ダークパターンとは、ユーザーを意図的に誘導し、本来望まない行動を取らせるデザインやUIの手法を指します。

一見すると、コンバージョン率を向上させる効果があるように思えますが、実際にはユーザーの不信感を招き、ブランドイメージの低下やリピーター離れを引き起こすリスクがあります。ユーザー体験が重視される今、このような手法は、企業の成長を妨げかねません。

今回は、ダークパターンの具体例やもたらす影響を整理しながら、それを回避する具体的な方法と、ユーザーの信頼を高めるUXデザインのポイントを解説します。
自社サイトの改善やCV向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

ダークパターンとは

人が手でストップと示している画像

ダークパターンとは、英国のデザイナー、ハリー・ブリグヌル氏が提唱した概念で、ユーザーに意図しないアクションを取らせるようデザイン上のトリックや欺瞞的な仕組みを指したものです。

例えば、会員登録の際に不要なオプションを自動的に同意させる仕掛けや、解約ボタンを意図的に分かりづらい場所に配置するケースなどが典型的です。ユーザーが「なんとなく違和感を持ちながらも操作してしまう」ような仕組みで、企業がコンバージョンを稼ごうとする手法ですが、その本質はユーザーを欺くことにあり、長期的には企業と顧客の関係に深刻な悪影響を残す可能性があります。

本来、UIやUXデザインは、ユーザーが安心して操作できる環境を提供し、サイトやサービスとの信頼関係を築くことを目的としています。
しかし、ダークパターンに近い設計は、ユーザーに気づかれないよう行動をコントロールする危険性が高く、Web業界だけでなく消費者保護の観点からも近年注目が高まっています。特に海外では法的な整備や規制が進んできており、日本国内でも今後の法整備の動向が注目されています。

ダークパターンがもたらす影響とリスク

ドミノが倒れるのを片手で阻止する画像

ダークパターンの影響は、一時的にCV増やすメリットを上回る、大きなリスクを伴います。ユーザーがストレスを感じるデザインは、徐々にサービスやブランドへの悪印象を積み重ねてしまうからです。
ここでは心理面な影響と法的・社会的リスクの両面から、ダークパターンがもたらす問題を整理していきます。

ユーザーへの心理的影響

ダークパターンを体験したユーザーは、裏切られたような感情や、意図しない操作をさせられたという嫌悪感や不信感を抱きやすくなります。
最初は気づかなくても、「なぜこんな設定になっているのだろう」と疑問を持ち始めると、その不満はサイト全体やブランドへの不信へとつながります。

特にSNSが普及した今、ユーザーは不快な体験を共有しやすいため、悪評が一気に広がることも珍しくありません。
こうしたネガティブな情報が拡散すると、企業はイメージ回復のために多大なコストをかけざるを得なくなります。

さらに、既存ユーザーが離脱だけでなく、新規ユーザーが参入しづらい雰囲気を生み出し、LTVの低下を招くこともあります。短期的なCVの増加を優先するあまり、長期的なユーザーの信頼を損なわないよう注意が必要です。

法的・社会的リスクの可能性

ダークパターンが社会問題として取り上げられる背景には、消費者保護の観点からの批判だけでなく、個人情報の取り扱いへの疑問や、景品表示法などの国内法規に抵触するリスクも含まれています。
海外では、ユーザーの権利を守るために厳しい法律が整備されている地域もあり、EUのGDPRのように個人情報保護を徹底する流れが日本にも波及する可能性は十分に考えられます。

企業がデザインや文言によってユーザーを誤解させていると判断された場合、訴訟リスクや行政指導を受ける可能性があります。
さらに、炎上をきっかけにメディアに取り上げられ、批判が広がれば、経営層が謝罪会見を開く事態に発展することもあり得ます。

こうした法的・社会的リスクが絡み合うと、企業の信頼を失うだけでなく、事業そのものに深刻なダメージを与えかねません。デザイン上の問題を軽視することは、企業にとって大きなリスクとなるのです。

ダークパターンを避けるためのチェックリストと改善策

チェックリスト

ダークパターンの問題点を理解したら、自社サイトやアプリが不誠実な設計になっていないかを見直すことが大切です。デザイナーやマーケターが意図せずダークパターンを取り入れてしまうケースもあるため、チェックリストを活用しながら、段階的に改善していくことをおすすめします。
以下では、その具体例や改善策を紹介し、ユーザーファーストの視点を取り戻すポイントを解説します。

チェックリスト例

ダークパターンを避けるためには、ユーザーが本当に求める操作を尊重したデザインになっているかを確認することが重要です。
以下のようなチェックリストを活用し、自社サイトやアプリの設計を見直しましょう。

  • 登録時の自動チェックはないか
    例)メールマガジンの登録画面で、あらかじめチェックが入った状態で登録を誘導している
  • 解約手続きがシンプルか
  • ユーザーが自由に選択肢を選べるデザインになっているか
    例)視覚的に「はい」を強調して「いいえ」を隠すようなデザインになっている

このようなチェックリストを作成する際は、社内のデザイナーやエンジニアだけでなく、実際にサービスを利用するユーザーの視点を取り入れることが重要です。ユーザーテストを行い、操作ミスや混乱が生じないかを検証することで、意図せずダークパターンが含まれてしまうリスクを未然に防ぐことができます。

意図的な錯覚デザインの排除

ダークパターンの中には、視覚的な錯覚を利用してユーザーの意図しない選択を促す手法があります。
例えば、重要なメッセージを目立たない場所に配置したり、「キャンセル」や「後で考える」ボタンを極端に小さくすることで誤操作を誘発させるケースです。こうした手法は、一時的にはCVの向上につながるかもしれませんが、ユーザーの信頼を損ない、最終的にはブランドの評価を大きく落とす要因となります。

対策としては、ボタンやテキストサイズを統一し、選択肢を公平に見えるようにすることが重要です。
また、色のコントラストにも配慮し、「決定」ボタンだけを目立たせるのではなく、「キャンセル」や「別の方法を選ぶ」といった選択肢も同等に分かりやすいデザインを心がける必要があります。

これらの小さな配慮が、ユーザーにとってのストレスを減らし、サービスの継続利用やブランドへの信頼へとつながっていきます。

同意取得における透明性

ユーザーにメールアドレスやクレジットカード情報などの個人情報を提供してもらう際には、その利用目的を明確に伝えることが大切です。

しかし、ダークパターンを用いるサイトやアプリでは、利用規約やプライバシーポリシーを極端に読みにくくし、ユーザーが内容を充分に理解しないまま同意せざるを得ない状況を作り出していることがあります。

このような不透明な情報取得の手法は、ユーザーの不信感を招くだけでなく、法規制が厳しくなりつつある現在の状況では大きなリスクになります。そのため、同意画面では収集する情報とその利用目的を明確に示し、ユーザーが一目で理解できるよう配慮することが重要です。
また、同意を拒否した場合にも最低限の機能を利用できる設計にするなど、ユーザーに選択の自由を与える仕組みを整えることで、より健全な関係を築くことができます。
長期的な視点で見れば、透明性のある情報提供こそが、ユーザーの信頼を獲得し、継続的にサービスを利用してもらうためのカギとなります。

信頼を損なわないUI/UXデザインのポイント

UIUXと書かれた画像

ダークパターンを回避するだけでなく、積極的に信頼を高めるUI/UXを構築することは、企業が競合他社との差別化を図る上でも非常に重要な戦略となります。
ここからは、ユーザーが気持ちよくサービスを使い続けられるようなデザイン手法や、付加価値の提供によってブランドのファンを増やすポイントについて説明します。

ユーザーライクなUXを目指すための設計手法

ユーザーライクなデザインを実現するためには、まずユーザーが求めているものを正確に理解することが重要です。ペルソナ設計やユーザビリティテストを実施し、ユーザーがどの部分で困っているのか、どのような点でストレスを感じるのかを把握することから始めましょう。
例えば、「購入ボタンの位置がわかりづらい」「解約手続きが複雑で時間がかかる」などの具体的な声が集まれば、その時点で改善策を明確にしやすくなります。

また、UIデザインにおいては、マイクロコピーと呼ばれるボタンやラベルの短い文章にも注意が必要です。ほんの一言がユーザーに安心感を与えることもあれば、逆に不快感を与えてしまうこともあります。過度に強制的な表現を避け、ユーザーが自分で選んだという納得感を持てるように配慮することが大切です。

競合との差別化を生む付加価値

誠実でわかりやすいUI/UXを提供する企業は、それだけで口コミやSNSなどを通じてポジティブな評価を得やすくなります。ダークパターンを一切使わずにCVを確保し、ブランドイメージを守り続けている企業も少なくありません。むしろ、透明性を重視した設計が結果的にユーザーに好意的に受け取られ、結果的にリピート率や推奨度の向上に繋がります。

例えば、購入後のサポートや問い合わせ対応が迅速であることも、ユーザー体験における大きな付加価値です。単に商品を購入させるだけでなく、その後のフォローを丁寧に行うことで、継続的にファンを作り出すことができます。トラブルが発生した際に、ユーザーを混乱させるようなデザインを避け、スムーズに解決できる体験を提供することが重要です。

競合他社との差別化を図るためには、ユーザーが「この企業なら安心して使い続けられる」と感じられるような信頼感を構築するUI/UXが欠かせません。信頼性を大切にしたデザインこそが、長期的にブランド価値を高め、競争優位性を生む要素となります。

まとめ:ダークパターンを回避してユーザーの信頼を得よう

ダークパターンを使うことで、目先のコンバージョンを高めることは確かに可能です。しかし、その代償として失うユーザーの信頼は取り戻すことが非常に難しく、ブランド価値を長期的に低下させるリスクを伴います。企業が持続的に成長するためには、ユーザーに配慮した誠実なデザインを基盤にサービスを提供し、育てていくことが不可欠です。

もし自社のUIやUXに少しでも「ユーザーに不利な要素があるかもしれない」と感じる部分があれば、早めにチェックを行い、改善策を講じることをお勧めします。ユーザーに無理なく商品やサービスの価値を理解してもらい、その上で喜んでアクションを起こしてもらえる設計を追求することが、ブランドを守り、次のステップへと導いてくれるはずです。

ビジネス環境が短期的な利益に焦点を当てがちな中で、ユーザーとの信頼関係を深めながらコンバージョンを拡大していく道筋は、大きな意味を持つことでしょう。

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