多いと、マニュアル作成や情報共有に時間を割けません。目の前のタスクをこなすことで精一杯になり、標準化は先送りされます。
人手不足も大きな要因です。共有する相手がいなければ、マニュアルを作る動機も生まれにくいでしょう。少人数で回している組織ほど、属人化が進みやすい傾向があります。
加えて、マニュアル作成自体が属人化しているケースもあります。「どう書けばいいかわからない」「作成する時間がない」という状態が続くと、ノウハウは担当者の頭の中に留まり続けます。
属人化を放置するリスク

ここでは属人化を放置した場合に起こる2つの主要なリスクについて解説します。
業務停滞と品質低下
担当者が不在になると、業務が止まります。急な休暇や退職が発生した場合、代わりに対応できる人がいません。BtoC企業では顧客対応のスピードが重要なため、業務停滞は顧客満足度の低下に直結します。
品質のばらつきも問題です。担当者によって対応品質が異なると、顧客体験に一貫性がなくなります。SNSでの対応や問い合わせ返信の質が担当者によって変わると、ブランドイメージにも影響するでしょう。
また、業務がブラックボックス化すると改善が難しくなります。何が問題なのか、どこを改善すべきかが見えないため、PDCAサイクルが回りません。結果として、非効率な業務プロセスが放置され続けます。
担当者への負担集中と離職リスク
属人化した業務は、担当者に大きな負担をかけます。休みを取りにくくなり、長時間労働が常態化しがちです。このストレスが蓄積すると、離職につながります。
担当者が離職すると、ノウハウも一緒に失われます。引き継ぎが不十分なまま退職されると、業務の再構築に多大な時間とコストがかかります。新しい担当者がゼロから学び直す必要があるためです。
さらに、新人の離職リスクも高まります。教育体制が整っていないと、新人は「何をすればいいかわからない」状態に陥ります。サポートが不十分だと感じれば、早期離職につながるでしょう。
属人化を解消する5つの方法

ここでは属人化を解消するための具体的な5つの方法について解説します。
業務の棚卸しと可視化
最初のステップは、現状の業務を洗い出すことです。どの業務が属人化しているかを把握しなければ、対策を打てません。
棚卸しでは、各業務の担当者、作業時間、必要スキル、難易度を整理します。フローチャートを作成すると、業務の流れが可視化されます。担当者へのヒアリングも有効です。「この業務は自分しかできない」と感じている部分を聞き出しましょう。
可視化ができたら、優先順位をつけます。すべてを一度に標準化するのは現実的ではありません。影響度が大きく、標準化しやすい業務から着手することをおすすめします。
マニュアル・ナレッジの整備
業務手順を文書化することで、誰でも同じ品質で作業できるようになります。マニュアルには、目的、手順、判断基準、注意点を記載しましょう。
作成時のポイントは、第三者が理解できるかを確認することです。担当者本人が書くと、暗黙の前提が抜け落ちがちです。別の人に読んでもらい、わかりにくい部分を修正しましょう。
図表やスクリーンショットを活用すると、理解しやすくなります。動画マニュアルも効果的です。特にツール操作の説明は、動画の方が伝わりやすいでしょう。作成したマニュアルは、共有フォルダやナレッジツールで一元管理します。
▼ 関連記事:社内wikiで業務効率化!導入手順とおすすめツール比較
責任と権限の分散
特定の担当者に集中している責任と権限を分散させます。まず、どの業務が一人に集中しているかを特定しましょう。
分散の方法は、経験やスキルに応じて段階的に進めます。いきなりすべてを任せるのではなく、サポート体制を整えながら移行します。研修やOJTを通じて、複数人が対応できる状態を目指しましょう。
ただし、責任の所在は明確にしておく必要があります。「誰でもできる」状態は、「誰も責任を取らない」状態になりかねません。主担当と副担当を決めるなど、役割分担を明確にしましょう。
情報共有文化の醸成
仕組みを整えても、共有する文化がなければ機能しません。情報共有を当たり前にする風土づくりが重要です。
定例ミーティングでの共有機会を設けることが有効です。週次や月次で、各自の業務状況やノウハウを共有する場を作りましょう。短時間でも継続することが大切です。
共有行為を評価する仕組みも効果的です。ナレッジを投稿した人を表彰したり、評価制度に組み込んだりする方法があります。「共有すると得をする」という認識が広まれば、自発的な共有が増えるでしょう。
ITツールの活用
ツールを導入することで、情報共有と業務の可視化が効率化されます。以下の表は、属人化解消に役立つツールの種類と特徴をまとめたものです。
| ツール種類 | 主な機能 | 属人化解消への効果 |
| ナレッジ共有ツール | FAQ作成、検索、ナレッジ蓄積 | 自己解決を促進し、問い合わせ対応の属人化を軽減 |
| プロジェクト管理ツール | タスク管理、進捗可視化 | 業務状況の見える化で属人化を防止 |
| クラウドストレージ | ファイル共有、共同編集 | マニュアルやデータの一元管理 |
| CRM | 顧客情報管理、対応履歴記録 | 顧客対応の引き継ぎを容易に |
| ワークフローシステム | 申請・承認の電子化 | 業務プロセスの標準化と可視化 |
ツール選定では、使いやすさを重視しましょう。高機能でも使われなければ意味がありません。無料トライアルで試してから導入を決めることをおすすめします。
▼ 関連記事:社内チャットボットで問い合わせ対応を効率化!失敗しない選び方と導入手順
属人化を解消を成功させるポイント

ここでは属人化解消を成功に導くための2つのポイントについて解説します。
優先順位をつけて段階的に進める
すべての業務を一度に標準化しようとすると、現場の負担が大きくなります。優先順位をつけて、段階的に進めることが重要です。
優先度の判断基準は、影響度と実行しやすさです。影響度が高く、標準化しやすい業務から着手しましょう。バックオフィス業務やルーティンワークは、比較的標準化しやすい傾向があります。
また、コア業務とノンコア業務を区分することも有効です。ノンコア業務を先に標準化すれば、コア業務に集中できる時間が生まれます。場合によっては、ノンコア業務のアウトソーシングも選択肢になるでしょう。
継続的な見直しと改善
一度マニュアルを作っても、それで終わりではありません。業務内容は変化するため、定期的な見直しが必要です。
見直しのタイミングは、四半期ごとや半期ごとが目安です。業務プロセスに変更があった場合は、その都度更新しましょう。古いマニュアルは使われなくなり、再び属人化が進む原因になります。
現場からのフィードバックを集める仕組みも重要です。マニュアルを使った人が「わかりにくい」と感じた点を報告できる仕組みを作りましょう。継続的な改善により、マニュアルの品質が向上します。
属人化を解消した成功事例
ここでは属人化を解消した3社の事例について解説します。
小売・EC業界の事例:ブックオフコーポレーション株式会社
ブックオフは、ネット通販・ネット買取サービスを展開しています。顧客からの問い合わせ対応にチャットボットを導入していました。しかし、運用が特定の担当者に依存する状態が続いていました。
課題は、チャットボットの更新やチューニングが属人化していた点です。担当者が不在になると、適切な運用ができなくなるリスクがありました。また、運用ノウハウがチーム内で共有されていませんでした。
そこで、直感的な管理画面を持つKARAKURI chatbotを導入しました。社員やアルバイトなど多くのメンバーがAIトレーニングを担当できる体制を構築しています。その結果、導入前対比で問い合わせ件数を35%削減しました。
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000025663.html
飲料メーカーの事例:サントリー食品インターナショナル株式会社
サントリー食品インターナショナルは、清涼飲料水の製造・販売を手がけています。生産計画の立案は、熟練者の経験に依存していました。複雑な制約条件を考慮しながら、手作業で計画を作成していたのです。
課題は、計画立案に膨大な時間がかかっていた点です。複数の熟練者が平均毎週約40時間を費やしていました。さらに、担当者の経験やスキルによって計画の質にばらつきが生じていました。
そこで、日立と協創し、AIを活用した生産計画立案システムを開発しました。2019年1月から実運用を開始しています。その結果、約40時間かかっていた計画立案を約1時間に短縮しました。
小売業界の事例:株式会社ニトリホールディングス
ニトリグループは、家具・インテリアの製造小売を展開しています。全国に配送センターを持ち、ラストワンマイル配送を担っています。配送ルートの作成は、担当者の経験に依存していました。
課題は、配送ルート作成の属人化でした。担当者によって作成時間や効率にばらつきがありました。また、取扱個数の増加に対応できる体制が求められていました。
そこで、富士通の配送最適化ソリューションを全国80カ所の配送センターに導入しました。トラックの積載量やドライバーの作業時間を考慮し、最適なルートを自動作成しています。その結果、ドライバーの労働時間短縮と配送効率の向上を実現しました。
出典:https://www.nitorihd.co.jp/news/items/be646b745964fc695a60d16fb229f480.pdf
よくある質問(FAQ)
Q1. 属人化を解消するのにどのくらいの期間がかかりますか?
業務の複雑さや範囲によって異なりますが、一般的には3〜6ヶ月程度が目安です。まずは優先度の高い業務から着手し、段階的に範囲を広げていくことをおすすめします。すべてを一度に解消しようとせず、小さな成功を積み重ねることが重要です。
Q2. 属人化解消に反対する社員がいる場合はどうすればよいですか?
属人化している担当者は、自分の立場が脅かされると感じることがあります。そのため、属人化解消の目的を丁寧に説明することが大切です。「あなたの負担を軽減する」「休暇を取りやすくする」といったメリットを伝えましょう。また、ナレッジ共有を評価制度に組み込むことで、共有へのインセンティブを高められます。
Q3. 小規模なチームでも属人化解消は必要ですか?
小規模なチームほど属人化のリスクは高いといえます。一人が抜けた場合の影響が大きいためです。少人数でも、最低限のマニュアル整備と情報共有の仕組みを作っておくことをおすすめします。将来的にチームが拡大した際にも、スムーズに引き継ぎができるようになります。
Q4. 属人化解消に適したITツールの選び方を教えてください
自社の課題に合ったツールを選ぶことが重要です。ナレッジ共有が課題ならFAQツールやナレッジ管理ツール、業務の可視化が課題ならプロジェクト管理ツールが適しています。導入前に無料トライアルで使い勝手を確認し、現場の意見を聞いてから決定しましょう。高機能なツールよりも、実際に使われるツールを選ぶことが成功の鍵です。
▼ 関連記事:FAQの作り方とは?問い合わせ削減につながる構成と作成手順を解説
Q5. 属人化にはメリットもあると聞きましたが本当ですか?
限定的なケースではメリットもあります。短期プロジェクトでスピードを優先する場合や、高度な専門性が求められる業務では、特定の担当者に任せた方が効率的なこともあります。また、顧客との信頼関係構築が重要な業務では、担当固定が有効な場合もあるでしょう。ただし、これらのケースでもナレッジの共有は必要です。担当者が不在になった際のリスクヘッジとして、最低限の情報は組織で共有しておくべきです。
▼ 関連記事:問い合わせ対応を効率化する方法と改善のコツ
まとめ
属人化の解消は、BtoC企業のマーケティング部門にとって重要な課題です。顧客対応のスピードと品質が売上に直結するため、特定の担当者に依存する状態はリスクになります。
解消のためには、まず業務の棚卸しと可視化から始めましょう。どの業務が属人化しているかを把握し、優先順位をつけて段階的に進めることが成功の鍵です。マニュアル整備、責任の分散、情報共有文化の醸成、ITツールの活用を組み合わせることで、効果的に属人化を解消できます。
一度標準化しても、継続的な見直しと改善が必要です。業務内容は変化するため、定期的にマニュアルを更新し、現場からのフィードバックを反映させましょう。属人化解消は一度きりの取り組みではなく、組織として継続的に取り組むべきテーマです。
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