iPaaSとAPIは何が違う?7つの観点で違いを比較&選び方を解説

iPaaSとAPI連携は、どちらも「システム間をつなぐ」文脈で語られるため、違いがわかりにくいと感じる方は多いのではないでしょうか。結論から言うと、iPaaSはクラウド上で複数のサービスをノーコードで統合するプラットフォームであり、API連携はシステム間のデータ通信を実現する技術的な仕組みです。両者はレイヤーが異なり、iPaaSは内部的にAPIを利用して動作しています。
この記事では「API連携」を、自社エンジニアまたは外注先がコードを書いてシステム間連携を構築する方法として扱います。iPaaSは、そのAPI連携をGUIベースで簡易化・自動化するクラウドサービスという位置づけです。この前提を踏まえたうえで、両者の違いと選び方を整理します。
そもそもiPaaSとAPI連携は何が違うのか

API連携とは、システム間でデータをやり取りするための技術的なインターフェースです。たとえば、ECサイトの注文情報を在庫管理システムに送る場合、それぞれのシステムが公開するAPIに対してHTTPリクエストを送り、定められた形式でデータを受け渡します。この仕組みを機能させるためにはプログラミングが必要であり、設計・実装・テストを経て初めて稼働します。
一方、iPaaS(Integration Platform as a Service)は、複数のクラウドサービスやシステムをGUIで統合・自動化するクラウドプラットフォームです。ZapierやMake(旧Integromat)のようなサービスが代表例で、プログラミングの知識がなくてもシステム間の自動連携を設定できる点が特徴です。
国内のiPaaS市場は急拡大しています。デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査(「業務iPaaS市場の現状と将来展望 2023年度版」)によると、国内の業務iPaaS市場の売上高は2022年度で62.2億円(前年度比36.1%増)、2023年度は79.9億円(同28.5%増)の見込みと報告されています。同様に、独立系調査会社のITRも「ITR Market View:RPA/iPaaS/ワークフロー市場」シリーズでiPaaS市場の高成長を報告しており、複数の調査機関が一致して市場の急拡大を裏付けています。
両者の関係を整理すると、APIが「道路」だとすれば、iPaaSは「カーナビ付きの車」に相当します。iPaaSは内部的にAPIを利用して各サービスと通信しており、APIを使わずに成立するわけではありません。つまり、iPaaSとAPI連携は対立する概念ではなく、レイヤーが異なる関係にあります。

ただし実務の現場では、「自前でAPI連携を開発するか、iPaaSを使うか」という選択肢として比較されます。どちらも同じ課題(システム間のデータ連携)を解決するための手段であり、コスト・スピード・カスタマイズ性などの軸で比較検討するケースが多くなっています。次のセクションでは、その比較を具体的な数値を交えて整理します。
7つの観点で見るiPaaSとAPI連携の比較

iPaaSとAPI連携(自社開発)は、さまざまな軸で性質が異なります。以下の表で全体像を確認してから、各軸の詳細を読み進めてください。
| 比較軸 | iPaaS | API連携(自社開発) |
| 開発スピード | 数時間〜数日 | 数週間〜数ヶ月 |
| 初期コスト | 月額数百円〜(無料プランあり) | 小規模で数十万〜、中規模以上は数百万円〜 |
| カスタマイズ性 | コネクタ・テンプレートの範囲内 | 要件に応じて自由に設計可能 |
| 保守工数 | 低い(ベンダーがコネクタ更新) | 高い(API仕様変更時は自社対応) |
| 複数システム連携 | 得意(コネクタを組み合わせる) | 接続先ごとに個別開発が必要 |
| 必要なスキル | ノーコード・ローコード | プログラミングスキルが必要 |
| セキュリティ制御 | ベンダーの基準に依存 | 自社で設計・制御可能 |
1. 開発スピードの差
開発スピードの差は特に顕著です。iPaaSはプリセットのコネクタとテンプレートを組み合わせるため、単純な連携であれば当日中に動かせます。
これに対してAPI連携は、要件定義から始まり実装・テスト・リリースまでのプロセスを経るため、短くても数週間はかかります。スピードを優先する場面では、iPaaSに大きなアドバンテージがあります。
2. ランニングコスト・初期コストの差
コストの観点では、iPaaSの代表的なサービスとして、ZapierのProfessionalプランが月額$19.99(年払い時。月払いの場合は$29.99)、MakeのCoreプランが月額$9〜で利用できます。
一方、API連携を外注する場合の開発費用は、プロジェクトの規模によって大きく変動します。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「ソフトウェア開発分析データ集2022」によると、ソフトウェア開発プロジェクトの工数中央値は数人月〜数十人月に分布しています。システム連携開発における一般的なSEの人月単価(80万〜150万円程度)をもとに試算すると、単純な片方向・定時連携で数十万〜100万円程度、業務で使える運用込みの連携で100万〜500万円程度、複数システム・高い可用性を求める大規模連携では500万円以上が一つの目安となります。
3. カスタマイズ性
カスタマイズ性についてはAPI連携が優位です。iPaaSは提供されているコネクタとテンプレートの範囲でしか動作しないため、独自のデータ変換ロジックや複雑な条件分岐が必要な要件には対応しきれないことがあります。
一方、自前のAPI連携であれば要件に応じた設計が可能で、この点では逆転します。
4. 保守
保守の観点では、iPaaSはベンダー側がコネクタのアップデートを行うため、自社での対応工数は限られます。
しかしAPI連携の場合、連携先のSaaSがAPIのバージョンをアップしたり仕様を変更したりしたとき、既存の連携が動作しなくなる可能性があり、その都度自社での修正が必要です。
5. セキュリティ
セキュリティについては一概にどちらが優れているとは言えません。iPaaSはベンダーのセキュリティ基準に従う形になるため、自社で細かく制御できる余地は少なくなります。
API連携であれば認証方式や通信経路を自社で設計できますが、その分だけ設計と運用の責任も自社が負います。どちらを選ぶかは、自社のセキュリティポリシーと照らし合わせたうえで判断することが重要です。
6. 複数システムの連携
複数システムの同時連携はiPaaSが得意とする領域です。CRM・会計・Slackを同時に連携させるようなシナリオでも、コネクタを組み合わせるだけで対応できます。
API連携では接続先ごとに個別の開発が発生するため、対象システムが増えるほどコストと工数が比例して増えていきます。
データ統合やセグメンテーション、施策実行まで考えるならCDPも選択肢
ただし、iPaaSで複数システムをつないだとしても、各システムから流れ込むデータを「顧客単位」で統合・名寄せし、分析やセグメント作成まで一貫して行いたい場合は、iPaaS単体では対応しきれないことがあります。
こうした顧客データの統合・分析・施策連携までをワンストップで実現するのがCDP(カスタマーデータプラットフォーム)です。たとえばGENIEE CDPは、オンライン・オフラインを問わず複数のデータソースをノーコードで集約し、AI搭載のBIダッシュボードで分析からセグメント作成、MAツールへの連携までを一つのプラットフォーム上で完結できます。
「つなぐ」だけでなく「統合して活用する」ところまで視野に入れるなら、CDPの導入も選択肢に加えて検討する価値があります。
自社に合うのはどちら?ケース別の選び方

iPaaSとAPI連携はどちらかを選べば済むという話ではなく、iPaaSで標準的な連携を担いつつ、特定の高度な要件だけAPI連携で補うという併用のアプローチも現実的です。まずは自社の状況をケース別に照合してみてください。
iPaaSを選ぶべき企業の特徴
iPaaSが適しているかどうかは、社内リソースと連携の複雑さで判断できます。エンジニアが少ない環境で複数のSaaSを動かしている場合、iPaaSは特に効果的な選択肢です。以下に代表的なケースを示します。
エンジニア不在で複数SaaSを使っている企業
社内に開発者がいない状況で、たとえばGoogleフォームの回答をSlackに通知し、同時にスプレッドシートに記録したいといったニーズがある場合、API連携の自社開発は現実的ではありません。iPaaSならプログラミングの知識なしにGUIで設定でき、担当者が業務フローを直接構築できます。

総務省「令和6年通信利用動向調査」によると、常用雇用者100人以上の企業のうち、クラウドサービスを利用している企業の割合は8割を超えています。利用用途は「給与、財務会計、人事」「スケジュール共有」が前年から増加し5割を超えており、複数のクラウドサービスを併用する状況は多くの企業にとって日常的なものになっています。
さらに、複数のSaaSにまたがる顧客データを「つなぐ」だけでなく「一元管理して分析したい」というニーズがある場合は、iPaaSに加えてCDPの導入を検討する価値があります。GENIEE CDPは、ノーコードで多数のツールと連携でき、AIが自然言語での分析やセグメント作成をサポートするため、社内にデータ分析の専門家がいない企業でも運用が可能です。
iPaaSで業務フローの自動化を行いつつ、GENIEE CDPで顧客データの統合・分析基盤を構築するという組み合わせは、エンジニア不在の環境でも実現できる現実的なアプローチです。
業務フローの変更が頻繁に発生する企業
組織の変化が速く、業務フローが頻繁に見直される環境では、API連携の開発・修正コストが積み重なりやすくなります。iPaaSであればGUI上でフローを変更できるため、エンジニアへの依頼なしに担当者自身が対応できます。変化への対応スピードが競争力に直結する企業にとって、この柔軟性は大きなメリットです。
初期費用を抑えてスモールスタートしたい企業
総務省の同調査では、クラウドサービスを利用しない理由として「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」「メリットが分からない、判断できない」に加え、コスト面での懸念も挙げられています。連携ツールの導入についても同様の心理的ハードルが存在します。
この懸念に対しては、ZapierやMakeの無料プランから試用するアプローチが有効です。まず小規模な連携で効果を確認してから、有料プランに移行する判断ができます。
API連携を選ぶべき企業の特徴
API連携が適しているのは、iPaaSのコネクタでは要件を満たせない場合や、社内に開発・保守体制が整っている場合です。コストと体制の両方を満たせるかどうかが、判断の基準になります。
iPaaSのコネクタでは要件を満たせない企業
特定の業務ロジックに基づく複雑なデータ変換や、既製品のコネクタが存在しない独自システムとの連携が必要な場合、API連携の自社開発が適しています。iPaaSは汎用性の高い仕組みである分、特殊な要件への対応には限界があります。
開発・保守体制が整っている企業
社内にエンジニアがおり、長期的な保守体制が組める場合は、API連携による自社開発が選択肢として成立します。ただし外注の場合は、前述のとおり中規模案件でも100万〜500万円程度の初期費用が発生するため、長期運用でのコスト回収を見込める体制があることが前提です。
IPA「ソフトウェア開発分析データ集」が示すように、開発プロジェクトの工数は要件定義の精度に大きく左右されるため、発注前の要件整理が費用対効果を左右します。
セキュリティ要件が厳格な企業
金融・医療など、厳しいセキュリティポリシーや規制対応が求められる業界では、データの通信経路や認証方式を自社で完全に制御できるAPI連携が適しています。iPaaSではベンダーのセキュリティ基準に従う必要があり、自社ポリシーと合わない場合があります。
既存スクリプトが安定稼働している企業
GASや社内スクリプトで構築した既存の連携が安定稼働しているなら、わざわざiPaaSへ移行する必要はありません。現状の仕組みが機能しており、課題が顕在化していない段階での移行は、コストとリスクが先行します。
選ぶ前に押さえておきたい注意点

どちらの手段を選んでも万能ではありません。iPaaSは手軽に見えて運用フェーズで想定外のコストや制約が出ることがあり、API連携は開発後の保守で思わぬ落とし穴があります。それぞれの注意点を事前に把握しておくことで、導入後の誤算を避けられます。
iPaaS導入で起きやすい誤算
iPaaSを検討する際に見落とされがちなのが、コスト・連携先の制約・運用スキルの3点です。
従量課金によるコスト増
iPaaSの多くは実行回数(タスク・オペレーション数)に基づく従量課金モデルを採用しています。Zapierの無料プランは月100タスク・2ステップまで、Makeの無料プランは月1,000オペレーション・15分間隔という制約があります。業務拡大に伴い連携の実行頻度が増えると、月額コストが当初の見込みを大きく超えることがあります。
対策として、導入前に月あたりの想定実行回数を試算し、有料プランの料金テーブルと照らし合わせることが重要です。特に繁忙期の実行量増加も考慮した余裕のある見積もりが求められます。
API非公開のSaaSとの連携制約
iPaaSは相手システムがAPIを公開していることを前提に動作します。APIが公開されていないSaaSやレガシーシステムとは、iPaaSを使っても連携できません。「このシステムを連携させたい」という要件が先にある場合は、連携先のAPI公開状況を事前に確認することが不可欠です。
想定した業務フローを実現できないリスク
iPaaSのコネクタやテンプレートは汎用的に設計されており、自社の業務フローに完全に合致しないことがあります。導入前にPoC(概念検証)を小規模で実施し、想定する連携が実際に動作するかを確認する手順が有効です。無料プランや無料トライアルを活用して、本番環境に近い条件で検証することをお勧めします。
API連携の自社開発で陥りやすい問題
API連携の自社開発において最も深刻なリスクは、属人化です。GASや社内スクリプトで連携を構築した担当者が異動・退職した場合、コードの内容を把握している人間がいなくなり、仕様変更や障害対応が困難になります。こうなると連携全体がブラックボックス化し、小さな修正にも多大なコストがかかる状況が生まれます。
加えて、連携先のSaaSがAPIのバージョンアップや仕様変更を行った場合、既存の連携が突然動作しなくなることがあります。担当者不在の状態でこうした事態が起きると、業務停止につながるリスクも否定できません。
対策としては、コードのドキュメント化と、複数人で保守できる体制の構築が最低限必要です。仕様書・処理フロー図・変更履歴を残しておくことで、担当者が変わっても引き継ぎできる状態を維持できます。
自社に最適な連携手段を選ぶために

改めて整理すると、iPaaSとAPI連携は対立するものではなく、解決しようとする課題の性質と自社の体制によって使い分けるものです。
選定の第一歩として、以下の3ステップで確認することを検討してください。
- 連携したいSaaSがAPIを公開しているかを確認する(公開されていなければiPaaSも自社開発も成立しない)
- 社内の開発リソースを棚卸しする(エンジニアがいるか、保守体制を継続できるか)
- iPaaSの無料プランで小規模な連携を試用し、自社の要件を満たせるか検証する
この順序で確認することで、どちらを選ぶべきかの輪郭が見えてきます。iPaaSで要件を満たせるなら導入コストを抑えた立ち上げができ、満たせない部分だけAPI連携で補うという組み合わせも現実的な選択肢です。両者の違いを踏まえ、自社の状況に合った判断につなげてください。
また、iPaaSやAPI連携で「システム間をつなぐ」課題を解決した先には、「集まったデータをどう統合・分析し、施策に活かすか」という次のステップが待っています。
特に、顧客データが複数のチャネルやツールに分散している企業にとっては、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の導入が効果的です。GENIEE CDPは、散在する顧客データをノーコードで統合し、AIによる高度な分析からMAツールへのセグメント連携までをワンストップで提供します。iPaaS・API連携と組み合わせることで、「つなぐ→統合する→活用する」という一連のデータ活用サイクルを構築できます。データ連携の手段選定と合わせて、統合基盤の検討もぜひ視野に入れてみてください。






























