アップセルとは?クロスセルとの違いやメリット・実現させる方法を徹底解説
アップセルとは、顧客に上位モデルや高価格帯の商品・サービスを提案することで顧客単価を向上させる販売戦略です。 顧客満足度を高めながら売上アップを実現できる有効な手法ですが、顧客のニーズを無視した押し売りは逆効果になることもあります。
そのため、アップセルとは何か、どのように推し進めるべきかをしっかりと把握したうえで実行するのがベストです。
この記事では、アップセルとクロスセルの違いやメリット・デメリットについて解説します。アップセルの注意点や成功事例についても触れていますので、あわせてご参照ください。
アップセルとは?
アップセルとは、簡単に言えば「顧客一人あたりの購入単価を向上させるマーケティング戦略」です。顧客に商品やサービスを購入してもらう際に、より高価格帯のオプションやプラン、上位モデルを提案することで顧客単価の向上を図ります。
たとえば、スマートフォンを購入する顧客に対してより大容量のストレージを持つモデルや、高性能なカメラを搭載した上位機種を提案することがあげられます。ほかに、iPhoneのiCloud+などでストレージ容量が不足気味のユーザーに対し、上位サブスクプランへ誘導するのもアップセルのひとつです。
つまりアップセルとは、顧客の総数を増やさずに売上を伸ばす手法として、あまりコストを掛けずに利益を出せる重要なマーケティング戦略として知られています。顧客のニーズを的確に捉えたうえで、より満足度の高い商品やサービスを提供することで、企業は収益増加を期待できる仕組みです。
クロスセルとは?
クロスセルとは、顧客が購入する商品やサービスに関連性の高い商品を合わせて提案することで、購入総額を増やす販売手法です。たとえば、ノートパソコンを購入する顧客に、「持ち運びに便利なケース」「ワイヤレスマウス」を提案する手法があげられます。
ほかに、ホテルの宿泊予約に朝食やスパの利用を勧めることもクロスセルに該当します。顧客の利便性を高めたり、新たなニーズを喚起することで、購買意欲を高めて売上増加に繋げるのがクロスセルの手法です。
アップセルとクロスセルの違いとは?
アップセルとクロスセルとは、どちらも顧客単価向上を目指す販売戦略です。しかし、アップセルとクロスセルはアプローチ方法が異なります。アップセルは、顧客が元々購入を検討していた商品やサービスよりも、上位モデルの製品を提案することで客単価を上げる手法です。
一方でクロスセルは、顧客が購入する商品やサービスに加えて、関連商品を提案することで購入品目を増やし、売上増加を促します。
たとえば、スマートフォンを購入しようとしているユーザーに対し、よりハイグレードな本体機種の購入を促すのがアップセルです。「顧客が求めているモノ」の中でも、表面化していない潜在ニーズを深堀りして興味関心を引き出し、すでに購入意思を示していた商材からバージョンアップを促します。
一方で、保護フィルムやケースをセットで購入するよう促すのがクロスセルです。顧客のニーズを理解しつつ、商品やサービスのセット購入を促すことで、顧客一人あたりの売上を伸ばします。
つまり、「アップセルとは、より高いモノを売るマーケティング戦略」「クロスセルとは、より多くのモノを売るマーケティング戦略」といった点がそれぞれの違いです。
アップセルを行う目的
アップセルは、企業が持続的な成長を遂げるために重要な役割を果たします。アップセルを通じて顧客との長期的な関係を構築し、顧客一人ひとりの収益貢献度を高めれば、収益性を高めて事業の成長に繋げることが可能です。アップセルを行う目的としては、以下の2点があげられます。
・顧客生涯価値(LTV)の最大化 ・収益性の向上 |
顧客生涯価値(LTV)の向上
顧客生涯価値(LTV)とは、顧客が企業との取引を通じて、生涯にわたってもたらす収益の総額を指します。簡単に言えば、企業との取引期間が長くなればなるほど顧客生涯価値も大きくなる計算です。
LTVを大きくするには、顧客の企業や商品に対する愛着・信頼を持ってもらい、ファン化する取り組みが欠かせません。継続して商品を購入してもらううえで、顧客満足度の向上は不可欠です。
そこで、アップセルが注目を集めています。アップセルとは、顧客に高価格帯の商品やサービスを提供する手法です。言い換えれば、顧客一人ひとりに向き合って、有用な商材を提供する取り組みを指します。
その結果、アップセルで顧客に提示した商品によりファン化を促しやすくなり、顧客生涯価値が向上する効果が期待できます。LTV向上は企業の安定的な成長に欠かせないため、アップセルを通じて顧客に継続的に価値を提供し、長期的な関係を築く取り組みが重要です。
顧客一人当たりの収益を増加させる
アップセルとは、顧客一人当たりの収益増加に直接的に貢献するマーケティング戦略です。高価格帯の商品やサービスが購入されることで、売上増加に繋がり、企業の収益性を向上させられます。
たとえ新規顧客が増えなくとも、アップセルによって上位モデルの商品が購入されれば、全体の収益が向上します。
マーケティングや営業で市場やユーザーを新規開拓するには多大なコストや労力がかかるのも事実です。人件費や事務所の賃料など、さまざまなコストが掛かってしまうのは避けられません。
アップセルに取り組めば顧客一人あたりの収益を増加させられるほか、新規顧客獲得にかかる手間よりも圧倒的にコストを抑えられるため、なるべくコストを掛けずに利益を出したいシーンにもアップセルが役立ちます。
アップセルのメリットとは
アップセルは、企業にとって多くのメリットをもたらします。特に重要なのは、「効率的な収益向上」「顧客ロイヤリティの向上」といったメリットを得られる点です。
アップセルは、新規顧客獲得に比べて費用対効果が高く、効率的に収益を向上させられます。新商品の提供や新エリアの開拓といった手間もかけずとも、売上をアップする効果が期待できます。
また、顧客のニーズに合った提案を行うことで顧客満足度を高め、ロイヤリティ向上にも繋げられるのもポイントです。
新規顧客獲得にかかるコストは、既存顧客を維持するコストの5倍だとされているのも事実です。つまり、アップセルによって既存顧客からの売上を高めることで、新規顧客を獲得するよりも圧倒的にコストパフォーマンスに優れた収益改善を実現できると言えます。
アップセルのデメリットとは
アップセルにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。具体的には、「顧客の反感を買い取引がなくなるリスク」「ブランドイメージの低下」といった点があげられます。
先述した通り、アップセルとは顧客が検討しているモノからランクアップした商材の購入を促す手法です。万が一、顧客の意に沿わない流れでアップセルを行うとしてしまうと、顧客の反感を買って、グレードアップどころか商材購入すら無かったことにされてしまうリスクがあります。
アップセルは効果的な販売戦略ですが、目標達成を意識するあまり強引な営業をしてしまうと、顧客の反感を買って逆効果になる可能性も孕んでいます。また、個々の営業担当者の経験や勘に頼ったアプローチでは、成果が安定せず、再現性も低いのも課題です。
Webサイトなどで悪い口コミを書かれてしまい、ブランドイメージの低下に繋がってしまうおそれもあります。
そこで、アップセルの成功率を高めるためには、顧客データの活用が不可欠です。過去の購入履歴や顧客属性などを分析することで、アップセルに適した顧客を特定し、効果的な提案を行えます。
さらに、アップセルの結果データを収集・分析し、PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善を図り、売上向上に繋げることが可能です。
アップセルの具体例3選
アップセルは近年さまざまな業種で活用されています。具体的な例として、以下の3つを紹介します。
・飲食店でのドリンクやデザートの提案 ・家電量販店での延長保証の提案 ・旅行代理店でのツアーオプションの提案 |
会員特典プログラム
顧客の購買行動や利用状況に応じて、特別な特典やサービスを提供する会員プログラムは、効果的なアップセル手法のひとつです。代表例として、航空会社のマイレージプログラムや、ホテルのポイントプログラムなどがあげられます。
顧客に特別な価値を提供することで、上位会員へのアップグレードを促し、LTV向上を目指すのが特徴です。会員プログラムは、顧客ロイヤリティ向上にも効果的です。顧客に特別な待遇を提供することで、顧客とのエンゲージメントを高め、長期的な関係構築を目指しましょう。
会員特典プログラムの具体例
・ECサイトにおける配送料無料や会員限定タイムセールなど ・クレジットカード会社における特定の支払い方法でポイント還元率アップなど |
購入数に応じた割引・提案
まとめ買いによる割引や数量限定の特典を提供することで、顧客の購入意欲を高め、客単価向上を図るのもアップセル手法のひとつです。ECサイトでの送料無料キャンペーンや、スーパーマーケットでのポイント倍増デーなどが挙げられます。
顧客にとって魅力的なオファーを提供することで、購買行動を促進し、売上増加に繋げられるのがメリットです。顧客の購買心理を理解し、効果的な割引や特典を設定することで、アップセル成功の可能性を高められます。
購入数に応じた割引・提案の具体例
・衣類などで2着目半額割引など ・ECサイトでのまとめ買い割引など ・デジタルコンテンツのバンドル販売など |
長期契約による割引・特典
サービスの利用期間に応じて割引や特典を提供することで、長期契約を促すアップセル手法です。長期契約に対する割引や、スポーツジムの年会費割引などが代表例です。顧客の囲い込みを強化することで、安定的な収益確保を目指します。
長期契約は、顧客との長期的な関係構築に役立ちます。顧客に継続的にサービスを利用してもらうことで、LTV向上にも繋がり、安定的な収益基盤を築けます。サブスクサービスの年額プランは月額よりも数カ月分安い、といったものもアップセルでよく見られる手法です。
特にSaaSは顧客あたりのコストが月額・年額でそこまで変化しないため、年額契約のほうがLTVの最大化を図りやすくなります。
・SpotifyやYouTubePremiumなどSaaSのプランは年額だと総額が安いなど ・各スマホキャリアの契約日数に応じた還元施策など |
アップセル実施する際の注意点
アップセルを成功させるためには、顧客の状況やニーズを的確に把握し、最適なタイミングで提案を行うことが重要です。以下の点に注意しながら、アップセルの実施をおすすめします。
・顧客ニーズの把握 ・適切なタイミングでの提案 ・押し売りにならない提案 |
顧客のニーズを理解する
アップセルとは、ただ単に上位モデルの商品やサービスを購入してもらうことがゴールではありません。アップセルを成功させるためには、顧客のニーズを深く理解することが重要です。
顧客が抱える課題や要望を把握し、それに合った商品やサービスを提案すれば、顧客満足度を高められます。
「顧客との対話」「アンケート」「データ分析」などを通じて、顧客のニーズを収集して分析します。しかし、顧客のニーズは、「年齢や性別」「職業」「ライフスタイル」など、さまざまな要因によって変化するのも事実です。
顧客一人ひとりの状況を把握し、パーソナライズされた提案を行うのが難しいと感じている場合は、顧客情報を効率的に一元管理できる顧客管理システム(CRM)などのツール導入をおすすめします。
CRMを導入すれば、顧客が過去に購入した商品やサービス、ウェブサイトの閲覧履歴、問い合わせ内容などを分析しやすくなるため、顧客の興味や関心事を把握できるようになり、アップセルの成功率を高められます。
定期的にフォローアップを実施する
顧客との良好な関係を維持するためには、定期的なフォローアップが重要です。購入後のサポートや情報提供などを通じて顧客との接点を増やし、信頼関係を構築することで、アップセルの成功率を高められます。
アップセルは、企業と顧客との良好な関係の上に成り立ちます。特に、企業に対して高いロイヤルティを持つ顧客は、アップセルを受け入れてくれる可能性が高くなるのがポイントです。
言い換えれば、顧客との信頼関係を育めていないと、アップセルに失敗する確率は高まります。そこで、フォローアップは顧客との長期的な関係構築に役立ちます。定期的な連絡や訪問を通じて、顧客との信頼関係を深め、アップセルに繋げるのがベストです。
たとえば、メールマガジンやDMなどを活用して新商品やキャンペーン情報などを定期的に配信したり、顧客の誕生日や記念日などに合わせて、特別なオファーを提案したりする手法があげられます。
しかし、顧客の行動や属性などを事細かく把握して対応するのは至難のワザです。情報管理が難しいと感じた場合は、先述した顧客管理システム(CRM)と営業支援システム(SFA)やマーケティングオートメーションツール(MA)を組み合わせるのをおすすめします。
各種ツールによって、顧客情報の管理を効率化できるだけでなく、フォローアップの自動化も図れます。
提案のタイミングを注意する
アップセルの提案タイミングは、顧客の購買意欲に大きく影響します。顧客が商品やサービスに関心を持ち、購入を検討しているタイミングを見計らって提案することで、成約率を高められます。
タイミングを間違えた押し売りはマイナスイメージをもたれたり、顧客が離れていったりする原因となるため、注意が必要です。
そのため、顧客の行動履歴や購買データなどを分析し、最適なタイミングでアップセルを提案するのをおすすめします。また、過去にアップセルが成功した顧客の属性などを細かく分析し、セグメント別にアップセル先を深堀りするのも大切です。
顧客情報という重要なデータ資産を有効活用すれば、どのようなシーンやニーズをもとにアップセルが通りやすいのか、具体的な知識やノウハウとしてナレッジを蓄積できます。
MAとSFA/CRMを連携して営業効率化を実現するならGENIEE SFA/CRM
GENIEE SFA/CRMは、顧客情報の一元管理や営業プロセス自動化など、さまざまな機能を搭載したCRMツールです。特に、MAツールと連携すれば、顧客の行動履歴を分析して最適なタイミングでアップセルを提案できるようになります。
各種フォローアップの自動化や、営業活動の支援などさまざまなメリットが得られます。顧客データの一元管理から営業プロセスの可視化、効率的なフォローアップによってアップセルの成功率をぐんと高めやすくなるため、営業活動の効率化から売上向上に貢献することが可能です。
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アップセルの成功事例3選
1.マクドナルド
世界中で愛されるファーストフードチェーンのマクドナルドは、過去に起きた一連の事件により、業績が低迷した時期がありました。そこで同社は、顧客の信頼回復と売上増加を目指し、様々な施策を展開。その1つとして、既存商品のプレミアムバージョンを販売するアップセル戦略を採用しました。
高価格帯ながらも素材や品質にこだわったプレミアム商品は、顧客に新たな価値を提供することに成功し、業績回復に大きく貢献。客数が約19%ほど減っていても、アップセルにより客単価を30%ほど引き上げたことで、売上を大きく伸ばした成功事例とも言えます。
2.Apple
世界的に有名なテクノロジー企業であるAppleでは、洗練されたデザインと直感的な操作性を兼ね備えた製品を多数取り扱っていることで知られています。熱狂的なファンも多い同社は、製品のデザイン性を強くアピールすることで、顧客の購買意欲を高める戦略を採用しています。
公式サイトでは、各製品のデザインや哲学、機能性を詳細に紹介し、価格よりも価値を重視する顧客層に響くマーケティングを展開。その結果、顧客は上位モデルの購入へと自然と誘導され、同社の収益増加に貢献しています。
たとえブランドが加味された価格設定でも、質の良い体験を提供し続けたことで多くのファンを獲得しており、信頼の裏返しとして今でも多くのユーザーがサービスを利用し続けています。
3.チャットワーク
多くの企業で利用されているビジネスチャットツール「Chatwork」を提供する株式会社kubellは、フリーミアムモデル(フリープラン)を採用して幅広いユーザー層を獲得しています。
フリープランでも多くの機能を活用できる一方で、「メッセージ履歴を確認できるのは40日以内まで」「グループトーク作成数に上限がある」などいくつかの制限を設けています。
そのため、無料で始めたユーザーが過去のチャット履歴などを閲覧する際、自然と有料プランへアップグレードするよう促している手法です。ユーザーに無料プランでサービスの価値を体験させ、さらに高度な機能を求める際に自然と有料プランへ移行させるという、巧みなアップセル戦略の一例と言えます。
まとめ:アップセルを成功に導くGENIEE SFA/CRM
アップセルとは、顧客満足度と収益向上を両立できる強力な販売戦略です。アップセルの成功には顧客ニーズの的確な把握や適切なタイミングでの提案、そして押し売りにならない丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
とはいえ、顧客一人ひとりに向き合ったコミュニケーションは、事業が成長していくにつれて難しくなってしまいます。適切なタイミングでアップセルを行うためにも、早い段階から効率的に顧客情報を管理する取り組みが大切です。
もし、アップセルについてお悩みの場合はこの機会に「GENIEE SFA/CRM」の導入をご検討ください。GENIEE SFA/CRMは顧客情報の一元管理から営業プロセスの可視化、マーケティングオートメーション機能との連携など、アップセル活動を効率化するさまざまな機能を搭載できます。
顧客とのエンゲージメントを高めて、アップセルの成功率を向上につなげられます。アプローチの仕方や顧客のセグメント分けに頭を悩ませている方や、アップセル戦略を成功させてビジネスを成長軌道に乗せたいとお考えの方は、ぜひGENIEE SFA/CRMをご検討ください。