ヒアリングシートの作り方と役立つフレームワークを紹介
顧客へのヒアリングは、営業活動で最も重要なプロセスのひとつ。その中で、ヒアリングシートは、打ち合わせや商談前に顧客の現状や課題を把握し、理解を深めるための大切なツールです。抜け漏れなく情報を引き出し、ヒアリングの質を高めるためにヒアリングシートの作成が欠かせません。
そこで今回は、ヒアリングシートの効果的な作成方法やポイントのほか、作成に役立つフレームワークなどをご紹介します。
営業におけるヒアリングシート
ヒアリングシートとは、顧客との商談で質問するべき内容をまとめたチェックリストです。
営業で重要なことは、顧客の現状や課題、ニーズを聞き出し、それに合った提案を行うこと。しかし、質問する項目が定まっていないと、会話の軸がぶれて思わぬ方向に進み、確認したいことを「聞き出せなかった」「深掘りできなかった」などということもあるでしょう。そこで有効なのがヒアリングシートです。
ヒアリングシートを利用する目的
ヒアリングシートを利用する目的は大きく3つあります。それぞれを紹介しましょう。
顧客課題の明確化
ヒアリングシートを活用すると、顧客の課題を明確にし、正しく理解しやすくなります。
一般的にヒアリングシートは打ち合わせや商談の前に記入してもらうものです。事前にヒアリングシートで基本的な情報を把握できれば、抽象的な質問や調べればわかることを聞かずに、より踏み込んだ話ができます。
あらかじめ課題を把握できれば、商談時に顧客の課題に合わせた提案も可能になるでしょう。
要件の抜け漏れを防ぐ
打ち合わせや商談では、会話が弾んで会話が本筋から逸れ、聞くべきことが聞けなかったり、熱中しすぎて忘れてしまったりすることもあります。
ヒアリングシートは事前に記入してもらうため、聞き漏れを防ぐことが可能です。ヒアリングシートを軸に会話を進めることで、たとえ会話が逸れても本筋に戻しやすいでしょう。
営業の効率化
ヒアリングシートを活用することで、営業プロセスを効率化することができます。営業は、顧客に対して個人で業務を進めることが多く、属人化しやすい職種です。アプローチの仕方や話す内容が個人の技量によって異なり、成果に差が出てしまうこともよくあります。
成果を上げている営業パーソンの質問項目を洗い出してヒアリングシートに反映させ、それに沿って質問することで、経験や知識の差に関係なく誰でも同じように情報収集できます。また、どの顧客にもヒアリングする内容が同じになることから、顧客情報の管理がしやすくなるといったメリットもあります。
ヒアリングシートの作り方
では、ヒアリングシートはどのように作ったらいいのでしょうか。ここではヒアリングシートの作り方についてご紹介します。
基本項目を考える
まず、最低限抑えておきたい基本情報について検討します。基本情報には、以下のような項目が考えられます。
<ヒアリングシートの基本項目>
・現状
・課題
・スケジュール
・納期
・予算感
・ターゲット
・意思決定者
・他社の検討状況
・決定時期
扱う商材によって項目は多少変わりますが、これらの情報を把握することで、今後の営業アプローチや提案内容に反映できます。さらに「〇〇(自社商品)に期待するところは?」「〇〇の導入に不安な点は?」といった自社商品・サービスを評価する項目があると、より提案しやすくなるでしょう。
目的や顧客に合った体裁にする
ヒアリングシートを作成するときには、顧客が使いやすいツールを利用するのがおすすめです。例えば、説明会や商品・サービスのセミナーでは、その場で回答するため紙のヒアリングシートが最適です。一方、BtoB企業を顧客とする場合には、インターネット上のフォームに回答する形式が好まれます。このように「どこで」「誰に」ヒアリングするのかによって媒体を検討することで、質のいい回答や回答率の向上が期待できるでしょう。
ブラッシュアップする
ヒアリングシートの項目は一度作って終わりではなく、定期的なブラッシュアップが欠かせません。利用してみて、必要ない項目や、記載方法を変えるべき項目が見えてくることもあるでしょう。ブラッシュアップするときは、下記をチェックしてみてください。
<ヒアリングシートのチェック項目>
・漠然とした質問となっていないか
・項目数は多すぎないか
・質問は答えやすい順番になっているか
・人によって解釈が異なる文章になっていないか(こちらが求める回答を引き出せる文章か)
・他に必要な項目はないか
ヒアリングシート作成のポイント
ヒアリングシートは、確認したいことをリスト化するだけでは効果的とはいえません。以下の3つのポイントを押さえて作成すると有効です。
情報収集を行う
顧客について事前に情報収集してから、ヒアリングシートを作成しましょう。ヒアリングシートには、顧客の会社名や商品・サービス名、価格、競合他社など基本情報の項目を設けることがほとんど。しかしこれらの情報は、インターネットでも情報収集できる項目です。
ヒアリングシートの記入は、顧客にとっては手間がかかる作業です。そのため、事前に情報収集して少しでも顧客の手間を省きましょう。情報収集をしておくことで顧客の理解が深まり、より具体的で深いヒアリングが行えるメリットもあります。
課題やニーズに対して仮説を立てる
ヒアリングシートを作成するときには、顧客の課題やニーズ、解決策の仮説を立てておくことが重要です。「どのような課題がありますか?」などの漠然とした質問より、「コストを削減する対策はお考えですか?」のような踏み込んだ質問のほうが、顧客の課題を引き出すことにつながります。「コストがかかりすぎている」という仮説を立て、さらに仮説の課題に対する解決策を考えておけば、打ち合わせや商談がスムーズに進むはずです。
順番に注意する
ヒアリングシートは、「現在」「過去」「未来」の順で作成しましょう。ヒアリングの冒頭から「今後どのような展望をお持ちですか?」などと聞いても、相手は答えに詰まってしまいます。まずは、相手が答えやすい「現在」から聞くのがおすすめです。次に、経緯や背景などの「過去」を掘り下げ、最後に課題の解決やニーズを満たす「未来」について提案します。
このように「現在」「過去」「未来」の順でヒアリングすることで、相手が答えやすくなるのはもちろん、顧客自身が「現在」「過去」の情報を整理しながら会話が進められるメリットもあります。
ヒアリングシート作成に役立つフレームワーク
ヒアリングシートを作成するときには、フレームワークをベースに検討すると効率的です。ここではヒアリングシートでよく活用されるフレームワークをご紹介します。
SPIN
SPINは、商談など質問をするときのフレームワークのひとつです。4つの質問項目「Situation」「Problem」「Implication」「Need-payoff」の頭文字をとったもので、Sから順に質問します。
SPINは質問に答えているうちに、顧客みずから潜在ニーズに気づくことができる構成になっています。その後に自社商品・サービスをアピールすると、打ち合わせや商談がスムーズに進みやすくなります。
SPIN |
質問例 |
Situation Questions(状況質問) |
〇〇様の業務はなんですか? |
Problem Questions(問題質問) |
□□に予算や時間はどのくらいかかっていますか? |
Implication Questions(示唆質問) |
□□に予算や時間がかかると△△ではありませんか? |
Need-payoff Questions(解決質問) |
□□の予算や時間を削減できたら、**というメリットはありますか? |
BANT
法人営業でよく活用されるのがBANTというフレームワークです。BANTとは「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」の4つ項目の頭文字をとった略語です。
BANT |
質問例 |
Budget(予算) |
いくら以内であれば、検討可能ですか? |
Authority(決裁権) |
最終的な決定は、〇〇様がされるのですか? 御社内ではどのようなフローで決定されるのですか? |
Needs(必要性) |
現状で〇〇という課題はありませんか? |
Timeframe(導入時期) |
何月までに導入できれば間に合すでしょうか? |
SPINと違い、BANTの質問する順番はありませんが、会話の流れに合わせてBANTの4項目を漏れなく質問することがポイントです。
「導入時期はいつですか?」などと、ただBANTの項目を質問するだけでは、「来年の春」などと曖昧な回答になりやすいでしょう。「導入時期は来年の3月ごろですか?」などと具体的に質問することで、「いいえ、4月です」と詳細な回答を得られます。質問の方法が重要です。
3C分析
3C分析は、マーケティングやコンサルティングなどの戦略を立てるときに活用されるフレームワークです。「Company」「Customer」「Competitor」の3つの頭文字がすべてCということから、3C分析といわれています。3C分析で顧客を取り巻く環境を把握することで、アピールすべきポイントが明確になり、提案に説得力を持たせられます。
3C |
質問項目 |
Company(自社) |
サービス内容やアピールポイント、予算など |
Customer(顧客) |
市場とターゲット顧客のニーズ |
Competitor(競合他社) |
競合他社の商品・サービス、新たな動きなど |
4W2H
4W2Hは、営業アプローチに必要な情報を聞き出すときに役立つフレームワークです。情報整理をするときには一般的に5W2Hを用いますが、4W2Hは5W2Hから「Why」を抜いています。Whyが抜けているのは、ヒアリング項目として設けずに雑談で引き出すためです。
4W2H |
質問項目 |
What |
悩みは何か、何を改善したいのか |
Who |
誰が決定権者なのか |
When |
いつから開始するのか、どのくらいの期間なのか |
Where |
どこでそれが必要なのか |
How |
どのようにサービスを使用するのか |
How much |
いくらで購入を考えているのか、いくらで販売したいのか |
上記は、商談の前にヒアリングシートに記載してもらうのに最適な項目です。ヒアリングシートで不足している情報については、商談時に詳細を聞き出すことで、提案に必要な情報を収集できるでしょう。
ヒアリングシートの活用で効率的な商談につなげる
ヒアリングシートを活用することで、確認事項の抜け漏れを防げるだけでなく、営業の効率化が可能です。経験や知識の量にかかわらず誰でも均質の営業ができ、さらに共通項目をヒアリングすることで顧客情報の管理がしやすくなるでしょう。
しかし、社内で顧客管理がうまくできていなければ、せっかく収集した情報を自社の資産として蓄積することができません。そこでおすすめなのが、SFAやCRMの活用です。
GENIEE SFA/CRMでは、ヒアリング内容を入力するとリアルタイムで反映でき、組織全体での共有が可能です。BtoB企業・BtoC企業で導入実績6,300社以上と多くの企業にご利用されており、国産ツールのため安心してご利用していただけます。ぜひご検討ください。