多様な顧客のニーズに対応するため、顧客情報を一元管理するCDPの重要性が増しています。国内調査会社の調査によると、CDPの国内の市場規模は2022年度は118億円で前年度比14.2%増でした。22~27年度の年平均成長率(CAGR)は13.6%と予測しており、今後もCDPを導入する企業が増加することが伺えます。今回はCDPを導入する前に知っておきたい基礎知識と活用法をご紹介します。
目次
CDPとは?

CDPとはCustomer Data Platformの略で、顧客情報を集約し分析可能なプラットフォームのことを指します。
マーケティングにおいて顧客情報を集約する手法として、ウェブサイトのCookie情報を収集する方法が主流でしたが、近年の欧州のデータ流通厳格化を受け、自社で収集した個人情報(ファーストパーティデータ)を扱うCDPに注目が集まるようになりました。
CDPの基本知識
前述の通り、CDPは顧客情報を一元管理し、分析するためのプラットフォームです。オフライン、オンラインを問わず、企業が顧客との接点の中で入手した顧客の行動データや属性情報を統合し、顧客ごとのプロファイルを作成することができます。
CDPの役割
CDPは顧客情報のデータベースの役割を果たしています。統合したデータや分析結果は、顧客それぞれに発信可能なMA(Marketing Automation)ツールや実店舗でのマーケティング活動、広告発信にも活かしていくことができます。
CDPがデジタルマーケティングに与える影響
近年では販売チャネルや商品の多様化とともに、顧客のニーズも多様化しました。CDPは複雑化した顧客情報を利用できる形に加工・統合し、顧客一人ひとりにパーソナライズされたマーケティング施策として還元することができます。
CDPがデジタルマーケティングにおいて重要な理由
ここではCDPを活用することが、マーケティング活動において重要なことである理由を解説していきます。
マーケティング活動の効率化
CDPを導入すると、顧客データを一元管理できるため、ファーストパーティデータに加えて、広告配信ログやPOSデータなどの外部データも統合・分析が可能になります。
これにより、より正確な顧客理解が進み、パーソナライズされたマーケティング施策の実施や、効果的な広告配信が可能となり、結果としてマーケティング活動の効率化につながります。
顧客ロイヤリティの向上
CDPにより、顧客一人ひとりにパーソナライズされたマーケティング活動を展開することで、既存顧客のロイヤリティを向上することができます。適切なタイミングで適切なサービスや商品を訴求することで購買につなげ、顧客満足度の向上に寄与します。
また、的確なマーケティング活動は企業のファンを増やすこととなり、顧客生涯価値(LTV)を高めることにもつながります。
CDPの3つの機能
CDPは基本的にデータ収集機能、データ統合機能、データ分析機能の3機能を備えています。それぞれの機能をについて解説していきます。
1. データ収集機能
データ収集機能はユーザーの属性やウェブサイト上での行動データなどの履歴を収集する機能です。特定のサイトを訪れたユーザーのページ遷移履歴や会員情報などを1箇所に収集します。
また、実店舗での購入履歴やアンケートなど、オフラインチャネルの接点情報を収集できるCDPもあり、より詳細な顧客プロファイルの作成が可能になります。オフラインチャネルとオンラインチャネルを区別せず活用するOMOなどのマーケティング施策とも相性の良い機能です。
関連記事:OMOとは?OMOの基本から事例までを解説!|GENIEE CX NAVI
2. データ統合機能
データ統合機能は収集したデータを利活用できる形に加工する機能です。例えば、収集したデータをキーとなる顧客IDと紐づけることで複数システムの顧客情報とも連携でき、収集した顧客データをマーケティング活動に活かしやすくなります。
3. データ分析機能
データ分析機能は収集したデータを分析しマーケティング活動に活用できる分析結果を提示する機能です。CDPツールの中にはダッシュボードで確認できるツールもあるほか、統合した顧客データを詳細な箇所まで確認することができるツールもあります。
顧客一人ひとりの行動データやニーズを詳細に分析可能なため、パーソナライズされたマーケティング施策が可能になります。
CDPと他のデータ管理システムの違い
ここまでCDPの基本機能について紹介してきましたが、類似する機能を持つマーケティングツールもあります。本章ではそれらのシステムとCDPの相違点を解説します。
DMPとの違い
DMPとはData Management Platformの略で、CDPと同じく顧客のデータを一元化できる機能を持つシステムです。
CDPとDMPでは一元化するデータの諸元や内容が異なります。DMPは第三者が公開した顧客データ(サードパーティデータ)を諸元としており、IPアドレスやCookie履歴、デバイスといった匿名データで構成されています。
これらを組み合わせることで顧客のプロファイルを行うのがDMPです。一方、CDPは自社で収集した顧客データ(ファーストパーティデータ)も諸元とできる点で異なります。
DMPで収集するCookie履歴などの匿名データは、収集すれば個人を特定できるため個人情報として扱われます。サードパーティデータをめぐっては、データ移動の制限を設けた欧州の一般データ保護規制(GDPR)の整備などを受け、運用が厳格化されています。
これを受け、ファーストパーティデータを利用可能なCDPに注目が集まっています。
関連記事:Cookieとは?技術や有効・削除方法などを解説!|GENIEE CX NAVI
CRMとの違い
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、顧客関係管理システムを指します。CDPと同じく顧客情報を集約するシステムですが、CRMはファーストパーティデータに大きく依存する一方、CDPはファーストパーティ、セカンドパーティ、サードパーティデータを一元管理できる点で異なります。
CRMは顧客と企業のファーストコンタクト後のアフターマーケティング、アフターセールスといった領域をカバーする一方で、CDPでは最適なカスタマージャーニーの検討といった全体的なフェーズまでカバーできます。
関連記事:
カスタマージャーニーとは?意味や作成方法を解説!|GENIEE CX NAVI
CRMとは?BtoC事業における活用方法やメリットを解説!|GENIEE CX NAVI
ERPとの違い
ERPとはEnterprise Resource Planningの略で、企業資源計画システムを指します。企業の資源である人、モノ、金、情報を一元的に管理するシステムです。ERPは企業内部の情報を一元管理するシステムである一方、CDPは顧客情報を一元管理するシステムである点で異なります。
CDP導入によるマーケティング最適化事例
CDPを導入することで、実際にどのような効果が得られるのか、実際にCDPを活用してマーケティング施策を最適化した事例をご紹介します。
パーソナライズ広告やオムニチャネル戦略への活用
CDPでは収集した顧客データから顧客一人ひとりのプロファイルを作成可能です。それぞれの顧客の属性に応じ分類し、各セグメントに対して最適なキャンペーンの設定やメールやSNS、ディスプレイ広告といったオムニチャネルによるメッセージ発信を行うことでパーソナライズされた広告の発信が可能です。
また、オンライン、オフライン問わず、顧客との接点において適切な発信が可能です。例えば、音声検索のような新たな顧客接点であっても、過去の音声検索データから人気のある会話キーワードを特定し、そこから音声検索を行う顧客のニーズを分析して最適な提案を行うといった活用方法があります。
カスタマージャーニーマップに基づいたコミュニケーション
CDPではそれぞれのセグメントに対して最適なカスタマージャーニーを設定することが可能です。各セグメントに応じて自動応答メッセージやサービス・製品情報に関するメール、過去のマーケティングやセールス活動に対する顧客のリアクションを考慮したキャンペーンなどを送付することで、リードナーチャリングを行う活用法もあります。
スコアリングによる興味関心度合が高い顧客の選別
CDPをリード(見込み顧客)のスコアリングに活用する例もあります。スコアリングとは、リードの興味・関心の度合いに応じて点数をつけることを指します。スコアリング予測モデルの設計は成約に至った顧客セグメントの属性や行動データなどをインプットに変数を設定するといった手法で実現できます。
CDPの選び方と導入時の3つのポイント
ここからは、CDPツールを導入する際の選び方と導入時のポイントをご紹介します。
自社の課題と導入の目的を明確にする
CDPツールは様々な企業が販売しており、その機能も異なります。そのため、導入前に自社の目的を明確にする必要があります。例えば、CDP導入の目的が新規顧客の獲得である企業と商品の改善である企業では、必要とするデータの種類、内容が異なります。
事前に、導入目的を明確にしておくことで、自社が本当に必要としているツールを選定しやすくなります。
運用体制を整備する
CDP導入にあたり、自社の運用体制を整備する必要があります。CDPで収集するデータが他部署間に点在している場合は、データを提供してもらえるよう連携調整を行う必要があります。
また、CDPを利用する部署はマーケティングや営業だけとは限りません。
広報や商品開発、カスタマーサポートなどの部署も関わる可能性が高いので、要件のヒアリングや運用開始後の体制調整を行う必要があります。
既存システムとの連携が可能かを確認する
CDPはデータを収集し統合する役割に重きをおいているため、その役割を最大化するためには他マーケティングツールとの併用が欠かせません。SFA(Sales Force Automation)やMA(Marketing Automation)ツール、CRM、分析を行うためのBIツール、ECツールとの連携が可能か確認する必要があります。
CDP導入後の流れ

CDPを導入することで様々なパフォーマンスが期待できます。ここからは、CDPの導入から運用を軌道にのせるまでのプロセスをご紹介します。
CDP導入の5つのステップ
CDPは導入すればすぐ運用できるわけではなくデータを収集する必要があります。運用できる状態にするまでに全部で5つのステップを経る必要があります。
ステップ1:CDPの基盤を設計
まずは、データを収集・統合することで何を実現したいのか、関連部署の要望をもとに基盤設計を行います。
ステップ2:データの取得方法を決める
ステップ1を踏まえて、必要なデータの仕様や内容を確認します。
データの取得方法は、API連携やSFTP/FTP連携、タグ連携、バッチ連携など複数あるため、どのようにデータを取得するかも決定します。
ステップ3:データの取り込みを確認する
基本的にはCDPツールが自動で取り込みますが、データソースごとに適切に取り込まれているか確認する必要があります。
ステップ4:データマートの構築
データマートとはユニークIDごとに顧客の行動データや属性を判断できる状態にする仕組みのことで、取り込んだデータによってはデータマートを構築する必要があります。
ステップ5:連携の確認
各種ツールと連携できていることを確認します。
収集データの分析を行う
運用開始後は、定期的に収集データの分析を行います。分析にはSQLやPythonといったプログラミング言語を仕様する場合もあれば、BIツールなどの外部の分析ツールと連携し実行する場合もあります。
また、CDPツールの中にはダッシュボード分析が標準機能で実行できるツールもあります。自社の人的リソースに合わせてCDPツールを選択しましょう。
分析結果を元にPDCAを回す
分析ができたら、その結果を実行に移すためマーケティング施策などへの反映を行います。マーケティング施策展開後は定期的に効果を測定し、必要に応じてPDCAを回していくことで顧客理解も深まっていきます。
CDP導入前には以上のプロセスを考慮し導入スケジュールを設定する必要があるほか、その効果を最大限発揮するために各プロセスを適切に実行する必要があります。
まとめ
CDPは顧客の行動データや属性情報を収集し統合するシステムです。他マーケティングツールと併用することで、顧客一人ひとりにパーソナライズされたマーケティング施策を展開することが可能となり、その効果を最大限発揮します。
株式会社ジーニーが展開する「GENIEE MA/CDP」は、顧客管理から施策の実行・分析まで担えるオールインワンなツールです。
SMSやLINEなどの多彩な配信チャネルにも対応しており、オールインワンなMAツールとしても利用できます。