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需要予測の指数平滑法とは?計算式・αの決め方・Excel実装を解説

公開日: / 更新日: / データ活用/CDP
需要予測の指数平滑法とは?計算式・αの決め方・Excel実装を解説

指数平滑法とは、前期の実績値と予測値を加重平均することで次期の需要を推定する時系列予測手法です。計算式は「次期予測値 = α × 前期実績値 + (1-α) × 前期予測値」で表され、直近のデータほど大きな重みを置く仕組みになっています。

αは0より大きく1以下(0<α≤1)の平滑化係数で、1に近いほど直近の実績に敏感に反応し、0に近いほど過去の傾向を重んじた安定的な予測になります。

在庫管理や生産計画の精度向上が求められるなか、経験則に頼る予測から数式ベースの予測への移行を検討する現場は増えています。指数平滑法はExcelで計算でき、少ないデータで始められる手軽さがある一方、αをMADなどの指標で客観的に決める手順と、データ特性に応じた手法の使い分け(単純・Holt・Holt-Winters)を押さえなければ実務で精度が出ません。

本記事では、計算式の構造から始まり、αの客観的な決め方、移動平均法との比較、3種類の手法の使い分け基準、Excelでの実装手順まで、需要予測を属人化させないために必要な知識を一通り解説します。

指数平滑法とは? 需要予測に使われる計算の仕組み

指数平滑法は、直近の実績値と前回の予測値を加重平均することで次期の需要を推定する統計的予測手法です。在庫管理や生産計画における短期の需要予測で広く使われており、計算に必要なデータは「直前期の実績」と「直前期の予測」の2つだけという扱いやすさが特徴です。

計算式の核心にあるのは、過去データの影響を指数的に減衰させる仕組みです。どの程度過去を参照するかを1つの係数(α)で制御できるため、データの変動パターンに応じた予測の「感度調整」が可能です。以下のH3では、この計算式の構造を1つずつ分解した後、実際の数値を使って計算の流れを追います。

ただし、計算式の構造を理解しただけでは、予測精度を安定させることはできません。αの設定根拠を説明できないまま運用していると、予測が外れたときに改善の手がかりを持てず、担当者ごとに対応がばらつく「属人化」につながります。

指数平滑法の計算式と各項の意味

計算式は次のとおりです。

Ft+1 = α × At + (1-α) × Ft

各変数の意味を整理します。Ft+1は次期(t+1期)の予測値、Atは今期(t期)の実績値、Ftは今期の予測値です。αは0以上1未満の平滑化係数で、実績値と予測値のどちらをどの重さで混ぜるかを決めます。

αが1に近いほど直近の実績に鋭く反応し、0に近いほど過去の傾向を重んじた安定的な予測になります。

この式は次のように書き換えられます。

Ft+1 = Ft + α × (At – Ft)

この形にすると、式の本質が見えやすくなります。(At – Ft)は今期の予測誤差であり、その誤差のうちα割だけを次期の予測に反映するという構造です。予測が外れた分を少しずつ修正していく、という直感に合った解釈ができます。

もう一つの特性として、過去データへの重みが指数関数的に減衰するという点があります。2期前の実績にはα(1-α)の重み、3期前にはα(1-α)²の重みが付く計算になるため、古いデータを個別に保持する必要がありません。移動平均法のように「何期分のデータを持つか」を管理しなくてよいので、計算コストが低く、データ蓄積が浅い時期でも適用できます。

月次売上データで追う計算の流れ

具体的な数値で計算を追います。ワインの月次販売数を例に、前期実績120個・前期予測111個・α=0.5としたとき、次期予測値は次のように求められます。

0.5 × 120 + 0.5 × 111 = 115.5個

この計算を複数期にわたって繰り返すと、予測値が実績に追従していく様子を確認できます。以下の表は6期分の計算例です(初期予測値は第1~3期の実績平均100個を使用)。

実績値(個)予測値(個)
195100.0
210597.5
3111101.3
4120106.1
5108113.1
6(次期)110.5

4期目に実績が120個へ跳ね上がると、5期目の予測値も113.1個まで引き上がっています。逆に5期目の実績が108個に落ちると、6期目の予測は110.5個と下方修正されます。実績の動きを受けて予測値が1期ずれながら追いかける、この追従の速さこそαが制御している部分です。

初期予測値には過去数期間の平均を使うのが一般的です。初期値の選び方によって最初の数期の誤差は変わりますが、計算を繰り返すにつれて初期値の影響は指数的に薄れ、予測は安定していきます。

平滑化係数αはどう決める? 予測精度を左右する値の選び方

αは、0.1から0.9まで複数の候補値を試算し、それぞれのMAD(平均絶対偏差)などの誤差指標を比較して、最も誤差が小さい値を採用することで客観的に決定します。その追従性を左右するαを、根拠なく設定したままにしている現場は実際によくあります。

冒頭で触れた「とりあえず0.2」のような設定では、予測精度が低くても「なぜ外れたか」を説明できず、改善の手がかりも持てません。αを客観的に決める手順を持つことが、需要予測を属人化させないための出発点です。

αの大小が予測値に与える影響

αの大きさは、直近の実績値をどれだけ予測に反映させるかの比率です。この値の選択が予測の性格を根本から変えます。

α=0.1を設定すると、直近の実績値の重みは10%にとどまり、残り90%は前期の予測値から引き継がれます。その結果、予測線は滑らかになりますが、需要の変化への追従が遅れます。例えば季節切り替えによる急な需要増を、α=0.1では数か月遅れて反映することになります。

対照的に、α=0.9では直近の実績値を90%の重みで取り込むため、予測線は実績の動きにほぼ追従します。変化への反応は素早い反面、一時的な外れ値にも過剰に反応してしまい、予測値が大きく振れるリスクがあります。

つまりαには「安定性(小)」と「追従性(大)」のトレードオフがあります。このトレードオフを直感で解決しようとすると、担当者の経験則によって毎期αが変わり、予測そのものが属人化します。必要なのは、データを使って誤差を数値化し、最も誤差が小さいαを選ぶプロセスです。

MAD(平均絶対偏差)によるαの客観的な決定方法

αの候補を比較する指標として広く使われるのが、MAD(平均絶対偏差)です。計算式は次のとおりです。

MAD = 各期の|予測値 − 実績値|の合計 ÷ データ数

MADは、精度がデータと同じ単位で表されるため、誤差の量を直感的に把握しやすい指標です。αを客観的に決める手順として、複数の候補値でMADを比較する方法は実務でよく使われます。なお、MinitabなどのツールではARIMAモデルへのフィッティングによってαを自動最適化する機能も提供されています。(出典:Minitab「1系列指数平滑化の方法と計算式」)。例えば需要の単位が「個」なら、MADも「個」で示されるため、予測がどれだけずれているかをそのままの感覚で読み取れます。

αを客観的に決めるには、α=0.1から0.9まで0.1刻みで9通りの予測値をそれぞれ計算し、各αに対応するMADを比べます。以下はその比較の構造を示した表です。実際の計算では、最もMADが小さいαを採用します。

この比較作業はExcelでも実施でき、ソルバー機能を使えばMADを最小化するαを自動的に探索できます。Excelでの具体的な手順は後半のセクションで解説します。

なお、αの比較にはMADのほかにMSE(平均二乗誤差)を使うこともできます。MSEは大きな誤差をより強く罰するため、外れ値への感度を高めたい場合に向いています。一方で誤差がデータと同じ単位で表されないため、直感的な把握にはMADの方が適しています。

「誤差を最小化する」という目標は共通でも、使うツールや目的関数の定式化によって結果が変わる点には注意が必要です。

αを0.1刻みで9候補比較するだけであれば、特別なプログラミング知識は不要です。Excelのセル計算でMADを算出できるため、まずこの手順から始めることをおすすめします。

αの決定に客観的な根拠が生まれれば、「なぜこのαを使っているのか」という社内承認やレポートの説明にも答えられるようになります。

移動平均法と指数平滑法はどう違う? 手法選択の判断基準

αを使った重み付けが指数平滑法の特徴である一方、過去データを等しく扱う手法が移動平均法です。移動平均法は、過去N期間のデータを等しい重みで単純平均する手法で、たとえば3期移動平均なら、直前3期分の値を足して3で割るだけで予測値が得られます。計算がシンプルなぶん、一時的なノイズを吸収しやすく、長期的な傾向を安定して把握するのに向いています。

ただし、全期間のデータを等しく扱うため、直近の需要変化が予測値に反映されるまでにラグが生じます。

指数平滑法はこの点で異なります。直近のデータに高い重みを置き、過去に遡るほど指数関数的に重みが小さくなる構造なので、短期の需要変動を素早く捉えられます。その半面、一時的なノイズにも影響されやすく、αを大きく設定するほど予測値が振れやすくなります。

2つの手法の違いを、主要な比較軸で整理します。

比較軸移動平均法指数平滑法
重みの付け方過去N期間を等しく扱う直近ほど指数関数的に高い重みを置く
必要なデータ量N期間分(固定)直近の予測値と実績値のみ
変化への反応速度遅い(ラグが生じやすい)速い(αが大きいほど追従が速くなる)
計算コスト低い(四則演算のみ)移動平均法よりさらに低い
ノイズへの影響吸収しやすい影響を受けやすい(αが大きい場合)
適する用途変動が緩やかなデータの中長期トレンド把握短期の需要変動を追う在庫補充・発注管理

どちらが優れているかという問いには意味がなく、データの変動速度と予測の目的によって使い分けるのが正しい考え方です。需要変動が緩やかで中長期の傾向を確認したい場合は移動平均法が向いています。一方、在庫補充や発注のように直近の需要変化を週次・月次で素早く予測に反映させる必要がある場合は、指数平滑法が適しています。

αの値を調整することで反応速度を制御できる点も、実務での使い勝手に直結します。

データ特性によって指数平滑法はどう使い分ける?

移動平均法との使い分けに加え、指数平滑法そのものにもデータの性質に応じて使い分ける3種類があります。トレンドも季節変動もない安定したデータには単純指数平滑法、持続的な増減傾向があるデータにはHolt法(二重指数平滑法)、トレンドと季節変動の両方があるデータにはHolt-Winters法(三重指数平滑法)を選びます。

手法の選択基準を整理すると、次のようになります。

トレンド季節変動適切な手法
なしなし単純指数平滑法
ありなしHolt法(二重指数平滑法)
あり/なしありHolt-Winters法(三重指数平滑法)

このマトリクスを出発点に、以下では各手法の適用条件・計算の考え方・注意点を順に説明します。

1. 単純指数平滑法(トレンド・季節変動がないデータ向き)

単純指数平滑法が機能するのは、需要水準がおおむね一定で推移する安定したデータです。前期の予測値と実績値を平滑化係数αで加重平均するだけで予測値を算出できるため、計算構造は3種類の中で最もシンプルです。

問題が生じるのは、データにトレンドや季節変動が含まれる場合です。単純指数平滑法は水準の変化しか追わない設計なので、右肩上がりの売上データに適用すると予測値が実績に追いつかず、常に低めに出るという系統的な誤差が発生します。誤差がランダムに分散するのではなく一方向に偏り続けるため、在庫計画に組み込むと慢性的な欠品や過剰在庫につながります。

過去データをグラフで描いたときに明確な上昇・下降傾向が見えるなら、単純指数平滑法は選択肢から外し、Holt法への切り替えを検討してください。

2. Holt法(トレンドがあるデータ向き)

Holt法は、水準の平滑化方程式とトレンドの平滑化方程式の2本立てで予測値を構成します。水準だけを追う単純指数平滑法と異なり、トレンド成分を独立して更新し続けるため、右肩上がり・右肩下がりに推移するデータでも予測値が実績から遅れにくくなります。

製品ラインの立ち上げ直後で販売数が継続的に増加している局面や、長期的な需要縮小が続いているカテゴリなど、傾きを持つデータが主な適用場面です。水準の平滑化係数αとトレンドの平滑化係数βの2つを設定する必要があり、手動で決定するのは手間がかかります。MinitabはARIMA(0,2,2)モデルをデータに当てはめ、平方誤差の和を最小化することでαとβを内部的に自動決定します(出典:Minitab「二重指数平滑化の方法と計算式」)。ユーザーはパラメータを手動で設定する必要がなく、ツールに任せることで属人的な運用を避けられます。

ただし、季節変動には対応していません。月別や曜日別の周期的な変動が含まれるデータにHolt法を使うと、変動のパターンを捉えられず予測精度が低下するため、後述のHolt-Winters法を選んでください。

3. Holt-Winters法(トレンドと季節変動の両方があるデータ向き)

Holt-Winters法は水準・トレンド・季節性の3要素をそれぞれ独立した平滑化方程式で扱う三重指数平滑法です。月別や曜日別など周期的な変動を含むデータの需要予測に適しており、夏冬で売上が大きく変わる商品や、週末に需要が集中するサービスなどが典型的な適用対象です。

Holt-Winters法を使う際に判断が必要なのが、加法モデルと乗法モデルの選択です。季節変動の振れ幅が水準に関係なく一定(例:毎月±100個)なら加法モデル、売上水準の拡大に連動して振れ幅も大きくなる場合は乗法モデルを選びます。過去データを折れ線グラフで描き、山と谷の振れ幅が平均水準に比例して拡大していれば乗法モデルが適切です。

注意点として、季節変動が実際には存在しないデータにHolt-Winters法を適用するのは避けてください。3つのパラメータを推定するために多くのデータを要するうえ、存在しない周期パターンをモデルが読み込もうとして予測精度を下げます。グラフでトレンドと季節変動の両方を確認してから採用の判断をしてください。

Excelで指数平滑法を計算するにはどうする?

手法を選んだら、実際の計算はExcelで実装できます。実装方法には、セル数式による手動計算とFORECAST.ETS関数の2通りがあります。手動計算はαを自分で指定するため単純指数平滑法に限定して使えますが、FORECAST.ETSはトレンドと季節性を自動で考慮するアルゴリズムを採用しているので、どちらを選ぶかで計算結果が変わります。

目的に合わせて使い分けることが前提です。

セル数式による手動計算の手順

手動計算の基本構造は、1行のセル数式を下方向にコピーするだけです。A列に日付、B列に実績値を並べたシートを前提に、以下の手順で実装します。

  1. 任意のセル(例: E1)にαの値を入力します。ここでは仮に0.3とします。
  2. 予測値の先頭(例: C2)に初期値を入力します。初期値には過去数期間の平均を使うと安定しやすく、=AVERAGE(B2:B4)のように最初の3〜5期分の実績値をAVERAGEで求める方法が適しています。
  3. C3セルに次の数式を入力します。

=$E$1*B2+(1-$E$1)*C2

この数式の意味は「α × 前期実績 + (1-α) × 前期予測」です。B2が前期実績、C2が前期予測に当たります。

  1. C3を選択し、データ末尾の行まで下方向にコピーします。これで全期間の予測値が一括で計算されます。

αのセル参照を$E$1のように絶対参照にしておくことで、E1の値を変えるだけで全期間の予測値が即座に再計算されます。前章で解説したMADの最小化を検証する際、αをいくつか変えながらMADを比較する作業がスムーズになります。

FORECAST.ETS関数の使い方と手動計算との違い

FORECAST.ETS関数の書式は次のとおりです。

=FORECAST.ETS(目標期日, 値, タイムライン, [季節性], [データ補完], [集計])

必須引数は最初の3つです。「目標期日」には予測したい期日、「値」には実績値のセル範囲、「タイムライン」には対応する日付や期番号のセル範囲を指定します。季節性は省略するとExcelが自動で検出しますが、整数を指定することで明示的に周期を与えることもできます。

※FORECAST.ETS関数はデスクトップ版Excel(Microsoft 365・Excel 2016以降)でのみ使用できます。Web用Excel・iOS・Androidでは利用できません。

この関数が手動計算と結果が一致しない理由は、採用しているアルゴリズムが異なるためです。FORECAST.ETSは、指数三重平滑化(ETS)アルゴリズムのAAAバージョンを使用して将来値を予測します(出典:Microsoft「FORECAST.ETS 関数」)。AAAはレベル・トレンド・季節変動の3要素をそれぞれ指数平滑化で推定する構造で、単純指数平滑法がレベルしか扱わないのとは本質的に設計が異なります。

したがって、トレンドや季節変動が含まれていないシンプルなデータでαを意図的に制御したいなら手動計算が適しています。一方、季節周期のある実績データや右肩上がりのトレンドが見られるデータを手早く予測したいなら、FORECAST.ETSを使う方が実態に即した予測値を得やすくなります。FORECAST.ETSで結果を確認し、αの挙動を学習・検証する目的には手動計算を並走させるという使い方も有効です。

指数平滑法を需要予測に導入する際の要点

指数平滑法の精度は、計算式を知っているかどうかではなく、αを客観的な根拠で決められるか、データの特性に合った手法を選べるかにかかっています。

直感や慣例的な「α=0.2」で運用を続けるかぎり、予測が外れても改善の手がかりが得られず、担当者が変わるたびに設定が揺れる属人化が続きます。

また、予測モデルの精度は入力データの質にも左右されます。チャネルや拠点ごとに散在した販売実績をExcelに手動で集約している状況では、データの鮮度や粒度に限界があり、どれほど手法を磨いても精度の上限が見えてきます。複数チャネルの顧客・販売データを一元管理するデータ基盤を整えることが、予測精度を継続的に改善するうえで前提となります。

GENIEE CDPは、オンライン・オフラインのデータを統合して需要予測の入力精度を高めるデータ基盤として活用できます。予測モデルと入力データの両面を整えることで、需要予測が特定担当者の経験則に頼らない仕組みとして機能します。

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執筆者

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