近年、EC市場の変化とともに「ブランドの世界観」や「共感」を重視する消費行動が広がり、D2C(Direct to Consumer)ビジネスが注目を集めています。自社でD2C事業を立ち上げたいと考えていても、「何から着手すればいいのか分からない」と悩む方も多いのではないでしょうか。

本記事では、D2C事業の立ち上げを検討している企業担当者の方に向けて、D2Cの基本的な仕組みから立ち上げのステップ、さらに成功事例までをわかりやすく解説します。

D2C事業とは

D2C事業とは

D2Cとは、自社で企画・製造した商品やサービスを、自社のECサイトを通じて顧客に直接販売するビジネスモデルです。インターネット上での販売という点ではECの一種ですが、「自社ブランドのみを扱う」という点がD2Cの大きな特徴であり、一般的なECとは異なります。

D2C事業の最大の魅力は、「モノ」そのものではなく、その背景にある「世界観」や「ストーリー」を届ける点にあります。もちろん商品そのものの品質も大切ですが、機能性以上にブランドの価値観やメッセージが重視されるのが、D2Cならではの特徴です。

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D2Cとは?わかりやすく解説

D2C事業を立ち上げる5つのステップ

D2C事業の始め方5ステップ

ここからは、D2C事業を立ち上げるための5つのステップを解説します。

ステップ1. 市場や顧客のニーズ調査

D2Cを立ち上げる前に、まず参入を検討している市場の「顧客ニーズ」を正確に把握しましょう。ここで言うニーズとは、顧客が抱えている「課題」や「不満」でもあります。あわせて競合他社の調査も行い、自社が優位に立てるポイントや、市場全体の成長性を分析しましょう。

市場や競合についての理解が深まったら、次は「ターゲットとなる顧客層」を明確に設定します。D2Cビジネスは、共感やファンづくりがカギとなります。誰に届けたいブランドなのかを明確にすることが成功の第一歩です。ターゲットを絞り込むことで、より刺さるマーケティング施策が実現できます。

ステップ2. コンセプト設計とブランドづくり

成功しているD2Cブランドには、必ずと言っていいほど「明確なコンセプト」と「伝えたいメッセージ」があります。他社と差別化するためには、単に商品を作るのではなく、その背景にあるストーリーやブランドへの想いを丁寧に設計することが大切です。

とくに共感を集めやすいのが、社会課題や環境問題といったテーマに基づいた価値観やライフスタイルの提案です。D2Cでは「何を売るか」よりも「なぜ売るのか」を重視したブランド設計が、ファンを惹きつける強力な要素になります。

ステップ3. 資金調達と事業計画の策定

D2C事業を始めるうえで、資金調達は避けて通れないステップです。まずは初期費用や運転資金などを見積もり、事業計画をしっかり立てましょう。事業計画は、今後のビジネスをスムーズに進めるための道しるべであると同時に、融資や出資を受ける際の信頼材料にもなります。

資金調達の手段としては、銀行などの金融機関からの融資に加え、最近では「クラウドファンディング」の活用も注目されています。クラウドファンディングは、D2Cと非常に相性の良い方法で、ブランドのストーリーや世界観に共感した人々から資金を集められるのが特徴です。

商品発売前からファンを獲得できるのも大きなメリットで、ブランドの認知拡大やテストマーケティングの場としても活用できます。

ステップ4. 高品質な商品づくりと製造パートナー選び

D2Cではブランドの世界観やストーリーが重視されますが、実際の「商品クオリティ」が伴っていなければ、継続的な支持は得られません。だからこそ、D2C事業の成功には「高品質な商品づくり」が欠かせない要素です。

製品の開発では、信頼できる製造パートナー(OEMや工場)を見つけることが重要です。ネット上の情報だけで判断せず、実際に工場に足を運んだり、サンプル品を依頼してクオリティを確かめたりしながら、丁寧に選定しましょう。

理想は、自社ブランドの世界観やこだわりに共感し、共により良い商品づくりを目指してくれるパートナーです。長期的な協力関係を築くことで、商品力もブランド力も高めていくことができます。

ステップ5. 集客戦略の設計とデジタルマーケティング活用

D2C事業を成功させるには、「ブランドや商品をどう知ってもらうか」という集客戦略の設計が欠かせません。D2Cでは、デジタルマーケティングを中心としたプロモーション手法が効果的です。

具体的には、SNS(InstagramやXなど)の運用、GoogleやSNS広告の活用、そして自社ECサイトへのSEO対策などが基本施策となります。

とくに自社ECサイトは、販売チャネルであると同時にブランドの世界観を伝える重要な接点です。検索からの流入を増やすために、魅力的なコンテンツや商品紹介ページを用意し、SEOでの集客力を高めましょう。また、集めたユーザーに対してどのようにアプローチしていくか(メルマガ・LINE配信・リターゲティング広告など)も戦略的に設計することが重要です。

D2Cビジネスを成功させるための戦略ポイント

D2C事業を立ち上げて、成功に導くためには、単に「良い商品を作る」だけでは不十分です。ブランドの魅力をいかに多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらい、購入し続けてもらうか、つまり、「認知→獲得→関係構築→ファン化」といったマーケティングのステップを意識した戦略設計が重要になります。

ここでは、D2C事業をスケールさせるうえで押さえておきたい、4つのマーケティング戦略ポイントをご紹介します。

認知獲得

D2Cブランドにおいて、最初の関門は「認知を広げること」です。しかし、ただ知ってもらうだけでなく、「ブランドの世界観」や「想い」を届けることが重要です。特にSNSは、共感を生み出すストーリーの発信に最適なチャネルです。InstagramやX(旧Twitter)では、ビジュアルやコンセプトを通じて、ブランドの存在感を高めることができます。

また、インフルエンサーを活用したPRや、メディア露出などもブランディング施策として有効です。単なる広告ではなく「ファンの声」として伝えることで、信頼感のある認知拡大につながります。

集客と獲得

認知を得た次は、いかに「商品を見つけてもらい、購入まで導くか」です。このフェーズでは、Web広告やSEOがカギとなります。

SNS広告やリスティング広告などのWeb広告は、ターゲットに応じた精度の高いアプローチが可能です。初回購入のハードルを下げる「お試しセット」や「送料無料キャンペーン」などを併用することで、獲得効率も向上します。

また、検索エンジン経由での集客にはSEO対策が不可欠です。商品の魅力だけでなく、使い方・選び方・悩みの解決策といったコンテンツを発信することで、自然流入を狙えます。

顧客との関係構築

D2Cは「売ったら終わり」ではなく、顧客と継続的な関係を築くことが重要です。商品を購入したユーザーに対して、メルマガやLINEなどを活用し、役立つ情報や新商品案内を届けることで、再購入を促進します。

このとき重要なのは、「売り込みすぎないこと」です。世界観に共感してくれたお客様に対し、ライフスタイル提案や、商品の裏側ストーリーを届けることで、信頼関係を深めましょう。

ファン化・LTV向上

最終的には、顧客がブランドの「ファン」となり、継続的に購入してくれる仕組みをつくることが重要です。ファン化を促す手段としては、コミュニティづくりやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用が挙げられます。

たとえば、Instagramでのハッシュタグ投稿や、ライブ配信などのイベントを通じて、ブランドと顧客、また顧客同士のつながりを育むことができます。ユーザーの声や投稿が新たな集客につながり、自然とLTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。

成功事例から学ぶ、D2C事業のヒント

国内のD2C事業の成功事例

ここまで、D2C事業を立ち上げるためのステップと戦略のポイントを解説してきましたが、実際に成功しているブランドは、どのように戦略を立てて成長を遂げているのでしょうか?

ここからは、D2Cブランドの成功事例をご紹介します。どのように世界観を築き、顧客とのつながりを深めてきたのか。リアルな事例を通じて、自社での展開に活かせるヒントを見つけてみてください。

BASE FOOD|主食を通じて健康を届けるD2Cブランドの成功事例

BASE FOODは、パンや麺などの「完全栄養食」を自宅に届ける宅配型のD2Cブランドです。主食で手軽に1日の必要な栄養を補えるというユニークなコンセプトで、多忙な現代人の食生活をサポートしています。

創業者・橋本舜氏がこのビジネスを立ち上げた背景には、自身の多忙なIT企業勤務時代の体験があります。仕事が忙しく、健康的な食事が難しかった日々の中で、「簡単に栄養を摂れる主食があれば」という想いから事業を構想したそうです。最初に販売した完全栄養の麺がヒット商品となり、D2Cモデルを活かして着実にファンを拡大していきました。

ブランドの核となるミッションは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」。この明確なビジョンを掲げ、クラウドファンディングでも多くの支持を獲得。現在ではSNSを活用したキャンペーンやイベントなど、顧客を「一緒に健康を変える仲間」として巻き込むマーケティング戦略で、D2Cブランドとしての地位を確立しています。
BASE FOOD:https://basefood.co.jp/

BULKHOMME|世界観で差別化したメンズコスメD2Cの成功事例

BULK HOMME(バルクオム)は、メンズスキンケア市場で急成長を遂げたD2Cブランドです。男性化粧品市場は収益化が難しいとされてきましたが、同ブランドは独自の戦略で突破口を見出し、2020年9月期には前期比2倍の売上成長を実現しました。

創業者の野口卓也氏は、ITベンチャーの立ち上げ経験を経て、2013年にBULK HOMMEをスタートしました。「男性にもスキンケアを当たり前に」という新しい価値観を発信し、D2Cモデルならではの世界観構築に注力しました。

ブランドの大きな特徴は、シンプルかつ洗練されたパッケージデザインです。これまでのメンズコスメにない「映える」ビジュアルで差別化を図り、Instagramを中心にSNSマーケティングを展開し、若年層を中心にファンを獲得しています。

また、定期購入のサブスクリプションモデルを導入することで、安定した収益基盤を確立。ブランドの世界観と商品体験をセットで提供することで、継続率の高いビジネスモデルを実現しています。
BULKHOMME:https://bulk.co.jp/

COHINA|低身長女性のためのアパレルD2Cブランドの成功事例

COHINA(コヒナ)は、小柄な女性に特化したアパレルブランドとして大きな注目を集めています。アパレル業界に無縁だった創業者、清水葵さんと田中絢子さんが立ち上げたこのブランドは、低身長で服選びに苦労していた自身の経験をもとに誕生しました。

二人の創業者は、自分たちと同じように小柄な女性たちのために、ぴったり合うサイズの洋服を提供したいという想いから起業を決意。アパレル業界での経験がない中、試行錯誤しながら商品を作り、2017年11月に販売をスタートさせました。

2021年8月現在、COHINAはInstagramのフォロワー数が20.7万人を超えるなど、多くのファンに支えられるブランドに成長しています。この成長の背景にあるのは、SNSを活用したマーケティング戦略です。特にInstagramのライブ配信を活用することで、顧客と直接交流し、商品に対するフィードバックをリアルタイムで得ることができました。この双方向のコミュニケーションが、顧客の信頼を得る大きな要因となり、D2Cブランドとしての成功を支えています。

COHINAの成功の秘訣は、顧客の声をしっかりと反映させる姿勢にあります。ライブ配信を通じて、顧客同士がつながり、より良い商品づくりに参加できる環境を提供している点が、他のブランドと一線を画すポイントです。
COHINA:https://cohina.net/

煎茶堂東京|新しい日本茶の楽しみ方を提案するD2Cブランド

煎茶堂東京は、元IT業界のデザイナーである青栁智士さんと谷本幹人さんによって立ち上げられた、日本茶の新しいスタイルを提案するD2Cブランドです。このブランドは、ただ単に日本茶を販売するのではなく、日本茶を楽しむライフスタイルそのものを提供することをコンセプトにしています。急須や茶器などの小道具も展開し、日本茶をより深く楽しむためのアイテムを揃えています。

D2C事業の立ち上げのきっかけは、茶道とペットボトルという二極化した日本茶のあり方に対して、創業者の2人が疑問を抱いたことから始まりました。コーヒーや紅茶、ワインと同じように、産地や製造方法の違いを楽しむことができるのではないかという思いから、既存のブレンド茶とは一線を画した「単一農園・単一品種」のお茶を生産者とともに開発しています。

煎茶堂東京は、自社ECサイトを通じてお茶のサブスクリプションサービスを提供しているほか、銀座には煎茶専門店と喫茶の店舗も展開しています。店舗は、ブランドの世界観を体験できる場としても重要な役割を果たしており、顧客との直接的な接点を大切にしています。
煎茶堂東京:http://www.senchado.jp/

まとめ

まとめ

D2C事業を立ち上げ、成功させるためには、商品そのものを販売することよりも、最高の顧客体験を提供することが不可欠です。顧客体験を向上させるためには、共感を生むメッセージの発信や魅力的な商品提供はもちろん、販売チャネルとなる自社ECサイト上で顧客のニーズに合った接客を行うことも重要です。

この顧客体験をさらに向上させるためには、効果的なツールの活用がカギとなります。株式会社ジーニーでは、コンバージョン率向上・お問い合わせ対応など、幅広い用途に対応したチャットEFOツール「GENIEE CHAT」・リマインドツール「GENIEE ENGAGE」を提供しています。
D2Cはもちろん、美容クリニック、人材、不動産など幅広い業界での導入実績があり、ABテスト機能をはじめとする、多彩な機能と専属のカスタマーサクセスチームによるサポートでコンバージョン率の向上を実現します。

特に「GENIEE ENGAGE」では、初期費用0円・完全成果報酬でCVを追加で獲得できる施策となっております。顧客の関心を引きつけつつ、購入までをスムーズに導くことができます。

D2C事業の立ち上げ後、さらにマーケティングの効果を上げたいと感じているご担当者の方は、是非一度、資料をご覧ください。

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