D2Cは、昨今のEC業界を牽引する新たなビジネスモデルです。ここ数年、国内でも本格的に参入する企業が増え、市場は大きな盛り上がりを見せています。
これからD2C事業に参入したい、もしくはすでに展開を始めたという企業担当者の中には、D2Cの市場規模は現状どれくらいなのか、また、今後どの程度成長する可能性を秘めているのか知りたいという人もいるでしょう。
そこで今回は、D2C事業の概要とメリットに触れつつ、D2C市場規模の現状と見通し、拡大する背景についてお伝えします。
D2C事業とは
D2C(DtoC)とは、「Direct to Consumer」の略で、企業が顧客に対して商品やサービスを直接販売する事業形態を指します。企業が自ら企画・製造した商品やサービスを、自社が運営するECサイトを介して販売し、卸売業者や流通、小売業者を通しません。企画・製造、販売からアフターフォローまで、一貫して自社で行います。
インターネット上で商品やサービスを販売するD2Cは、ECに含まれるビジネスモデルのひとつです。両者の違いは、ECがインターネット上で行われる商品やサービスの取引全般を指すのに対し、D2Cは自社製品のみを販売する点にあります。また、似た言葉にBtoBとBtoCがありますが、どちらもビジネスモデルを顧客の違いによって区別する言葉です。それぞれ「企業対企業(Business to Business)」、「企業対消費者(Business to Consumer)」間の取引を指します。
D2Cは、商品そのものではなく「世界観(ストーリー)」を売ることが最大の特徴です。もちろん品質も重要ですが、主に商品の機能を価値として提供してきた従来のビジネスモデルとは異なり、商品の機能よりも、世界観をより重視します。
D2Cの市場規模
D2Cに参入する企業は増え続けており、市場規模は国内外で年々成長しており、国内のD2C市場は2025年には3兆円規模に、米国では2023年には約18兆円規模に達する見込みです。
日本、米国双方のD2C市場について、現状と今後の見通しを紹介します。
国内D2C市場|2025年には3兆円規模に
国内D2C市場の動向については、D2Cに特化したネット広告コンサルティング企業「売れるネット広告社」が行った調査があります。同社は、ネットメディアを介して自社が手がけた商品を消費者に直接販売する事業を「デジタルD2C」と定義し、2025年までの国内市場規模の予測を算出しました。算出は、売れるネット広告社の過去の独自データと、関連業界への調査に基づいて行われています。
この調査によると、2015年の国内デジタルD2Cの市場規模は1兆3,300億円でしたが、2019年には2兆円を超え、2020年には前年対比109%の2兆2,200億円に達したとみられています。
また、経済産業省の調査によれば、2020年のBtoC事業におけるEC市場規模は19兆2779億円です。両者を比較すると、D2C市場のBtoC事業でのEC市場における存在感が分かります。
2020年以降、コロナ禍に消費者の購買行動が変化したことも追い風となり、D2C市場の成長は、さらに勢いを増すとみられています。このまま中長期的な成長を続け、2025年には3兆円に達する見込みです。
※出典元:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf)
※出典元:売れるネット広告社(https://www.ureru.co.jp/news/archives/122)
米国D2C市場|2023年には約18兆円規模に
D2Cの先駆けである米国でも、D2C市場は年々拡大の一途をたどっています。米国では2010年頃、シリコンバレーのテック系スタートアップ企業を中心にD2Cが登場しました。しかし今では、D2Cブランドは幅広い分野に広がりを見せています。
米国に本社を置く世界最大手のデジタルマーケティングリサーチ専門会社「eMarketer」が行った調査によれば、米国における2020年のD2C企業のEC売上は、前年対比45.5%増。日本円で12兆円もの規模にのぼりました。この数字は、米国EC市場全体の約14%を占めます。
米国においても、コロナ禍でのサプライチェーンの混乱や店舗の閉鎖によって、改めてD2Cによるアプローチが有益であると広く認識されるようになりました。
今後もD2C市場は着実に成長を続け、2023年には、D2C企業のEC売上が約18兆円に達すると見られています。
※出典元:eMarketer(https://www.emarketer.com/content/why-more-brands-should-leverage-d2c-model)
D2Cのメリット
自社サイトでの販売から得たデータを活用し、顧客目線でのマーケティング戦略を練ることができるのも大きなメリットです。さらに、SNSなどのツールを駆使することで、中小企業でも成功できる魅力があります。
顧客との距離が近い
顧客に直接商品やサービスを販売するD2Cは、顧客との距離が非常に近いビジネスモデルです。自社のECサイトやSNSで顧客と直接コミュニケーションを取り、要望やニーズ、不満などの生の声を聞き、すぐに対応することができます。
例えば、SNSを介した顧客とのやり取りでキャッチした要望を既存の商品やサービスの改善に活かしたり、新たな商品やサービスのアイデアにしたりできます。顧客の要望を商品やサービスに反映することは、コアなファンの獲得や顧客満足度の向上、リピーターの獲得につながります。
さらに、顧客との距離の近さを活かして自社のブラインドイメージやメッセージを顧客に伝えれば、商品やサービスを超えてブランドそのもののファンを獲得することも可能です。情熱や理念を届けることで価値観の共有を促し、顧客との心理的距離が縮まれば、ロイヤリティの向上が期待できます。
コストを削減できる
商品・サービスの販売や出店に関するさまざまなコストを削減できる点も、D2Cの大きなメリットのひとつです。例えば、D2Cは顧客に直接販売するため、卸売業者や流通、小売業者への中間マージンが不要です。また、自社のECサイトで販売するため、ショッピングモール型ECサイトへの出店費用や販売手数料もかかりません。
ランニングコストの削減によって利益率の向上が期待できることは、企業にとって大きなメリットになります。コストが削減できた分を顧客に還元し、より適正な価格で商品やサービスを提供することによって、ブランドの価値と顧客満足度を高めている企業もあります。
マーケティング戦略を練りやすい
豊富なデータによってマーケティング戦略を練りやすいというメリットもあります。D2Cは、商品やサービスの販売に自社のECサイトを利用します。このため、ショッピングモール型ECサイトで販売する場合と比較して、より多くの顧客データを収集しやすくなります。
例えば、ショッピングモール型ECサイトの場合、収集できるデータが顧客の住所、家族構成、年齢といった基本情報に限られるケースもあります。しかし、自社のECサイトで販売するD2Cなら、顧客の訪問履歴や閲覧履歴、購入履歴といった行動データまで収集、蓄積できます。データから顧客の行動や心理を分析すれば、顧客目線で独自のマーケティングを展開できます。
中小企業でも成功できる
D2Cは、インターネットやSNSなどのデジタル領域に主軸を置いています。SNSを活用するだけでも顧客を獲得できるため、莫大な広告費は必要ありません。また、自社サイトで商品を販売するため卸売業者や小売業者と取引する必要もなく、企業規模に関わらず参入できます。
コストや人的リソースに限りのある中小企業にとって、D2Cは参入しやすいだけでなく、マスメディアを使った広告戦略を展開する大手企業とは差別化できるというメリットもあります。ニッチなニーズに応えたり、ブランドの独自性を追求したりすることで、大手企業が入り込めない市場で成功できるでしょう。
ポータルサイト内で比較されないため、価格競争に巻き込まれることがない点もメリットです。
D2C事業が拡大する背景
D2Cの市場規模が拡大する背景には、SNSが普及し、顧客との直接のコミュニケーションが可能になったことが挙げられます。さらに、消費者のニーズが多様化したこと、実店舗ではなくネットから物を購入することに、消費者が抵抗感を抱きにくくなったことがあります。
SNSによるダイレクトコミュニケーション
ICT総研による「2020年度SNS利用動向に関する調査結果」によれば、国内のSNS利用者数は年々増加しており、2022年末に8,241万人に達する見込みです。利用者数だけでなく利用率も右肩上がりで増えており、SNSは今や身近な存在として、私達の生活に浸透しています。
SNSが普及したことで、企業は顧客と直接コミュニケーションできるようになり、顧客との距離が縮まったことで、D2Cが重視するストーリーや世界観をより顧客に伝えやすくなりました。
また、消費者がマスメディアの宣伝ではなく、SNSやインターネットで自ら収集した情報を重視するようになったことも、D2Cには追い風になっています。SNSでシェアされた友人や知人の購入体験に魅力を感じて商品やサービスを買い求めるケースも増え、企業はマスメディアに頼らなくても、SNSやインターネット広告を駆使したマーケティング戦略によって、ブランドを成長させることができます。
※出典元:株式会社ICT総研「2020年度SNS利用動向に関する調査結果」(https://ictr.co.jp/report/20200729.html/)
消費者ニーズの多様化
消費者がインターネットやSNSで能動的に情報を集め、自身が魅力を感じたものを購入するようになった結果、消費者のニーズは、機能やスペックだけでなく、商品・サービスを通して得られる満足感や豊かさにシフトしています。
ジャパンネット銀行によれば、20~60代の男女各500名、計1,000名に対して行った調査で、約60%の人が「お金は誰かのためや共感できるモノに使いたい」と回答しました。また、54%の人が「モノよりも体験・思い出を重視したい」と回答し、多くの人が消費において共感や体験を重視していることが分かります。
こうした消費者の変化に合ったビジネスモデルであることも、D2C市場が拡大している要因です。D2Cでは消費者にブランドストーリーを伝え、共感を得ることを重視します。このため、消費者は商品やサービスだけに満足するのではなく、購入体験そのものに満足感や豊さを感じることができます。
※出典元:株式会社ジャパンネット銀行「「応援消費」に関する意識・実態を調査」
Eコマースの一般化
D2Cは、自社が運営するECサイトでの販売を前提としたビジネスモデルです。このため、ネット購入に対する消費者の抵抗感が薄くなったことも、市場拡大の一因と言えます。
特に2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で非対面売買の需要が高まり、ネットスーパーやフードデリバリーなどのサービスが注目されました。コロナ禍をきっかけに、今までネット購入したことのなかった商品を、初めてネットから購入してみたという人も多いでしょう。
Eコマースが登場した当初は、ネットで物を購入することに難色を示す消費者もおり、日本では普及しないだろうという見方もありました。しかし、今ではEコマースは生活に溶け込んでいます。実店舗で商品を見ても店舗では買わず、後日ECサイトから購入する消費者もいるなど、実店舗の代わり以上の存在感を持ち始めています。最近では、オンラインとオフラインを区別せず、融合させることによってより良い顧客体験を提供しようという、OMO(Online Merges with Offline)が注目を集めています。
まとめ
D2Cの市場規模は年々拡大し、今後も高い水準で成長を続けると見られています。背景には、SNSの普及による消費者の消費行動の変化や、ニーズの多様化、Eコマースの一般化があります。企業規模に関わらず成功できるメリットを持つD2Cですが、昨今大手企業でもD2Cに参入するケースが増えています。D2C事業を成功させるには、十分な施策を検討する必要があるでしょう。
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