ERPの基礎からERPパッケージの選び方まで完全ガイド12選

Summary
- BtoB企業の営業現場は属人化やデータ入力負担、ITリテラシー格差など多くの課題に直面
- ERPは経営資源を統合管理し、営業から生産、会計まで一気通貫で業務効率化を実現する
- DX推進率は増加傾向だが、米国企業との差が競争力に影響し、ERP導入は競争優位確立の鍵
- ERP導入により、データ一元管理、業務標準化、コスト削減と生産性向上が可能となり、営業活動の質も向上。
- ERPパッケージは業務プロセスの可視化、効率化、データ活用を支援し、属人化解消や迅速な意思決定を促進。
- 導入成功には業界特性に合った機能選定、導入実績の確認、サポート体制、既存システム連携の検討が重要。
なぜいま、BtoB企業にERPが必要?

「営業の現場は変わらなければならない」
この切実な声が、いま多くのBtoB企業の経営層から聞こえてきています。その解決策として注目を集めているのが、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)です。
ERPとは、企業の持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理し、経営の効率化を図るための基幹システムです。たとえば、営業部門の受注データを基に、在庫管理や生産計画、会計処理までを一気通貫で管理できる仕組みといえます。
IPAの「DX白書2023」によると、DXに取り組む企業の割合は2021年度の55.8%から2022年度は69.3%まで増加しています。一方で、米国企業では77.9%がすでにDXに着手しており、その差は今後の競争力に直結する可能性があります。

出典:
- IPA「DX白書2023」PDF
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf - IPA「DX動向2024」PDF(日米比較含む)
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-2024.pdf - IPAプレスリリース(DX取り組み状況)
https://www.ipa.go.jp/archive/press/2022/press20230209.html
BtoB営業における共通課題

現在、BtoB企業の営業現場では、以下のような課題が山積しています。
- 属人化による業務の偏り
- 不規則な業務時間によるワークライフバランスの崩壊
- 面倒なデータ入力作業による生産性の低下
- ITリテラシーの世代間格差
- 柔軟な働き方への対応の遅れ
なぜ今、ERPなのか?

デジタル技術活用による企業競争力強化と持続的成長経済産業省の「DX支援ガイダンス」によると、デジタル技術の活用は企業の競争力強化と持続的な成長を実現する鍵となっています。
特に注目すべきポイントは以下の3つです。
1. データの一元管理による意思決定の迅速化
- 散在する営業データを統合リアルタイムな情報共有を実現
2. 業務の標準化による属人化の解消
- 営業プロセスの可視化ナレッジの組織的な蓄積
3. コスト削減と生産性向上の両立
- 手作業の自動化による工数削減データ入力の効率化
ERPパッケージは、これらの課題を包括的に解決するソリューションとして注目されています。特にBtoB企業の営業DX推進者や経営層にとって、ERP導入は避けては通れない重要な経営課題です。
本記事では、BtoB企業の経営層や営業DX推進者の皆様に向けて、ERPパッケージの選定から導入までのポイントを実践的な視点で解説します。
出典:IPA「DX白書2023」
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html
出典:経済産業省「DX支援ガイダンス」
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240327005/20240327005.html
ERPパッケージとは:営業現場の視点で理解する

ERPパッケージの基本:「社内の情報を一つにまとめる」仕組み
営業部門で使用している顧客管理表、経理部門の会計ソフト、人事部門の勤怠管理システム
これらバラバラに存在するシステムやデータを「一つにまとめる」のが、ERPパッケージの基本的な役割です。
先ずはERPとERPパッケージとの違いを確認しておきましょう。
項目 | ERP(統合基幹業務システム) | ERPパッケージ(ソフトウェア・ツール) |
---|---|---|
定義 | 企業の経営資源を統合的に管理・最適化する「考え方」や「手法」 | ERPの考え方を実現するための具体的な「ソフトウェア」や「ツール」 |
役割 | 経営資源の最適活用を目指す経営戦略の枠組み | その戦略を実現するためのITシステム・アプリケーション |
導入の本質 | 組織全体での業務プロセスや情報共有の改革 | 業務を支援するための具体的なシステムの導入・運用 |
効果発揮の条件 | 経営層から現場まで「考え方」の共有と実践が必要 | ツールの使いこなしと適切な運用が必要 |
例 | 経営資源の統合管理、業務プロセスの標準化 | SAP、Oracle ERPなどのパッケージ製品 |
ERP導入前後の違い
【Before:ERPパッケージ導入前】
営業担当:「この案件、いつ納品できますか?」
- 在庫管理システムを確認
- 生産管理部門に電話
- スケジュール表をチェック
結果:回答まで半日かかる
【After:ERPパッケージ導入後】
営業担当:システム画面で在庫状況と生産スケジュールを即座に確認
結果:その場で顧客に納期回答が可能
このように、ERPパッケージの導入により、複数のシステムや部門をまたいで確認していた情報を瞬時に把握できるようになります。
その結果、顧客対応のスピードが大幅に向上し、営業活動の質的改善にもつながります。
ERPとERPパッケージの違い:「考え方」と「ツール」
ERPとERPパッケージ、似ているようで実は異なる概念です。
ERP(統合基幹業務システム)とは?
企業の経営資源を統合的に管理・最適化するという「考え方」や「手法」
ERPパッケージとは?
ERPの考え方を実現するための具体的な「ソフトウェア」や「ツール」
この違いを理解することは、導入の成功に大きく関わります。なぜなら、単にツールを導入するだけでなく、その背景にある「考え方」を組織全体で共有することで、はじめて本来の効果を発揮できるからです。
BtoB営業におけるERPパッケージの位置づけ
BtoB営業では、見積作成から受注、納品、請求まで複雑な業務プロセスが存在します。
ERPパッケージは、これらの業務を以下の3つの視点で支援します。
支援の視点 | 主な内容 |
---|---|
営業活動の可視化 | – 商談の進捗状況をリアルタイムで把握 – 案件情報をチーム全体で共有 – KPI(重要業績評価指標)のモニタリング |
業務効率の向上 | – 見積書・請求書の自動作成 – 在庫確認・発注の自動化 – 承認プロセスのワークフロー化 |
データに基づく意思決定 | – 売上予測の精度向上 – 顧客別の収益性分析 – 営業戦略の最適化 |
ERPパッケージ導入で得られる4つのメリット

ERPパッケージ導入のメリットとBtoB企業向け選定ポイント
ERPパッケージ導入で得られる4つの主要メリット
1. 業務プロセスの効率化:デジタル時代に即した業務改革
- 見積書作成のテンプレート活用による標準化
- 受注データ処理のシステム連携による自動化
- 在庫確認のリアルタイム化
- 月次レポートの自動生成
営業担当者は顧客折衝や戦略立案に集中できるようになります。
2. リアルタイムの情報共有:デジタルを前提とした価値創出
- 受注情報の生産部門との即時連携
- 営業現場での迅速な在庫状況把握
- 与信情報によるリスク管理強化
- 案件進捗の経営判断への活用
部門間連携が強化され、企業全体の競争力向上に寄与します。
3. 業務の標準化:レガシーシステムからの脱却
- 商談プロセスの可視化
- 営業ノウハウのシステム化
- 顧客対応履歴の一元管理
- ベストプラクティスの組織的蓄積
属人化を防ぎ、持続可能な営業体制を構築します。
4. コスト削減:デジタル投資の最適化
- 事業基盤の強化と業務プロセスのデジタル化
- システム運用の効率化とペーパーレス化推進
- 顧客体験向上とデータドリブンな意思決定
- 人材育成コストの最適化
中長期的に企業価値の向上を実現します。
DX実現に向けたポイント
- 現状の業務プロセスの可視化
- 部門間でのデジタル戦略の共有
- 段階的なデジタル化の推進
- 継続的な改善サイクルの確立
ERP導入は単なるシステム刷新ではなく、持続的成長のための経営戦略です。
BtoB企業が押さえるべきERPパッケージ選定の4つのポイント
ポイント | 内容 |
---|---|
1. 業界特性に合った機能の見極め | 自社の業務フローを起点に必要な機能を確認(例:製造業は生産管理、卸売業は受発注管理など) |
2. 導入実績の重要性 | 同業種・同規模企業での導入事例や成功効果、運用状況を評価し信頼性を確認 |
3. サポート体制の確認 | 導入支援、運用後サポート、トラブル対応、バージョンアップ対応など長期的な支援体制を重視 |
4. 既存システムとの連携可能性 | SFA/CRM、会計・人事システム、BIツールとの連携可否を確認し、データ活用の幅を広げる |
選定時の注意点:陥りやすい3つの落とし穴
- 機能過多に注意
必要以上の機能は運用を複雑化させるため、本当に必要な機能を見極める。 - コストだけで判断しない
初期費用だけでなく運用コストや将来の拡張性も考慮する。 - 現場の声を無視しない
経営層だけでなく、実際に使う現場の意見を積極的に取り入れる。
まとめ
ERPパッケージの選定は重要な経営判断です。
業界特性に合った機能、導入実績、充実したサポート体制、既存システムとの連携可能性を踏まえ、
自社の現状と将来の成長を見据えた優先順位で選定を進めましょう。
【出典】
経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
次章では、これらの選定ポイントを踏まえた上で、具体的な製品比較へと進んでいきます。
ERPパッケージ比較と選定のポイント

前章で解説した選定ポイントを踏まえ、主要なERPパッケージの特徴を、大規模企業向けと中小企業向けに分けてご紹介します。各製品の詳細な機能や最新の価格については、各社の公式サイトにてご確認ください。
比較の前に、、、
ERPと外部システムとの連携方法について
ERPパッケージは企業の基幹システムとして、さまざまな業務データを一元管理します。しかし、ERPパッケージだけではカバーできない業務領域が存在するのも事実です。そこで、ERPと外部システムの連携により、広範囲な業務効率化やデータ活用を実現できます。
ERPパッケージと外部システムの連携方法としては、主に以下の3つが挙げられます:
- ファイル連携
- CSVファイルなどの形式でデータをエクスポート/インポート
- 手軽に連携可能
- リアルタイム性が低く、手作業が発生する可能性あり
- データベース連携
- ERPと外部システムのデータベースを直接接続
- リアルタイムなデータ連携が可能
- セキュリティ対策やシステム負荷への配慮が必要
- API連携
- API(Application Programming Interface)によるデータのやり取り
- 柔軟性が高く、リアルタイムな連携も可能
- 開発フローが必要となる場合あり
このように、外部システムとの連携方法は、企業の規模や業務内容、システム環境などに応じて適切な方式を選択することが重要です。特に、既存システムとの連携を検討する際は、データの即時性やセキュリティ要件、運用負荷などを総合的に判断する必要があります。
ほかのソフト・ツールと併用しようとお考えの場合は、API連携やファイル連携など、どのような方法で連携できるのか事前に確認するのをおすすめします。
ERPのような基幹システムと連携が増えている領域としては営業管理、顧客管理といわれるSFA、CRMシステムとの連携です。営業から生産、カスタマーサポートと部署を横断したデータの一元管理を行うにあたり基幹システムとSFAシステムとの連携は避けられません。
大手企業への導入事例としては、Salesforceや国産ベンダーとしてシェア急成長中のGENIEE SFA/ CRMなどが基幹システムとの連携に対応した開発支援体制を保有しています。GENIEE SFA/ CRMではRFP設計フェーズから相談に乗ってくれるERPとの連携案件の経験豊富なエンタープライズ専門の部署もありますので是非相談されてみてはどうでしょうか。
GENIEE SFA/ CRMへの相談はこちらから先ずは資料請求
主要ERPパッケージ9選の特徴と機能

※各製品の最新の機能や価格については、各社の公式サイトにてご確認ください。
大規模企業向けERPパッケージ8選
製品名 | 特徴・概要 | 公式サイト |
---|---|---|
HUE | 株式会社ワークスアプリケーションズのAI型ERP。大手2200社以上導入。財務会計から販売管理まで幅広く対応。標準機能充実でカスタマイズ不要。 | URL |
GRANDIT | コンソーシアム方式開発の純国産WebベースERP。1400社以上導入。販売管理、会計管理、人事給与管理など周辺業務もサポート。 | URL |
OBIC7 | 株式会社オービック提供。オンプレ・クラウド両対応。財務会計、管理会計、サプライチェーン管理など幅広くカバー。 | URL |
GLOVIA smart | 富士通の統合基幹業務システム。小売、サービス、食品、建設業向けに特化したソリューションも提供。多業種対応。 | URL |
EXPLANNER | NECの統合基幹業務システム。50年以上の実績。多言語・多通貨対応でグローバル展開も可能。幅広い業種で導入。 | URL |
MA-EYES | 株式会社ビーブレイクシステムズのセミオーダークラウドERP。プロジェクト型企業に最適。高いカスタマイズ性。 | URL |
RobotERPツバイソ | ツバイソ株式会社のクラウドERP。低コスト導入、RPA技術活用で業務自動化。多業種で導入実績あり。 | URL |
ERP連携可能なSFACRMシステムも要注目です。特に大企業向けプロジェクト件数が急激に増えているGENIEE SFA/ CRMなどは事例も豊富です。その他のSFACRMシステムもこちらの時期を参考に比較検討してみると良いのではないでしょうか。
中小企業・スモールビジネス向けERPパッケージ
製品名 | 特徴・概要 | 公式サイト |
---|---|---|
キャムマックス | 株式会社キャム提供。中小企業向けクラウドERP。販売管理、財務会計、顧客管理など。低コストでテレワーク対応。 | URL |
SuperStream-NX | キャノンITソリューション提供。中堅・大手向け。経理・人事・経営企画を統合管理。段階的導入可能。 | URL |
マネーフォワード クラウドERP | 株式会社マネーフォワード提供。クラウド型で柔軟な機能組み換え可能。幅広い業種に対応。 | URL |
freee統合型ERP | フリー株式会社提供。1名から利用可能なクラウドERP。シンプル操作でスモールビジネスに最適。 | URL |
ProActive C4 | UI/UXに優れ、法改正対応も迅速。BPO、商社、流通、金融など多業種で導入実績あり。 | URL |
ERPパッケージ選定時の注意点
- 現状分析の重要性
- 自社業務プロセスの理解
- 運用イメージの具体化
- 必要機能の優先順位付け
- 将来を見据えた選択
- 事業拡大や業務変更への対応可能性
- システムの拡張性
- 長期的な運用コストの試算
- 段階的な導入の検討
- 一度に全機能導入せず段階的に展開
- 運用ノウハウを蓄積しながら進行
成功するERP導入のために:経営層が押さえるべき3つの比較ポイント
- 全社的な推進体制の構築
- 経営層が旗振り役となる
- 部門横断プロジェクトチーム編成
- 現場の声を反映する仕組み作り
- 明確な目標設定とKPIの策定
- 定量的・定性的目標の設定
- 部門ごとの具体的KPI設定
- 変革に向けた組織づくり
- デジタル人材の育成・確保
- 社内コミュニケーション活性化
- 継続的改善活動の仕組み構築
ERP導入の段階的ステップ
ステップ | 期間目安 | 主な内容 |
---|---|---|
準備フェーズ(発注~) | 3〜6ヶ月 | 業務可視化、課題抽出、導入目的・予算策定 |
導入フェーズ | 6〜12ヶ月 | 先行導入、問題点改善、展開計画策定 |
展開フェーズ | 12〜24ヶ月 | 全社展開、運用ルール整備、効果測定・改善 |
営業DX推進ロードマップ
期間 | 取り組み内容 |
---|---|
短期(〜6ヶ月) | 基本機能習得、データ入力ルール標準化、業務見直し |
中期(〜1年) | 部門間連携強化、データ分析、営業プロセス最適化 |
長期(1年以上) | AI・RPA活用、グローバル対応、新規ビジネス創出 |
以上、ERPパッケージの導入は企業にとってもおおきな意思決定であり経営に与えるコストインパクトもそれなりに大きなものがあります。選定においては入念な準備を行い自社の環境や業務フローに最適なツールを選定していきましょう。
用語集
用語 | 意味 |
---|---|
ERP | 経営資源を統合管理し効率化する基幹システム |
DX | デジタル技術を活用した業務・ビジネス変革 |
BtoB | 企業間取引 |
SaaS | インターネット経由で提供されるソフトウェア |
SFA | 営業支援システム |
CRM | 顧客関係管理システム |
API | システム間データ連携の仕組み |
KPI | 重要業績評価指標 |
RPA | 定型業務自動化技術 |