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「1万人に1人の営業マン」が語る 仕事と自分の磨き方【前編】

更新日:2024.05.30 / 営業マンへのインタビュー
「1万人に1人の営業マン」が語る 仕事と自分の磨き方【前編】

小山 聡章(こやま・としあき)

1987年リクルート入社。97年プルデンシャル生命保険に入社。現在、同社エグゼクティブライフプランナー。卓越した生命保険と金融サービスの専門家による国際的かつ独立した組織「Million Doller Round table」に99年から18年連続で基準達成。06年、16年は最上位基準の「Top of the Table」の基準を達成。

前編 悩まず中長期的視点を持って、次に進む

日本では「1万人に1人」程度のトップセールスマンが資格認定を受けるといわれる、国際的な成績資格「Million Doller Round table」のTOT基準に認定されたプルデンシャル生命保険の小山氏。保険と金融サービスの領域において、世界でもトップクラスの評価を獲得し続けている男の仕事と自分の磨き方とは?

入社早々にへし折られた自信

浅井

私がリクルートに入社した頃は、すでに小山さんが転職された後でしたが、お名前はよく耳にしました。伝説クラスの営業マンだと。

小山

いや、あの頃に私がいた部署には、それこそ全社から伝説級の人たちが集まっていたんですよ。各事業部のトップクラスの営業マンがそろっていました。そこに新卒で配属されたのが私。今から思えば、本当にいいところに配属されました。当時のリクルートは、組織の先頭に立つような人間ばかりが集まっていました。学生時代は生徒会長をやってたとか、部活やサークルでリーダーだったとか。私自身もそうでしたから、自信満々だったんです。研修期間もトップの成績でしたから、絶対負けないつもりで現場に出ていったんです。ところが結果は違った。

浅井

えっ、どういうことですか?

小山

当時のリクルートはクオーター制だったので1期3カ月なんですが、自信とは裏腹に全然受注できなかったんです。同期が次々と受注してくるのに、取れてないのは私と、もう一人の女の子だけ。同期が20人いる中で、ビリを争っていたんです。「これ、1件も取れなかったら、本当にヤバいな……」と考えていたら、その女の子が最終日に契約を取ってきた。で、唯一私だけ1件も取れずじまい。会社に戻ると上司に呼び出されて「お前なぁ、しっかりせい」とか言われてね。針のむしろですよ。それでもう、どんどん自信がなくなっていって、会社に行くのがイヤになり、アポイントの電話を入れるのもイヤになってしまった。でもアポはとらないといけない。だから電話する。「……あ、リクルートの小山と申します……実は……」とアポを取る。でも、実はもう電話は切れてるんです。アポなんか、取れてないんですよ。それでも「アポが取れました」と上司に報告する。

浅井

かなり追い込まれてしまっていたんですね。

小山

「営業に行ってきます」って会社を出たって、アポなんか取れてないから、行く先なんかないんです。だから環状線の電車に乗って、ただぐるぐると回っていたり、本屋の立ち読みで時間をつぶしたり。そんなことを1週間くらい続けていたかな。それでも自分の非を認めたくなくて、他の何かのせいにしていました。理由はいくらでも付けられるんですよ。先輩が何も教えてくれない。受け持ち区域にしたって、自分は下町のパッとしない地域をあてがわれてる。そもそも、この商品自体が大したものではないし……。もう辞めよう、と思ってました。入社して5カ月頃のことです。

千載一遇のチャンスをものにした!

浅井

ずいぶん早い時期に、挫折を味わってしまったのですね。

小山

自信満々だっただけに、その反動が大きかった。でもね、アポがとれた風を装って会社を出て、ウロウロと時間をつぶして……。こんなことをしていたって、何も変わらないんです。「何をやってるんだ俺は」と気づいて、辞めるにしても最後に本気でやってみようと思いました。プライドを捨てて、片っ端から飛び込みをしてみたんです。もちろん片っ端から門前払いでした(笑)。でも5軒目くらいの会社で、応接室に通されたんです。こっちは門前払いだろうと思っていたから、逆にタジタジです。やがて現れた方と名刺交換をしたら「常務取締役」。社員3000人からの会社ですよ。まさかそんな人にお会いできるとは思ってもいません。実はその会社、当時まったく別の案件でリクルートとお付き合いをしていただいていたんです。で、リクルートの名刺を差し出した私を、受付嬢が間違えて常務に引き合わせてしまったんです。

浅井

それは千載一遇のチャンスじゃありませんか。

小山

そんなポジションの方とお話しする機会なんか、駆け出しの私にはありませんでしたからね。ただもう一生懸命に話しました。するとその常務は内線電話を取り上げて「なにやら、経費削減の話のようだから」と言って、総務部長に引き合わせてくれたんです。それからはトントン拍子に話が進んで、契約をいただくことができました。当時、部署内でも新記録クラスの大型受注で、結果としてMVPを取ることができたんですが、私自身はもう辞める前提で動いていたんです。もしもその受注ができていなかったら、私の半生は全然違っていたでしょうね。

浅井

ですが幸運だけでは継続はしません。その後、成績を上げ続けるためには、何か秘策があったのではないですか?

小山

当時の私は成績もさることながら、ビジネスマンとして成長したかったんです。でもその方法がわからない。それを上司に相談したら「営業に行くときに、総務課長や部長ではなくて社長のアポを取れ」って言われたんです。社員3000人とか5000人とかの企業ですから、社長のアポなんか、そう簡単に取れるわけないじゃないですか。でも、実際に社長あてにアポ取りをしていると、それが実現することもあるわけです。そんなときはものすごく緊張します。緊張しまくって、頭が真っ白になって、大汗をかきながら全力投球でトークする。その緊張感の中で何を話し、何を訴えるか。やみくもに喋るだけではダメだし、頭も使わなくてはならない。もちろん度胸も必要です。そして失敗したら、何がまずかったのか、どうすれば良かったのか、それを考えて次に生かす知恵がなくてはならない。そういうことを、上司は私に教えたかったんだと思います。

自分自身を見直し、磨いていく

浅井

そうした個人の力がチームの力になれば、組織としてのパワーが上がっていきますね。

小山

でも、実際に動く人間が本気にならないと、それは付け焼き刃になってしまう。だから一人ひとりが中長期的な視点を持つことが大事です。あとは自分が作り上げたいキャリアや人生の目標などを考えあわせ、そのために今、何をすべきかを考えることです。5年、10年後にどんな自分でありたいか。どんな仕事をしていたいか。それを出発点として考えるのです。

浅井

将来の自分を実現するために、今これからの行動を決めていく。

小山

なかなかアポがとれない、契約がとれない。営業職には、こうしたことは日常茶飯事ですよ。そしてこういうことがあると、営業マン自身は、なんだか自分を否定されたような気分になってしまう。でもね、そうじゃないんです。そんなものは「たまたま」なんですよ。たまたま今回のお客様はその商品が必要なかった、というだけの話。だからそんなことで悩むヒマがあったら、中長期的な視点を維持したまま、次へ進んだほうがいいと思うんです。

浅井

そうやって小山さんは、トップセールスとして活躍し続けてこられた。その、売り続ける秘密というのはあるのでしょうか?

小山

正直、まったくわかりませんね……。ただ、これはMDRTのミーティングに参加して気づいたことなんですが、なんでも自分でやって、寝ても覚めても仕事ばかり……というスタンスでは続かない。限界があるんです。だからアシスタントに任せられる仕事は任せ、自分しかできない仕事をする。そして自分にも投資をする。

浅井

投資というと、新たな知識や技術を身につけるというようなことでしょうか。

小山

私自身がお客様にとって「価値ある人間」である必要があるからです。知識や情報だけでなく、一流と目される専門職の方々……税理士や弁護士といった人たちですが、そうした方々とのパイプも作っておく。そうすれば、お客様から何か相談ごとを持ち込まれたときに、最適な人材を紹介できるでしょう? 自分が価値ある人間になるということは、お客様のためになることでもあり、結果としてお客様からご指名をいただける理由にもなるんです。

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