CDP活用で実現する複数ブランド統合型マーケティング基盤構築と自立型MOps体制確立

この記事で分かること
- 消費財メーカーが直面する顧客理解の課題と、CDP導入による解決アプローチ
- 複数ブランドで共通利用できるマーケティング基盤の設計思想と構築プロセス
- マーケターとエンジニアの両方が自走できる体制づくりの具体的な取り組み
- オンライン・オフラインデータを統合したパーソナライゼーション施策の実例
- CDP活用による顧客生涯価値向上の成果と、AI活用を見据えた未来予想図
変化する顧客接点と従来型マーケティングの限界点
昨今消費財や食品業界において、トレンドやメディア、消費者動向に伴う利用媒体の変化に伴い、メーカーと顧客との接点や接し方は大きく変化しています。
メーカーでは、一般的には全国の販売網や顧客相談窓口を通じて顧客の声を収集し、製品開発にフィードバックするといった従来からの仕組みを長年構築してきています。
しかし、購買チャネルの多様化とコミュニケーション手段の変化により、従来の仕組みが機能しなくなってきているという課題に各社直面しているのです。
従来はスーパーやドラッグストアなど店頭での購入が中心でしたが、現在ではECサイト、SNSやインフルエンサーからの直接購入等様々なオンラインチャネルでの購入が増加しています。
また、顧客相談も電話からデジタルチャネルへとシフトしており、従来の電話中心の相談窓口では顧客の声を十分に拾いきれない状況が生まれています。このような環境変化に対応するため、新しい顧客理解の仕組みが喫緊の課題となっています。
この課題に対し、ある企業ではデジタルを活用した新しい顧客接点の構築に乗り出しました。具体的には、ブランドごとに独自の世界観を提供するD2C(Direct to Consumer)サービスと、複数ブランドが参加できる統合型コミュニティサービスの2つのアプローチを展開しています。
統合型コミュニティサービスは、情報提供、製品紹介コンテンツ、ナレッジ、QA、商品購入、顧客コミュニティなど複数のサービスで構成され、サービス開始から短期間で数千万人以上の顧客が訪れる規模に成長しています。
事業要望とIT要件を両立するプラットフォーム設計

相反する要望をどう解決するか
大規模なマーケティングプラットフォームを運営する上で、事業側とIT側の要望は往々にして相反します。事業側は「スピード感を持って自由にマーケティング施策を実施したい」「複数ブランドからの多くの業務要望に対応したい」と考える一方、IT側は「効率的にシステム運営したい」「顧客の大切な情報を扱うため、事故は絶対に防ぎたい」という要望を持っています。
この相反する要望を解決するためには、プラットフォーム運営において3つの重要ポイントがあります。
第一に、事業側が自分たちで自走できる仕組み作りが重要であること。
第二に、事故は発生するものとしたリスクを前提に減災対策の仕組み作りを行うこと。
第三に、共通基盤を利用した効率的な運営が持続的な運用をしていく上で最重要であるという点。
これらのポイントを実現するためには、次世代型CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を中心としたマーケティング基盤の構築が必要となります。
複数ブランド共通基盤としてのCDP活用
構築されるマーケティングプラットフォームは、CDPを中心に複数のSaaSシステムが連動する構成となります。
重要な特徴は、複数ブランドで共通基盤として利用できる点です。
単に環境を共有するだけでなく、データ設計や機能も共通化することで、効率的な運営を実現します。
そういった共通基盤化を実現するためには、各事業部や各ブランド担当者から現場ヒアリングを行い、共通項を見出してシステム設計に落とし込むプロセスが重要です。
また、CDPツールを選定する際には、「現場のマーケティング担当者レベルでデータ分析や施策実行が容易に行える、使いこなせる」点がじゅうようとなります。
施策やデータ分析の度にエンジニアが工数を使ってデータを成形したりという環境では施策のスピードやPDCAサイクルがうまく回りません。
また、CDPで基盤を構築しただけではマーケティング現場のみでの自走化は難しくなります。現場ヒヤリングを行いながら設計を進めることが重要です。
主なプラットフォーム構築の進め方としては、段階的に進められます。
段階に応じて、オンラインデータや店舗データなどのオフラインデータを統合して複数事業部、複数ブランド間で共通利用できる基盤として構築していきます。
その後は機能改善と運営改善を継続的に実施し、D2Cブランドの利用拡大や統合型コミュニティサービスの展開など、段階的な成長アプローチを採用していくこととなります。
【関連情報】https://geniee.co.jp/media/ebook/gl-cdp-ebook001/
マーケティング現場でのデータ活用を自走化を実現するポイント

マーケターの施策業務の自走化
データ基盤(プラットフォーム)構築の最終ゴールは、施策業務とエンジニアの開発業務の両方の自走化です。
マーケターはCDPでカスタマージャーニーの設定まではできるものの、データ分析や可視化、アクティベーション領域の本番運用において本当に問題が発生しないかという観点でテストを進行します。パートナー企業がテストノウハウを共有し、「ここまでテストしておけば大丈夫」という基準を提示することで、マーケターの自走化を実現するということもリスクを消していく上では必要な作業工程となります。
そうすることで、マーケティング現場にも自走しながらナレッジが蓄積され、新しい要望や施策が出てきた場合も、具体的な要件まで自分たちで落とし込むことが可能になり、スピード感を持った施策展開が可能になっていくのです。
次からはCDPを活用したデータ基盤を使ってマーケティング現場で行う具体的な施策について触れていきたいと思います。
オンライン・オフライン統合による具体的な施策事例

店舗データを活用した広告最適化
CDPに蓄積された購買データを活用した具体的な施策事例として、ある化粧品ブランドにおける広告最適化の取り組みがあります。
この施策では、特定カテゴリーを購入した顧客リストを作成し、広告プラットフォームに連携して、購入者データの類似オーディエンスに対して広告配信を行い、来店促進を実現しました。
この施策のユニークな点は、ECサイト(オンライン)の購買データだけでなく、店舗(オフライン)の購買データも統合している点です。
オンライン・オフラインデータの統合セグメント化により、店舗とECサイトのいずれかで購入したベースメイク商品の購買データを活用し、広告施策の最適化を実現しています。
このようなデータ統合やtoC商材におけるマーケティング施策事例の詳細については、こちらの製品サイトもご覧ください。https://cx.geniee.co.jp/product/cdp/
行動履歴に基づくコンテンツのパーソナライズ
別の企業ではメーカーが展開する消費者向けの統合型コミュニティサイトを運営していました。
それらのコニュニティサイトにおけるユーザーの行動履歴データをCDPに蓄積し、オウンドサイト内コンテンツのパーソナライズに活用しています。
興味関心の推定を行い、オーディエンスセグメントを作成してCMS(ウェブコンテンツ管理システム)に連携することで、トップページのバナーをパーソナライズするといった取り組みです。
具体的には、口臭予防のオーラルケア商材を購入しキャンペーンに応募した顧客には口臭が発生する原因や細菌などの研究開発関連の情報バナーを表示したり、男性用化粧品関連の記事を閲覧した顧客に男性用化粧品を普段使っているユーザーの体験記事や同じような悩みやニーズを持つユーザーが書いた記事がカテゴライズされているコミュニティのバナーを表示するなど、行動情報から興味関心を推定してウェブコンテンツと連携したパーソナライズが実現します。
機械学習を活用したメールパーソナライズ
さらに高度な施策として、機械学習を使ったメールコンテンツのパーソナライズも実施可能となります。CDPに蓄積された購買・行動履歴を機械学習ツールと連携し、顧客ごとの商品興味を計算しランクやスコア付けを行います。計算結果をCDPに戻し、MAツール(マーケティングオートメーションツール)に連携することで、メール送信時に顧客に合わせたパーソナライズされた商品をレコメンドするといった手法です。
購買・閲覧履歴から機械学習を使用することで、より精度の高いパーソナライゼーションが実現できるのです。
CDP基盤のAI活用への進化と未来予想

DWH・CDP・MAのアーキテクチャ最適化
以上のマーケティング施策を実現するにあたり、導入や連携を検討する必要のあるアーキテクチャとしては、DWH(データウェアハウス)・CDP・MA(マーケティングオートメーション)があげられます。役割としては、CDPにより各システムからのデータを収集し、データ集計・統合、セグメント作成までを行い、MAツールがシナリオ構築とコンテンツ配信設定を担うパターンが一般的となります。
また、次世代型のクラウドDWH(CDPシステム)では、データ統合を実施し、CDPとMAを一貫化することで、データコピーの削減、障害リスクの低減、柔軟性の向上を実現するといった仕組みも一部企業からはリリースされています。
それらのメリットとしは、CDPのデータをすぐに活用できる点や、業務効率の向上、AIにとっても品質向上につながる点などが期待できます。
ツール特性の理解やデータ対応関係の理解が簡素化されることで、前提情報が複雑でなくなり、AIが処理しやすいAI READYな仕組みが構築されることでAIがアウトプットするデータの品質も向上します。
アーキテクチャ最適化の詳細については、こちらの資料などもご参照ください。(https://geniee.co.jp/media/ebook/ai-platform-hikaku/)
AIエージェント連動によるマーケティング業務高度化への期待
昨今データ基盤を構築する企業各社においてはAIエージェントとの連携活用への期待も高まっています。第一に、機械学習の活用の横展開です。前述したオウンドメディアやコニュニティサイトにおけるコンテンツのパーソナライズのような複数のオンライン・オフラインデータを統合しAIと掛け合わせるパーソナライズドマーケティングを複数の事業部、ブランドへと横展開することで、より多くの顧客に最適化された顧客体験をメーカーから消費者側へと提供することが可能になります。
第二に、セグメンテーション業務の効率化・高度化です。
従来では事前にシナリオを策定したルールベースのセグメント設定を行っている企業が多いことと思われますが、現場での工数制約があり、顧客毎に応じたきめ細かいシナリオ策定実行には課題が残ります。AIエージェントを活用することでペルソナ設計からシナリオ策定、配信までの工数を削減し、より細かいセグメンテーションが可能になることでしょう。
これらの取り組みは手段であり、最終目的はPDCAサイクルのさらなる高速化です。
より細かいパーソナライゼーションを実現することで、企業にとっても顧客にとっても価値のある体験を提供し、持続的な成長を実現することが目指されているのです。
それらを実現するための前提となるのがAI READYな環境に整備されたAIデータプラットフォーム基盤となります。
まとめ:段階的成長と自走化がもたらす持続的な価値創出
前述したメーカーや製造業におけるCDP活用の事例から、現代の生活者行動に即した顧客理解の仕組み構築の重要性が明らかになりました。
従来の旧態依然とした仕組みが機能しなくなっている中で、AIデータ基盤やプラットフォームを構築するだけでなく、自走化を身近なことから段階的に実施することが成功の鍵となっています。
複数ブランドで共通利用できる基盤を構築し、マーケターとエンジニアの両方が自走できる体制を整えることで、スピード感を持った施策展開が可能になります。
オンライン・オフラインデータの統合、AIエージェント、機械学習を活用したパーソナライゼーション、行動履歴に基づくコンテンツ最適化など、具体的な施策を通じて顧客生涯価値の向上が実現します。
今後は、更にAI READYなアーキテクチャの最適化とAIエージェントの進化・活用により、施策現場におけるPDCAサイクルのさらなる高速化と、より細かいパーソナライゼーションの実現により、企業と顧客の双方にとって価値のある関係性を構築することが期待されています。
本記事でご紹介したような、複数ブランド統合型のマーケティング基盤構築や、オンライン・オフラインデータを統合したパーソナライゼーション施策にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。CDP導入の検討段階から、具体的な施策設計、自走化体制の構築まで、幅広くご支援いたします。
製品の詳細については、こちらの製品サイトをご覧ください。
また、CDP活用やAI基盤の比較検討に役立つホワイトペーパーもご用意しております。詳しくはこちらからダウンロードいただけます。
・AI基盤比較ガイド:https://geniee.co.jp/media/ebook/ai-platform-hikaku/
・CDP活用ガイド:https://geniee.co.jp/media/ebook/gl-cdp-ebook001/



























