【AI機能搭載CRM17選】AI時代のCRMとは?業界別活用ガイド

Summary
- DX推進において、企業規模による取り組み格差が大きく、中小企業は知識不足や効果イメージの欠如が課題。
- 成功企業は全社的なデータ活用を実現し、DX成果に大きな差が生じている。
- CRM導入はDX推進の第一歩として効果的で、顧客データの一元管理や営業活動の可視化が可能。
- CRMは段階的導入ができ、全社での情報共有や競争力強化に即効性がある。
- DX遅れは競争上のリスクとなり、中小企業にとっては今が優位性確立の好機。
- AI搭載CRMは業務効率化やデータドリブン経営を支援し、持続可能な営業改革を実現する重要ツール。
BtoB営業が直面する課題とCRMの必要性

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、もはや企業の成長戦略において避けては通れない課題となっています。更にそのDXを推進するフェーズにおいて、AIをどこまで活用できるかが推進スピードに大きな影響を与えます。
本記事では、DXの成功企業に共通する「全社的なデータ活用」の実現に向けて、その第一歩となるCRMの導入から活用まで、実践的なアプローチを詳しく解説していきます。
特に、データ活用による具体的な成果創出のプロセスに焦点を当て、予算や規模に関係なく、すべての企業が取り組めるDX推進の方法を紹介しながら、CRMシステムにおけるAI活用の進化についても触れていきたいと思います。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2024」によると、企業規模によってその取り組み状況には大きな開きがあります。
企業規模で見るDXの現状と課題
■ 企業規模による取り組み格差
企業規模別のDX取り組み状況:従業員1,001人以上の大企業
- DXに取り組んでいる企業が96.6%
- 全社的なDX推進が64.3%と高水準
従業員100人以下の企業
- DXに取り組んでいる企業は44.7%に留まる
- 全社的な取り組みは14.3%と低水準

■ DX未着手の真の理由
大企業にできて、100人以下の企業に着手できない理由とは、単純に予算が原因なのでしょうか?
DX導入を推進していない企業にアンケートしたところ、以下のような実態が明らかになっています。
主な未着手理由:
- DXに取り組むための知識や情報の不足(59.0%)
- 自社がDXに取り組むメリットが不明確(43.6%)
- 具体的な取り組み方がわからない
これらの結果が示すように、中小企業のDX未着手の主因は予算ではなく、「何から始めればよいのか」「どのような効果が得られるのか」という具体的なイメージの不足にあります。
■ DX成功企業から見る成果創出のポイント
さらに注目すべきは、実際にDXを推進している企業間でも、その成果に大きな差が生じている点です。IPAの調査によると、この差は特にデータの利活用方法に顕著に表れています。
DX成果と全社的なデータ活用の関係:DXで成果を上げている企業:
- 全社でのデータ利活用:26.3%
- 事業部門・部署ごとの利活用を含めると70%超
- 組織的なデータ活用の文化が定着
DXで成果が出ていない企業:
- 全社でのデータ利活用:8.1%
- 部門別の活用を含めても40%未満
- データ活用が限定的または散発的
この30%以上の差は、DX推進において「全社的なデータ活用」が重要な成功要因であることを示唆しています。
■ CRMから始めるDX推進の有効性
このような状況において、CRM(顧客管理システム)の導入は、以下の理由で理想的なDXの第一歩となります。
1. 効果が明確で理解しやすい
- 顧客データの一元管理による業務効率化
- 営業活動の可視化による具体的な成果測定
- 日々の業務改善効果を即座に実感
2. 段階的な推進が可能
- 基本機能からスモールスタート
- クラウド型による初期投資の最小化
- 既存業務フローを活かした導入
3. 全社で顧客情報を共有しやすい
- 部門を越えた顧客情報の一元管理
- リアルタイムな情報更新と共有
- 組織全体での顧客理解の促進
4. 競争力強化への即効性
- 大手企業との情報管理格差の解消
- データに基づく営業戦略の立案
- 組織的な営業力の強化
このように、CRMの導入は、予算や人員に制約のある企業にとって、最も効果的なDX推進の入り口となります。特に全社での情報共有基盤として活用することで、組織全体のデジタル化への理解と実践が自然と進み、持続的な改善サイクルを生み出すことができます。
■ DX推進による競争優位性の確保
特に注目すべきは、DXへの取り組みの遅れが、今後の企業間競争において深刻な不利を生む可能性が高いという点です。
DX推進企業の優位性:
- データに基づく迅速な意思決定
- 効率的な営業活動による収益性向上
- 顧客満足度の向上と継続的な関係構築
未着手による競争上のリスク:
- 大手企業との営業効率の格差拡大
- 顧客ニーズへの対応力低下
- デジタル時代における人材確保の困難
逆説的には、多くの企業でDX化が遅れている現状は、先行してDXに取り組む企業にとって大きなチャンスといえます。
特に中小企業において、今このタイミングでDXに着手することは、競合他社に先んじて優位性を確立できる絶好の機会となります。DXへの取り組みを「やらなければならない課題」ではなく、「競争優位性を獲得するチャンス」として捉え直すことで、より戦略的な推進が可能となるでしょう。
■ CRMを起点としたデータ活用の有効性
このような状況を踏まえると、CRMの導入は単なるシステム導入以上の意味を持ちます
1. 全社的データ活用の基盤として
- 顧客データの一元管理による情報共有
- 部門を越えたデータ活用の実現
- データドリブンな意思決定の習慣化
2. 段階的なデータ活用の実践
- 営業データからの具体的な分析開始
- 部門間でのデータ連携の促進
- データ活用スキルの組織的な向上
3. 成果の可視化と展開
- 営業活動の定量的な評価
- 成功事例の組織的な共有
- データに基づく継続的な改善
CRMを起点としたデータ活用は、単なる顧客管理の効率化にとどまりません。全社的なデータ活用の文化を醸成し、より高度なDX推進への足がかりとなります。
まずは身近な顧客データの活用から始め、段階的に活用範囲を広げていくことで、持続可能なDX推進の基盤を構築することができます。
次章では、このようなアプローチを具体的に実現するための、CRM導入のステップと実践的なポイントについて解説していきます。
[出典・補足]
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」(2023年度調査確定値)
https://www.ipa.go.jp/digital/dx_survey/dx_trends_2024.html
そもそもCRMとは?BtoB営業におけるCRM活用の本質的価値

そもそもCRMとは?
■ CRMの基本的な考え方と市場動向
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、単なる顧客データベースではありません。顧客との関係性を戦略的に構築・維持・強化するための経営手法です。
現在、国内外の様々なIT企業からCRMツールが提供されています。大手クラウドベンダーの製品から、業界特化型の専門ツール、中小企業向けの導入しやすい国産ツールまで、企業規模や業態に応じた選択が可能です。
特に近年は、AI機能を搭載した最新のツールも登場し、より使いやすく、効果的な顧客管理を実現できるようになってきています。
料金体系は、多くのツールが「初期費用+月額利用料(ユーザー数に応じた課金)」という形を採用しています。クラウド型のため大規模なシステム投資が不要で、利用人数に合わせて柔軟にコストを調整できる点が、特に中小企業にとって導入のハードルを下げています。
このように、CRMツールは進化を続けており、より使いやすく、より手の届きやすいものとなっています。企業は自社の規模や目的に合わせて最適なツールを選択できる時代となったのです。
■ CRMの3つの基本機能
CRMツールの基本機能は、大きく以下の3つに分類されます。それぞれの機能が、BtoB営業における様々な課題解決に貢献します。
1. 顧客情報の一元管理
- 商談履歴、見積情報、契約状況の統合管理
- 部門を越えた情報共有の実現
- データの重複や散在を防止
2. 顧客対応の品質向上
- 過去の対応履歴の即時確認
- 担当者不在時のバックアップ体制強化
- 組織的な顧客フォロー体制の確立
3. データに基づく戦略立案
- 商談進捗の可視化
- 成約率の分析
- 効果的な営業施策の特定
これらの基本機能は、単なる情報管理にとどまらず、組織全体の営業力強化と業務効率化を実現する基盤となります。
■ SFAやMAとの違いを理解する
CRMと関連する重要なツールとして、SFAとMAがあります。それぞれの特徴を理解することで、より効果的な活用が可能になります。
SFAとは?
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)は、営業活動のデジタル化・自動化を実現するツールです。営業担当者の日々の活動記録から、商談管理、案件進捗の可視化まで、営業プロセス全体をサポートします。
MAとは?
MA(Marketing Automation:マーケティング自動化ツール)は、見込み顧客の発掘から育成までのマーケティング活動を自動化するツールです。メール配信やウェブサイトでの行動分析、リードのスコアリングなど、マーケティング活動全般を効率化します。
近年では、CRM/SFA/MAの機能を統合的に提供するツールも増えており、企業は自社の課題やニーズに応じて、最適な組み合わせを選択できるようになっています。
BtoB営業における本質的価値
CRMがBtoB営業にもたらす本質的な価値は、以下の3点に集約されます。
1. 属人化からの脱却
- 個人の経験やスキルに依存しない営業体制の構築
- ベテラン社員のノウハウのデータベース化
- チーム全体での知見共有と活用
2. 組織的な顧客育成の実現
- 長期的な顧客関係構築
- 部門を越えた顧客理解の共有
- 一貫性のある顧客対応
3. データドリブンな意思決定
- 客観的な数値に基づく戦略立案
- 効果的な営業リソース配分
- 精度の高い売上予測
CRMの本質的価値は、BtoB営業における構造的な課題を解決し、持続可能な営業体制の構築を可能にする点にあります。特に、昨今の働き方改革やデジタル化の流れの中で、その重要性はますます高まっているといえるでしょう
業界特性で違いが出るCRM活用

■ 業界特性に応じたCRM活用の重要性
BtoB営業において、「顧客を知る」ことは全ての基本です。しかし、業界によって商談サイクルや顧客との関係性構築方法は大きく異なります。そこで、主要な業界別にCRMの具体的な活用シーンをご紹介します。特に、場所や時間に縛られない新しい働き方への対応と、デジタル化による業務効率向上の両立に焦点を当てて解説していきます。
■ 製造業でのCRM活用シーン
製造業のBtoB営業では、技術的な提案力と長期的な関係構築が重要です。特に、商談から納品後のアフターフォローまで、長期的な顧客対応が求められます。さらに、製品開発にも直結する顧客からのフィードバックを適切に管理・活用することで、競争力の強化につながります。
1. 商談~納品までの長期的進捗管理
- 見積書・技術仕様書の履歴管理
- 承認プロセスの自動化
- 納期調整の一元管理
BtoB営業での活用シーン
- 複数の技術部門と連携が必要な大型案件で、モバイルでの情報共有により、外出先からでもリアルタイムな進捗確認と更新が可能に。
- ベテラン営業の商談ノウハウをデータベース化し、若手でも一定水準の技術提案が可能に。
2. 技術仕様書や図面の一元管理
- バージョン管理の自動化
- 部門間での最新情報共有
- セキュアなファイル共有
BtoB営業での活用シーン
- 取引先ごとの過去の技術提案履歴をデータベース化し、類似案件での提案品質を向上。
- 図面や仕様書の更新情報をリアルタイムに共有し、手戻りを防止。
3. アフターサービス情報の統合
- 保守履歴の一元管理
- 予防保全の提案機会の創出
- クレーム対応の迅速化
BtoB営業での活用シーン
- 定期メンテナンス情報を営業・技術・サービス部門で共有し、追加提案の機会を創出。
- 不具合の早期発見と対応により、顧客満足度を向上。
4. 受注・失注情報の戦略的活用
- 受注要因・失注要因の体系的な分析
- 競合との差別化ポイントの明確化
- 製品開発へのフィードバック
BtoB営業での活用シーン
- 失注案件の詳細な要因分析から、製品の改善点を抽出し開発部門へ提案。
- 業界別・用途別の受注傾向を分析し、製品ラインナップの最適化に活用。
- 競合製品との比較情報を蓄積し、次世代製品の開発方針に反映。
製造業におけるCRM活用は、単なる顧客管理を超えて、技術力の継承や品質管理の向上、さらには製品開発の強化にも貢献します。特に、属人化しがちな技術営業のナレッジを組織の資産として活用できる点は、経営層から見ても大きなメリットといえるでしょう。また、市場からの生の声を製品開発に活かせる点は、製造業の競争力強化において極めて重要な要素となります。
製造業におけるCRM導入事例

株式会社ヒューテックは、製造業向け検査装置のリーディングカンパニーとして長年事業を展開しており、特に既存顧客への営業活動が中心です。同社は営業部門だけでなく、サービスエンジニアや製造・開発部門も顧客対応に関わるため、部門横断での情報共有が不可欠でした。
従来のSFA/CRMツールは高コストで製造・開発部門の利用が難しく、情報共有が遅れ営業活動に支障をきたしていました。そこで、コスト削減と全社員の利用徹底を目的に「GENIEE SFA/CRM」へリプレイス。これにより、顧客接点の全情報が一元管理され、部門間の連携が強化されました。
営業部門約20名は日々の商談状況を詳細に入力し、管理職はダッシュボードで進捗を把握。商談期間が長期化しやすいBtoBの特性に対応し、課題やチャンスを迅速に共有・解決する体制を構築しました。特に故障や不具合対応の情報がリアルタイムで共有されることで、営業は顧客のトラブルを早期に察知し、迅速な対応が可能に。結果として、トラブル解決までの時間短縮と顧客満足度向上に繋がっています。
同社はGENIEE SFA/CRM」導入により、情報のバラツキを解消し、会社全体で蓄積されたデータを活用した営業戦略の高度化を実現しました。
■ 商社でのCRM活用シーン
商社のBtoB営業では、多岐にわたる商材と複雑な取引関係の管理が課題となります。
また、仕入先と販売先の双方との良好な関係維持が不可欠です。
CRMの活用により、これらの課題を効率的に解決し、営業力の強化につながります。
1. 多岐にわたる取扱商品の管理
- 商品別の販売実績分析
- 仕入先との取引条件の一元管理
- 在庫状況のリアルタイム把握
BtoB営業での活用シーン
- 外出先からでも最新の在庫状況や納期を確認し、その場で顧客に提案が可能に。
- 商品別の利益率分析により、重点商材の選定と営業戦略の最適化を実現。
2. 仕入先・販売先の統合管理
- 取引条件の履歴管理
- 与信管理の自動化
- 商流の可視化
BtoB営業での活用シーン
- 複雑な商流をビジュアル化し、新規ビジネス機会の発掘に活用。
- 取引先の信用情報をリアルタイムに更新し、リスク管理を強化。
3. 見積・発注業務の効率化
- 見積書作成の自動化
- 発注プロセスの標準化
- 価格改定の一括管理
BtoB営業での活用シーン
- 過去の取引データを基に、最適な見積条件を提案。
- 価格改定情報をリアルタイムに反映し、見積ミスを防止。
4. マーケットインテリジェンス強化
- 業界動向の分析
- 競合情報の集約
- 新規商材の開拓支援
BtoB営業での活用シーン
- 取引先からの情報を組織的に蓄積し、新規商材の開拓に活用。
- 業界トレンドを分析し、先回りした提案を実現。
商社におけるCRM活用は、複雑な取引関係の可視化と業務効率化を実現するだけでなく、新たなビジネス機会の創出にも貢献します。特に、属人化しがちな取引先との関係性を組織の資産として活用できる点は、持続的な成長を目指す経営層にとって重要な価値となります。
商社におけるCRM導入事例

蝶理株式会社は、属人化した営業活動と情報共有の課題を解決するため、「GENIEE SFA/CRM」を導入しました。これにより、営業案件の進捗が可視化され、社内での情報共有が円滑に。特に、これまで整備されていなかった見積もりの承認フローをワークフロー機能で自動化し、承認漏れや利益損失を防止。営業担当者の負担軽減と正確な売上予測が可能となりました。
また、営業間のコミュニケーションコストも削減され、案件情報のブラックボックス化が解消しました。
■ サービス業での活用シーン
サービス業のBtoB営業では、継続的な契約管理と顧客満足度の維持向上が重要です。
また、サービスの品質を均一に保ちながら、個々の顧客ニーズに柔軟に対応することが求められます。
1. 契約更新管理の自動化
- 更新時期の自動通知
- 契約条件の履歴管理
- 解約リスクの早期発見
BtoB営業での活用シーン
- 契約更新の3ヶ月前から計画的なアプローチを実現。
- 利用状況データから解約リスクを予測し、先手を打った対応が可能に。
2. サービス利用状況の可視化
- 利用頻度の分析
- 追加オプションの提案
- カスタマーサクセスの実現
BtoB営業での活用シーン
- 利用パターンを分析し、最適なサービスプランを提案。
- ユーザーの活用度を測定し、活用促進施策を展開。
3. カスタマーサポート情報の統合
- 問い合わせ履歴の一元管理
- FAQ活用による対応品質の均一化
- サポート品質の向上
BtoB営業での活用シーン
- 過去の対応履歴を参照し、一貫性のあるサポートを提供。
- よくある問い合わせをデータベース化し、回答の品質を向上。
4. 顧客フィードバックの活用
- サービス改善提案の管理
- 満足度調査の自動化
- サービス開発への反映
BtoB営業での活用シーン
- 定期的な満足度調査を自動化し、継続的な改善を実現。
- 顧客からの要望を体系的に管理し、サービス開発に活用。
サービス業におけるCRM活用は、契約管理の効率化だけでなく、サービス品質の向上と顧客満足度の維持向上に大きく貢献します。
特に、場所や時間に縛られない柔軟な顧客対応が可能になる点は、働き方改革を推進する現代のビジネス環境において、極めて重要な価値を持ちます。
サービス業界におけるCRM導入事例

株式会社IBJは、従来の営業管理ツールの費用対効果が悪く、営業現場への浸透も進まなかった課題を抱えていました。
コロナ禍を契機に、コスト削減と業務効率化を目的として、サポート体制も充実しランニングコストの低い「GENIEE SFA/CRM」への切り替えを決定。
導入後は、営業現場のレベルに合わせたシンプルな運用に変更し、使いやすいUIが現場に定着しました。
営業本部長の博多屋氏と営業推進部の横山氏は、日々の商談数や進捗をリアルタイムで把握し、チーム内での情報共有や会議も「GENIEE SFA/CRM」を中心に行うことで業務効率を向上させています。
結果として、商談数は年間で約2倍に増加し、ツールのコスト削減も実現。導入と同時に組織体制の見直しも成功し、売上・粗利の向上に大きく貢献しました。
■ 業界共通のDX推進におけるポイント
ここまで製造業、商社、サービス業それぞれの特性に応じたCRM活用シーンを見てきました。業界特性は異なっても、DX推進における共通の重要ポイントが浮かび上がってきます。特に、利便性の向上とセキュリティの確保という、相反する要求をいかにバランスよく実現するかが重要となります。
1. 「いつでも・どこでも」の実現
- モバイル端末からの情報アクセス
- リモートワーク時の業務継続性確保
- タイムリーな情報更新と共有
活用のポイント
- 外出先や在宅勤務でも、オフィスと変わらない顧客対応が可能に
- 働き方改革とDXの両立による生産性向上
2. 属人化からの脱却
- ベテラン社員のノウハウのデータベース化
- 標準的な業務プロセスの確立
- チーム全体での知見共有
活用のポイント
- 突発的な人員変更にも対応可能な体制構築
- 若手育成の効率化と早期戦力化
3. データドリブン経営の実現
- 経営判断に必要な情報の可視化
- 予測精度の向上
- 戦略的な資源配
- 戦略的な資源配分
活用のポイント
- 客観的なデータに基づく意思決定
- 市場変化への迅速な対応
4. 強固なセキュリティ体制の構築
- 多要素認証の導入
- アクセス権限の階層管理
- 操作ログの自動記録と分析
- データ暗号化の徹底
活用のポイント
- 情報漏洩リスクの最小化
- コンプライアンス要件への対応
- 取引先からの信頼性向上
5. セキュリティと利便性の両立
- シングルサインオンの導入
- 生体認証の活用
- 条件付きアクセス制御の実装
- デバイス管理の一元化
活用のポイント
- セキュアな環境下での業務効率向上
- マルチデバイス環境での安全性確保
6. コンプライアンス対応の自動化
- 法令改正への迅速な対応
- 監査証跡の自動記録
- プライバシー保護対策
- データガバナンスの強化
活用のポイント
- 規制要件への確実な対応
- 監査対応の効率化
進化を続けるCRMツールとAIがもたらす革新

AI技術の発展により、今後以下のような領域への貢献が期待されています
- 音声入力による業務効率化
- 商談内容の自動議事録化
- AIによる商談優先度の提案
- 予測精度の向上
- 不正アクセスの自動検知と防御
- セキュリティリスクの予測と対策提案
これらのAI技術はCRMとの連携によって更なる価値向上が見込まれています。CRMはいまや単なる顧客管理の効率化にとどまりません。業界特性に応じた活用を進めることで、企業のDX推進と働き方改革を同時に実現する強力なツールとなります。特に経営層にとっては、データに基づく的確な意思決定と、持続可能な営業体制の構築を実現する重要な経営基盤として位置づけることができます。さらに、強固なセキュリティ体制の構築により、デジタル時代における企業価値の保護と向上にも大きく貢献するでしょう。
AI搭載型CRMツール17選

これまで解説してきたように、CRMツールは基本機能の充実に加え、AI技術の実装により、さらなる進化を遂げています。ここでは、特にAI機能の実装が進んでいる主要なCRMツール17社をご紹介します。
なお、AI技術は日進月歩で進化しており、各ツールの機能も随時アップデートされています。最新の機能や価格については、必ず各ツールの公式サイトでご確認ください。
1. 機能特化型CRM(3社)
- 地図連携型:1社
- 名刺管理型:2社
2. 業界特化型CRM(7社)
- 不動産業界向け:3社
- 人材業界向け:4社
3. 総合型CRM(7社)
- グローバル展開企業から国内特化型まで
■機能特化型CRM
【地図連携】

■ 分類と掲載数(計17社)
項目 | 内容 |
---|---|
サービス名 | UPWARD(アップワード) |
URL | https://www.upward.jp/ |
機能分類 | SFA + CRM + 地図連携 |
AI機能 | – 外回り営業のためのAI UPWARD INSIGHT – ネクストアクションの提案 – 売上予測と現状のギャップの可視化 – ルート最適化AI |
解説 | 地図情報を活用した営業活動の効率化に特化。位置情報を基に訪問行動の把握や計画立案を支援し、移動時間の最適化が可能。エリアマーケティングや商圏分析など地域特有の分析機能も充実。 |
【名刺管理】

項目 | Sansan | Eight Team |
---|---|---|
サービス名 | Sansan | Eight Team |
URL | https://jp.sansan.com/ | https://8card.net/ |
機能分類 | 名刺管理 + CRM | 名刺管理 + CRM + ビジネスSNS |
AI機能 | – AI-OCRによる高精度な名刺データ化 – 企業データベースとの自動マッチング – 重複アカウントの自動検知 – 人事異動情報の自動更新 ※全プランで利用可能 | – AIによる名刺データ化 – ビジネスSNSとの連携 – 人事異動の自動追跡 – コンタクト予測 ※Business Planから利用可能 |
解説 | 法人向け名刺管理サービスのパイオニア。99.9%の精度で名刺データ化し、豊富な連携機能で営業DXを支援。名刺を起点とした企業データベース構築が可能。 | 個人向けサービス「Eight」の法人向けプラン。ビジネスSNSの特徴を活かした人脈管理が可能で、リアルタイムな人事異動情報の追跡が強み。 |
■業界特化型CRM
【不動産業界】

項目 | いい生活 ES-B2B | いえらぶCLOUD | PinRich |
---|---|---|---|
サービス名 | いい生活 ES-B2B | いえらぶCLOUD | PinRich |
URL | https://www.es-service.net/service/esb2b/ | https://cloud.ielove.jp/ | https://top.pinrich.com/ |
機能分類 | CRM + SFA + 物件管理 | MA + CRM + SFA + 物件管理 | MA + CRM + SFA + 物件管理 |
AI機能 | – AIによる物件情報の自動入力補助 – 物件評点機能による広告効果の最適化 – セールスポイントの自動生成 – リアルタイムでの物件情報共有 ※基本機能として搭載 | – 生成AI「Claude」によるコンテンツ自動生成 – AI物件レコメンド機能 – 反響自動振分 – 顧客対応履歴分析 – 成約予測 ※全プランで利用可能 | – AIによる物件査定 – 不動産ビッグデータ分析 ※標準機能として搭載 |
解説 | 不動産広告業務を効率化するクラウドサービス。物件情報の一括登録や更新が可能で、AIによる自動化で業務負担を大幅削減。 | 不動産仲介特化型統合システム。生成AI「Claude」を活用し、コンテンツ自動生成や顧客対応の効率化を実現。 | 不動産ビッグデータとAIを活用したマーケティングプラットフォーム。集客から顧客管理までワンストップ提供。 |
【人材業界】

項目 | CAREER PLUS | Zoho Recruit | Jobvite | PORTERS Agent |
---|---|---|---|---|
サービス名 | CAREER PLUS | Zoho Recruit | Jobvite | PORTERS Agent |
URL | https://careerplus-info.com/ | https://www.zoho.com/jp/recruit/ | https://www.jobvite.com/ | https://hrbc.porters.jp/agent/ |
機能分類 | CRM + SFA + 人材管理 | CRM + 採用管理 + MA | CRM + 採用管理 + MA | CRM + SFA + 人材管理 |
AI機能 | – AIマッチングエンジン「brain insight matching」 – 約150項目の入力業務をAIが代行 – 類似求人検索 ※標準機能として搭載 | – 「Zia AI」による候補者スクリーニング – レジュメ解析機能・スキル評価 – メール応答の自動化 – 候補者スコアリング ※プロフェッショナル版から利用可能 | – AI搭載の候補者マッチング – 採用プロセスの効率化 – 単純作業の自動化 – 採用成功確率予測 – 適正の分析 ※利用プランは要問い合わせ | – AIマッチングエンジン「PORTERS Assist」 – アクティブ求職者追跡 – スカウト適合性評価 – 求人票作成 – スカウトメール作成送信 ※標準オプション機能として搭載 |
解説 | 人材紹介業務に特化したクラウド型システム。募集から紹介、売上請求まで一元管理。大手からスタートアップまで幅広く利用。 | コストパフォーマンスに優れ、小規模人材紹介会社向け。AIで候補者スクリーニング自動化に強み。 | 採用特化プラットフォーム。大手企業での導入多数。SNS連携強化でソーシャルリクルーティング支援。日本語対応に課題あり。 | 人材紹介に特化し20以上の求人媒体と連携。オートマッチングで効率的な紹介を実現。 |
■総合型CRM

項目 | サービス名 | URL | 機能分類 | AI機能 | 解説 |
---|---|---|---|---|---|
GENIEE SFA/CRM | GENIEE SFA/CRM | https://chikyu.net/ | MA + CRM + SFA | – AIアシスタントオプションを標準搭載 – グループ会社のJAPAN AIとの連携可能 – AIによるマッチング精度向上 – AI-OCRによる高精度な名刺データ化 – 商談音声データから内容の自動要約と文字起こし – 次のアクション提案 ※AI機能はオプションで、全プランで安価に追加可能 | 国産ツールならではの使いやすさで、高い定着率を誇る。業界ごとの要件に合わせたカスタマイズが可能で、200名以上のエンジニアによる手厚いカスタマイズ対応も強み。「GENIEE MA」や「GENIEE CHAT」などの関連製品も提供されており、機能拡張が容易。 |
Salesforce | Salesforce | https://www.salesforce.com/jp/ | MA + CRM + SFA | – Einstein AIによる予測分析 – 自動データ分析 – 行動推奨機能 – 生成AI活用の商談支援 – Einstein GPTによる業務効率化 ※Unlimitedプラン以上で利用可能 | 世界的に高いシェアを持つCRMプラットフォーム。業界別のカスタマイズ事例も豊富で、大規模企業での導入実績が多い。グローバル展開している企業との相性が良く、多言語対応も充実。 |
HubSpot CRM | HubSpot CRM | https://www.hubspot.jp/ | MA + CRM + SFA | – AIアシスタント「Breeze Copilot」を提供 – 予測分析機能 – メール文面の最適化提案 – 顧客対応優先度判定 – コンテンツ最適化支援 ※Professional/Enterpriseプランで利用可能 | マーケティングツールとの統合が強みで、リード獲得から顧客管理まで一貫した運用が可能。サポートが簡易化されるが無料プランでも十分な機能があり、Web経由の顧客獲得に注力する企業に適している。 |
eセールスマネージャーRemix Cloud | eセールスマネージャーRemix Cloud | https://www.e-sales.jp/ | MA + CRM + SFA | – AI商談分析 – 音声認識による商談記録 – 営業活動提案 – 提案最適化 ※AI機能はオプションで、全プランで追加可能 | 国内での導入実績が豊富で、日本の商習慣に合わせた機能が標準で利用可能。特に商談管理や契約更新の通知機能が充実しており、既存顧客のフォローに強み。中小規模の企業でも導入しやすい価格帯が特徴。 |
kintone | kintone | https://kintone.cybozu.co.jp/ | CRM + SFA(MAは連携パートナー経由) | – AIによる業務フォロー(kintone AIアシスタントβ版) – チャットボット連携 – 自然言語による検索 – 文字生成 ※プラグインで実装可能 | カスタマイズ性の高さが特徴で、業務に合わせた柔軟なシステム構築が可能。ノーコードでの開発環境を提供し、現場での迅速な改善に対応。グループウェア機能との統合も強み。 |
Microsoft Dynamics 365 Sales | Microsoft Dynamics 365 Sales | https://www.microsoft.com/ja-jp/dynamics-365 | MA + CRM + SFA | – Copilot in Dynamics 365による支援 – 文書作成支援 – 商談分析 – 予測分析 – カスタマーインサイト ※Enterprise版から使用可能 | Microsoft製品との高い親和性が特徴で、Teams連携による商談管理や記録の自動化が可能。Office製品との連携も強く、企業の既存システムとの統合がスムーズ。 |
Zoho CRM | Zoho CRM | https://www.zoho.com/jp/crm/ | MA + CRM + SFA | – Zia AIによる業務支援 – 商談分析・予測 – メール応答の自動化 – おすすめ商品のレコメンド – 顧客スコアリング ※Professional版以上で利用可能 | コストパフォーマンスに優れ、中小規模の企業での導入に適している。AI機能も充実しており、特に顧客対応プロセスの自動化に強み。豊富な機能を低価格で提供している点が特徴。 |
以上が、現在注目されているAI搭載CRMツールの主な一覧です。
ツールの選定にあたっては、以下の5点を特に重視することをお勧めします:
以上が、現在注目されているAI搭載CRMツールの主な一覧です。
ツールの選定にあたっては、以下の5点を特に重視することをお勧めします:
1. 自社の業務プロセスとの適合性
- 基本機能が自社の業務フローに合致しているか
- カスタマイズの必要性と可能性
- 既存システムとの連携のしやすさ
2. AI機能の実用性
- 実際の業務での活用シーンが明確か
- 導入初期からの効果が期待できるか
- 学習データの蓄積方法と期間
3. セキュリティ対策の充実度
- データ暗号化レベル
- アクセス権限の設定粒度
- セキュリティ認証の取得状況
- バックアップ体制
4. コストパフォーマンス
- 利用人数に応じた価格設定
- 必要機能のみの選択可否
- 追加料金が発生する機能の把握
- 保守・サポート費用の明確さ
5. 投資対効果
- 初期費用と運用コストのバランス
- 段階的な機能拡張の可能性
- サポート体制の充実度
これらの観点から総合的に判断し、自社に最適なツールを選択することで、より効果的なCRM活用が実現できるでしょう。特に、AIを活用したCRMツールは、その機能の充実度に比例して価格も上昇する傾向にあります。そのため、自社にとって本当に必要な機能は何か、どの程度のセキュリティレベルが求められるのかを見極めた上で、適切な投資判断を行うことが重要です。
CRMツール導入成功のための実践ポイント

これまで、BtoB営業が直面する課題とCRMの必要性、CRMの基本的な考え方と本質的価値、業界別の活用パターン、そして進化を続けるCRMツールとAI機能の可能性について解説してきました。本章では、実際のCRMツール導入を成功に導くための具体的なポイントを、実践的な視点から解説していきます。特に、前章で紹介したAI機能の効果的な活用も視野に入れながら、持続可能な運用体制の構築方法を見ていきましょう。
1. 経営課題と現場ニーズの明確化
ツール導入の成否を分けるのは、経営層の課題認識と現場のニーズが合致しているかどうかです。まずは以下の点について、経営層と現場で認識を合わせることから始めましょう。
経営判断のポイント
- 組織としての優先課題
- 営業活動の効率化
- 顧客対応品質の向上
- 成約率の改善
- データに基づく戦略立案の実現
現場の状況確認
- 営業チームの構成
- 新人が多く、基本的な営業プロセスの定着が優先
- 中堅が多く、提案力向上が課題
- ベテランが多く、ナレッジ共有が必要
- 現場の具体的な課題
- 商談管理の効率化
- 顧客情報の一元管理
- 営業活動の可視化
このように、経営層と現場の認識を合わせることは、導入後の定着率を大きく左右する重要なステップとなります。特に、AI機能の活用においては、現場の受容性を十分に考慮する必要があります。
2. 機能面での確認
機能面の確認では、業務プロセスとの適合性を重視します。特にAI機能については、実際の業務フローに組み込めるかどうかの検証が重要です。
基本機能の確認
- 顧客情報管理機能
- 商談管理機能
- 案件進捗管理機能
- スケジュール管理機能
- レポート作成機能
- モバイル対応状況
AI機能の確認
- 業務効率化系AI機能
- 商談内容の自動テキスト化
- 提案書の自動作成支援
- メール文面の自動生成
営業力向上系AI機能
- 顧客ニーズの分析
- 成約確度の予測
- 次のアクション提案
機能の選定では、現在の課題解決に必要な機能と、将来的な拡張性のバランスを考慮することが重要です。特に、AI機能については、導入初期の効果と長期的な発展性の両面から評価する必要があります。
3. 運用面での確認
現場での実用性を重視した運用体制の確認が必要です。特に、AI機能を活用する場合は、データの品質管理や学習プロセスの運用についても考慮が必要です。
社内体制との適合性
- システム管理者の選定
- 権限設定の管理
- ユーザー管理
- データ品質の維持管理
- 利用者のIT習熟度
- 現場のデジタルリテラシー
- 研修の必要性
- サポート体制の要件
- データ更新の担当者配置
- マスターデータの管理
- 定期的なデータクレンジング
- AI学習データの品質管理
- 研修体制の整備
- 初期研修プログラム
- 継続的なスキルアップ支援
- ベストプラクティスの共有
ベンダーサポート
- 業界での導入実績
- 類似企業での成功事例
- 業界特有の課題への対応実績
- カスタマイズ事例の豊富さ
- 業界特有の課題への対応力
- 業界知識の深さ
- 専門用語への対応
- 業界特有のプロセス理解
- カスタマイズ対応の柔軟性
- 要望への対応スピード
- 追加開発の可能性
- コストの透明性
- 緊急時のサポート体制
- サポート時間
- 対応窓口の明確さ
- 障害時の復旧体制
運用体制の整備は、ツールの機能を最大限に活かすための基盤となります。特に、AI機能の活用においては、データ品質の維持管理が重要なポイントとなります。また、現場のデジタルリテラシー向上と、継続的なサポート体制の構築が、長期的な成功の鍵となります。
4. コストと投資対効果
CRMツールの導入は、単なるシステム投資ではなく、営業改革のための重要な経営投資です。特にAI機能を含むツールの場合、初期費用に加えて運用コストも考慮する必要があります。ここでは、投資判断に必要な費用項目と、投資対効果の考え方について解説します。
費用の確認
- 初期導入費用の内訳
- システム構築費
- データ移行費
- 初期設定費
- 研修費用
- ユーザー数に応じた月額料金
- 基本ライセンス費
- 追加ユーザー費用
- 段階的な増員計画
- AI機能などのオプション費用
- AI機能の利用料
- 追加機能のコスト
- カスタマイズ費用
- 外部システム連携の追加費用
- API連携費用
- データ連携の保守費
- セキュリティ対策費
◆投資対効果の具体例
最後に具体的な投資対効果を考えてみましょう。仮に初期費用50万円、営業チーム10人が使用するために毎月約15万円、年間230万円のコストがかかるツールの導入を検討したとします。初年度で280万円、翌年から毎年230万円の実費がかかるということです。一見、高額に感じるかもしれませんが、このツールの導入で営業チーム一人当たり、一日1時間の効率化が実現するとします。1日8時間の定時内稼働、月の営業稼働日が20日、年間240日で考えると、チーム全体で年間2,400時間(300日分=15ヶ月分)の工数削減となります。
この年間2,400時間という数字は、営業活動に集中できる時間を定時内で生み出せることを意味します。この時間を有効活用することで、年間の商談数や成約数も確実に向上することが期待できます。これは、人一人雇ったとしても中々実現できない効果です。また、仮に営業事務の担当者を1名雇用した場合の人件費と比較すると、年収400万円ほどかかることを考えれば、ツール導入の費用対効果は十分に見込めることがわかります。
5. 導入・運用における重要ポイント
CRMツールの導入を成功に導くためには、綿密な導入計画と持続可能な運用体制の構築が不可欠です。特に、AI機能を含むツールの場合、データの品質管理や活用方法の定着まで考慮した長期的な視点が重要となります。ここでは、導入から運用までの具体的なポイントについて、実践的な観点から解説していきます。
導入プロセスの設計
- プロジェクト体制の構築
- プロジェクトリーダーの選定
- 部門横断チームの編成
- 責任と権限の明確化
- スケジュール管理
- マイルストーンの設定
- 進捗管理方法の確立
- リスク管理体制
- データ移行計画
- 既存データの整理
- データクレンジング
- 移行手順の確認
- 研修計画の立案
- 管理者向け研修
- エンドユーザー向け研修
- フォローアップ研修
運用ルールの整備
- データ入力ルール
- 必須項目の定義
- 入力基準の統一
- 更新頻度の設定
- 活用シーンの明確化
- 日次での活用方法
- 週次での活用方法
- 月次での活用方法
- 評価指標の設定
- KPIの設定
- 効果測定方法
- PDCAサイクルの確立
セキュリティ対策
- アクセス権限の設定
- 役職別の権限設定
- 部門別の閲覧制限
- 外部アクセスの制御
- データ保護対策
- バックアップ体制
- 暗号化対策
- 情報漏洩対策
- コンプライアンス対応
- 個人情報保護法対応
- 社内規定との整合性
- 監査対応の準備
このように、CRMツールの導入・運用においては、技術面だけでなく、組織的な取り組みとして推進することが重要です。特に、現場の声を反映させながら運用ルールを整備し、継続的な改善サイクルを確立することで、ツールの価値を最大限に引き出すことができます。また、セキュリティ対策とコンプライアンス対応は、デジタル時代における企業の信頼性を担保する重要な要素となります。これらの要素をバランスよく管理し、PDCAサイクルを回していくことで、持続可能なCRM活用体制を構築することができるでしょう。
CRMツールの導入は、単なるシステム投資ではなく、企業の営業改革を実現するための重要な経営判断です。本章で解説した5つのポイントを押さえ、経営層と現場が一体となって段階的に進めることで、確実な成果につなげることができます。特に、AI機能の活用については、基本機能の定着度を見極めながら、優先順位をつけて進めることが重要です。
また、投資対効果の試算例でも示したように、CRMツールの導入は、単なる業務効率化にとどまらず、営業力強化による売上向上まで視野に入れた戦略的な投資として捉えることが大切です。セキュリティ対策やコンプライアンス対応も含め、長期的な視点で投資効果を評価し、継続的な改善を進めていくことで、真の意味での営業DXを実現することができるでしょう。
AI時代のCRM活用で実現する営業改革

本記事では、AI時代におけるCRMの重要性と実践的な活用方法を解説してきました。特に注目すべきは以下の3点です:
1. DX推進における戦略的ツールとしてのCRM
- 全社的なデータ活用基盤としての価値
- 段階的な導入による確実な成果創出
- 持続可能な営業改革の実現
2. AI機能による新たな可能性
- 業務効率の飛躍的な向上
- データドリブンな意思決定の実現
- 予測分析による戦略的アプローチ
3. 成功のための実践ポイント
- 経営層と現場の認識統一
- 段階的な機能展開
- 継続的な改善サイクルの確立
ぜひ、本記事で解説した導入のポイントを参考に、自社に最適なCRMツールの選定と活用を進めていただければと思います。
CRMやAI営業に関する用語は、技術の進化とともに日々新しい言葉が生まれています。本用語集では、記事内で使用した専門用語や、CRM導入・運用時によく目にする重要な用語をピックアップし、わかりやすく解説しています。用語の理解を深めることで、より効果的なCRMツールの選定と活用にお役立てください。
用語集
CRM基本用語
- CRM (Customer Relationship Management):顧客関係管理。顧客との関係を戦略的に構築・維持・強化するための経営手法
- SFA (Sales Force Automation):営業支援システム。営業活動のデジタル化・自動化を実現するツール
- MA (Marketing Automation):マーケティング自動化ツール。見込み客の発掘から育成までを自動化
AI関連用語
- AI機能:CRMツールに実装された具体的な機能(例:AI-OCR、AI予測分析など)
- AI技術:機械学習や自然言語処理などの基盤となる技術
- AI活用:AI機能や技術の実践的な使用方法や運用
- AI-OCR:AI技術を活用した光学文字認識技術。名刺やドキュメントのデジタル化に使用
- 生成AI:テキストや画像などのコンテンツを自動生成するAI技術
- 予測分析:過去のデータを分析し、将来の傾向を予測する技術
マーケティング用語
- リード:見込み顧客のこと
- スコアリング:顧客の購買可能性を数値化すること
- カスタマーサクセス:顧客の成功を支援し、長期的な関係を構築する活動
- リードナーチャリング:見込み顧客を育成し、成約につなげるプロセス
- コンバージョン:望ましい成果(商談や契約など)につながる顧客の行動
システム関連用語
- API:異なるシステム間でデータをやり取りするための仕組み
- クラウド:インターネットを通じてサービスを提供する形態
- ノーコード:プログラミング知識がなくてもシステム構築が可能な開発手法
- システム連携:複数のシステムを連動させて機能を拡張すること
- データ連携:異なるシステム間でのデータの共有や同期
セキュリティ・コンプライアンス用語
- 多要素認証:複数の認証方式を組み合わせてセキュリティを高める方式
- データ暗号化:情報を第三者に読み取られないよう変換すること
- アクセス権限:システムやデータへのアクセスを制御する仕組み
- データガバナンス:組織全体でのデータ管理と活用の方針や体制
- コンプライアンス対応:法令や規制要件への適合性確保
運用・管理用語
- データクレンジング:データの正確性や一貫性を確保するための整理・修正作業
- マスターデータ:組織で共通して使用する基本的なデータ(顧客情報など)
- KPI (Key Performance Indicator):重要業績評価指標
- PDCAサイクル:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の継続的な改善サイクル
- ベストプラクティス:最も効果的な実践方法や成功事例
免責
本記事に記載されている情報は、2024年12月時点での各種調査結果、公開情報、および各ベンダーの公式発表に基づいています。CRMツールの機能や価格は頻繁に更新されるため、導入検討の際は必ず各ベンダーの公式サイトで最新情報をご確認ください。
また、本資料で紹介している活用事例やツールの性能評価は、一般的な使用環境下での結果であり、すべての企業や業務環境で同様の効果を保証するものではありません。実際の導入に際しては、貴社の業務要件や運用体制に基づく詳細な検証をお勧めいたします。
なお、本記事で言及している製品名、サービス名は、各社の商標または登録商標です。