営業マニュアルの作成手順とそのポイント|その重要性についても解説!
営業マニュアルとは、営業のノウハウが詰まった資料のことです。
一昔前までは、営業マンは個人の経験と勘などが大事とされていました。そのため、先輩が営業する姿を見て、ノウハウを学んでいたのです。
しかし、近年では効率を重視し、マニュアルを作成する企業が増えています。
本記事では、営業マニュアルの作成手順と作成するメリット、重要性などをご紹介します。
営業マニュアルの必要性とは?
営業マニュアルは、営業活動に関するノウハウが記載されたマニュアルです。
営業活動は、取引先によって多少対応内容が変わりますが、ノウハウ自体は共通する部分も多くあります。
たとえば、営業先へのフォローやタイミングなどは、どの取引先でも共通する部分が多いものです。こうしたノウハウをまとめて、誰が見ても分かりやすく学べるようにしたものが、営業マニュアルです。
営業マニュアルは、営業マンのこれまでの経験がぐっと凝縮されているため、マニュアルそのものが会社の財産となるでしょう。
また、新人営業マンにノウハウを教える際も、営業マニュアルがあれば効率よく営業活動を教えられます。
営業マニュアルを作成するメリット
営業マニュアル作成はさまざまなメリットがあります。ここでは、営業マニュアルを作成するメリットをご紹介します。
業務効率の改善につながる
営業マニュアルがあることによって、営業活動や教育時間の効率化につながります。
作業手順などをすぐに確認することができ、迷ったり悩んだりする時間が減少します。
新入社員へ指導や引継ぎをする際も、マニュアルは役立ちます。今までは、先輩や上司が新入社員につきっきりで指導や教育をすることも多くありましたが、マニュアルがあれば指導や引継ぎに役立つため、教育時間の短縮につながるでしょう。
また、指導は教える側の知識も一定でなくてはいけません。指導する社員の知識や技術に差があれば、教えた社員のレベルにばらつきが出てしまいます。
営業マニュアルがあれば、指導社員の理解度や知識を一定化できます。理解がスムーズになり、相手の時間を余計に奪うこともなくなるでしょう。
仕事の時間が短縮できるようになれば、コストの削減につながります。残業や休み時間にまで指導することがなくなるため、残業代を支払うことがなくなります。
また、教える側・教えられる側の負担なども減らせるでしょう。
営業品質が安定する
営業マニュアルを確認しながら仕事をすることで、営業品質の安定が期待できます。
業務に必要な作業を着実にこなせるようにすれば、社員ごとの作業レベルにばらつきが出ることを防げます。レベルを一定化させることで、営業品質の安定にもつながります。
また、個人依存のリスクも避けられます。営業活動は個人で行う部分が多く、「担当者しか知らない」という事態が発生することもあります。その場合、その担当者が休んだり、退職してしまったりすれば、誰も対応できなくなってしまいます。
営業マニュアルがあれば、そうした事態に陥っても解決できるようになります。属人化や個人依存のリスクをなくすためにも、営業マニュアルは大切といえるでしょう。
組織で働くからには、社員の足並みを揃えなくてはいけません。仕事とは、1人で行うものではないからです。足並みを揃えて、業務の到達目標にたどりつく必要があります。
そのためには、社員全員が目標について理解しておかなくてはいけません。
マニュアルは、目標達成に必要な情報や知識を共有するのにも役立ちます。また、後から作業の抜け漏れなどを確認したり、修正したりする手間も省けるでしょう。
営業属人化の防止
営業マニュアルを作ることで、営業属人化の防止も期待できます。
従来の営業活動は属人化しやすいものでした。業務内容や個人のスキル、経験などが共有されていないため、誰も引き継ぐことができないケースもあったのです。
こうした属人化を防げるのが営業マニュアルです。マニュアルに「誰が」「いつ」「どの場所で」「何をするか」が記載されているので、誰が見ても同じ作業ができます。
「この業務はあの社員がやっているからわからない」「その仕事はあの社員にしかできない」といった個人に依存した業務があると、万が一の際に困ってしまうでしょう。
たとえば、業務を行える社員が休んだり、異動になったり、退職してしまったりした場合、その作業を行える唯一の人材がいなくなってしまいます。
マニュアルは、こうして属人化のリスク防止に役立つのです。
コスト削減
営業マニュアルがあれば、作業時間の短縮につながります。マニュアルを見ればどのような作業をすればよいのかわかるため、業務の途中で悩んだときでもすぐに解決策が見つかります。誰かに聞いたり、悩んだりする時間も軽減されるでしょう。
また、マニュアルがあれば新人教育の時間を削減できます。従来の教育方法では、上司や先輩社員がつきっきりで指導をする時間も多くありました。
マニュアルさえあればこの時間を削減できます。基本的な業務はマニュアルを読んで進めてもらい、わからない部分、わかりにくい部分だけを相談してもらうという方法がとれます。
こうした作業時間や教育時間の削減ができれば、残業して指導したり、休み時間を削って作業したりなどの事態が起こりません。時間を有効に使うことができ、人件費などのコスト削減につながるでしょう。
離職防止
マニュアル作成など、教育体制を充実させることは早期離職の防止につながるとされています。
企業の悩みの種の一つに「人材の定着化」が挙げられます。中でも営業職は定着率が低いとされている職種です。営業職はノルマがあることも多く、他の職種よりも成績を重視されます。また、勤務時間が長くなりがちな点も、定着率が低い原因とされています。
こうした離職化、定着率低下の解決が期待できるのが営業のマニュアル化です。営業マニュアルは、これまで実績を積んできた営業マンのノウハウや経営者が積み上げた営業の基本などを、誰でもが実践できるように分かりやすくしたものです。
このマニュアルを見れば具体的に何をすればよいか明確になるため、迷わず業務に専念できます。
また、マニュアルはこれまでの実績をもとにしたノウハウが掲載されているため、ノウハウを共有して営業実績を上げることにもつながるでしょう。実績が上がることでモチベーションも向上し、離職率の低下が期待できます。
営業マニュアルに入れる内容
営業マニュアルの内容は、業種などによって異なりますが、主に以下のような内容を盛り込みます。
・身だしなみに関するマナー
服装や髪型、化粧の仕方などに関するマナーを記載します。
・挨拶に関するマナー
挨拶の言葉や、名刺交換などのマナーを記載します。
・商談時のマナー
商談時の基本的なマナーから注意点などを記載します。
お茶が出されたときはどうすればよいのか、座るタイミングはいつなのかなど、最初に知っておきたい基本的な部分も記載します。
・商談時の会話術
商談時の会話の進め方や、会話術などを記載します。
・商品のアプローチ方法
自社の商品に関する情報や、アプローチ方法を記載します。
どのようにアプローチするのか、どこをアピールしたらいいのかなど、商談のコツをまとめます。
・顧客の管理方法
新規顧客や既存顧客の管理方法について記載します。
これらの基本的な項目のほか、マニュアルの目的や対象に応じて内容が変わってきます。何を盛り込むのかを、自社内で精査してから作成しましょう。
次の項では、マニュアルの作成手順についてご紹介します。
クレーム対応やトラブル例も記載する
顧客からのクレーム対応や、トラブル例なども記載しておきましょう。
マニュアルがあったとしても、ミスを完全になくすことはできません。想定していない部分で顧客や取引先からクレームが来たり、トラブルになったりすることもあります。
その際に、マニュアルに過去にどんな対応をしたのかなどのノウハウや対応例が書かれていれば、焦らなくてすみます。
また、あらかじめ共有しておくことで、同じミスを防ぐことにつながるでしょう。
「なぜ起きたのか」「間違えやすい部分はどこか」などが書かれていれば、さらにわかりやすくなります。
内容は更新する
会社の状況や業務内容の変更などにより、マニュアルの内容がそぐわなくなることもあります。そのため、マニュアルも都度更新していきましょう。
更新を怠ると、実際の業務と差異が出てしまい、使えなくなってしまいます。マニュアルの担当者を決め、定期的に見直しや更新を行いましょう。
営業マニュアルの作成手順
ここでは、営業マニュアルを作成するための手順をご紹介します。
目的を明確にする
まずは営業マニュアルを作成する目的を明確にしましょう。たとえば、以下のような目的が考えられます。
新入社員の育成期間を短縮したい
これまでの経験から積み上げられた営業マンのノウハウをまとめれば、新入社員に的確に指導できるようになります。また、研修用テキストとしても使用できるため、育成期間の短縮につながるでしょう。
営業部門全体の生産性を上げたい
販売調査、販売活動、クレーム処理など、ベテラン営業マンの営業活動やノウハウをまとめることで、営業部門の活動の標準化・効率化が期待できます。
目的により、営業マニュアルの内容やフォーマットは異なります。そのため、最初に目的を明確にしておく必要があるのです。
マニュアルの対象メンバーを明確にする
次に、マニュアルを読む対象メンバーを明確にします。
たとえば、新入社員と中堅社員とでは、持っている知識や経験が異なるので、同じ内容でも理解度に差が出てしまいます。
そのため、対象メンバーに合わせて、営業マニュアルの内容を作成しなくてはいけません。誰が一番マニュアルを読むのか、誰を対象とするのかを明確にしておきましょう。
マニュアルの内容を決める
マニュアルにどのような内容を盛り込むのかを決めましょう。どのような内容を入れるのか、掲載項目を決めて作成します。
まず、概要を作成した後、対象となる読み手や担当者に確認してもらうようにしましょう。そこで読み手が理解できなかったり、周知の内容ばかりが書かれていたりすれば、マニュアルとして意味がありません。過不足を確認し、修正していきましょう。
概要が決まったら、次はいよいよ執筆・整理・運用を行います。この作業は、専門別・部門別に分業すればより効率的です。
文章はできるだけ簡潔にし、一般的でない用語の使用は避けます。ケースによっては図やイラストなどを利用しましょう。
また、関係者の協力を得ることも大切です。経理関係者や編集者、体裁の技術など、マニュアルの形式や内容によっては、専門知識を必要とする場合も多いでしょう。
そのため、社内で関係する人や、専門知識を持った人の協力を得ることが重要です。
運用する
マニュアルが完成したらメンバー内で共有し、運用を開始します。
実際にマニュアルを必要としている人は過不足なく使えるように、配布範囲を決めておきます。配布の方法は、マニュアルの内容を決める際に決定しておきましょう。
配布方法は、紙・オンライン閲覧・データ資料などがあります。オンライン閲覧やデータ資料は閲覧・確認が手軽ですが、セキュリティ面に気を配る必要があるでしょう。
配布範囲は上司などに確認し、しっかり定めておきます。
効果測定をする
マニュアルは作って終わりではありません。マニュアルを作成することによって、どのような効果があったのか効果測定をしましょう。そして、改善できる部分があれば改善を実施します。1年に一度など定期的に効果測定の機会を設けましょう。
マニュアルはメンテナンスが必要です。時代や商品などによって、内容が違ってくる場合もあるためです。メンテナンスのルールを定め、改版履歴をつけながら運用しましょう。
また、必要に応じて更新がいつでもできるように、現場とコミュニケーションを取ることも大切です。
営業マニュアルの作成ポイント
営業マニュアルで大切なので、読む人がわかりやすいかどうかです。手順や必要なことを的確に伝えられなければ、業務効率化など、目的に沿うことは難しいでしょう。
ここでは、営業マニュアルを作成する際のポイントをご紹介します。
伝え方を工夫する
マニュアルは、5W1Hを意識して作成しましょう。
「どのような相手に(Who)・どのようなタイミングで(When)・どこで(Where)・どのようなことを(What)・何を目的として(Why)・どのように伝えるか(How)」を明確にします。
そうすれば、どこを見れば知りたい情報がわかるのかが伝わりやすいマニュアルになるでしょう。
また、マニュアルはレイアウトなど「見やすさ」も大切です。文字だけでなく、表や画像なども用いながら伝えるとわかりやすいでしょう。マニュアルに項目ごとに見出しを設定し、段落が一目で見てわかるようにするのもおすすめです。
さらに、マニュアルの形式は「冊子」とは定められているわけではありません。ビデオ教材、持ち歩きに便利なハンドブックなど、さまざまな形式があります。
テキスト型の冊子
新人研修や定期研修などで用いる際におすすめなものが冊子型です。
会社の理念や、営業としてのノウハウをしっかりと知ってもらいたいときに採用するとよいでしょう。持ち歩いて都度確認するのではなく、概要などを記載します。
ハンドブック
持ち運びに便利な小型タイプです。営業先への移動中や、外回りのときなどに確認しやすいです。
営業の会話術や、アプローチ方法などのノウハウが主に記載されています。いつでも確認できるため、営業マンにすぐに確認してもらいたい場合におすすめです。
ビデオ教材
名刺の渡し方、礼の仕方など、動画で見た方がわかりやすいシーンを見せたいときに役立ちます。研修などで用いることがおすすめです。
重要な部分を強調する
マニュアルの中で、特に読んでもらいたい重要な部分は強調しましょう。
フォントや色を変えたり、文章の途中に箇条書きなどを盛り込んだりするものがおすすめです。具体的に伝えたい場所があれば、マーカーなどで色をつけておけば、自然と目をひきます。
また、最初から完璧なものを求めないことも大切です。実際に運用してみて問題のある部分や、足りない部分を直していきましょう。
利用メンバーにアンケートを実施
営業マニュアルは、利用するメンバーにアンケートを実施し、改善を繰り返しましょう「どんな内容を追加してほしいか」「わかりにくい部分はないか」などのアンケートを実施し、その結果をもとに改善を繰り返します。
営業マニュアルは、実際に利用する現場の声がとても大切です。リアルな声や事情などを集め、実態に合ったマニュアルを作りましょう。生の声を掲載すればより具体的な対策が生まれ、使いやすいマニュアルになるでしょう。
営業マニュアルを作るときは「はじめから完璧なマニュアルを作ろうとしない」のがポイントです。マニュアルは優れたものであるほど価値がありますが、はじめから完璧なものを作ろうとすると、完成に時間がかかり、いつまでも完成しない可能性もあるでしょう。
マニュアル作成に時間をとられ、本来の業務に支障が出ては本末転倒です。そのため、マニュアル作成は利用メンバーにアンケートをとりつつ、運用しながら改善するようにしましょう。
また、こうした作業は定期的に行われます。そのため、マニュアルを運用する際に、部署や課ごとに担当者を設けるのがおすすめです。担当者がいれば「誰に聞けばいいのか」がクリアになり、スムーズに運用できるでしょう。担当者は、業務フローなどが変更されたら、すぐにマニュアルの更新を行います。
クラウド上で共有する
完成したマニュアルはクラウド上で共有しましょう。クラウド上で管理しておけば、わざわざ更新情報を共有する必要がありません。また、リアルタイムで情報が更新されるので、常に最新の情報にアクセスできます。
マニュアルはExcelなどでも作成できますが、デメリットも多くあります。
Excelは複数の社員での管理がしにくく、共有しにくい面があります。マニュアルは営業チーム内で共有することが大切ですが、Excelだとリアルタイムで情報が更新されず共有もできません。さらに、複数の人間が同時に操作したり、保存したりすることができないのもデメリットです。
Excelはデータを更新するたびに、いちいち更新内容をチームで共有しなくてはいけません。そのため共有し忘れや古いデータを渡してしまうなどのミスが発生する恐れがあります。
さらに誤って最新ではないデータを更新してしまうと、メンバー間で違う情報を共有している状態になってしまいます。こうしたミスを防ぐために、クラウド上で共有できる状態にしておきましょう。
情報へのアクセスしやすさを重視
営業マニュアルは、すぐに確認できる状態にしておく必要があります。いつでもアクセスしやすい場所に保管しておきましょう。特に、オンライン上のマニュアルは、場所がわかりにくいと社員が活用しなくなってしまいます。
こうした事態を防ぐには、どうすればマニュアルを閲覧できるのかをしっかり周知しましょう。
また、マニュアル上でも検索性を高めるなど、必要な情報になるべくスムーズにたどり着くことができるように工夫します。社内全員がアクセスできる「社内ポータル」が構築されている企業であれば、ポータル内に配置しておくのがおすすめです。
社内ポータルが構築されていない企業であれば、構築を考えるか、マニュアルを配置しておく場所を決める必要があります。メールやチャットツールなどで一度共有した後、ファイルの保管場所を決めましょう。
まとめ
営業マニュアルは、新入社員や若手社員の早期戦力化や教育コストの削減、業務効率化など、さまざまな効果が期待できます。また、マニュアルは会社にとって財産になるでしょう。
そうした営業マニュアルを作るには、見やすく、現場の声をとり入れたものにする必要があります。また、効果があるかどうかは定期的に測定を行いましょう。
営業マニュアルに関しては、こちらの資料でも詳しく解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。