インターネットやスマートフォンの普及により、市場や消費者の行動は大きく変化しています。従来のビジネスモデルでは思うように売上・利益を上げるのが難しく、悩んでいる企業も少なくありません。
そこで注目されているのが、新しいビジネスモデルであるD2Cです。D2Cの市場規模は年々拡大し、参入する企業も増えていますが、どんなものかいまいち理解していない、ECとの違いがわからないという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、D2Cとはどんなものなのか、概要やメリット・デメリット、成功のために必要なポイントについてお伝えします。
D2Cとは

D2C(DtoC)とは、「Direct to Consumer」の略で、企業が自社で企画・製造した商品やサービスを、顧客に直接販売するビジネスモデルを指します。
販売は、自社が運営するECサイトを通じて行われ、卸売業者や流通、小売業者を通しません。つまり、企画・製造、販売からアフターフォローまでを、一貫して自社で行います。
インターネット上で顧客に商品やサービスを販売する点は、ECもD2Cも同じです。しかし、ECはインターネット上での商品やサービスの売買全般を指します。
例えば、他社が企画・製造した商品を仕入れてECサイトで販売する場合、ECではあるものの、D2Cには該当しません。D2Cは、ECという広い意味での販売手法の中に含まれる、ひとつの業態であるといえます。
B2CやB2Bとの違い
D2Cと似た言葉に、B2B、B2Cがあります。これらの言葉との違いについても整理しておきましょう。
まず、B2B(BtoB)とは、「Business to Business」の略で、企業が企業に対して商品やサービスを販売するビジネスモデルを指します。
一方、B2C(BtoC) とは、「Business to Consumer」の略で、企業が消費者に対して商品やサービスを販売するビジネスモデルを指します。
D2Cが、顧客に「直接」商品やサービスを販売すること、つまり「どのように」販売するかを指す言葉なのに対して、B2BとB2Cは、誰が誰と取引するかを指す言葉です。
D2Cが注目されている背景

昨今、D2Cが注目を集めている背景には、市場や消費者の行動の変化が大きく関係しています。
ここでは、5つの要因を解説します。
1.スマートフォンとインターネットの普及
スマートフォンの普及により、インターネットやSNSを日常的に利用する世代が増加しました。
令和4年版情報通信書によると、PCのインターネット利用率が48.1%に対し、スマホのインターネット利用率は68.5%と大きく上回ることが明らかになっています。
このような環境の変化に伴い、ECサイトを通じた購買が一般化し、スマホ経由のEC市場は物販分野の約半数を占めるまでに成長しています。
2. SNSの発達と顧客との直接コミュニケーション
SNSの普及により、企業は顧客と直接つながり、双方向のコミュニケーションが可能になりました。
これまではマスマーケティングに頼ることが多かった販売活動も、SNS広告やインフルエンサーを活用することで、特定のターゲット層にピンポイントでアプローチできるようになっています。
さらに、SNS上での口コミやユーザーの投稿がブランドの信頼性や共感を高める重要な要素なっており、消費者は単なる商品情報だけでなく、ブランドの世界観やライフスタイルに共感して購入を決めるケースが増えています。
このように、SNSはD2Cブランドが顧客のニーズをに捉え、直接的かつ効果的に情報発信を行うためのなツールとなっています。
3. 消費者の価値観の変化
現在の消費者は、「モノを所有すること」よりも、「購入によって得られる体験や価値」を重視する傾向があります。
特に、D2Cは商品の世界観やライフスタイルを提案し、消費者が共感しやすいブランド体験を提供できるため、価値観の変化にマッチしたビジネスモデルとしても注目されています。
4. ECサイト構築のハードル低下とデジタルマーケティングの進化
以前はECサイトの構築に多大なコストや技術が必要でしたが、現在はBASEやShopifyなどのプラットフォームの登場により、低コストかつ短期間で自社ECを立ち上げることが可能になりました。
加えて、SEO(検索エンジン最適化)やSEM(検索連動型広告)、SNS広告などのデジタルマーケティング手法が発展し、効率的にターゲット層へリーチしながら集客コストを抑えることができるようになりました。
5. 新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルス感染症の拡大により、非対面での購買ニーズが急増しました。
外出自粛や店舗の営業時間短縮などの影響で、オンラインでの買い物が一般化し、EC市場は拡大しています。
この環境変化は、消費者と直接つながるD2Cモデルにとって追い風となり、リアル店舗に依存しない販売形態として注目が集まっています。
今後も非対面取引の需要は根強く続くと見込まれており、D2Cの成長を支える重要な要素となっています。
D2Cの市場規模

D2Cの市場規模は、年々拡大しています。
売れるネット広告社が2020年に行った調査によると、ネットメディアを通じで自社商品を直接消費者に販売する「デジタルD2C」の市場規模は、2019年時点で2兆円を超え、2025年には3兆円に達する見込みです。
※出典元:売れるネット広告社(https://www.ureru.co.jp/news/archives/122)
こうした成長は、D2Cが注目を集め、参入する企業が増えていることだけが理由ではありません。
顧客に直接商品を販売するというD2Cの業態が、ロイヤリティの育成につながりやすいなど、収益の向上につながるビジネスモデルであることも挙げられるでしょう。
そのため、D2Cは、今後も中長期的に高い成長が継続すると見られています。

D2Cのメリットについて

D2Cには、従来の流通を介さずに自社で商品開発から販売までを一貫して行うことで得られる多くのメリットがあります。
ここでは、特に重要な4つのポイントを紹介します。
1.高い利益率の実現
D2Cは仲介業者を通さずに自社で製造・販売を行うため、中間マージンを大幅に削減できます。
また、実店舗を持たずECサイトを主な販路とすることで、店舗運営費や人件費、輸送費などのコストも抑えることが可能です。
さらに、ターゲットを絞ったデジタルマーケティングにより効率的に集客ができるため、従来のマーケティングと比較して、費用対効果が高く、結果として利益率を実現しやすいのが特徴です。
2.顧客との距離が近い
D2Cは、自社のECサイトやSNSを通じて、顧客と直接やり取りできます。このため、顧客の要望やニーズ、不満を直に聞くことができ、それらにすぐに対応することも可能です。
例えば、SNSを通した顧客とのコミュニケーションでくみ取った要望を、商品やサービスの改善に活かすことができます。顧客の細かなニーズに寄り添った商品、サービスを提供できることは、コアなファンの獲得につながるでしょう。
また、顧客は自身の要望が商品やサービスに反映されることで企業に対してポジティブな感情を持つため、顧客満足度の向上やリピーターの獲得も期待できます。
顧客との距離が近いことは、自社のブランドイメージやメッセージを伝えやすいというメリットもあります。特に、コアなファンやリピーターに向けて情熱や理念を届けることは、価値観の共有につながります。
価値観を共有できれば、より顧客との心理的距離が近くなり、ロイヤリティも向上します。
3.顧客データを貯めやすい
D2Cでは、自社ECサイトを通じて顧客の住所、家族構成、年齢といった基本情報だけでなく、Webの閲覧履歴や購買履歴などの行動データも収集・蓄積できます。
集めたデータを分析し、顧客の心理や行動を把握することは、マーケティング戦略を練るのに大いに役立ちます。
自社が独自に集めたデータで、独自のマーケティングができる点もメリットです。
4.事業展開の柔軟性と自由度の高さ
自社で販売戦略やキャンペーンを自由に設計できるため、マーケティングの自由度が高いこともD2Cの魅力です。
ニッチな市場や特定の商品に絞った効率的な事業展開が可能で、大手企業が参入しにくい分野で独自性を発揮しやすい環境が整っています。
また、市場や顧客の反応を迅速に反映しながら柔軟に商品開発や戦略を調整できるため、変化の激しい市場でも競争力を維持しやすいのも特徴です。
D2Cのデメリットについて

D2Cをはじめるには、商品販売を行う自社サイトの立ち上げ費用など、導入コストがかかります。また、ブランドが認知されるにはある程度の時間がかかること、商品力が問われることにも注意が必要です。
ここでは、D2C事業を展開する際に気をつけたいポイントを3つお伝えします。
1.導入コストがかかる
集客コストやECサイトの制作費など、初期投資費用がかかります。
ショッピングモール型のサイトに出店する場合、ショッピングモール自体に集客力があったり、似た商品を探している顧客から商品を見つけてもらえることがあるため、特に集客をしなくても、出品するだけで商品の認知や購入につながる可能性があります。
しかしD2Cの場合、自社のECサイトを制作し、自力で集客しなければなりません。ECサイトの制作には、設計から構築までの費用がかかります。また、集客では広告出稿やサイト内のコンテンツの作成、SNS運用などの費用がかかります。
しかし長い目で見れば、D2Cを選ぶことはコスト削減につながります。ショッピングモール型に出店する場合に必要な、販売手数料や月額費用がかからないからです。
マス市場で商品を販売するのにかかるコストと比べても、D2Cの導入コストははるかに経済的です。
2.ブランド認知までに時間がかかる
D2Cは、軌道に乗るまで時間がかかります。
ECサイトを制作しSNSの運用をはじめても、すぐにブランドが認知されることは困難です。商品の販売につなげるには、地道な宣伝と広報活動が欠かせません。
そのためには、Webマーケティングの知識が必要です。自社サイトのコンテンツにSEO対策をしたり、SNSでフォロワーを増やしたり、さまざまな施策を行います。自社ブランドの魅力やストーリーを、顧客に向けて自ら発信していくことも必要です。
このようにD2Cでは、ブランド認知までに時間も労力もかかります。しかし、ブランドが認知されれば、顧客をリピーターやファンに育てやすいビジネスモデルです。
3.商品力に左右される
本当に良いものでなければ売れないのも、D2Cの特徴です。ブランドイメージに共感して購入されることがあったり、SNS戦略によるブランドや商品のイメージが重視されたりすることはあるものの、商品に魅力がなければ購入にはつながらず、ビジネスも成功しません。
ただし、商品力が確かであれば、顧客が積極的に魅力を拡散してくれるのもD2Cの特徴です。SNSなどを通じて良い口コミが広がれば、ブランドの認知や購入につながりやすくなります。
D2Cの成功に必要なポイント

D2Cを成功させるには、顧客の心をしっかりつかむこと、積極的にマーケティングを行うことが必要不可欠です。
顧客の心をつかむには、ブランドや商品への共感を生み、ファンになってもらうための施策を行います。
ストーリーに共感してもらう
D2Cでは、顧客からブランド、商品への共感を得ることが非常に重要です。共感を得られれば、顧客のロイヤリティも高まります。
ブランドや商品への共感を得るためには、顧客からの共感を呼ぶブランドストーリーを伝えることが効果的です。
なぜその商品を作ったのかどんな想いが込められているのか発信することで、顧客に信頼感を与え、ブランド価値高められます。
また、リピーターになってくれることで、LTV(顧客生涯価値)の最大化も可能になります。共感はSNSを通じて拡散されやすいため、ブランド認知やファンの獲得につながることも期待できます。
顧客と一緒に成長していくイメージをもつ
D2Cの強みは顧客との距離が近いことです。顧客が企業に対して、多くの場合、共感や親近感、愛着を持っています。
D2Cを成功させるためには、顧客との心理的な距離の近さを活かし、一緒に成長していくイメージを持つことも大切です。
例えば、公式のSNSで顧客とやり取りするコミュニティを作るなど、参加型の接点を積極的に作っている企業もあります。
顧客が自然に商品を宣伝したくなるような関係性を築くことで、口コミによるさらなる共感の連鎖生まれます。
ターゲットのニーズを捉えた商品提供
D2Cは自社ECサイトを通じて直接販売するため、まずはターゲットとなる顧客層のニーズを正確に把握し、それに高品質で価値のある商品を提供することが不可欠です。
特に、「サプリメント・健康食品」「化粧品」「洋服」など、ECでの購入高いジャンルは成功しやすい傾向にあります。
また、顧客が利用しやすい多様な支払い用意することも重要です。
データを活用し高速PDCAを回す
D2Cは、多くが小規模な組織で運営されており、自由度が高いことも魅力のひとつです。また、前述のように、自社サイトからたくさんのデータを得られます。
自社ECサイトから得られる豊富な顧客データを活用し、施策の効果を迅速に検証・改善していくことが成功の鍵です。
データの分析を行い、スピード感を持ってPlan(計画)、 Do(実行)、 Check(評価)、 Act(改善)のPDCAを回していくのがポイントです。
データに基づいたスピーディーな戦略立案と実行が、消費者のニーズに沿った事業展開に役立ちます。
D2Cの成功事例

D2Cビジネスの成功には、顧客のニーズに寄り添い、独自の価値や体験を提供することが重要です。
ここでは、代表的な成功事例を2つ紹介します。
成功事例1|ニューヨーク発のアイウェアブランド
このブランドは、自社で企画から販売までを一貫して行うことで、従来の平均価格の半分以下という手頃な価格でおしゃれなメガネを提供しています。
成功のポイントは、創業者の実体験に基づく「誰もが気軽に選べるメガネを届けたい」というブランドストーリーがターゲット層のミレニアル世代に強く共感されたことです。
また、自宅で5種類のメガネを無料で試着できるサービスを導入し、オンライン購入の心理的ハードルを大幅に下げました。
この仕組みはSNSでの口コミ拡散も促進し、ブランド認知の拡大に寄与しています。
さらに、現在では全米に120以上の店舗を展開し、実際の試着や目の検査も可能にするなど、オンラインとオフラインを融合させた顧客体験の強化も図っています。社会貢献活動として「メガネ1つ購入につき途上国に1つ寄与する」取り組みも行い、若い世代からの支持を集めています。
成功事例2|定期おやつ配送のD2Cサービス
このサービスは、「美味しいものをワクワクしながら食べる体験」をコンセプトに、人工添加物使わず自然素材にこだわったおやつを定期的に届けています。子供にも安心して与えられる商品を提供している点が特徴です。
最大の強みは、利用開始時に苦手な食材や避けたい成分を登録すると、それに応じたおすすめのおやつを詰め合わせて届ける「レコメンデーション機能」です。
さらに、届いたおやつの評価をフィードバックすることで、次回以降の内容に嗜好が反映される仕組みを採用し、高い顧客満足度を実現しています。
また、ECサイトでは人気商品や定番商品を紹介し、ブランドからのおすすめ商品を織り交ぜることで、ユーザーが新しい味に出会う機会を作り出しています。

まとめ
D2Cは、マスマーケティングに頼らず、独自の世界観を持って販売することができるビジネスモデルで、今後ますます成長を続けることが予想されています。
D2Cを成功させるには、前項で挙げた3つのポイントはもちろん、自社のECサイト上で、顧客一人ひとりのニーズに合わせた対応をすることも重要です。
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