営業成果を変える顧客データ収集の実践術|効果的な収集方法とツール活用

なぜ営業にデータ収集が不可欠なのか

データ収集で変わる営業成果の実態
現代の営業現場では、データ収集の有無が成果に決定的な差を生んでいます。
中小企業庁の最新調査では、デジタル化の取組段階が進展している事業者ほど、売上向上や業務効率化などの効果を実感していることが明らかになっています。


特に、顧客データの体系的な活用により、営業プロセスの大幅な改善を実現している企業が増加しています。この差が生まれる背景には明確な理由があります。データ収集により、営業担当者は顧客の真のニーズを数値化して把握し、最適なタイミングでアプローチできるようになるためです。
従来の勘と経験からデータ収集型営業へ
これまでの営業スタイルは、個人の経験や勘に大きく依存していました。しかし、この手法には深刻な限界が存在します。
最も大きな問題は**「属人化」**です。ベテラン営業担当者の退職により、長年蓄積された貴重な顧客情報や営業ノウハウが一瞬で失われてしまいます。また、市場環境の変化が激しい現代において、過去の成功体験だけでは対応しきれない状況が急増しています。
データ収集型営業への転換は、これらの課題を根本的に解決します。顧客情報の体系的な蓄積と分析により、経験の浅い営業担当者でも一定水準の営業活動が可能になり、組織全体の営業力底上げを実現できます。
営業で収集すべき顧客データの3つの分類

効果的な営業活動を実現するためには、戦略的なデータ分類に基づいた収集が不可欠です。以下の3つの分類を理解し、バランス良く収集することが成功の鍵となります。
顧客データ3分類の比較表
データ分類 | 属性データ | 行動データ | 心理データ |
目的 | 基本プロフィール把握 | 関心度・購買意欲測定 | 真のニーズ理解 |
収集難易度 | 易しい | 普通 | 難しい |
更新頻度 | 低い(年1-2回) | 高い(リアルタイム) | 中程度(四半期) |
営業活用 | ターゲティング | タイミング判断 | 提案内容最適化 |
収集方法 | 名刺交換・アンケート | Web解析・メール追跡 | ヒアリング・商談 |
データ例 | 業種・規模・役職 | 閲覧履歴・反応率 | 課題・価値観・感情 |
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基本情報を収集する属性データ
属性データは、顧客の基本的な特徴や背景を示すデータです。営業活動の出発点となる重要な情報であり、以下の3つのカテゴリーに分類されます。
- 企業情報:業種(製造業、IT業など)、従業員数(50名、300名など)、売上規模(年商10億円など)、設立年数(創業30年など)、資本金(1000万円など)
- 担当者情報:役職(部長、課長など)、部署(営業部、総務部など)、決裁権限(500万円まで決裁可能など)、連絡先、経歴
- 地理的情報:本社所在地、営業エリア(関東圏、関西圏など)、支店数(全国5拠点など)、商圏
これらの基礎データを体系的に収集することで、顧客の基本的なプロフィールを正確に把握し、最適なアプローチ方法や提案内容を戦略的に選択できるようになります。
購買行動を収集する行動データ
行動データは、顧客の具体的な行動パターンや反応を数値化したデータです。顧客の関心度や購買意欲を客観的に測定できる重要な指標となります。
- Webサイト行動:訪問ページ(製品紹介ページ、価格ページなど)、滞在時間(平均3分、最長15分など)、ダウンロード資料(カタログ、事例集など)、検索キーワード
- メール反応:開封率(60%、80%など)、クリック率(15%、25%など)、反応時間(配信後30分以内など)、転送回数
- 商談履歴:提案回数(3回目の提案など)、検討期間(初回接触から3ヶ月など)、質問内容、決定要因
行動データの詳細な分析により、顧客の関心度や購買意欲を客観的に数値化でき、効果的な営業戦略の立案が可能になります。
深層心理を収集する心理データ
心理データは、顧客の内面的な動機や価値観、感情を表すデータです。表面的な要求の背後にある真のニーズを理解するために不可欠な情報です。
- 課題・ニーズ:現在抱えている問題(コスト削減、業務効率化など)、解決したい課題の優先順位(緊急度:高・中・低など)
- 価値観・判断基準:重視する要素(価格重視、品質重視、サポート重視など)、意思決定のプロセス(稟議制、トップダウンなど)
- 感情・印象:商品・サービスに対する率直な感想、不安要素(導入コスト、操作の複雑さなど)
心理データの収集により、表面的な要求だけでなく、顧客の真のニーズを深く理解し、より強固な信頼関係を構築できます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のセールス研修ロードマップでは、営業活動において**「顧客との信頼関係の構築、顧客事業環境や戦略の分析、ニーズの把握」が重要な要素として位置づけられており**、データに基づく顧客理解の重要性が示されています。
出典:独立行政法人情報処理推進機構「セールス(研修ロードマップ)」
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営業での活用シーン例
製造業の営業活用シーン 属性データで企業の製造規模(従業員数300名、年商50億円)と技術レベル(ISO9001認証取得済み)を把握し、行動データでWebサイトでの「省エネ設備」関連資料のダウンロード履歴(月3回、滞在時間平均8分)を詳細に分析。さらに心理データとして「来年度の設備投資予算2000万円、省エネによるコスト削減が最優先課題、ROI3年以内を希望」という具体的な関心度と予算感を収集することで、省エネ効果を数値化した技術提案に重点を置いた戦略的な営業アプローチを展開できます。
営業現場で実践するデータ収集の成功法則

データ収集を成功に導くためには、以下の4つの法則を実践することが重要です。各法則は相互に関連しており、総合的な取り組みが求められます。
収集目的を明確にしたデータ設計
効果的なデータ収集の第一歩は、明確な目的設定です。闇雲にデータを集めても、活用できなければ意味がありません。
「なぜそのデータが必要なのか」「どのように活用するのか」「どの程度の精度が求められるのか」を事前に詳細に定義することで、効率的かつ実用的な収集が可能になります。例えば、新規開拓が主目標であれば、見込み客の発掘と育成に直結するデータ(業界、企業規模、予算感など)に絞って収集し、既存顧客の深耕が目標であれば、満足度や追加ニーズに関するデータを重点的に収集します。
チーム全体で収集できる仕組み作り
個人任せのデータ収集では、品質にばらつきが生じ、組織としての活用が困難になります。組織的な取り組みが成功の鍵となります。
標準化されたフォーマットや明確な入力ルール(必須項目、任意項目の区分、入力形式の統一など)を設定し、チーム全体で統一された方法でデータ収集を行う体制を構築することが不可欠です。定期的な研修や情報共有会議により、収集精度の向上と継続的な改善を図ります。また、データ入力の負担を軽減するため、可能な限り自動化を進めることも重要です。
収集データの法的・倫理的配慮と品質管理
データ収集においては、個人情報保護法第18条(利用目的の通知等)をはじめとする法的要件の遵守が絶対条件です。
特に、個人情報の取得時には利用目的を明示し、本人の同意を得ることが法的に義務付けられています。顧客からの明確な同意取得、適切な管理体制の構築、不要なデータの定期的な削除など、コンプライアンスを最優先とした運用が求められます。また、データの正確性を保つため、定期的な更新と検証を実施し、古い情報や誤った情報の混入を防ぎます。
継続的なデータ収集・更新体制の構築
一度収集したデータも、時間の経過とともに価値が急速に低下します。データは「生もの」であることを認識し、常に最新の状態を維持することが重要です。
顧客の状況変化(組織変更、担当者異動、事業方針転換など)、市場環境の変動、組織体制の変更などに対応するため、継続的な更新体制を構築することが不可欠です。定期的な顧客訪問(四半期に1回など)、アンケート調査(年2回など)、Webサイトでの行動追跡などにより、常に最新の情報を維持します。
経済産業研究所の調査では、データの継続的な更新と活用が企業の競争力向上に直結することが実証されています。
出典:経済産業研究所「企業において発生するデータの管理と活用」
データ収集を効率化するツール活用戦略

現代の営業現場では、適切なツールの選択と活用が、データ収集の成否を大きく左右します。以下の4つのツールを戦略的に組み合わせることで、効率的かつ効果的なデータ収集体制を構築できます。
見込み客データを自動収集するMAツール
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、見込み客の行動データを24時間365日自動的に収集・分析する強力なシステムです。人的リソースの制約を超えて、継続的なデータ収集を実現します。
MAツールで収集できるデータ例
データカテゴリ | 具体的なデータ例 | 営業活用ポイント |
Webサイト行動 | ページ訪問回数、滞在時間、離脱ページ、訪問経路 | 関心度の高い製品・サービスを特定 |
メール反応 | 開封率、クリック率、転送回数、配信停止率 | 最適な配信タイミングと内容を判断 |
資料ダウンロード | カタログ、事例集、価格表、技術資料の取得履歴 | 検討段階と具体的なニーズを把握 |
フォーム入力 | 問い合わせ内容、セミナー申込み、資料請求情報 | 直接的な関心事項と連絡先を取得 |
スコアリング | 行動履歴に基づく関心度点数、購買確度ランク | 優先的にアプローチすべき見込み客を特定 |
これにより、営業担当者は優先度の高い見込み客(ホットリード)を即座に特定し、最適なタイミングでアプローチできるようになります。また、見込み客の行動パターンから最適なコンテンツを自動配信する機能により、**効率的な育成(ナーチャリング)**も可能です。
顧客情報を体系的に収集するCRM・SFAツール
CRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援システム)ツールは、顧客情報の一元管理と体系的な収集を実現する中核システムです。営業活動のすべてを記録・管理する司令塔的な役割を果たします。
CRM・SFAツールで管理できるデータ例
データカテゴリ | 具体的なデータ例 | 営業活用ポイント |
顧客基本情報 | 企業名、業種、規模、担当者情報、連絡先 | ターゲティングと初回アプローチの最適化 |
商談履歴 | 提案内容、商談日時、参加者、議事録、次回アクション | 商談進捗管理と成功パターンの分析 |
売上・契約情報 | 受注金額、契約期間、支払条件、更新履歴 | 売上予測と既存顧客の深耕戦略立案 |
コミュニケーション履歴 | 電話、メール、訪問記録、対応内容 | 一貫した顧客対応と情報共有 |
課題・ニーズ | 顧客の抱える問題、要望、優先順位、予算感 | 提案内容のカスタマイズと価値訴求 |
商談の詳細な履歴、提案内容とその結果、顧客の反応や要望などを構造化して記録し、営業チーム全体で情報共有できます。過去の営業活動を詳細に分析することで、成功パターンの発見や改善点の特定が可能になり、組織全体の営業力向上につながります。
大量データを一元収集・分析するDWH
DWH(データウェアハウス)は、社内外の大量データを統合し、高度な分析を可能にする基盤システムです。単一のシステムでは見えない全体像を把握できる強力なツールです。
DWHで統合・分析できるデータ例
データソース | 具体的なデータ例 | 営業活用ポイント |
営業データ | 売上実績、商談進捗、成約率、営業担当者別実績 | 営業戦略の効果測定と改善点の特定 |
マーケティングデータ | 広告効果、リード獲得コスト、キャンペーン反応率 | 最適なマーケティング投資配分の決定 |
顧客データ | 購買履歴、利用状況、満足度調査結果、解約率 | 顧客ライフサイクル分析と retention戦略 |
財務データ | 売上、利益率、コスト構造、予算実績 | 収益性の高い顧客セグメントの特定 |
外部市場データ | 業界動向、競合情報、経済指標、市場規模 | 市場機会の発見と競争戦略の立案 |
営業データ、マーケティングデータ、財務データ、外部の市場データなどを組み合わせることで、単一のシステムでは得られない深い顧客理解と戦略的な意思決定を支援します。例えば、営業成果と顧客属性の相関関係を分析し、最も効果的なターゲット層を特定することが可能です。
全社データを統合収集・活用するCDP
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、顧客に関するあらゆるデータを一箇所に集約し、顧客の全体像を360度見渡せるようにする統合システムです。簡単に言えば、営業、マーケティング、サポートなど各部署が持つ顧客情報を一つにまとめ、誰でも同じ情報を見られるようにする仕組みです。
CDPとDWHの違い比較表
比較項目 | CDP | DWH |
主な目的 | 顧客体験の最適化・リアルタイム活用 | 大量データの長期保存・分析 |
データ範囲 | 顧客関連データに特化 | 全社データ(財務・在庫・人事等含む) |
更新頻度 | リアルタイム~準リアルタイム | バッチ処理(日次・週次・月次) |
利用者 | 営業・マーケティング・サポート部門 | 経営陣・データアナリスト・企画部門 |
活用方法 | 個別顧客への即座のアクション | 戦略立案・トレンド分析・予測 |
データ形式 | 統合済み・すぐ使える形 | 生データ・分析用に加工が必要 |
簡単な違いの解説: CDPは「顧客一人ひとりに今すぐ最適なアプローチをするため」のシステムで、DWHは「会社全体の長期的な戦略を考えるため」のシステムです。CDPは営業担当者が「この顧客に明日何を提案すべきか」を判断するのに適しており、DWHは経営陣が「来年の事業戦略をどう立てるか」を決めるのに適しています。
AIとの連携で実現する高度なデータ活用
ただ、こういった膨大な情報を人が処理して恣意的ではなく客観的に判断するのは難しかったのですが、現在ではAIでそれらデータから傾向と対策を練ることが容易に可能です。AIとの会話のソースにCDPやDWHの情報を置くことで、回答が世の中一般的な回答から、より自社の状況に寄り添った回答になるます。
一般的なAI回答と自社データ連携AI回答の比較例
質問内容 | 一般的なAI回答 | 自社データ連携AI回答 |
「A社への提案内容を教えて」 | 「一般的には、企業規模に応じた標準的な提案が効果的です。業界のベストプラクティスを参考に、コスト削減と効率化を軸とした提案を検討してください。」 | 「A社は過去3回の商談で『ROI3年以内』を重視しており、競合B社の提案に価格面で劣勢です。A社の製造ライン稼働率データから、省エネ設備導入で年間300万円削減可能。初期投資800万円なら2.7年でROI達成できる提案が最適です。」 |
「今月の営業戦略は?」 | 「月初めは新規開拓、月中は既存フォロー、月末はクロージングに注力するのが一般的です。業界トレンドを把握し、競合分析も重要です。」 | 「今月は製造業の設備投資予算消化期です。貴社の過去データでは、C社(検討期間4ヶ月)とD社(予算2000万円、決裁者:田中部長)が成約確度80%。E社は競合との価格競争中ですが、サポート体制を訴求すれば逆転可能です。」 |
「顧客満足度を上げるには?」 | 「定期的なアンケート実施、迅速な問い合わせ対応、アフターサービスの充実が重要です。顧客の声を製品開発に反映させることも効果的です。」 | 「貴社の満足度調査では『導入後サポート』が課題です。特にF社は導入3ヶ月後に満足度が低下傾向。同様パターンの顧客5社には、導入2ヶ月目に専任サポート担当による定期訪問を実施すると満足度が15%向上しています。」 |
このように、自社の蓄積されたデータをAIが参照することで、一般論ではなく「あなたの会社の、あなたの顧客に対する、具体的で実行可能な提案」を得ることができます。これにより、営業担当者は経験や勘に頼らず、データに基づいた確度の高い営業活動を展開できるようになります。
部門を横断したデータ活用により、一貫した顧客体験の提供と営業効率の劇的な向上を実現できます。特に、複数のタッチポイント(Webサイト、展示会、営業訪問、サポート窓口など)を持つ企業において、CDPの導入効果は顕著に現れます。顧客の購買ジャーニー全体を可視化し、各段階で最適なアプローチを実行することで、成約率の大幅な向上が期待できます。
中小企業庁の調査によると、デジタルツールを活用したデータ統合により、営業効率が大幅に改善された事例が多数報告されています。
ツールでのデータ収集活用シーン例
不動産業界の場合

不動産業界での統合活用シーン MAツールで物件検索履歴(戸建て3回、マンション5回検索)と閲覧時間(平均12分滞在)を詳細に収集し、CRMで顧客の家族構成(夫婦+子供2人)、予算(4000万円以内)、希望条件(駅徒歩10分以内、3LDK以上)を体系的に管理。DWHで地域別の成約データ(A駅周辺の成約率65%)と市場動向を分析し、CDPで顧客の購買ジャーニー全体(初回接触から契約まで平均3ヶ月)を可視化することで、各段階で最適なタイミングでの物件提案と的確なフォローアップが可能になります。
※記載の数値は参考例です。実際の営業現場では、これらの具体的なデータを総合的に分析することで、より精度の高い営業判断が可能になることを示しています。
DXを阻むデータのサイロ化・属人化を解決【CDPツール】とは?
CDPツール×AI活用事例
CDPツールの価値は、各業界が抱える特有の課題に対してどれだけ具体的な解決策を提供できるかが重要です。
主にAIと連携した最新の業界活用シーンをご紹介します。
広告代理店モデル

製造業提供モデル

バックオフィス・ヘルプデスク活用モデル

その他の業界では
不動産業界
反響営業において、サイトからの問い合わせ(MA)から初回面談までの期間短縮(SFA)、CRMのデータを一元管理することで顧客のライフスタイルに合わせた追客体制を自動化し、属人化解消と成約率向上を実現
広告・マーケティング業界
クライアント企業ごとに使用システムが異なる過去キャンペーン効果と担当者の嗜好を統合分析し、提案精度向上と案件管理の効率化を達成
小売・EC業界
店舗とオンラインの購買データを統合し、リピーター獲得戦略の立案と売上予測の精度向上を支援金融・保険業界コンプライアンス要件を満たしながら顧客のライフステージ変化を把握し、最適なタイミングでの商品提案を可能にする
メーカー(消費財)
販売店経由の売上データとエンドユーザーの反応を統合し、効果的な販促施策の立案と市場動向の先読みを実現
など最近ではAIとの連携により各業界の課題に合わせた柔軟なソリューションを提供することが可能となっています。
これらの機能により各部署各組織のデータ活用における各種作業、分析の時間が短縮されます。
CDP×AIエージェント連携具体例
昨今特に競争が激しくAI活用による業務効率化が必須課題となっている広告代理店業界におけるAIエージェント×CDPの活用事例を紹介します。
事例1:株式会社ピアラ
株式会社ピアラは中堅中小企業を中心に設立以来20年間にわたり、1000社以上のクライアントに対し、YahooやGoogleのWEB広告などの他、認知から理解・共感、購入、そしてファン化に至るまで、ダイレクトマーケティングを中心とした包括的なマーケティング支援を提供してきた中堅の広告代理店となります。
同社では多岐にわたる業種やジャンル、ターゲット、顧客の悩み、媒体、クリエイティブなど、独自のタグ付けを行った多岐にわたるデータを大量に蓄積しており、それに基づいてクライアントのニーズに最適な広告戦略を日々行ってきましたが、これらの大量且つバリエーション豊富なデータは、広告運用の精度を高めるための貴重な資産である一方で同社内だけではうまく活用しきれていないといった課題も同時に抱えていました。
そこで同社は株式会社ジーニーのグループ企業となる株式会社JAPAN AIが提供するAIエージェントサービスとGENIEE CDPを連携し活用することで、広告レポート作成の他クライアント向けに従来大半を手作業行っていたクライアント支援業務を大幅に効率化することを実現しました。
これにより、同社は人的リソースをコンサルティングなどより戦略的な業務に集中できる体制を実現し収益構造の転換を図っています。

さらに、どのクリエイティブが最も費用対効果が高いかをAIが自動で分析し、その要素を言語化して、新しいクリエイティブを生成することで、クリエイティブ制作のスピードと質を飛躍的に向上させる取り組みも同時に進めています。
自動生成したクリエイティブを直接各媒体プラットフォーム(Meta、Google、Yahoo!、LINE等)へ入稿し、運用結果を再び広告レポートとして自動生成することで、PDCAサイクルを効率的かつ効果的に実行できるようになります。
それにより、同社が支援するクライアントはWEB広告の費用対効果を最大化し、新規顧客の獲得を加速させることが可能となるのです。
AIによるリアルタイムな効果測定と分析に基づき、迅速な改善策を講じることで、PDCAサイクルを高速化し、継続的な効果向上と限られた予算で最大の効果を引き出し、CPAの改善、ROASの向上に貢献するといった取り組みを開始し業界内外からも高い注目を集めている事例となります。

今後は更にCDP×AIエージェントの連携を深化させることより、広告運用の自動化と効率化、ターゲティングとパーソナライズの精緻化、高速PDCAサイクルの実現を通じて、クライアントに対してより高い価値を提供するだけでなく、業務効率の向上により、クライアントはより迅速かつ効果的なマーケティングを展開することが可能となり、ビジネスの成長を加速させることが期待されています。
DX根本課題を解決するCDPとは?DMPとの違いや使い分け~AIエージェント連携データ統合事例~ |
DXを阻むデータのサイロ化・属人化を解決【CDPツール】とは? |
【CDP活用】営業活動でよくある悩みを解決する顧客プロファイル構築法とは? |
CDP×AIエージェント導入後効果検証
※同社公開済決算資料より抜粋
CDP×AIエージェントモデル導入開始は2024年12月。開発期間も考慮した導入後約半年となる2025年2025年5月15日に開示された第1四半期決算(2025年1月~3月)資料内でその効果を確認することができてます。

まず売上高は四半期ベースで過去最高額に到達し業務効率化だけでなくトップラインの向上が可視化されました。

重点戦略においてCDP×AIの活用を掲げ引き続き事業を推進していくと同時に、特に戦略③にある通り「CDP×AI」モデル開発が順調に進み、CDPに集約統合された各種データのAIによる学習が進むことで成果物のアウトプット精度の向上と業務効率化に効果をあげている点が確認できます。

CDP×AI活用による具体的な成果指標として業務時間200時間の削減が想定されています。

結果として業務の効率化のみならず成果向上によるトップラインの増加により同社として過去に例を見ない高い成長率を実現することができました。その背景には昨年末導入を開始したCDPとAI連携によるデータ活用が業務効率化と同時に成果物アウトプットの質向上が寄与している点は言うまでもありません。

参照元:https://www.piala.co.jp/ir/library/presentation
事例2:ブランディングテクノロジー株式会社
ブランディングテクノロジー株式会社は、中堅・中小企業のブランディングおよびデジタルマーケティングの広告代理店として長年事業展開をしてきました。同社の特徴は広告枠を売って終わりではなく、顧客に寄り添い伴走支援を行うことで長年信頼と実績を積み上げてきました。
しかし、同社の事業モデルは伴走型と言われるように大量のデータを収集分析し成果を産み出す労働集約型且つ工数の伴う一方で成果を出し続けるには社員が多くの時間を投下するビジネスモデルでありました。
近年、AIを用いた事業の効率化を経営上の重要施策として展開する中、CDPツールの導入と合わせ以下機能を有したAIエージェントを駆使することでコンサルティング業務の効率化だけでなく成果向上を持続的に図る事業モデルへの転換を図る意思決定を行いました。初期段階において以下の取り組みを開始しています。
導入するAIエージェント例
・広告バナーエージェント:ペルソナ策定から素案作成まで広告バナー作成の自動化
・競合/顧客分析エージェント:競合他社のHPやSNSの分析結果、顧客動向をレポートとして生成
・広告審査エージェント:法規制・ガイドライン遵守確認の自動化(審査時間を約75%削減)
・コンサルナレッジ検索エージェント:類似案件の抽出やベストプラクティスの提案
・ブランディング戦略エージェント:企業理念・価値観、市場トレンドを踏まえた戦略策定
・SEO最適化エージェント:SEO戦略の自動化・最適化支援
・ROI予測エージェント:施策ごとのリスク評価・シナリオ分析による投資効果予測
・顧客カテゴリ分析エージェント:顧客データの自動分析・最適セグメント化

「GENIEE CDP」では、基幹システムや業務系SaaS、各種広告媒体のデータを一元管理し、さらにWEB検索データや顧客の行動データまでをリアルタイムに統合することで、従来各所に分散していた様々なデータソースを統合し、より深い顧客理解と効果的なマーケティング施策の立案が可能になります。

「GENIEE CDP」で構築したデータ基盤と、JAPAN AIが提供する最先端のAIソリューション群の統合的なアプローチにより、データドリブンな意思決定とAIによる業務効率化を同時に実現し、より戦略的で効果的なコンサルティングサービスを提供することができるようになりました。

まとめ

営業成果の持続的な向上には、戦略的なデータ収集が不可欠な要素となっています。属性データ、行動データ、心理データの3つの分類に基づいた体系的な収集により、顧客理解を深め、効果的な営業活動を展開できます。
適切なツールの戦略的な活用により、データ収集の効率化と精度向上を実現し、競合他社との明確な差別化を図ることが可能です。特に、CDPの導入により、全社的なデータ活用体制を構築することで、営業組織全体の生産性向上と顧客満足度の向上を同時に実現できます。
データ収集型営業への転換は、確かに一朝一夕には実現できません。しかし、明確な目標設定と段階的な取り組みにより、確実に営業成果の向上を実現し、持続的な競争優位性を構築できるでしょう。
本記事で使用した専門用語集

ITやシステムに詳しくない方でも本記事をご理解いただけるように本記事で使用している主な専門用語を、どなたにも分かりやすく整理しました。ぜひご確認ください。
営業・ビジネス基本用語
営業現場
実際に営業活動が行われる現場。顧客との商談、提案、契約締結などの業務が行われる場
属人化
特定の営業担当者だけが顧客情報や営業手法を持っている状態。ベテラン営業が退職すると、貴重な顧客情報や営業ノウハウが失われてしまうリスクがある
ホットリード
購買意欲が高く、成約の可能性が高い見込み客。積極的にアプローチすべき優先度の高い顧客
ナーチャリング
見込み客から顧客へ、既存顧客からリピーターへといった、顧客を段階的に育てていくこと
データ・システム用語
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)
顧客に関するあらゆるデータを一箇所に集約し、顧客の全体像を360度見渡せるようにする統合システム
DWH(データウェアハウス)
社内外の大量データを統合し、高度な分析を可能にする基盤システム
MA(マーケティングオートメーション)
見込み客の行動データを24時間365日自動的に収集・分析し、最適なタイミングでアプローチを支援するシステム
CRM(顧客関係管理)
顧客情報の一元管理と体系的な収集を実現するシステム。顧客との関係性を管理し、営業活動を支援する
SFA(営業支援システム)
営業活動のすべてを記録・管理し、営業プロセスの効率化と成果向上を支援するシステム
スコアリング
顧客の行動履歴や属性に基づいて、関心度や購買確度を数値化する仕組み
法的・コンプライアンス用語
個人情報保護法
個人情報の適正な取扱いを定めた法律。営業活動においても、顧客の個人情報を適切に管理することが義務付けられている
コンプライアンス
法令遵守。企業が法律や規則を守って事業活動を行うこと
注:この用語集は、記事内で実際に使用されている用語を中心に構成しており、どなたでも理解できるよう平易な言葉で説明しています。記載されている情報は執筆時点のものであり、最新情報はインターネットや各ツールの公式サイトでご確認ください。