コールセンターの運営において、ACW(平均後処理時間)の削減は、生産性向上に直結する重要な課題です。
ACWが短縮できれば、同じ人数でもより多くの電話に対応できるようになり、オペレーターの残業削減や顧客満足度の向上にもつながります。

本記事では、ACWが長くなってしまう根本的な原因を解明し、明日からすぐに実践できる具体的な8つの削減手順について解説します。

ACW(平均後処理時間)とは?

コールセンターの現場では多くの専門用語が飛び交いますが、改善活動を行う上で、まずはACWの定義と計算方法を正しく理解しておくことが不可欠です。
言葉の意味を曖昧なままにしておくと、目標設定や施策の効果検証でズレが生じる可能性があるからです。
ここでは、ACWの基本的な意味と、他の関連指標との違いについて解説します。

顧客対応後に行う事務処理時間のこと

ACWとは「After Call Work」の略称で、日本語では「平均後処理時間」と呼ばれます。
これは、オペレーターが顧客との通話を終えた直後に行う、一連の事務処理にかかる時間の平均値を指します。

具体的には、通話内容のシステムへの入力、担当部署への転送手続き、顧客への資料送付の手配などが含まれます。
顧客と直接話している時間ではないため、外からは見えにくい業務ですが、この時間をいかに効率化するかがセンター全体の生産性を左右します。
オペレーターが次の電話を取る準備が整うまでの時間とも言えるため、ACWが長いとそれだけ「待機時間」が減り、受電効率が下がることになります。

AHTからATTを引いて算出する

ACWを正確に把握するためには、関連する指標であるAHT(平均処理時間)とATT(平均通話時間)との関係を知る必要があります。
これら3つの指標は密接に関係しており、ACWは以下の計算式で導き出すことができます。

指標名英語表記内容計算式等の関係
AHTAverage Handling Time平均処理時間(通話+後処理)AHT=ATT+ACW
ATTAverage Talk Time平均通話時間(通話のみ)
ACWAfter Call Work平均後処理時間(後処理のみ)ACW=AHT-ATT

このように、1件の対応にかかった総時間(AHT)から、実際に顧客と話していた時間(ATT)を差し引いた残りの時間がACWとなります。
例えば、ある対応のAHTが10分で、そのうち通話時間(ATT)が6分だった場合、ACWは4分です。
この数値を日別、週別、あるいはオペレーター別に算出し、推移をモニタリングすることで、業務改善の兆しを見つけることができます。

生産性を測る上で重要なKPIとなる

ACWは、コールセンターのコスト効率や生産性を測るための非常に重要なKPI(重要業績評価指標)です。
ACWが短縮されれば、オペレーター1人あたりの時間当たりの処理件数(CPH)が向上します。
これは、同じ人員数でもより多くの顧客対応が可能になることを意味し、結果として人件費の抑制や、あふれ呼(放棄呼)の減少につながります。

また、オペレーターにとっても、事務作業の負担が減ることで精神的な余裕が生まれ、次の通話に集中しやすくなるという効果もあります。
ただし、単に時間を短くすることだけを目的にすると、入力ミスが増えたり、必要な情報が記録されなかったりするリスクもあるため、品質とのバランスを見ながら管理することが大切です。

▼関連記事:ACWとは?コールセンターの効率を高める作業短縮方法

なぜあなたのセンターのACWは長いのか?考えられる5つの原因

対策を講じる前に、まずは現状のACWがなぜ長引いているのか、その原因を特定する必要があります。
原因が異なれば、打つべき対策も変わってくるからです。
ここでは、多くのコールセンターで共通して見られる、ACWが長くなる5つの主要な原因について解説します。
自社の状況と照らし合わせながら確認してみてください。

オペレーターのスキルに差がある

最もよくある原因の一つは、オペレーター個人のスキル、特にタイピング速度や文章要約力のばらつきです。
ベテランのオペレーターは、通話中に要点を整理し、会話と並行して入力を進めることができますが、経験の浅いオペレーターは通話が終わってから記憶を頼りに入力を開始することが多いため、どうしても時間がかかります。

また、ブラインドタッチができるかどうか、ショートカットキーを活用できているかどうかといったPC操作スキルの差も、積み重なると大きな時間の差となって表れます。
特定のオペレーターだけACWが極端に長い場合は、このスキル差が主要因である可能性が高いです。

後処理の業務フローが複雑になっている

業務プロセスそのものが複雑すぎることも、ACWを増大させる原因となります。
例えば、通話終了後に複数のシステムを立ち上げて入力しなければならない場合や、報告のために紙の帳票にも記入が必要な場合など、二重入力や不要な工程が存在していないでしょうか。

また、上長への報告や承認フローが煩雑で、承認待ちの時間がそのまま後処理時間に含まれてしまっているケースもあります。
業務フローが整理されておらず、オペレーターが「次に何をすべきか」を迷いながら作業している状態では、どんなに優秀な人材でも短時間で処理を終えることは困難です。

必要な情報を探すのに時間がかかる

後処理中に、顧客からの問い合わせ内容に関連する情報や、入力方法に関するマニュアルを探すのに時間がかかっているケースも散見されます。マニュアルが整備されていなかったり、情報が複数のフォルダやファイルに散在していたりすると、オペレーターは記憶に頼るか、時間をかけて検索するしかありません。

特に、商品の仕様変更やキャンペーン情報などが頻繁に更新されるセンターでは、最新情報へのアクセス性が悪いと、確認作業だけで数分を浪費してしまうことがあります。
必要な情報に「3クリック以内」でたどり着ける環境が整っているかどうかが、効率化の分かれ目となります。

使用しているシステムが使いにくい

使用しているCRM(顧客管理システム)や基幹システムの使い勝手が悪いことも、ACW削減の大きな阻害要因です。
画面の表示速度が遅い、入力項目が多すぎてスクロールの手間がかかる、画面遷移が頻繁に発生するといったシステム上の問題は、オペレーターのストレスになるだけでなく、物理的な作業時間を増加させます。

また、顧客情報と対応履歴が連携しておらず、毎回電話番号や氏名を手入力しなければならないような環境では、ミスも起きやすく、修正のための時間も余計にかかってしまいます。
システムは業務を支援するためのものですが、それが逆に足かせになっていないか見直す必要があります。

応対記録のルールが統一されていない

応対履歴に「何を」「どこまで」書くべきかというルールが明確でない場合、真面目なオペレーターほど詳細に記録を残そうとして時間を使いすぎてしまいます。
例えば、「お客様が『ありがとう』とおっしゃった」といった感情的な部分まで全て文章で残そうとすると、入力量は膨大になります。

逆に、必要な情報が不足していては後工程でトラブルになりますが、過剰な記録はACWを伸ばす要因となります。
要点を箇条書きにする、定型コードを選択するだけで済ませるなど、記録の粒度や形式に関する明確な基準がないことが、無駄な作業を生んでいる可能性があります。

▼関連記事:コールセンターのCPHとは?計算方法と改善策を解説

ACWを削減する8つの具体的な方法

ACWを削減する8つの具体的な方法

原因が把握できたところで、ここからは具体的な削減方法について解説します。
費用をかけずにすぐに取り組める運用面の改善から、ツールを活用した抜本的な改革まで、効果の高い8つの手順を紹介します。
これらを自社の課題に合わせて組み合わせることで、確実な成果を上げることができます。

手順1:入力テンプレートを作成し標準化する

最も手軽で即効性がある方法は、応対履歴の入力フォーマットをテンプレート化することです。
問い合わせの種類ごとに、「受付内容」「回答内容」「今後の対応」といった項目をあらかじめ用意しておき、オペレーターはそこに必要な情報を埋めるだけの状態にします。
これにより、ゼロから文章を考える時間を削減できるだけでなく、記録内容のばらつきを防ぐことも可能です。
メモ帳アプリや辞書登録機能を活用し、よく使うフレーズやテンプレートをすぐに呼び出せるようにしておくだけでも、1件あたり数秒から数十秒の短縮につながります。

手順2:トークスクリプトを改善し入力を効率化する

トークスクリプト(台本)の流れと、システムへの入力順序を一致させることも有効です。
オペレーターが顧客からヒアリングする項目の順番と、入力画面の項目の並び順がバラバラだと、画面を行ったり来たりする時間が発生します。
スクリプトを見直して、話を聞きながら上から順に入力できるように設計することで、通話中の入力を促進できます。

これにより、通話が終わった時点ですでに入力の大半が完了している状態を作り出すことができ、ACWの大幅な削減が期待できます。
これは「トークフロー」と「入力フロー」の同期とも呼ばれる重要なテクニックです。

手順3:FAQシステムを整備し自己解決を促す

オペレーター用のFAQ(よくある質問集)を整備し、検索性を高めることも重要です。
通話中に顧客の疑問を素早く解決できれば、保留時間が減るだけでなく、後処理で「回答が合っていたか確認する時間」や「調べ直して折り返す手間」を無くすことができます。
キーワード検索で即座に回答候補が出るようなナレッジベースを構築し、常に最新の情報に更新しておく体制を作りましょう。
オペレーターが自信を持って回答できるようになれば、後処理での迷いや確認作業が減り、結果としてACWの短縮につながります。

手順4:オペレーターのタイピングスキルを向上させる

地道ですが確実なのが、タイピングスキルの向上です。
定期的にタイピングテストを実施したり、ゲーム感覚で練習できる時間を設けたりして、底上げを図ります。

また、単に打鍵速度を上げるだけでなく、ショートカットキー(コピー&ペースト、ウィンドウの切り替えなど)の活用を徹底させることも効果的です。
マウスに手を伸ばす回数を減らすだけで、作業効率は格段に上がります。
新人研修の段階で、自社のシステム操作に特化したPC操作トレーニングを組み込むことをお勧めします。

手順5:定期的な研修で要約スキルを教育する

顧客の長い話をそのまま記録するのではなく、要点を短くまとめる「要約力」を鍛える研修を実施します。
例えば、実際の通話音声を聞いて、制限時間内に応対履歴を作成するロールプレイングなどを行います。

ここで重要なのは、「誰が見ても分かる簡潔な文章」を書くコツを教えることです。
主語と述語を明確にする、事実と感情を分けるといったテクニックを習得させることで、入力文字数を減らしつつ、記録の質を維持することができます。
フィードバックを通じて、無駄な記述を削ぎ落としていく訓練が有効です。

手順6:CRMを導入し顧客情報へのアクセスを早くする

運用での改善に限界を感じたら、CRM(顧客関係管理)システムの導入や刷新を検討します。
優れたCRMは、電話番号から自動で顧客情報を検索し、過去の対応履歴や購入情報をポップアップ表示してくれます。
これにより、オペレーターは電話が鳴った瞬間に顧客の背景を把握でき、一から情報を聞く手間や検索する時間を省けます。
また、入力画面が直感的で使いやすいCRMを選べば、クリック数や画面遷移を最小限に抑えることができ、物理的な操作時間を短縮できます。

手順7:CTI連携で電話とPC業務を統合する

CTI(Computer Telephony Integration)システムを導入し、電話機とPCを連携させることも強力な手段です。
CTIを活用すれば、PC画面上のクリックだけで発信や着信応答ができるようになります。

さらに、CRMと連携させることで、着信と同時に顧客情報画面を自動で開く「スクリーンポップアップ」機能が使えるようになります。
これにより、通話終了後に手動で履歴作成画面を開くといった動作が不要になり、シームレスに後処理業務へ移行できるため、1件あたり数秒の短縮が積み重なって大きな効果を生みます。

手順8:音声認識システムで入力を自動化する

最新の技術として注目されているのが、音声認識システムの導入です。
通話内容をリアルタイムでテキスト化し、自動で要約まで行ってくれるシステムも登場しています。
これにより、オペレーターはゼロから入力するのではなく、自動生成されたテキストを確認し、微修正するだけで後処理を完了できるようになります。
入力作業の負担を劇的に減らすことができるため、ACW削減の切り札として多くの企業で導入が進んでいます。
導入コストはかかりますが、費用対効果は非常に高い施策と言えます。

ACW削減によって得られる3つの大きなメリット

ACWの削減に取り組むことは、単に数値を良くするだけでなく、コールセンター運営全体にポジティブな波及効果をもたらします。
ここでは、ACW短縮によって得られる3つの具体的なメリットについて解説します。
これらのメリットを理解しておくことで、現場への説明や上層部への予算申請もしやすくなるでしょう。

オペレーターの対応件数が増加する

ACWが短くなるということは、オペレーターが電話対応以外の作業に拘束される時間が減ることを意味します。
その分、より多くの電話を受けることができるようになり、センター全体の応答率が向上します。

例えば、ACWを1分短縮できれば、1時間あたり数本の追加対応が可能になる場合もあります。
これは特に、入電が集中するピークタイムにおいて大きな威力を発揮します。
機会損失を防ぎ、より多くのお客様とつながることができるようになるのは、ビジネスにとって直接的なプラスとなります。

人件費などの運営コストを削減できる

対応効率が上がれば、同じ入電数を処理するために必要な人員数を減らすことができます。
これは人件費の削減に直結します。

また、残業時間の短縮にもつながるため、残業代の抑制や、オフィスの光熱費などの変動費削減にも寄与します。
さらに、業務負荷が減ることでオペレーターのストレスが軽減されれば、離職率の低下も期待できます。
採用や研修にかかるコストは非常に高額であるため、離職を防ぐことは長期的な視点で見ても大きなコスト削減効果があります。

顧客の待ち時間が減り満足度が向上する

オペレーターの回転率が上がれば、顧客が電話をかけてからオペレーターにつながるまでの待ち時間が短縮されます。
「電話がつながらない」「長く待たされる」というのは顧客満足度を大きく下げる要因ですが、ACW削減によってこれを解消できます。
スムーズにつながるセンターは顧客からの信頼も厚くなり、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。
内部の効率化が、結果として顧客体験(CX)の向上につながるという好循環を生み出すことができるのです。

ACW削減で失敗しないために注意すべき3つのこと

ACW削減で失敗しないために注意すべき3つのこと

ACW削減はメリットが多い一方で、やり方を間違えると逆効果になるリスクも潜んでいます。
数字を追うあまり、大切なことを見失ってはいけません。最後に、改善活動を進める上で必ず押さえておきたい3つの注意点を解説します。
これらを意識することで、副作用のない健全な効率化を実現しましょう。

応対品質を絶対に低下させない

最も注意すべきは、スピードを重視するあまり応対品質を犠牲にしてしまうことです。
オペレーターが早く電話を切りたいがために早口になったり、説明を省略したり、顧客の話を遮ったりするようでは本末転倒です。

また、後処理を急ぐあまり入力内容が雑になり、次回対応時に必要な情報が残っていないという事態も避けなければなりません。
「品質を維持した上での効率化」が大前提であることを、常に現場にメッセージとして発信し続ける必要があります。

現実的で段階的な目標を設定する

最初から高すぎる目標を設定すると、現場に過度なプレッシャーを与えてしまいます。
「来月からACWを半分にする」といった無謀な目標は、オペレーターのモチベーションを下げ、不正や隠蔽(入力せずに終了するなど)を招く原因になりかねません。

まずは現状の数値を正確に把握し、無理のない範囲で段階的に目標数値を設定していくことが大切です。
例えば「まずは10秒短縮」といった小さな成功体験を積み重ね、徐々にレベルを上げていくアプローチが有効です。

オペレーターの意見を必ず取り入れる

ACW削減の施策を考える際は、管理者だけで決めるのではなく、実際に業務を行っているオペレーターの意見を聞くことが不可欠です。
「どの画面が使いにくいか」「どの入力項目が負担になっているか」といった現場のリアルな声の中にこそ、改善のヒントが隠されています。
現場を無視して一方的に新しいルールやツールを押し付けても、定着せずに形骸化してしまうことが多いです。
定期的にヒアリングの場を設け、現場と一緒に改善策を作り上げていく姿勢が、プロジェクト成功の鍵を握ります。

まとめ:ACW削減で生産性の高いコールセンターを実現しよう

ACW削減には「ツール活用」と「運用ルールの標準化」の両面からのアプローチが必要です。
テンプレートや辞書登録を活用し、入力作業そのものを減らす工夫をすると良いでしょう。

また、品質を犠牲にせず、現場の声を取り入れながら段階的に進めることが成功のポイントです。
まずは自社の現状分析から始め、できることから着手していきましょう。

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