コールセンターの運営において、生産性向上は常に求められる課題ではないでしょうか?特に「CPH(Call Per Hour)」は、オペレーターの効率を示す重要な指標として注目されています。「CPHがなかなか上がらない」「目標値をどのように設定すればよいか分からない」といった悩みを抱えている管理者の方も多いはずです。この記事では、CPHの定義や計算方法から、業界別の目安、そして具体的な改善策までを詳しく解説します。読み終わる頃には、自社のセンターに適したCPHの目標設定と、その達成に向けた具体的なアクションプランが明確になっていることでしょう。
目次
CPHとはコールセンターの生産性を示す重要指標
コールセンター運営において頻繁に耳にするCPHですが、まずはその基本的な定義と重要性について改めて確認します。言葉の意味を正しく理解することで、現場への指示や経営層への報告もより的確に行えるようになります。
オペレーター1人の1時間あたりの対応件数
CPHとは「Call Per Hour」の略称であり、オペレーター1人が1時間あたりに対応したコール数を指す指標です。この数値を見ることで、個々のオペレーターがどの程度の処理能力を持っているか、あるいはセンター全体としてどのくらいの効率で稼働しているかを把握できます。例えば、あるオペレーターが1時間に5件の電話に対応した場合、その人のCPHは「5」となります。シンプルですが、業務効率を直感的に理解するために非常に役立つ数値です。
顧客満足度と運営効率に関わるため重要
CPHは単なる数字以上の意味を持っています。なぜなら、この指標はセンターのコスト効率と顧客満足度の両方に深く関わっているからです。CPHが高いということは、同じ時間内でより多くの顧客対応ができていることを意味し、つながりやすさの向上や人件費の抑制につながります。一方で、無理に数値を上げようとすると応対が雑になり、顧客満足度が下がるリスクもはらんでいます。運営効率と品質のバランスを測るための羅針盤として、CPHは極めて重要な役割を果たします。
電話応対と後処理時間を含めて算出する
CPHを考える際に忘れてはならないのが、通話時間だけでなく「後処理時間」も業務時間に含まれるという点です。お客様との通話が終わった後、オペレーターは対応履歴の入力や手続き処理を行います。この時間が長引けば、次の電話を取るまでの間隔が空いてしまい、結果として1時間あたりの対応件数は減ってしまいます。つまりCPHを改善するためには、トークスキルだけでなく、事務処理のスピードやシステムへの入力効率も同時に見ていく必要があります。
▼関連記事:オペレーターを削減!コストと応対品質を両立させる具体的な方法7選
CPHの計算方法と業界別の平均値は?
自社のCPHが適正かどうかを判断するためには、正しい計算方法と業界の相場を知る必要があります。ここでは具体的な計算式と、業務内容ごとの一般的な目安について解説します。
CPHの計算式は「対応件数÷稼働時間」
CPHの計算は非常にシンプルです。基本となる計算式は「対応件数÷稼働時間」で求められます。例えば、あるオペレーターが7時間のシフト勤務の間に、合計で35件の問い合わせに対応したとします。この場合、35件を7時間で割るため、CPHは「5」となります。センター全体で算出する場合は、全員の総対応件数を全員の総稼働時間で割ることで、センターの平均CPHを出すことができます。日次や月次でこの数値を追うことで、生産性の推移を可視化できます。
テクニカルサポートのCPH目安は1~2件
CPHの適正値は、扱う商材や問い合わせの内容によって大きく異なります。パソコンの操作案内や故障対応といった「テクニカルサポート」の場合、平均的なCPHは1~2件程度と言われています。技術的な問題解決には時間を要することが多く、お客様と一緒に操作を確認しながら進めるため、どうしても1件あたりの通話時間が長くなるからです。この分野で無理にCPHを高めようとすると、解決に至らず再入電を招く恐れがあるため、慎重な目標設定が求められます。
一般的な問い合わせのCPH目安は3~5件
一方で、通信販売の注文受付や、サービスの一般的な問い合わせ窓口では、CPHの目安は3~5件程度となることが多いです。これらは手続きの内容がある程度定型化されており、トークスクリプトに沿ってスムーズに案内できるケースが多いためです。もちろん、キャンペーン期間中や新商品発売直後などは変動しますが、定常業務においては、この数値を基準にオペレーターの習熟度を測ることができます。まずは自社の業務が「複雑な解決型」なのか「定型的な処理型」なのかを見極めることが大切です。
業務内容に合わせ自社の目標値を設定する
上記で紹介した数値はあくまで一般的な目安に過ぎません。実際には、自社のマニュアルの完成度や使用しているシステムの使い勝手によっても変動します。他社の数字をそのまま目標にするのではなく、まずは自社の現状(ベースライン)を計測することから始めましょう。その上で、「来月は現状から10%アップを目指す」といった現実的な目標を設定するのが得策です。現場の実情を無視した高すぎる目標は、オペレーターのモチベーション低下を招くだけでなく、離職率の上昇にもつながりかねません。
CPH以外の主要なKPIとの関係性

コールセンターのパフォーマンスを正しく評価するには、CPH以外の指標も併せて見る必要があります。ここでは、CPHと密接に関わる3つのKPIについて解説し、それぞれの関係性を整理します。
| KPI名称 | 日本語訳 | CPHとの関係性と特徴 |
| ATT | 平均通話時間 | 通話そのものの長さ。これが短いほどCPHは向上しやすいが、早口や説明不足に注意が必要。 |
| ACW | 平均後処理時間 | 通話終了後の事務作業時間。ここを短縮することが、品質を落とさずにCPHを上げる鍵となる。 |
| AHT | 平均処理時間 | ATTとACWの合計。1件の処理にかかる総時間であり、CPHとは逆相関の関係にある(AHTが下がればCPHは上がる)。 |
ATT(平均通話時間)は通話の長さを示す
ATT(Average Talk Time)は、お客様と通話している時間の平均値です。この時間が短くなれば、理論上はより多くの電話を取ることができるため、CPHは向上します。しかし、単に「早く電話を切れ」と指示するのは危険です。お客様の話を遮ったり、必要な説明を省いたりして時間を短縮しても、顧客満足度は下がり、結果としてクレームや再入電が増えてしまいます。あくまで「無駄な保留時間を減らす」「簡潔に説明するスキルを磨く」といったアプローチで適正化を目指すべき指標です。
ACW(平均後処理時間)は後処理の長さを示す
ACW(After Call Work)は、電話を切った後の入力作業や手続きにかかる時間の平均です。オペレーターはお客様との会話内容をシステムに記録したり、発送の手配を行ったりします。この時間は顧客と直接接していない時間であるため、ここを短縮することは顧客満足度への悪影響が少なく、CPH改善において最も着手しやすいポイントと言えます。タイピングスキルの向上や、入力項目の簡素化、定型文の活用などが効果的な対策となります。
AHT(平均処理時間)はATTとACWの合計
AHT(Average Handling Time)は、通話時間(ATT)と後処理時間(ACW)を足したもので、1件の問い合わせ対応に要したトータルの時間を指します。CPHとAHTは表裏一体の関係にあります。AHTが短くなれば、1時間あたりに対応できる件数(CPH)は自然と増えます。そのため、現場の改善活動では「CPHを上げよう」というスローガンだけでなく、「AHTを短縮しよう」という具体的な目標を掲げる方が、オペレーターにとって行動指針として分かりやすい場合があります。
複数の指標から多角的に課題を分析する
CPHの数値が悪い場合、その原因がどこにあるのかを特定するために、ATTとACWの数値を分解して見ることが重要です。例えば、CPHが低い原因が「通話が長い(ATTが高い)」ことにあるのか、それとも「後処理に手間取っている(ACWが高い)」ことにあるのかで、打つべき対策は全く異なります。一つの指標だけを見て一喜一憂するのではなく、複数のKPIを組み合わせて多角的に分析することで、真の課題解決につながる糸口が見つかります。
コールセンターのCPHが上がらない主な原因
対策を講じる前に、なぜCPHが伸び悩んでいるのか、その根本的な原因を探る必要があります。多くのコールセンターで共通して見られる、代表的な4つの原因を紹介します。
オペレーターのスキルや知識が不足している
最も基本的な原因として、オペレーター個人のスキル不足が挙げられます。商品知識が曖昧だと、お客様からの質問に即答できず、資料を探したり保留にして確認したりする時間が増え、結果として通話時間が長引きます。また、PC操作やタイピングが苦手な場合も、通話中の検索や後処理に時間がかかり、CPHを下げる要因となります。新人オペレーターだけでなく、新しい商材が追加された際などにも一時的に発生しやすい課題です。
後処理(ACW)に時間がかかっている
通話そのものはスムーズでも、その後の事務作業に時間がかかりすぎているケースも少なくありません。対応履歴を入力する項目が多岐にわたっていたり、複数のシステム画面を行き来する必要があったりすると、1件あたりの処理時間は大幅に伸びてしまいます。また、オペレーターが「どこまで詳細に履歴を残すべきか」の基準を持っていない場合、必要以上に丁寧な長文を作成してしまい、時間を浪費していることもあります。
FAQやマニュアルが整備されていない
オペレーターが参照するFAQ(よくある質問集)やマニュアルが使いにくいことも、CPH低下の大きな要因です。情報が古かったり、検索性が悪かったりすると、回答を見つけるまでに時間がかかり、保留時間が長くなります。お客様をお待たせすることは満足度の低下に直結するだけでなく、オペレーター自身の心理的な焦りも生みます。必要な情報に「3クリック以内」でたどり着けるような環境が整っていない場合、ツールの見直しが必要です。
CTIなどシステムの操作性が悪い
使用しているCTI(Computer Telephony Integration)やCRM(顧客管理システム)の使い勝手も、生産性に大きく影響します。画面の動作が重い、電話番号の入力が手動、顧客情報のポップアップ機能がない、といったシステム的な制約は、積み重なると大きな時間のロスになります。オペレーターの努力だけではカバーしきれない部分であるため、もしシステムがボトルネックになっているのであれば、設備投資を含めた抜本的な改善を検討する必要があります。
CPHを改善するための具体的な方法

原因が特定できたら、次はいよいよ具体的な改善策を実行に移します。ここでは、即効性のあるものから中長期的な取り組みまで、効果的な5つの方法を解説します。
オペレーターへの研修でスキルを向上させる
オペレーターのスキルアップは、CPH改善の王道です。特に効果的なのが、成績優秀なオペレーターの対応を共有することです。実際の通話録音を聞かせたり、どのような手順で画面操作をしているかを動画で見せたりすることで、具体的なイメージを持たせることができます。また、定期的な勉強会を開催し、商品知識やよくある質問への回答パターンを反復練習させることも重要です。自信を持って回答できるようになれば、通話時間は自然と短縮されます。
トークスクリプトを見直し対応を標準化する
トークスクリプト(台本)の質を高めることも有効です。挨拶から要件のヒアリング、クロージングまでの一連の流れを最適化し、無駄のない会話構成を作ります。特に、お客様の話が脱線しそうな時に軌道修正するフレーズや、保留にする際のスムーズな案内方法などを盛り込んでおくと、通話時間のばらつきを抑えることができます。スクリプトは一度作って終わりではなく、現場の声を反映させながら常にブラッシュアップしていく姿勢が大切です。
FAQシステムを導入し自己解決を促す
オペレーター用の内部FAQだけでなく、お客様向けの公開FAQサイトを充実させることもCPH改善に寄与します。お客様が電話をする前にWeb上で疑問を解決できれば、簡単な問い合わせの入電自体を減らすことができます。結果として、オペレーターはより複雑な案件に集中できるようになりますが、同時に定型的な質問が減ることで1件あたりの難易度が上がり、見かけ上のCPHが下がる可能性もあります。そのため、FAQ導入時は入電数とセットで評価することが重要です。
▼関連記事:FAQの作り方とは?問い合わせ削減につながる構成と作成手順を解説
CTIシステムを導入し業務を効率化する
システムの力を借りて業務自体を効率化する方法です。最新のCTIシステムには、着信と同時にお客様の購入履歴や過去の問い合わせ内容を画面に表示させる機能があります。これにより、名前や用件を聞き直す手間が省け、初動の対応スピードが劇的に向上します。また、「IVR(自動音声応答)」を活用して、用件ごとに適切なスキルを持つオペレーターに振り分けることで、転送の手間やミスマッチによる長時間通話を防ぐことも可能です。
外部の専門業者にアウトソースする
社内のリソースだけで改善が難しい場合は、プロの手を借りるのも一つの選択肢です。コールセンター業務の一部、または全部を専門のアウトソーシング企業(BPOベンダー)に委託します。専門業者は豊富なノウハウと教育体制を持っているため、短期間で高い生産性を実現できる可能性があります。また、自社で採用や教育にかけるコストを変動費化できるというメリットもあります。繁忙期だけ委託するなど、柔軟な活用を検討してみると良いでしょう。
▼関連記事:問い合わせ対応を効率化する方法と改善のコツ
CPH改善で失敗しないための注意点
CPHの向上に取り組む際、数字ばかりを追い求めると思わぬ落とし穴にはまることがあります。最後に、改善活動を進める上で気をつけるべき3つのポイントをお伝えします。
CPH向上だけを目的化しない
最も重要なのは、CPHを上げること自体を目的にしないことです。CPHはあくまで手段であり、最終的なゴールは「顧客満足度の向上」や「企業の利益拡大」であるはずです。数字を達成するために、お客様の話を強引に切り上げたり、必要な確認作業を省略したりしては本末転倒です。目標数値を設定する際は、必ず応対品質のスコアとセットで管理し、品質を維持しながら生産性を上げるという意識を現場に浸透させる必要があります。
顧客満足度の低下を招かないようにする
CPHの改善と顧客満足度はトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係になりがちです。通話時間を短くしようとするあまり、事務的で冷たい対応になってしまうと、お客様は「大切にされていない」と感じてしまいます。効率化を進める中でも、「お客様への共感」や「感謝の言葉」といった感情面への配慮をおろそかにしてはいけません。定期的にモニタリングを行い、効率と品質のバランスが崩れていないかチェックする仕組みを作りましょう。
オペレーターの過度な負担を避ける
改善のプレッシャーがオペレーターの過度な負担にならないよう配慮することも不可欠です。「もっと早く処理しろ」と一方的に急かすだけでは、現場は疲弊し、ミスが増えたり離職者が続出したりする原因になります。改善活動は、オペレーターを追い詰めるものではなく、「システムで楽にする」「迷わないようにマニュアルを整備する」といった、彼らの働きやすさを支援する方向で行うべきです。働きやすい環境を作ることが、結果として持続的なCPH向上につながります。
まとめ
CPHは「対応件数÷稼働時間」で算出される、生産性と運営効率を測るための重要指標です。
改善には、オペレーターのスキル強化に加え、FAQやCTIシステムによる後処理時間の短縮が効果的です。
数値目標の達成だけでなく、顧客満足度や従業員満足度とのバランスを考慮すると良いでしょう。
また、適切な施策を一つずつ実行することで必ず成果は表れます。まずは自社の数値を計測することから始め、より効率的で高品質なコールセンター運営を目指していきましょう。
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