CDPとデータレイクの違いとは?5つの比較軸と選び方を解説

顧客データの活用が企業競争力を左右する時代において、「CDP」と「データレイク」という言葉を耳にする機会が増えています。どちらもデータを扱う基盤として語られますが、実際には目的も利用者も大きく異なります。マーケティング部門が「顧客一人ひとりに最適な施策を打ちたい」と考える一方で、IT部門からは「まず全社のデータを一箇所に集約すべき」と提案され、どちらを優先すべきか判断に迷うケースは少なくありません。
結論から言えば、CDPは顧客を軸にデータを統合し、マーケティング施策へ即座に活用することを目的とした基盤です。一方、データレイクは生データをそのままの形で蓄積し、エンジニアやデータサイエンティストが自由に分析できる環境を提供します。両者は競合するものではなく、役割が異なるため、自社の課題が「顧客理解と施策実行」にあるのか、「全社的なデータ統制と探索的分析」にあるのかを見極めることが、適切な選択につながります。
本記事では、CDPとデータレイクの定義と違いを明確にしたうえで、併用パターンや選定基準、代表的なツールの特徴までを解説します。自社のリソースや保有データの種類に照らして、どのツールを導入すべきかの判断材料を提供します。
CDPとデータレイクとは

企業のデジタル化が進むにつれ、データの「蓄積」から「活用」へと関心が移っています。2023年の調査では、中小企業の約3割がDXに着手または検討しており、そのうち「業務効率化やデータ分析」の段階にある企業は26.9%でした。
多くの企業がDXに期待する効果として「業務の効率化」(64.0%)や「コスト削減」(50.5%)を挙げており、「データに基づく意思決定」を期待する声も31.0%に上ります。
一方で、パーソナルデータ以外のデータ活用状況を見ると、2022年時点で「積極的に活用している」企業は13.0%に留まっており、データ分析やビジネスモデル変革といった高度なデータ活用にはまだ課題があることが示唆されます(令和5年版 情報通信白書データ集|総務省)。
こうした背景のもと、データを「どこに」「どう」蓄積し、「誰が」「どのように」活用するのかという問いに対する答えとして、CDPとデータレイクという2つの選択肢が注目されています。
CDPとは
CDP(Customer Data Platform)は、顧客一人ひとりの理解を深めるために設計されたプラットフォームです。顧客IDを軸にして、Webサイトの閲覧履歴、購買データ、会員情報、問い合わせ履歴など、複数のチャネルに散在するデータを統合します。統合されたデータは名寄せ処理を経て、一人の顧客として紐づけられ、マーケティング施策への即時連携を可能にします。
CDPの特徴は、データの蓄積だけでなく、活用を前提とした設計にあります。セグメント作成、スコアリング、広告配信ツールやMAツールへの自動連携といった機能が標準で備わっており、マーケティング担当者が技術的な知識を持たなくても、データを施策に落とし込める点が強みです。近年では、GENIEE CDPのようにAI分析機能を備えたCDPも登場しており、専門知識がなくても顧客理解と施策実行を加速できる環境が整いつつあります。
データレイクとは
データレイク(Data Lake)は、形式を問わずあらゆる生データを一元管理する基盤です。構造化データ(顧客情報や売上データなど)だけでなく、非構造化データ(ログファイル、画像、動画、センサーデータなど)も、加工せずそのままの形式で保存できます。データの保存時にスキーマ(データの構造定義)を決める必要がなく、読み込み時に必要な形に整えるため、柔軟性が高いのが特徴です。
データレイクは主にデータサイエンティストやエンジニアが利用する基盤として機能します。SQLやPythonなどのプログラミング言語を用いて、探索的な分析やAI開発の土台として活用されます。ストレージ単価が安価であるため、大量のデータを長期間保存する用途にも適しています。ただし、データを活用可能な形に整えるには、データエンジニアリングのスキルが必要となる点に注意が必要です。
CDPとデータレイクの違い

CDPとデータレイクは、どちらもデータを扱う基盤ですが、その役割は明確に異なります。CDPはマーケターが施策に使う「活用」の場であり、データレイクはエンジニアが分析する「保管」の場です。この違いを理解することが、導入後の成否を分ける重要なポイントとなります。以下では、データ構造、利用者、目的、機能、コストの5軸から両者の違いを整理します。
1. 扱うデータの種類と構造の違い
CDPは、名寄せされた顧客データを扱います。顧客ID、氏名、メールアドレス、購買履歴、行動ログなど、「人」に紐づく情報が中心です。データは書き込み時に構造が定義され(スキーマオンライト)、統合・整形された状態で保存されます。そのため、マーケティング担当者が直感的にセグメントを作成したり、施策に活用したりすることが容易です。
一方、データレイクは加工前の生ログや画像、動画、センサーデータなど、多様な形式を扱います。読み込み時に構造を定義する(スキーマオンリード)ため、保存時にデータを整える必要がありません。柔軟性が高い反面、データを活用するにはエンジニアがクエリを書いたり、ETL処理を行ったりする必要があります。
2. 主な利用ユーザー層とアクセス容易性の違い
CDPは、マーケティング担当者や営業担当者など、非技術者が主な利用者です。GUIベースの操作画面が提供されており、プログラミング知識がなくても顧客セグメントを作成したり、施策を実行したりできます。
専門人材の不足が課題となる中、非技術者でも扱えるUIの重要性が高まっています。2022年度の調査では、DXを推進する人材の量について「大幅に不足している」と回答した企業は49.6%にのぼりました。特にデジタル事業に対応する職種別に見ると、「データサイエンティスト」の不足感が最も高く、72.3%の企業が不足していると感じています。
こうした状況下では、専門家不在でも使えるツールの需要が増しています。GENIEE CDPのようなAIによる自然言語分析サポートを備えたCDPであれば、マーケター自身でのデータ探索を可能にします。
一方、データレイクは、データエンジニアやデータサイエンティストが主な利用者です。SQLやPythonなどのプログラミングスキルが求められ、データの抽出・加工・分析を行うには技術的な知識が不可欠です。非技術者が直接操作することは想定されていません。
3. 利用目的の違い(マーケティング施策実行 vs 全社的データ分析基盤)
CDPの利用目的は、マーケティング施策の実行にあります。セグメント作成から広告・MA連携までを数分で完結させるスピード感が強みです。顧客の行動履歴をもとに、リアルタイムでパーソナライズされたメッセージを配信したり、離脱リスクの高い顧客に対してアプローチしたりといった、即時性を求める施策に適しています。
データレイクの利用目的は、全社的なデータ統合と探索的分析です。IoTセンサーのログ、コールセンターの音声データ、SNSの投稿データなど、多様なデータソースを一箇所に集約し、AI開発や新規ビジネスモデルの検討といった中長期的な取り組みに活用されます。即時性よりも、データの網羅性と柔軟性が重視されます。
4. データ処理・分析機能の違い
CDPは、顧客スコアリング、セグメント作成、施策効果測定など、マーケティング施策向けの機能がパッケージ化されています。標準的な分析機能が備わっているため、ツールを導入すればすぐに活用を始められます。外部ツール(広告プラットフォーム、MAツール、CRMなど)との連携機能も充実しており、データを施策に落とし込むまでの流れがスムーズです。
データレイクは、SQL等による自由な分析機能に特化しています。標準的な分析機能は提供されないため、分析環境の構築が必要となります。データの抽出・加工・可視化には、BIツールやデータ処理フレームワークを別途導入し、エンジニアが環境を整える必要があります。自由度が高い反面、活用までのハードルは高くなります。
5. コスト構造と導入難易度の違い
SaaS型のCDPは、初期導入が早く、月額課金で利用できるため、初期費用を抑えられます。導入から活用開始までの期間が短く、数週間から数カ月で運用を始められるケースが多いです。運用保守もベンダー側で行われるため、社内のエンジニアリソースを割く必要が少ない点もメリットです。
データレイクは、ストレージ単価は安いものの、データエンジニアの採用・維持コストを考慮する必要があります。スクラッチ構築に近い形となるため、初期構築に時間がかかり、運用保守にも継続的な技術リソースが求められます。長期的に見れば柔軟性の高い基盤となりますが、短期的なコストと人的リソースの投資は避けられません。
CDPとデータレイクの併用について

CDPとデータレイクは、どちらか一方を選ぶのではなく、両者を組み合わせることで、全社データの蓄積とマーケティングでの高速活用を両立できます。データレイクで全ての生データを保持し、必要な顧客データのみをCDPへ連携するのが理想的な構成です。
この構成により、IT部門はデータレイクで統制を、マーケティング部門はCDPで自由な活用をという役割分担が可能になります。
データレイク→CDP連携の基本フロー
データレイクに集約された生データを、ETL(Extract, Transform, Load)ツールで加工し、CDPに顧客単位で統合する流れが基本です。具体的には、データレイクに蓄積されたWebアクセスログ、購買履歴、会員情報などを抽出し、顧客IDをキーにして名寄せ処理を行います。
その後、整形されたデータをCDPに連携することで、マーケティング担当者はCDP上で顧客セグメントを作成し、施策を実行できます。
この連携により、高度な分析結果を即座に現場の施策へ反映できます。たとえば、データレイク上で機械学習モデルを用いて算出した「離脱予測スコア」をCDPに連携すれば、マーケターはそのスコアをもとにリテンション施策を打つことが可能です。データレイクでの探索的分析と、CDPでの施策実行を組み合わせることで、データ活用の幅が広がります。
併用のメリットと注意点
併用のメリットは、データガバナンスを保ちつつ、部門ごとの利便性を最大化できる点にあります。IT部門はデータレイクで全社データの統制を行い、マーケティング部門はCDPで顧客データを自由に活用できます。データの一元管理と、現場での柔軟な施策実行を両立できる構成です。
ただし、注意点もあります。データレイクとCDPの間でデータを同期するコストが発生するため、ETL処理の設計や運用体制の整備が必要です。また、データの鮮度を保つために、リアルタイム連携が必要な場合は、ストリーミング処理基盤の導入も検討する必要があります。同期コストと運用負荷を考慮したうえで、併用の是非を判断することが重要です。
参考:DWH(データウェアハウス)との位置づけ
構造化データを扱うDWH(データウェアハウス)を中間に挟む3層構造も有効です。データレイクに生データを蓄積し、DWHで構造化・集計処理を行い、その結果をCDPに連携する構成です。BI分析を重視する場合は、データレイクとCDPの間にDWHを配置する構成が有効です。
DWHでは、売上分析や在庫分析など、全社的なKPI管理を行い、CDPではマーケティング施策に特化したデータ活用を行うといった役割分担が可能になります。
自社に最適なツールを選ぶ判断軸

CDPとデータレイクのどちらを選ぶべきか、あるいは併用すべきかは、自社のリソース、データ、予算、スピード要求の4つの観点から判断します。「誰が」「何のために」使うのかを最優先に定義することで、導入後の形骸化を防げます。以下では、それぞれの観点から具体的な判断基準を示します。
1. 技術リソースの有無で判断する
社内エンジニアの有無は最大の分岐点です。データエンジニアやデータサイエンティストが在籍しており、データ基盤の構築・運用を担える体制があるなら、データレイクを選択肢に入れられます。一方、エンジニアが少ない組織では、標準連携が豊富でAIサポートがあるGENIEE CDPのようなツールが適しています。
リソースが限られる場合は、ノーコード・ローコードで操作できるツールの検討が推奨されます。マーケティング担当者が自らセグメントを作成し、施策を実行できる環境を整えることで、エンジニアへの依存度を下げられます。技術的なハードルが低いツールを選ぶことで、導入後の活用率を高められます。
2. データの種別と構造化度合いで判断する
顧客データ中心ならCDP、IoTや非構造化データが主ならデータレイクが第一選択となります。Web行動ログや会員情報など「人」に紐づく活用がメインならCDPが圧倒的に効率的です。顧客IDをキーにしてデータを統合し、マーケティング施策に直結させる仕組みが整っているためです。
一方、センサーデータ、画像、動画、音声など、非構造化データを扱う場合はデータレイクが適しています。データの形式を問わず保存でき、将来的な分析用途に備えて柔軟に対応できます。自社が扱うデータの種別を整理し、どちらの基盤が適しているかを見極めることが重要です。
3. 予算規模と投資対効果で判断する
初期費用だけでなく、開発工数や運用人件費を含めたトータルコスト(TCO)で比較します。短期的な施策成果を求めるなら、構築期間が短いCDPの方がROIを証明しやすいです。SaaS型CDPであれば、導入から数週間で施策を開始でき、効果測定も容易です。
データレイクは初期構築に時間とコストがかかりますが、長期的には柔軟性の高い基盤として機能します。ただし、エンジニアの採用・維持コストを考慮する必要があり、短期的なROIを求める場合には向きません。自社の予算規模と、投資回収の期待値を明確にしたうえで判断することが重要です。
4. 施策実行までのスピード要求で判断する
「今すぐ施策を回したい」のか「将来の分析基盤を作りたい」のか、優先順位を明確にします。スモールスタートで早期に成果を出したい場合は、CDP単体での導入が最も確実です。導入後すぐにセグメントを作成し、広告配信やメール配信といった施策を実行できます。
一方、全社的なデータ統合を視野に入れ、中長期的な分析基盤を構築したい場合は、データレイクの導入を検討します。ただし、活用までに時間がかかるため、短期的な成果を求める場合には向きません。自社のスピード要求を明確にし、それに応じたツールを選ぶことが重要です。
最新トレンド:コンポーザブルCDP

DWH(データウェアハウス)を中核に据え、必要な機能だけを組み合わせる「コンポーザブルCDP」という新しい選択肢が注目されています。
既存のDWH資産を活かしつつ、リバースETLで柔軟なデータ配信を行う手法です。特定のベンダーロックインを避け、自社に最適なツールを組み合わせられる自由度が魅力です。
コンポーザブルCDPとは
コンポーザブルCDPは、データの一元管理をDWHで行い、施策実行機能のみを外部ツールと連携させる構成です。従来のオールインワン型CDPとは異なり、データの保存・管理・分析はDWH(BigQuery、Snowflake、Redshiftなど)で行い、施策実行に必要なデータだけを広告プラットフォームやMAツールに配信します。この配信を担うのがリバースETLツール(Census、Hightouch、Polytomic等)です。
この構成のメリットは、既存のDWH資産を活かせる点にあります。すでにDWHでデータ基盤を構築している企業であれば、新たにCDPを導入する必要がなく、リバースETLツールを追加するだけで施策実行が可能になります。また、特定のベンダーに依存しないため、将来的にツールを入れ替える際の柔軟性も高まります。
従来型CDPとの違いと選定基準
オールインワンの従来型CDPか、柔軟性重視のコンポーザブル型か、組織の技術力に応じた選び方を提示します。
従来型CDPは、データの取り込みから施策実行までを一つのプラットフォームで完結できるため、導入スピードと運用の平易さを優先するなら、依然として有力な選択肢となります。特にエンジニアリソースが限られる組織では、オールインワン型の方が運用負荷を抑えられます。
一方、コンポーザブルCDPは、既にDWHを運用しており、データエンジニアが在籍している組織に適しています。自社でデータパイプラインを構築・運用できる技術力があれば、ベンダーロックインを避けつつ、最適なツールを組み合わせられます。ただし、構築・運用の難易度は高くなるため、技術力と運用体制を見極めたうえで選定することが重要です。
CDPとデータレイクの違いまとめ

CDPとデータレイクは、どちらもデータを扱う基盤ですが、その役割は明確に異なります。CDPは顧客を軸にデータを統合し、マーケティング施策への即時活用を目的とした基盤です。一方、データレイクは生データをそのままの形で蓄積し、エンジニアやデータサイエンティストが自由に分析できる環境を提供します。
自社の課題が「顧客理解と施策実行」にあるのか、「全社的なデータ統制と探索的分析」にあるのかを見極めることが、適切な選択につながります。技術リソース、データの種別、予算規模、スピード要求の4つの観点から判断し、必要に応じて併用することで、データ活用の幅を広げられます。
導入後の形骸化を防ぐためには、「誰が」「何のために」使うのかを最優先に定義することが重要です。ツールの機能だけでなく、組織の体制や既存システムとの親和性を考慮したうえで、自社に最適な選択を行ってください。



























