既存顧客の維持が重要!顧客とより良い関係を築く方法とは?
企業の売上を伸ばすためには、新規顧客の獲得だけでなく、「既存顧客の維持」が重要です。
新規顧客の獲得ばかりに力を入れていては、売上を伸ばすことはできません。既存顧客を優良顧客にすることで、会社に継続して利益がもたらされるのです。
しかし企業の中には、新規顧客の獲得ばかりの施策を行い、既存顧客への対応が後回しになっているところも少なくありません。そうした事態を避けるためにも、既存顧客維持の重要性について知っておく必要があります。
本記事では、既存顧客の維持が重要な理由や維持するための取り組み、関係維持に役立つツールなどをご紹介します。
なぜ、既存顧客の維持が重要?
マーケティングには大きく分けて「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持活動」の2つがあります。既存顧客の維持とは、すでに顧客になっている企業や個人を維持することを目的としています。
キャンペーンやイベントの案内を定期的に行なったり、メルマガやDMの配信、アフターフォローなどを行なったりします。既存顧客に定期的に案内を送ることにより、サービスの継続や再購入などをしてもらうことが最終目的です。
「1:5の法則」の観点から
既存顧客が重要とされる背景には「1:5の法則」があります。
マーケティングにおいては、新規顧客の獲得と既存顧客の維持はどちらも大切です。しかし新規顧客を獲得するには、既存顧客維持と比較して約5倍のコストがかかるとされています。
これは、「1:5の法則」と呼ばれています。
新規顧客の獲得にはコストがかかり、最初は利益率が低くなります。一方で、既存顧客は一度商品を購入してくれているため、すでに自社製品のある程度興味を持ってくれている状態です。そのため少ない投資で、もう一度商品を購入してくれる可能性が高いでしょう。
事業の発展や売上向上のためには、新規顧客の獲得と既存顧客の維持のバランスを見極めながら進めることが大切です。
サブスクリプション型サービスの台頭
近年では、サブスクリプション型サービスも増えてきました。サブスクリプション型サービスは購入してもらうことも大切ですが、何より大切なことは「継続して使用してもらう」ことです。
多くの顧客に継続して使用してもらうことにより、安定した利益を出すことができます。
そのため新規顧客の獲得はもちろん、既存顧客にいかに長く続けてもらうかという施策を大切にしなくてはいけません。
アップセル・クロスセルのチャンス
既存顧客の維持が可能になれば、継続的な売上が見込めます。そして、さらなる売上向上を狙うなら、既存顧客の単価を上げる必要があります。
その方法の一つが「アップセル」と「クロスセル」です。
アップセルは、既に契約している商品やプランよりも高単価のものを契約してもらうことを指します。アップセルが重視される理由の一つは、新規顧客よりも売上を上げやすいからとされています。
ただし、ただ高いプランを提案するだけでは、なかなか契約まで至らないでしょう。
高単価のプランのほうが、より顧客の利益につながることをアピールする必要があります。そのため、顧客が既存の商品やサービスにある程度の価値を見出しているタイミングでアプローチすることが大切です。
クロスセルは、既存顧客に対し別の商品やサービスを提案して契約してもらうことです。
自社内で複数の商品やサービスを展開している場合は、クロスセルを狙うケースもあります。
アップセルとクロスセルは、顧客との間に既に信頼関係が構築できている際に使われることが多いものです。信頼関係が既に構築されている場合、新規顧客を獲得するよりも契約にまで至る可能性が高いでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大
2020年は、世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大した年となりました。緊急事態宣言なども発令されたことで、多くの企業でテレワークなどの勤務スタイルへの変更を迫られました。
新規顧客を獲得するために、従来の対面営業の代わりにオンライン商談を行なったり、セミナーの代わりにウェビナーなどに切り替えたりする必要があったのです。
しかし、こうしたオンライン施策はメリットとともに、デメリットもあります。
直接顧客と顔を合わせられないオンライン施策では、意思の疎通がうまくいかない可能性があるでしょう。
さらに、これまでオンライン施策を行う環境を整えてこなかった企業の場合、いきなりオンライン施策に切り替えても、とまどう社員が多いでしょう。そのため、さまざまな課題に直面してしまいます。
また、新規顧客にアプローチするためのWebコンテンツや動画などは多くの人の目に触れますが、そこまで関心のない顧客の割合も増えてしまいます。数が膨大になった新規見込み顧客の中から、確度の高い顧客を見つけるのが困難になってしまうでしょう。
そのため、今は新規顧客の獲得よりも既存顧客へのアプローチが必要なタイミングとされているのです。
新規顧客獲得を重視すべきパターン
既存顧客の維持はとても重要ですが、新規顧客獲得を重視すべきパターンもあります。
ここでは、どのような場合に新規顧客の獲得を重視すべきなのかをご紹介します。
商材
新規顧客と既存顧客、どちらを重視すべきかは、まず商材によって考えましょう、
たとえば、戸建て住宅などを販売する不動産会社や、結婚式を提供するブライダル業界などは、新規顧客を大事にしなくてはいけないでしょう。
一方で、日用品や消耗品など、短いスパンで購入する機会が多い商材は、既存顧客を大事にすべきでしょう。また、日用品や消耗品はライバル商品も多いため、顧客を逃がさないような仕組みづくりが必要です。
市場
市場で判断する方法もあります。市場が成長段階の場合は、多少コストがかかっても、新規顧客獲得を重視したほうがよいでしょう。成長段階で獲得した顧客は、市場が発展した段階になって、企業を支えてくれる顧客となる可能性があります。
それとは逆に、市場が成熟していて競合他社が多かったり、既に知名度が高く顧客が多かったり利する場合は、既存顧客の維持に注力したほうがよいでしょう。
ただ、成熟しきった市場の場合、そのビジネス自体が飽きられてしまい、維持していくことが難しい可能性があります。そのような段階になったときに、新しい事業をスタートできるように準備しておく必要があるでしょう。比較的コストの抑えられる顧客維持に力を入れ、利益を獲得していくことがおすすめです。
新規顧客の獲得と既存顧客の維持はどちらも大事ですが、企業が持つリソースは限られています。限られたリソースをどのようにバランスよく配分するか、考える必要があります。
新規顧客と既存顧客、どちらに重きを置くかは商材や市場よって異なるでしょう。しかし、いずれにせよ短期的な視点で考えないようにすることが大切です。
特に、新規顧客は獲得後すぐに利益につながるわけではありません。これは、新規顧客獲得にかかるコストが、既存顧客よりも高いためです。すぐに利益にならなくても、焦らず中長期的なまで戦略やコストを考えましょう。
たとえば、新規顧客は一度獲得したら既存顧客になります。そのため、新規顧客を連続して獲得することで、安定的な利益が得られます。コストや労力をかけてでも獲得する価値があります。
一方で、既存顧客を維持する仕組みをつくることは、今後大きな利益を生み出すために大切とされています。既存顧客の維持はコストを抑えつつ利益を出すために行い、新規顧客獲得にコストをかけるなど、バランスよく配分することが重要です。
「顧客維持率」とは?
既存顧客の維持ができているかという一つの指標が「顧客維持率」です。顧客維持率とは、どれくらい顧客を維持できているのかを表すものです。
前章でご紹介した取り組みを実施するにあたり、どれくらい成果があったのかを確認する際にこの指標を用いることがおすすめです。
顧客維持率は以下のように計算します。
「顧客維持率=期間終了まで残った顧客数÷期間開始時の顧客数」
期間は、企業の目的や時期などで異なります。そのため一定区間で区切り、数値を観察しましょう。
顧客維持率を算出するには、CRMやSFAなどの顧客情報が管理できるツールを用いることがおすすめです。顧客データを分析する際に、「顧客維持率」の項目を設定することで、簡単に自社の顧客維持率の推移を確認できます。
一般的に、年間の顧客離脱率は10~30%とされています。そのため顧客維持率の平均は70~90%といえるでしょう。
既存顧客を維持するための取り組み
既存顧客を維持するには、既存顧客に向けた施策を行う必要があります。ここでは既存顧客を維持するための取り組みについてご紹介します。
顧客を知る
既存顧客維持のための施策を考えるには、顧客と同じ目線で戦略を考える必要があります
そのためには、まず顧客を知ることが大切です。顧客を知ることで、顧客視点のサービスが行えるようになるでしょう。顧客を知るためには以下のような方法があります。
アンケートを実施する
顧客は企業に対して自発的に意見を伝えることがなかなか難しいものです。そのため、定期的にアンケートを実施することで、顧客の生の声を聞くことができるでしょう。
たとえばメルマガでアンケートを募ったり、ホームページ上にアンケートコーナーを設けたりするなどです。
実店舗の場合はアンケートシートを置いたり、通常の接客時のコミュニケーションで実際に聞いたりすることも一つの方法でしょう。
過去の顧客の行動を分析する
顧客を知るために、過去の行動を分析する方法もあります。顧客の年齢、性別、エリアなどに細かく分け、過去の行動を分析することで顧客に合わせた施策を実施できるようになるでしょう。
顧客に合わせた施策を実施する
顧客が何を求めているのかを知ったら、次は実際に顧客に合わせた施策を実施します。
顧客は一人ひとり趣味・関心が異なります。そのためアプローチ対象を限定しないマスマーケティングを行うよりも、個々に合わせたアプローチ行うダイレクトマーケティングが有効でしょう。
ダイレクトマーケティングを行うことで、顧客は「大切にされている」と感じます。顧客の特別感を引き出すことで、結果的に顧客を囲い込める確率が上がります。
アフターフォローを徹底する
アフターフォローを徹底して行うことは、顧客満足度の向上につながります。顧客満足度を上げられれば、次の購入にもつながっていくでしょう。
新規顧客獲得のための施策を行うことに注力し、アフターフォローをおろそかにしていては、売上向上にはつながりません。またアフターフォローの重要性を理解していても、新規顧客の獲得を重視するあまり、適切な対応がとれないケースもあります。
しかし適切なアフターフォローができれば、リピーター獲得や顧客満足度向上につながるでしょう。
たとえば、アフターフォローによって、自社製品やサービスに対する理解を深めてもらえれば、継続的な利用につながります。また人の心理として、継続利用するほど愛着も湧きやすくなります。そのためさらなる継続利用が期待できるでしょう。
適切なアフターフォローは、営業マンに対する信頼度向上にもつながります。顧客目線で見るならば、商品やサービスだけでなく、営業マンに対する信頼も選択基準の一つといえます。そのため既存顧客に対しても、丁寧な対応をすることが大切なのです。
ロイヤルティプログラムを実施する
顧客が商品やサービスに価値を見出し続けるには、「メリット」を感じてもらうことが大切です。そのために、商品やサービス自体の魅力はもちろんですが、何かしらの「付加価値」を付ける方法もあります。
その方法の一つが、「ロイヤルティプログラム」です。ロイヤルティプログラムは、商品を何度も購入してくれたり、サービスを何度も利用してくれたりする、いわゆる「優良顧客」向けの施策です。優良顧客に向けて企業が何らかの特典を与えることにより、愛着や信頼感を持ってもらおうという施策です。
たとえば購入金額に応じてポイントを付与し、それを自社製品の購入にあてる制度などがロイヤルティプログラムにあたります。
ロイヤルティプログラムはある程度のコストがかかりますが、顧客に信頼性と愛着を持ってもらうという意味では有効な方法です。
従業員満足度の向上を図る
既存顧客を維持するには、顧客満足度はもちろん、従業員満足度の向上を図る必要があります。顧客へ良質なサービスを提供するには、従業員のモチベーションが高くないと難しいためです。
たとえば、アパレルなどで顧客相手に接客する際に、不満な感情があったり、重労働で疲れていたりすれば、その感情は相手に伝わってしまいます。
そうした状態が長く続けば、顧客満足度は下がりやすいでしょう。
また、アフターフォローが不足していると、商品に不備がなくても顧客満足度は低くなる傾向にあります。商品を売るだけではなく、要望やクレームに対して真摯に対応することも大切です。
顧客満足度を上げ、既存顧客を維持するには、従業員の満足度を上げることも重要です。従業員がその企業や商材を好きだと思い、モチベーションを上げて働くことで社内の雰囲気が良くなるでしょう。
また、社内の雰囲気が良くなれば、従業員間の情報共有も活発になります。情報共有が活発になれば、顧客へのサービスもスムーズになり、顧客満足度の向上につながるでしょう。
ITツールをうまく活用する
既存顧客へ最適なタイミングで適切なアプローチをするには、顧客の正確なデータが必要です。そのために導入したいのが、ITツールです。
近年では、業務効率化や生産性向上のため、営業活動においてITツールを活用する企業が増えてきました。
しかしITツールはただ導入するだけでは意味がありません。そのITツールをいかにうまく活用していくかが重要です。
次の項ではおすすめのITツールについてご紹介します。
既存顧客の維持に役立つツール
既存顧客の維持にはITツールの活用が効果的です。
たとえば、顧客情報の管理には「CRM」が効果的とされています。
CRMは顧客管理ツールと呼ばれているツールです。
「Customer Relationship Management」の略称で、顧客との関係性やコミュニケーションの管理や維持のために多く利用されます。
顧客情報や顧客の購入履歴などを正しく把握、分析することで、顧客の視点に立ったマーケティングを行うことが可能になります。その結果、既存顧客との関係維持や、顧客生涯価値の向上などが期待できます。
CRMの主な機能
CRMにはさまざまな機能が搭載されています。ここでは代表的な3つの機能をご紹介します。
顧客情報管理機能
顧客の基本的な情報はもちろん、取引内容や購入履歴、商談などの履歴情報を管理できます。
また多くのツールにはカスタマイズ機能が搭載されており、管理したい項目を追加できます。
配信機能
メールなどの情報を配信する機能です。
顧客を属性ごとに分類したうえで開封率の検証なども可能なため、アプローチ精度を高められる点が特徴です。
問い合わせ管理機能
顧客からの問い合わせ内容を管理する機能です。
問い合わせ内容を時系列ごとに、履歴として保存・蓄積できるので返信漏れや二重返信を防げます。
また問い合わせ内容を「よくある質問」としてまとめれば、顧客が何に困っているのか、どう返信すればいいのかがわかります。
対応速度が上がることにより、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
CRMを使うことで期待できる効果
CRMには既存顧客と良好な関係を維持するために必要な機能が備わっています。
以下の効果が期待できます。
営業部署全体のパフォーマンスアップが期待できる
CRMに蓄積された顧客情報や、ノウハウ、スキルを部署全体で共有することで、パフォーマンス向上が期待できます。
またマネージャーは全体の進捗状況を把握できるので、タイミングに合わせたサポートやアドバイスが可能です。
こうして適切なタイミングで適切な商品やサービスを顧客に提案できるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
顧客情報を共有できる
入力した顧客情報はリアルタイムで共有できます。社内全体で同じ情報をすぐに共有でき、いつでもすぐに取り出せるので、生産性の向上が期待できるでしょう。
顧客に合わせた施策を行う際に、最新の顧客情報が共有できていることはとても重要です。
また優良顧客を属性分けできることも大きなポイントです。リピート回数やサービスの継続期間などを確認すれば、優良顧客の割合なども確認できます。
CRMはこうした優良顧客を自動的に振り分けてくれるので、業務効率化にもつながるでしょう。
リアルタイムな状況把握が可能
CRMを導入すれば、リアルタイムで状況を把握できます。そのため、顧客ごとに合わせた施策を行う際にも、タイミングを逃すことが少なくなるでしょう。
またクラウド型CRMであれば社外からでもアクセス可能です。そのため営業先で最新の顧客情報を確認したいときにも役立ちます。
既存顧客の維持という観点から見ると、初回の接点から時間を空けないことが重要です。CRMで顧客データを蓄積しておけば、顧客の状況に基づいた施策を迅速に立案できるでしょう。
選ぶ際のポイント
CRMにはさまざまな種類があり、機能も豊富です。ここではCRMを選ぶ際のポイントをご紹介します。
他のシステムと連携できるか確認する
すでに導入しているシステムがある場合は、他のシステムと連携できるかを確認しましょう。
たとえば在庫管理システムなど、他のシステムと連携できれば、さらなる業務効率化につながります。
機能が多いだけで選ばない
機能が多ければそれだけできることが増えます。しかし多機能でも、使わない機能が多くては意味がありません。大切なのは、自社に必要な機能が搭載されていることです。
使わない機能が多すぎると使いにくく、現場で定着しにくい可能性があります。
さらに多機能のツールは価格も高くなります。使用しない機能にコストをかけるよりも、使用する機能を最低限備えた、自社に目的に合ったツールを導入しましょう。
導入実績が豊富かどうか
導入実績も一つの指標です。業種や職種などによって必要な機能が異なりますので、導入実績のみで決めることはおすすめできませんが、確認はしておきましょう。
導入実績が豊富なツールは、導入事例が公開されていることも多くあります。導入事例を見れば、導入企業が「何に困っていたのか」「どのように解決したのか」がわかります。
自社の状況に近い導入事例を読めば、参考になるでしょう。
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競合他社に負けず、自社の製品やサービスを選び続けてもらうためには、既存顧客の維持がとても大切です。そのためには、顧客目線に立った施策を考える必要があるでしょう。
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