「継続率」という言葉をよく耳にするものの、その本質的な意味や企業経営における重要性を正確に理解しているでしょうか。

本記事では、継続率の基本的な意味から計算方法、業界別の目安、改善方法まで詳しく解説します。さらに、継続率を高めるために注目すべきKPIや、すぐに活用できる具体的な改善策と成功事例もご紹介します。

継続率とは?基本的な意味や重要性を解説

継続率とは?基本的な意味や重要性を解説

「うちの継続率は50%なんだけど、これって業界的には良いの?悪いの?」
「継続率を上げるためには何から手をつければいいのかわからない…」
このような疑問や悩みを抱える方は少なくありません。まずは、継続率の基本的な定義から確認していきましょう。

継続率(リテンションレート)の定義を確認する

継続率とは、商品の購入やサービスを利用した顧客の中で、その後も継続して購入・利用する顧客の割合を表す指標です。マーケティング用語では「リテンションレート(Retention Rate)」「顧客維持率」「定着率」とも呼ばれます。

継続率の計算式は以下の通りです。

継続率(%)=(再購入または継続利用した顧客数 ÷ 新規顧客数)× 100


例えば、あるサービスの新規顧客が2024年10月に1,000人獲得でき、そのうち400人が1ヵ月後も継続して利用していた場合、継続率は次のように計算されます。

継続率 =(400 ÷ 1,000)× 100 = 40%

継続率は単一の指標として見るだけでなく、時系列での変化や業界平均との比較によって、自社のサービス品質や顧客満足度を測る重要な指標となります。

継続率の測定期間主な用途
1日後の継続率初期体験の質を測定
7日後の継続率短期的な使用感や価値提供の評価
30日後の継続率中期的な顧客満足度の評価
90日以上の継続率長期的な顧客ロイヤルティの測定



継続率を重視すべき理由

継続率を重視すべき理由

継続率が企業にとって重要な理由は多岐にわたりますが、主に以下の5つの点が挙げられます。
継続率の向上は、「顧客を維持する」という単純な目的だけでなく、企業の持続的な成長と利益向上に直結する重要な経営指標となります。

安定した収益の確保

既存顧客の継続利用は安定した収入源となり、収益の予測可能性を高めることができます。
特にサブスクリプションモデルでは、継続率が直接的に売上に影響します。

新規顧客獲得コストの節約

一般的に新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍以上といわれています(「1:5の法則」)。継続率を高めることで、マーケティングROIの改善も期待できます。また、既存顧客の口コミによる波及効果も見込むことができます。

ブランド価値の向上

長期間にわたって製品やサービスを利用する顧客は、そのブランドに対する信頼や愛着を持ちやすい傾向があります。このようなロイヤリティの高い顧客は、ブランド価値の向上に大きく貢献します。

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アップセル・クロスセル機会の増加

継続顧客に対しては、DMや電話といった複数のチャネルを活用してアップセルやクロスセルの提案が可能です。
これにより、顧客単価を向上させる機会が増加します。

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業界別に見る継続率の目安と改善のポイント

業界別に見る継続率の目安と改善のポイント

継続率は業界によって大きく異なるため、自社の数値を適切に評価するには、業界別の目安を知ることが重要です。

ここでは3つの業界を取り上げて詳しく見ていきます。

消耗品業界(化粧品・健康食品)など

消耗品は継続的に使用され、定期的な購入が期待できます。
特に化粧品・健康食品などの分野では、以下のような継続率の目安があります。

商品ジャンル平均継続率優良企業の継続率
化粧品(単品リピート通販)約50%60%以上
健康食品(単品リピート通販)約50%60%以上
一般消耗品(日用品など)約40%50%以上

化粧品や健康食品は特に定期購入制度を導入しているケースが多く、2回目以降の継続率は平均で50%前後となっています。
ただし、商品の効果が実感しやすく、顧客層にマッチした商品であれば、60%以上の継続率を達成している企業も少なくありません。

継続率改善のためのポイント

  • 効果実感までの期間を明確に伝達
  • 初回購入者向け使い方ガイドの充実
  • 使い切りタイミングでのフォローアップ
  • 3〜4回目購入時の特別フォロー施策


サブスクリプションサービス

サブスクリプションビジネスでは、継続率が売上に直結するため、事業において最重要指標となります。
業界別の継続率の目安は以下の通りです。

サブスクリプション業種平均月間継続率年間継続率
SaaS(法人向け)93~95%65~80%
動画・音楽配信90~92%55~70%
食品・ミールキット85~90%40~60%
フィットネス・健康80~85%30~50%
美容・ファッションBOX75~85%25~45%

法人向けSaaSビジネスは比較的高い継続率を誇りますが、これはシステム導入の手間や切り替えコストが高いためです。一方、消費者向けのサブスクリプションサービスは選択肢も多く、解約の敷居が低いため継続率が低くなる傾向があります。

継続率改善のためのポイント

  • オンボーディングの最適化
  • 継続的な価値提供とエンゲージメント向上
  • 解約予兆の早期発見と防止策
  • カスタマーサクセスの強化


高額商品や一般小売業界の継続率

一度の購入額が大きい高額商品や、一般的な小売業界における継続率の目安は以下の通りです。

業界(ジャンル)継続率の目安
アパレル(総合通販)35%
食品・飲料(総合販売)40%
インテリア(総合通販)40%
家電(総合通販)25%
旅行45%

家電などの耐久消費財は、製品自体の買い替えサイクルが長いため継続率が低くなりがちです。一方で、食品や飲料などの消費頻度が高い商品は、リピート率も比較的高い傾向にあります。

継続率改善のためのポイント

  • 購入後満足度調査と適切なフォローアップ
  • 関連商品のクロスセル・アップセル提案
  • アフターサービスの質向上
  • ポイントプログラムによる動機付け


継続率を評価するために注目すべき重要KPI

継続率を評価するために注目すべき重要KPI

継続率は単独で評価するよりも、複数の関連指標(KPI)と組み合わせて分析することで、より効果的な改善策を導き出せます。
ここでは、継続率と密接に関連する重要なKPIを紹介します。

解約率(チャーンレート)

解約率(チャーンレート)とは、一定期間において契約者やサービスの利用者がその契約やサービスの利用を解約(退会)する割合を示す指標です。継続率と表裏一体の関係にあり、以下の式で計算できます。

解約率(%)= 解約した顧客数 ÷ 期間内の総顧客数 × 100


例えば、ある月に総顧客数が1,000人で、そのうち50人が解約した場合、解約率は5%となります。

LTV(顧客生涯価値)

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客が取引開始から終了までの間に、企業にもたらす総利益のことです。継続率と密接に関連し、継続率が高いほどLTVも向上します。基本的な計算式は以下の通りです。

LTV = 平均顧客単価 × 購買頻度 × 平均継続期間


詳しくは以下でも解説しています。

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NPS(顧客推奨度)

NPS(Net Promoter Score:顧客推奨度)は、顧客のロイヤルティを測定するための指標です。「この商品・サービスを友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対して、0~10点のスコアで回答を集め、以下の式で算出します。

NPS = 推奨者(9-10点)の割合(%) - 批判者(0-6点)の割合(%)


回答者は以下の3つのグループに分類されます。

  • 推奨者(9-10点):積極的に推奨してくれる熱心な支持者
  • 中立者(7-8点):満足しているが積極的な推奨はしない層
  • 批判者(0-6点):不満を持ち、否定的な評判を広める可能性がある層

NPSは継続率と強い相関関係があります。
NPSが高い企業ほど顧客継続率も高い傾向にあり、特に「推奨者」の比率が高いほど、顧客の自発的な紹介による新規獲得と高い継続率の両方を実現できます。

継続率を改善する具体的な方法

継続率を改善する具体的な方法

継続率の向上は経営陣から強く求められる課題であるにもかかわらず、「何から手をつければいいのか分からない」と悩む担当者は少なくありません。ここでは、継続率を改善するための具体的かつ実践的な方法を紹介します。

顧客ニーズに基づいたパーソナライズ施策

顧客一人ひとりのニーズや行動パターンに合わせたパーソナライズされた体験を提供することで、顧客満足度と継続率を大幅に向上させることができます。
例えば、行動データに基づくレコメンデーションや顧客の状況に合わせた個別のアプローチなどが挙げられます。

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定期的な顧客接点の設計

顧客との定期的な接点を意図的に設計することで、「忘れられない存在」となり、継続率の向上につながります。

顧客接点設計の例としては、メール・電話・SNSなど複数のチャネルの活用や、コンテンツカレンダーや限定イベントの案内などが挙げられます。
購入後のカスタマージャーニーマップを最適化することで、効果的な施策を展開できるようになります。

クロスセル・アップセルの施策の実施

クロスセル(関連商品の追加購入)やアップセル(より上位のサービスへの移行)は、顧客との関係性を深め、離脱リスクを低減させる効果があります。単なる売上増加施策ではなく、顧客価値向上の手段として捉えることが重要です。

この時、以下のポイントに注意して施策を実行するようにしましょう。

  1. 行動データに基づくレコメンデーション:閲覧履歴や購入履歴に基づく商品・コンテンツの推奨
  2. 利用パターンに合わせた機能案内:ユーザーの利用状況に応じて最適な機能を紹介
  3. パーソナライズされたコミュニケーション:名前や利用状況に基づいたメッセージの送信
  4. カスタマイズ可能なダッシュボード:ユーザーが自分に必要な情報を設定できる機能
  5. セグメント別のオファー提供:顧客属性や行動に基づいた特別オファーの提供


まとめ

継続率は企業の持続的成長と安定収益確保の鍵となる重要指標です。

顧客との長期的な関係構築を通じて、新規獲得コスト削減とLTV向上が実現できます。
継続率を高めるためには、業界特性を理解した上で適切な目標設定を行い、コミュニケーションを強化することが重要です。また、解約率やNPSなどの関連指標と併せて分析し、改善のPDCAを回していくとよいでしょう。

GENIEE CX NAV1 編集部

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