アトリビューション分析とは、さまざまなマーケティング施策の効果を分析し、施策に対するコストやリソースのかけ方を常に見直し、最適化していくための手法です。現代のマーケティングツールには、展示会や発表会など昔ながらのオフラインマーケティングや、ビッグデータ・AIなど最新のデジタルマーケティングツールもありますが、ここではわかりやすくするためにWEBマーケティングツールに限定してアトリビューション分析とその手法について解説します。
アトリビューション分析とは
アトリビューション分析とは、顧客がどのような経路でコンバージョン(CV)に至ったのかを分析する、いわばマーケティング広告の効果測定です。コンバージョンとは、商品の購入やサービスの契約といった実際の顧客化のほかに、資料請求や会員登録など広告施策が「成果」に転換するポイントを指します。
例えば、あるユーザーがSNS広告やDMを通じて商品と最初の接点を持ち、次にディスプレイ広告などで商品に興味を抱き、競合製品との比較を始めます。この過程で購買意欲が醸成され、最終的にWEB検索から自社サイトに流入し、購入や資料請求などのCVに至ります。
時系列的に見ると、初回接触の次に中間接点となる広告があり、リスティング広告がラストクリックとなってコンバージョンに至ります。しかし、デジタルマーケティングや媒体が複雑化した現代においては、初回接触のあとにさまざまな広告媒体で何度も商品に関する情報に触れ、その間接効果があったからこそリスティング広告に行き着いた可能性があります。
初回接触からCVに至るまでのあいだにどの広告を何回経由したか、トラッキングによってデータを収集し、それぞれの広告に対するCVへの貢献度を適切に配分することで、SEM(検索エンジンマーケティング)だけに偏重しがちなマーケティングのリソースや予算を適切に配分し、WEB広告のコストパフォーマンス・CPA(顧客獲得単価)を最適化するのがアトリビューション分析の目的です。
アトリビューションという言葉は「属性」や「帰属」という意味ですが、文字通り顧客がどの広告にどのくらいの属性(接触回数や順序)を持つのかを分析します。分析には、広告の貢献度をあらかじめパターン化した「アトリビューションモデル」を使用し、アトリビューション分析の結果から広告ごとのコストやリソースを最適化していく作業を「アトリビューションマネジメント」と呼びます。アトリビューションマネジメントは1度きりで終わりではなく、PDCAサイクルで常に最適化の作業を継続していきます。
アトリビューション分析のメリット
さまざまな種類や訴求のWEB広告の効果を見極め、広告ごとのコスト配分やリソース配分に活かすことで、マーケティング施策を最適化できるのがアトリビューション分析の最大のメリットです。以下、アトリビューション分析のメリットを詳しく見ていきましょう。
広告の間接効果を検証できる
初回接触や間接効果の貢献度を見逃してしまうと、コンバージョンにつながったラストクリックだけを評価してしまうことになり、結果としてマーケティング施策がうまくいかないだけでなく、不要なコストを発生させてしまうことになります。
現代のWEBマーケティングでは、アドネットワーク、バナー広告、SNS広告、動画広告、さらには自然検索やリスティング広告まで、さまざまな広告戦略がとられます。ラストクリックに至るまでの経路上で、それぞれの広告がコンバージョンにどの程度の貢献を果たしたのか、各広告の間接効果を検証できるのがアトリビューション分析のメリットです。
長期的な顧客との関係を構築できる
そもそも、購買サイクルが短く単価の安い商品や、比較対象のないサービスなどはアトリビューション分析に向いていません。認知からCVまでの時間が短いからです。フリマサイトなどでも安いものならすぐにポチっても、数万円の買い物となればたいていの人が、ほかに安いものはないか、もっと状態のいいものはないか、とあちこちのサイトを見て比較検討を始めるように、アトリビューション分析は検討時間の長い商品に向いています。
検討時間の長い商品やサービスには、競合相手がつきものです。競争に勝ち抜いてCVを獲得するためには、顧客との良好な関係を築かなければならず、アトリビューション分析は欠かせないツールといえるでしょう。また、長期的な検討を要する商材やサービスは、購入後も関係を維持向上させ、顧客のリピーター化につなげる必要があります。アトリビューション分析を活用すれば、顧客との長期的な関係構築に役立てることができます。
広告予算のシュリンクを防ぐことができる
アトリビューション分析以前の効果測定は、主にコンバージョンに直接つながるラストクリックのみを対象としていました。この方法は購買サイクルの短い安価な商品やサービスには向きますが、高額商品や検討時間の長いサービスでは誤ったWEBマーケティングにつながりかねません。
直接コンバージョンに結び付いた広告の貢献度だけを評価してしまうと、初回接触や間接効果など実際には貢献度の高い広告を取りやめたり予算を減らしたり、アンバランスなコストの削減をしてしまうリスクがあります。正しくアトリビューション分析をおこなうことで、初回接触や購買意欲を醸成させる間接効果があって初めてコンバージョンに至ることを見える化し、広告予算の誤ったシュリンクを防ぐことができます。
アトリビューション分析のモデル
アトリビューション分析では、各広告がコンバージョンにつながるまでの貢献度を図るものです。「アトリビューションモデル」は、その貢献度の割り振りを決めた基本ルールであり、事業目的や注力したいファネルの段階に応じて、さまざまな種類があります。ここでは代表的なアトリビューションモデルについて解説していきます。
線形モデル
均等分配モデルともいい、すべての広告に対して貢献度を均等に配分するモデルです。例えば、コンバージョンに至るまでの経路がブログ⇒ ディスプレイ広告⇒ SNS ⇒リスティング広告の順なら、すべての広告に貢献度を25%ずつ割り振ります。ユーザーが商品やサービスと接点を持つ経路は複雑化しており、どの広告の貢献度が高いのかを把握するときに線形モデルは有効です。
起点モデル
ファーストクリックモデルともいい、ユーザーと商品の初回接点に100%の貢献度を与えるモデルです。SNS ⇒ ディスプレイ広告⇒ブログ ⇒リスティング広告の順なら、SNSに100%の貢献度を付与します。新規顧客の獲得やキャンペーンなど商品の認知度向上を目的とする場合の分析に適しています。広い範囲で潜在的な顧客に働きかけ、認知の薄いユーザーとの接点を求める場合の分析に用いられます。
終点モデル
ラストクリックモデルともいい、文字通り最後にクリックされた広告に貢献度をすべて割り振るモデルです。SNS ⇒ ディスプレイ広告⇒ブログ ⇒リスティング広告の順なら、貢献度はリスティング広告が100%となります。直接コンバージョンに結び付いた接点を把握しやすい特長を持ちますが、アトリビューション分析を用いなくても同じ結果が得られます。認知から購入までの時間が短い商品や短期キャンペーンなどに向いています。
減衰モデル
減衰モデルでは、線形モデル同様すべての広告・接点に貢献度を付与しますが、配分は均等ではなく、ラストクリックの貢献度を最も高く、コンバージョンから遠い接点ほど貢献度を低く割り振ります。ブログ10% ⇒ ディスプレイ広告20% ⇒ SNS 30% ⇒リスティング広告40%というように階段状に割り振ります。線形モデルよりも注意深く分析をおこないたいときに有効で、コンバージョンまでの時間が比較的短い商品やサービスに向いています。
接点モデル
接点モデルとはファーストクリックとラストクリックを重視したアトリビューションモデルです。ユーザーが商品やサービスを最初に認知した初回接触と、コンバージョンに至る直前の広告に最も高い貢献度を割り振ります。ブログ40% ⇒ ディスプレイ広告10% ⇒ SNS 10% ⇒リスティング広告40%のように割り振ります。商品の認知度向上とコンバージョンの両方を重視する場合に有効なモデルです。
その他のアトリビューションモデル
アトリビューションモデルのうち、起点モデルや終点モデルのように接点が一つしかないタイプをシングルタッチモデル、線形モデル・減衰モデル・接点モデルのように接点が複数あるタイプをマルチタッチモデルと呼びます。マルチタッチモデルには上記3タイプのほかに、
・W型モデル
起点、終点に加えて、「訪問者がリード(見込み客)化した」中間接点の3点で評価する
・U型モデル
起点とリード化の2点のみを指す場合と、接点モデル(起点と終点)を指す場合がある
・フルパスモデル
起点、リード化、機会の創出、終点の4接点に貢献度を多く配分する
「機会の創出(Opportunity)」とはリードが商談化した接点を指します。
これらのアトリビューションモデル以外にも、カスタムモデルやデータドリブンモデルがあります。カスタムモデルは標準的なアトリビューションモデルの中から任意のモデルを選び、貢献度を調節するもので、自社のニーズに応じてより詳細な分析ができます。
データドリブンモデルとは、過去のコンバージョン情報から、さまざまな広告に対して自動的に貢献度が割り振られるアトリビューション分析で使用されます。ユーザーがアトリビューションモデルを設定しなくても自動で貢献度の配分が最適化されます。
Google広告では「ファーストクリックモデル」「線形モデル」「減衰モデル」「接点モデル」のサポートを終了し、データドリブンモデルをデフォルトにしています。ただし、データドリブンモデルは1か月間で300回以上のCVと3,000回以上の広告インタラクションが利用条件として設定される場合があります。
広告インタラクションとは、クリックや動画視聴、エンゲージメントなど広告に対するユーザーの行動を指しています。
アトリビューション分析を活用した広告の最適化
アトリビューション分析をおこなう目的は、貢献度の高い広告を強化し、貢献度の低い広告を見直すなど、それぞれの広告に対するコストとリソースを最適化することです。そのためには自社のビジネスモデルや戦略にもとづいて、適切な分析モデルによるアトリビューション分析をおこない、広告の最適化に活用していくことが重要です。ここでは、アトリビューション分析を活用した広告の最適化に向けて、おこなうことをステップごとに解説していきます。
ビジネスモデルの整理
アトリビューション分析の効果が最大化できるのは、BtoCなら高額な商品、BtoBならユーザーにとって重要な機能を持つ商品やサービスで、最初の接点からコンバージョンまでに十分な検討や長い時間を要するケースです。特にBtoBではユーザーがコンバージョンに至る前に離脱していかないよう、さまざまなアプローチを継続しておこない、ユーザーの購買意欲を高めていく必要があります。
アトリビューション分析をおこなう前に、まず自社のビジネスモデルを整理し、ユーザーとの接点をすべて洗い出します。そこからユーザーがどのような経路をたどるのか、コンバージョンに至る具体的なルート(カスタマージャーニー)の仮説を立てることから始めましょう。
分析モデルの選択
カスタマージャーニーとは、認知からコンバージョンに至るまでのユーザーの行動を可視化できるように、図表にあらわしたものをカスタマージャーニーマップと呼びます。また、ユーザー特性については、BtoBであれば「企業のマーケティング部門長」などのざっくりしたターゲットではなく、年齢・性別、業務経験年数、決裁権の有無などできるだけ詳しくペルソナ(顧客像)を設定します。 そのうえで、ユーザーが「商品を認知し、興味や関心を抱き、比較検討をおこない、購入に至る」までのカスタマージャーニーにもとづいて、商品との接点や経路に応じたアトリビューションモデルを選択します。
アトリビューション分析の実施
アトリビューションモデルを設定し、アクセス解析や効果測定ツールなどを使用して、コンバージョンに至るまでの経路データ「コンバージョンパスデータ」を収集します。ツールを使用して集積された「接触日時」「接触媒体」「ユーザーのセッション情報」「リファラー(参照元、ひとつ前に訪問したサイト)」などの情報を基に、ユーザーがどの広告を経由してCVに至ったのかを分析します。
従来の間接効果測定では、その広告が「間接効果に影響をおよぼしたか否か」しか評価できませんでしたが、アトリビューション分析ではクリックや広告動画の視聴など広告インタラクションの回数を時系列で並べ替え、どの広告がどのくらい間接効果を上げたかを数値化できるので、実態に沿った広告ごとのリソース配分が可能です。
分析にもとづいた予算配分の実施
アトリビューション分析は、おこなって終わりではなく、分析結果にもとづいて貢献度の低い広告の差し替えや各広告への予算配分の見直しをおこないます。しかし、WEB広告に限らずマーケティングの本来の目的は「リードの顧客化」にあり、単なる広告予算の配分変更やコンテンツの見直しをおこなうことではありません。
真の意味でのマーケティングとはユーザーの行動変容を促すためのアプローチであり、アトリビューションマネジメントの目的もそこにあります。そのため、アトリビューション分析をおこなって予算配分を実施して終わり、ではなく、ユーザーの行動変容を促す最適な広告戦略となるようPDCAを繰り返していくことが最も重要です。
CATSの紹介
アトリビューション分析をおこなうには自社が運用する広告の媒体や種類によって選択肢が異なります。Google広告のみ運用しているのであればGoogle広告のアトリビューション機能で十分ですが、多面的な広告運用をしている場合には汎用的なアトリビューション分析ツールが必要となります。
最も知られているのはGoogleアナリティクス(GA4)ですが、「起点モデル」「線形モデル」「減衰モデル」「接点モデル」のサポートは2023年5月に終了し、新規では利用できないようになりました。現在は「データドリブン」「ラストクリック(終点モデル)」だけが利用可能です。ただし、データドリブンは上級者向けで、はじめてアトリビューション分析に取り組む場合は少しハードルが高そうです。
Google以外にもアトリビューション分析用のツールはいろいろありますが、ここでは「広告効果測定システム CATS」をご紹介します。
CATSとは
CATSとはClick Action Tracking Systemの頭文字をとったサービスの名称で、文字通りさまざまなWEB広告のクリック数とコンバージョン数を計測するシステムです。複数の配信先媒体や広告ネットワークを一元的に管理し、自社の運用する広告を総合的に計測可能です。
CATSのアトリビューション機能
アトリビューション分析で重要なコンバージョンパスの計測もCATSなら最大で10広告まで計測することが可能です。ユーザーごとの「接触した媒体の経路」を追跡できるのでコンバージョンパスを確認できます。また「中間クリック」を計測できるので、媒体別にも初回や間接接触が多いのか、ラストクリックが多いのかを確認することができます。
CNAME計測で最新のCookie規制にも対応
個人情報保護法や電気通信事業法が改正され、ブラウザのCookie規制も年々厳しくなっています。すでに国内シェア2位のSafariはITP2.3でサードパーティCookieを完全ブロック、シェア1位のGoogle Chromeも2024年後半からサードパーティCookieを順次廃止していく」と発表しています。
CATSはCNAMEレコード方式を採用し、ITP2.3のCookie規制に対応しています。CNAMEレコードとはDNSサーバに任意の別名を定義することでCookieを付与するトラッキング方式で、規制によるWEBマーケティングへの影響を低減することが可能です。
CATSなら自然検索経由のCVも測定可能
CATSはリダイレクト計測・ダイレクト計測の両方を採用しており、直接CV、間接CV、自然検索CVの計測が可能です。さらに、リファラー ・IPアドレス・ユーザーエージェントなどの詳細情報を日時分秒までリアルタイムで確認可能ですので、SEO対策の効果確認にもご利用いただけます。
CATSならこんな課題も解決
・広告ごとに異なる管理画面にいちいちログインして管理するのが大変
CATSならワンタグシステムでディスプレイ広告やリスティング広告、アフィリエイトなどを一元管理できるので、わずらわしいログインや集計作業が楽になります。
・成果数に重複が発生してしまう
個別の成果タグにより、アドネットワーク、アフィリエイトASPなど複数の配信先から1件のCVが重複してカウントされてしまう場合があります。CATSなら成果ページにCATSの成果タグを設置するだけなので重複は発生せず、無駄な広告費用をカットできます。
アトリビューション分析に最適でとても便利な広告効果測定ツール「CATS」は初期費用0円、月額費用49,800円(税抜き)でご利用できます。自社に最適なアトリビューション分析をおこなうことで、効果的な集客や売上のアップを図りたいとお考えの事業者や広告代理店などの方は、ぜひCATSの導入をご検討ください。
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