消費財・日用品業界におけるCDP導入・活用シーン│体験価値のコミュニケーション実現の実践例

消費財・日用品業界が直面する課題
消費財・日用品業界は、従来からの定番プロモーション手法となるマス広告による大量認知獲得と、リテール店舗での大量販売というビジネスモデルで成長してきました。
しかし、デジタル化の進展と消費者行動の多様化、細分化、生活スタイルの変化に伴い、従来のマーケティング手法の有効性や影響力が低下傾向にあります。
情報オーバーフローによるコミュニケーション効率の低下
インターネットの登場により、世の中の情報量は急激に増加しましたが、実際に個人が特定期間内に摂取できる情報量や媒体は選択肢が増える一方でマス媒体で届けられる情報量には限界が来ているのも事実となります。
このため、情報のオーバーフローが起きており、従来のマス広告による認知獲得が困難になってきている現状があります。
消費者は、膨大な情報の中から、SNSなどの特定媒体を通じて自分にとって本当に必要な情報のみを選別し取得するようになり、企業からの一方的且つ大量なメッセージは無視される傾向が強まっています。
広告アレルギーとアドブロック機能の浸透

昨今、ネットユーザーのバナー広告へのアレルギーが高まっており、ミレニアル世代を中心にブラウザのアドブロック機能が浸透しています。
このため、デジタル広告の効果が低下し、従来の広告投資の効率性も準じて低下が見られます。
商品のコモディティ化と差別化の困難性
消費財メーカー各社の開発競争が成熟した結果、商品のコモディティ化が進み、差別化をすることが難しくなっています。
機能や品質では競合製品との差別化が困難になり、消費者の購買決定要因が、商品そのものから、その商品を通じて実現される「体験」(モノからコト)へとシフトしています。
CDP導入による課題解決

体験価値のコミュニケーションへの転換
CDPの導入により、消費財・日用品企業は、従来の「認知→興味→検討→購買」というファネル型のコミュニケーションから、「体験価値のコミュニケーション」へと転換することが可能になります。
体験価値のコミュニケーションとは、顧客の行動を360度で分析した結果可視化される「顧客インサイト」を起点にして、顧客が真に求めている「モノ」ではなく「コト」「体験」を提供することを意味しています。
最近良く目にする「CX」Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)ともいわれ、「顧客体験」や「顧客経験価値」を意味します。企業と顧客が商品・サービスを通じて接するあらゆる接点(タッチポイント)で得られる感情的な満足度や印象を含めた、総合的な体験全体を指します。
例えば、ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなく「穴」であるという言葉がありますが、同様に、消費財・日用品の購買者が求めているのは、商品そのものではなく、その商品を通じて実現される生活体験なのです。
これらは「ジョブ理論」(※)でも触れられていますが、顧客は製品ではなく、解決したい「仕事」のために買う。
ドリルの例では、顧客が欲しいのはドリルではなく「壁に穴を開けること」であるということ。
※ジョブ理論とは、機能的・感情的・社会的ジョブの3側面から顧客の本当のニーズを理解し、より良い製品開発とマーケティングに活かすフレームワークの1つです(気になる方は書籍の情報を参考にして下さい)。
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生活者インサイトの発見

CDPを活用することで、消費財・日用品企業は、生活者の日常の生活行動を把握し、ターゲットユーザーに向けた戦略を考えることが可能になります。
つまりそれはどういうことか?
具体的には、検索キーワード、接触メディアといったユーザーが検索や情報を探す際のオンライン上の行動データや店頭での支出傾向、購買データといったオフラインデータ、デモグラフィックや趣味、よく行く場所といった嗜好性データを組み合わせることで、日々の買い物行動、特徴的な生活行動、類推される性格など、断片的なファクトを抽出することができます。
ユーザーを限られた面だけでなく、360度から分析しどんな行動と思考、強いては嗜好を持ったユーザーであるかを詳らかに可視化することで1to1のマーケティング活動が実現できるということです。
これらの断片的なファクトを組み合わせることで、生活者のライフスタイルや生活シーンをイメージし、見えてきたインサイトをマーケティング施策の中で活かしていくのです。
CDPを活用しマクロとミクロの二層的なアプローチが有効
CDPを活用したデータ分析には、マクロ的なアプローチとミクロ的なアプローチの二層的なアプローチが有効です。
マクロ的なアプローチでは、購買者のデータから行動特徴を抽出して、そこに解釈を加えることで生活者シナリオを抽出します。
属性をもとにクラスタリングした購買者のデータから、考えられる1日の生活パターンを作成し、購入している人の性格をマッピングすることで、
「自分たちの商品はどういう性格の人に受け入れられているのか」
「競合他社とはどのような違いがあるか」
などを深堀りしていくことが可能になります。
ミクロ的なアプローチでは、
ひとりの購買行動を連続的に追跡することで、ユーザーの具体的理解を深めます。
例えば、ある自社商品を5回連続で購入した人、他社製品やブランドから乗り換えた人、他社製品にシフトしてしまった人という3つのクラスタリングを行い、それぞれの生活者について分析を実施します。
購買行動を追うことで、購入した商品・サービスから生活者の嗜好性やライフスタイルを可視化することができるのです。
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ターゲット戦略の精緻化
CDPを活用したデータ分析により、マーケティングにおけるターゲットの解像度が精緻化されます。
購買ヒストリーの分析を行うと、自社商品、競合商品のユーザー層のマッピングが可能になり、ブランドスイッチを推進したいターゲット層がどこにいるのかなども可視化されます。
ユーザー毎の特性やキャラクターが可視化できることで、より確かなターゲット戦略が考えられるようになるのです。
適切なターゲットへの適切なメッセージ配信
更にCDPを活用することで、「適切な人に」「適切なタイミングで」「適切なコンテンツを」「適切な方法と場所で」伝えることが可能になります。
従来の企業目線のプロダクトアウト的なメッセージングから、顧客に寄り添ったマーケット・インでのターゲットへの語りかけへと転換し、インサイトを持つ人へ浸透させ、商品コンセプトへの共感を目指すアプローチが実現されるのです。
CDPツール実装上の考慮事項

データとクリエイティビティの融合
CDPを活用したデータ分析において重要なのは、想像性と仮説力を活かした分析です。
いかに幅広い仮説を立ててデータで検証できるのか、どの解釈が一番確かなのかを考える発想力が重要です。
データがどれだけ大量且つ豊富に揃っていたとしても、それを活用するための想像性と仮説力がなければ、生活者の深いインサイトはキャッチし切れません。
それらのインサイトのヒント、仮説の材料を得るためにCDPが大きな役割を果たすといえるのではないでしょうか。
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断片的なファクトの組み合わせ
消費財や日用品を日々購入する生活者の深いインサイトを知るためには、断片的なデータ単体では不十分です。
断片をつなぎ合わせ、解像度をあげながら組み合わせ、様々な角度で分析のトライ&エラーを繰り返すことで、生活者の「顔」つまり「ファクト」が見えてくるのです。
そこから生活者の生活行動やペルソナ、カスタマージャーニー、ターゲット戦略を導き出し、ブランドコミュニケーションに活かすことが重要なのです。
継続的な仮説検証
CDPを活用したマーケティングは、継続的な仮説検証のプロセスにほかなりません。
初期の仮説に基づいて施策を実行し、その結果をCDPを活用し収集したデータをつなぎ合わせながら検証を加え、新たな仮説を立てるというサイクルを繰り返すことで、マーケティング効果が継続的に向上していくのです。
AIエージェント連携に伴うCDPツールの進化

CDPツールはAIエージェントとの連携により、顧客データの活用方法が大きく変わろうとしています。
従来の静的なセグメンテーションから、AIが顧客の行動パターンをリアルタイムで分析し、個別最適化されたアクションを自動実行する動的なシステムへ進化。
これにより、マーケティング効率が飛躍的に向上し、顧客体験の質が格段に高まります。
それらは次世代型CDPツールと言われ、GENIEE CDPなど一部のAI×SaaS市場で急成長を遂げているテック企業らによって進化を遂げています。
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データ×AIエージェントがなぜ、またどのようにして事業課題を解決するのか?次世代型CDPとは?
まとめ:消費財・日用品業界への示唆
消費財・日用品業界における次世代型CDPツール導入は、従来のマス広告中心のマーケティングから、顧客インサイトに基づいた体験価値のコミュニケーションへの転換を意味しています。
生活者の日常の行動を把握し、その中から生活者の本質的なニーズを発見し、それに基づいたマーケティング施策を展開することで、商品のコモディティ化が進む中でも、ブランドの差別化と顧客ロイヤリティの向上が実現されるのです。
今後、消費財・日用品業界において競争力を維持するためには、CDPを活用した生活者インサイトの発見と、それに基づいた体験価値のコミュニケーション実現が、必須の経営課題となっていくでしょう。

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