金融機関向けMA/CRM/SFA活用ガイド 6製品34社導入事例

Summary
- 金融機関の営業現場は多様化する顧客ニーズと働き方改革の両立が求められている。
- MA(マーケティング自動化)、SFA(営業支援)、CRM(顧客関係管理)の3システムが営業DXの中核を担う。
- 地域金融機関は「支援する側」と「変革を進める側」の二つの役割を果たし、DX推進が急務となっている。
- デジタル化の課題には柔軟な勤務対応不足や情報共有の断絶があり、段階的な改善が必要。
- DXはコンプライアンス対応や顧客管理の高度化を可能にし、金融業界の独自価値創造を促進する。
- 導入は段階的に進め、組織の理解と参画を得て、地域DXのリーダーとしての役割を果たすことが期待されている。
はじめに

金融機関の営業現場には、今、大きな変化の波が押し寄せています。
お客様のニーズは多様化し、一人ひとりに合わせたきめ細かな対応が求められる一方で、働き方改革による業務の効率化も急務となっています。
そんな中、注目を集めているのが、営業活動をデジタル化する金融機関版「営業DX」です。
具体的には、以下の3つのシステムを活用した改革が数多くの金融機関で開始されています。
本稿では、これらのシステムについて、導入のポイントから活用方法まで、できるだけわかりやすく解説していきます。
金融機関の営業DX:二面性と現状

この章では、金融機関が直面している課題と、デジタル化による解決の可能性について見ていきます。
デジタル技術の進化と金融機関の変革
経済産業省が2024年3月に発表した「DX支援ガイダンス」¹では、地域金融機関に対し、従来にない新たな役割と変革が求められていることが示されています。
¹ 経済産業省「DX支援ガイダンス」(2024年3月27日)
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240327005/20240327005.html
※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務プロセスや組織文化を変革し、新たな価値を創造する取り組みを指します。
1.1 地域金融機関に求められる二つの役割
地域金融機関は今、「支援する側」であると同時に、「変革を進める側」という二つの重要な役割を担っています。
地域企業のDX支援機関としての役割
- 中小企業の「主治医」としての期待
・経営層との対話による課題の洗い出し
・経営ビジョンの言語化支援
・具体的な戦略策定のサポート - 伴走型支援への社会的要請
・地域のDX推進ラボとの協力
・他支援機関とのノウハウ共有
・成功事例の横展開 - DXコンサルタントとしての機能
・デジタル化診断の実施
・具体的な導入支援
・継続的なフォローアップ
金融機関自身のDX推進主体としての役割
- 内部のデジタル化の必要性
・社内コミュニケーションツールの刷新
・デジタル人材の確保・育成
・データ分析基盤の構築 - 顧客支援力強化の前提条件
・SaaSツール等の実践的経験
・デジタル技術の活用ノウハウ
・支援メソッドの確立 - 競争力維持の要件
・業務プロセス改革
・データに基づく意思決定
・新たなビジネスモデルの創出
これら二つの役割は相互に補完し合い、自らの変革なくして他者の支援はできません。
1.2 現状の具体的な課題
多くの金融機関は、デジタル化の実行段階で以下のような課題に直面しています。
- 柔軟な勤務形態への対応不足
・アナログなコミュニケーションツールの継続使用
・社内メールや紙の回覧による情報伝達
・対面会議や報告の重視 - 紙ベースの業務プロセスの残存
・リモートアクセス環境の制限 - 情報共有と営業活動の課題
・個別管理された顧客情報
・担当者ごとの独自管理
・システム間の情報連携不足
・担当者異動時の引継ぎ問題
・ノウハウの分散化
一朝一夕には解決できませんが、段階的なアプローチと優先順位付けで改善可能です。
これらの課題解決に一役買っているのがSaaSと言われるクラウドシステムの中でもSFA、CRM、MAの3つのツールであり、金融機関でも導入する企業が増えています。
1.3 金融業界特有の営業環境とDXの親和性
業界特有の要件
- フィデューシャリー・デューティー(お客様本位の業務運営)
- 金融商品取引法等の各種規制
- コンプライアンスとリスク管理の徹底
DXによる課題解決の可能性
- コンプライアンス対応の効率化
- 説明プロセスの標準化と記録
- リスク管理の自動化
- 顧客管理の高度化とデータに基づく提案
- 営業プロセスの透明性確保と商談履歴の可視化
金融業界の制約は、DXによって独自の価値創造に転換可能です。
次章では、これらの課題を解決するためのMA/SFA/CRMという3つの重要ツールの特徴と選定ポイントを解説します。
MA/SFA/CRMによる具体的な解決策

具体的なツールとその活用法
金融機関が直面している課題、特に「情報共有不足」「属人的な営業活動」「コンプライアンス対応の負担」に対し、デジタルツールが解決策を提供します。特に、MA(マーケティング自動化)・SFA(営業支援)・CRM(顧客関係管理)の3ツールは連携して大きな効果を発揮します。
2.1 営業・マーケティングDXの基礎知識
MA(Marketing Automation:マーケティング自動化)
- 見込み顧客の自動発掘
- メール配信の自動化
- 顧客行動の分析・スコアリング
- ウェブサイト行動履歴の追跡
金融機関ではセミナー参加者や資料請求者へのきめ細かなフォローが可能です。
SFA(Sales Force Automation:営業支援)
- 商談・案件管理
- 活動履歴の記録
- 営業プロセスの可視化
- 営業報告の自動化
営業行動の可視化とノウハウ共有、コンプライアンス対応機能も充実。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
- 顧客情報の一元管理
- 取引・対応履歴の共有
- 顧客分析レポート作成
これらのツールを活用することで営業担当者変更時もセキュリティが確保された状態で顧客情報を引き継げることで一貫した対応が可能です。
2.2 金融機関におけるSFACRM導入メリット
- 営業プロセス改革
商談進捗のリアルタイム把握、成功パターンの共有、標準化されたアプローチ - 新人教育の効率化
成功事例のデジタル化、標準プロセス確立、OJTの質向上 - 顧客満足度向上
一貫対応、過去履歴即時確認、ニーズに応じた提案、タイムリーなフォローアップ - データに基づく経営
部門間連携、マーケティング効果測定、AIによる予測分析と最適提案
2.3 金融機関特有の活用シーン
- 統合的な顧客アプローチ(MA)
ウェブ行動分析、資料請求者フォロー、セミナー管理 - 商談管理の効率化(SFA)
商品提案履歴、コンプライアンスチェック、電子承認ワークフロー - 長期的な関係構築(CRM)
ライフイベント連動提案、取引履歴一元管理、家族情報活用 - コンプライアンス対応
説明プロセス標準化、提案履歴管理、リスク管理強化 - デジタルマーケティング展開
ターゲット別施策、クロスセル・アップセル機会特定、顧客育成プログラム自動化
これらの機能により、効率的な営業活動とコンプライアンス遵守を両立し、顧客満足度の向上と営業力強化が可能となります。
金融機関向けMA/SFA/CRM導入による具体的な変化

金融機関の営業現場では、デジタルツールの導入により大きな変革が進んでいます。本章では、営業DXシステム(MA/CRM/SFA)がもたらす具体的な変化を解説します。
金融機関のデジタル化の現状
金融庁の「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」(2022年6月)によると、金融機関のデジタル化は以下の3段階に分類されます。
- 第1世代:基本的なデジタル化(ペーパーレス化、基本システム導入)
- 第2世代:全社的なデジタル推進(データ活用、業務プロセス改革)
- 第3世代:高度なデジタル活用(API連携、データ駆動経営)
※API(Application Programming Interface)とは、異なるシステム同士を安全に連携させる技術です。
先進的な第3世代でも、新規顧客獲得は課題が残り、既存顧客サービスの向上が中心となっています。
出典:金融庁「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」
3.1 導入後の業務改革事例
営業担当者の働き方改革
- 移動中でも顧客情報にアクセス可能
タブレットで資料表示、外出先から商談記録入力、リアルタイム承認対応
例:新幹線移動中に商談準備が可能に - 報告業務の時間削減
日報自動作成、活動集計、ペーパーレス化
例:1日約1時間の事務作業削減 - 商談準備時間短縮
過去履歴即時確認、提案資料自動表示、AIによる次回提案
例:準備時間が従来の1/3に - ワークライフバランス向上
場所を問わず業務遂行、残業削減
例:育児と両立し在宅で資料作成や顧客フォロー
ベテラン社員の新たな役割

- 経験・ノウハウのデジタル化
成功事例データベース化、動画化、提案テンプレート作成
例:投資信託説明ノウハウを動画化し若手育成に活用 - 若手育成の効率化
オンライン研修、リモートOJT、成功パターン共有
例:チャットで即時アドバイス、成約率1.5倍に向上 - 戦略的顧客対応時間の創出
重要顧客集中、コンサル強化、新商品開発参画
例:富裕層向け相続対策に注力 - 組織の知見蓄積
ナレッジベース構築、ベストプラクティス標準化
例:ベテランの相続対策ノウハウを全店舗で活用
組織全体での情報活用体制
MA/SFA/CRM導入により、個人依存から脱却し、組織として一貫性のある高品質サービスを提供可能に。
- 担当者不在時の適切対応
顧客情報把握、対応履歴確認、代理対応注意点表示
例:複数担当者による継続フォロー - 過去対応履歴の即時確認
相談内容詳細、提案履歴、家族情報把握
例:相続相談で家族情報をリアルタイム確認 - コンプライアンス対応自動化
チェックリスト管理、リスク商品履歴管理、適合性確認
例:投資信託販売時の電子チェックリスト - クレーム対応迅速化
対応経緯把握、部署間情報共有、解決策提案
例:リアルタイム情報共有で迅速対応
3.2 お客様対応品質の向上
MA/SFA/CRMにより、パーソナライズされたきめ細やかなサービスが可能に。
- 顧客ニーズの可視化
取引履歴分析、ライフイベント予測、資産状況把握
例:住宅ローン返済状況から最適商品提案 - タイミングを捉えた提案
自動満期案内、ライフステージ連動提案、市場動向連動投資提案
例:退職金入金に合わせた資産運用プラン - 関連商品の最適提案
クロスセル機会特定、リスク許容度に応じた選定、世帯単位提案
例:住宅ローン契約者への保険提案 - 長期的な関係構築
定期フォローアップ自動化、家族構成変化対応、資産形成支援
例:子どもの誕生に合わせた教育資金プラン
3.3 主要製品の特徴と選び方
金融機関向けMA/SFA/CRM選定時は、金融機関特有の要件を満たすかが重要です。
推奨機能
- コンプライアンス対応
説明義務記録、適合性チェック、反社会的勢力連携
例:電子管理で説明漏れ防止 - セキュリティ機能
個人情報保護、アクセス権限設定、操作ログ管理
例:担当者別アクセス制御 - モバイル対応
タブレット・スマホ対応、オフライン動作保証
例:訪問先でのスムーズな説明・申込 - 他システム連携
基幹システム、営業支援、外部データベース連携
例:口座情報リアルタイム参照
これらの要件を総合的に評価し、自社に最適なソリューションを選択しましょう。
金融機関向けSFA/CRM導入事例

本章では、実際に企業サイト内に公開されている情報を元に金融機関におけるSFACRMシステムの導入事例を紹介します。
導入事例一覧
※2024年12月時点の公開情報を元にまとめています。
サービス名 | 導入企業 | 詳細情報URL |
---|---|---|
Salesforce | 三菱UFJ銀行 | 事例詳細 |
SBI新生銀行 | 事例詳細 | |
琉球銀行 | 事例詳細 | |
長野県信用組合 | 事例詳細 | |
BankNeo | 南都銀行 | 事例詳細 |
鳥取銀行 | 事例詳細 | |
きらぼし銀行 | 事例詳細 | |
三菱UFJ銀行 | 事例詳細 | |
トマト銀行 | 事例詳細 | |
愛媛銀行 | 事例詳細 | |
商工組合中央金庫 | 事例詳細 | |
紀陽銀行 | 事例詳細 | |
大分銀行 | 事例詳細 | |
肥後銀行 | 事例詳細 | |
琉球銀行 | 事例詳細 | |
興能信用金庫 | 事例詳細 | |
福井銀行 | 事例詳細 | |
京都銀行 | 事例詳細 | |
fcube | 栃木銀行 | 事例詳細 |
伊予銀行 | 事例詳細 | |
栃木銀行 | 事例詳細 | |
東京スター銀行 | 事例詳細 | |
横浜銀行 | 事例詳細 | |
ふくおかフィナンシャルグループ | 事例詳細 | |
佐賀銀行 | 事例詳細 | |
百十四銀行 | 事例詳細 | |
千葉銀行 | 事例詳細 | |
高知銀行 | 事例詳細 | |
十六銀行 | 事例詳細 | |
eセールスマネージャー | さわやか信用金庫 | 事例詳細 |
Mazrica Sales(旧Senses) | アコム株式会社 | 事例詳細 |
「GENIEE SFA/CRM」 | 松江リース株式会社 | 事例詳細 |
※各事例の詳細は、URLをクリックしてご確認ください。なお、導入時期や詳細な機能については、各金融機関の公開情報に基づいています。

記事要約
松江リース株式会社は、営業進捗管理にエクセルを使い手間がかかっていた課題を「GENIEE SFA/CRM」で解決。営業日報の二重入力を削減し、営業活動の可視化と効率化を実現しました。さらに「GENIEE BI」を導入し、多角的なデータ分析が可能に。導入2年で受注率が約50%増加し、3年目にはさらに向上が見込まれています。営業活動のリアルタイム把握により、効率的な指示や改善が可能となり、業務効率と成果が大幅に改善されました。
https://chikyu.net/case/matsue-leasing
次章では、これら主要ツールの検討ポイントを比較していきます。
実践的な導入・活用ガイド

金融機関におけるMA/SFA/CRM導入の進め方
ここまで見てきたツールを、実際にどのように導入していけばよいのでしょうか。段階的な進め方のポイントを解説します。
4.1 段階的な業務改革の推進
金融機関におけるMA/SFA/CRMの導入は、単なるシステム刷新ではなく、組織文化の変革を伴う取り組みです。成功のカギは「上層部と現場の理解と参画」にあります。
フェーズ1:基本的なデジタル化(目安:3〜6ヶ月)
- 紙と印鑑からの段階的移行
- 商談記録の電子化
- 顧客交渉履歴の蓄積
- 融資関連書類のペーパーレス化
実践ポイント
- 部門・業務特性に応じた優先順位付け
- 並行運用期間の設定
- 現場の声を反映した改善
フェーズ2:データ活用の開始(目安:6〜12ヶ月)
- 顧客データの統合と活用
- 取引履歴の分析
- 顧客行動の把握
- パーソナライズ提案の実現
実践ポイント
- 段階的なデータ移行
- 部門横断の活用事例共有
- 定期的な効果測定と改善
段階的アプローチで現場の受容性を高め、確実な業務改革を実現しましょう。
4.2 成功のための重要要素
システム導入の成否は、技術準備以上に組織の受け入れ態勢づくりが重要です。特に営業店での実務に即した運用設計が求められます。
システム選定のポイント
- 必要機能の見極め
- クラウドサービスの活用
- AI・RPAとの連携可能性
- データ活用基盤としての拡張性
個人情報保護とコンプライアンス
- 安全性の確保
- 事前の本人同意取得
- 情報セキュリティ対策
- 利用者保護の徹底
ここまで、具体的な導入・活用方法を解説しました。次章では、デジタル時代における金融機関の新たな役割と可能性について展望します。
金融機関の未来像:地域DXのリーダーへ

いかがでしたでしょうか?金融機関のデジタル変革は、単なる業務効率化の枠を超え、地域経済の発展を支える重要な取り組みへと進化しています。MA/SFA/CRMの導入は、その第一歩となる重要な施策です。
本稿で解説した段階的なアプローチと実践的な活用方法を参考に、各金融機関の特性や地域性を活かした形でデジタル化を進めていただければ幸いです。デジタル化の波は、課題ではなく、むしろ金融機関が新たな価値を創造するための大きなチャンスとなるはずです。
【補足】よくあるご質問
- Q1. 導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A1. 一般的な導入スケジュールは以下の通りです。- 準備期間:1-2ヶ月(要件定義=必要な機能の洗い出し、システム選定)基本導入:3-6ヶ月(データ移行、基本機能の導入)本格活用:6-12ヶ月(高度な機能の追加、活用範囲の拡大)
ただし、これらは目安であり組織の規模や導入範囲によって変動します。場合によっては1から2年かける場合もありますので、まずは確実な導入ができるように心がけましょう。
A2. 段階的な教育がお勧めです。- 基本操作研修:全従業員向けの基本機能の使い方実践研修:部門別の具体的な活用方法フォローアップ:定期的な活用状況の確認と補足説明
特に、ベテラン従業員向けには丁寧なサポートを心がけましょう。
A3. 主なサポート内容は以下の通りです。- ヘルプデスク:システムの操作方法や技術的な質問への対応定期的な活用支援:利用状況の確認と改善提案バージョンアップ対応:新機能の追加や改善点の説明
各ベンダーによってサポート内容は異なりますので、導入時に確認することをお勧めします。
- 準備期間:1-2ヶ月(要件定義=必要な機能の洗い出し、システム選定)基本導入:3-6ヶ月(データ移行、基本機能の導入)本格活用:6-12ヶ月(高度な機能の追加、活用範囲の拡大)
※本稿の執筆時点の情報です。導入を検討される際は、各ツールの最新情報を必ずご確認ください。
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