名寄せとは?顧客管理で重要なポイント
名寄せは、複数存在する同一人物・企業のデータを1つに統合することです。顧客データベースの管理に不可欠な、名寄せの意味とやり方について解説します。
企業では取引のある個人や企業の情報を、さまざまな形で管理しています。時に顧客情報は重複し、同じ個人や企業が複数登録されてしまう場合があります。整理して統合しなければ、顧客管理ができているとはいえず、顧客情報を有効に活用することもできません。その整理・統合を行う作業が「名寄せ」です。
名寄せとは、データベースの中に複数存在してしまっている同一人物・同一企業のデータを1つにまとめるというもの。名寄せすることで、データベースの正確性を保ち、マーケティングを効率化することができます。今回は、名寄せの必要性や方法について、詳しく見ていきましょう。
名寄せは同一情報をまとめること
名寄せとは、顧客情報の中から同一人物・同一企業の重複している情報を抽出し、1つにまとめる作業を指します。
部署それぞれに顧客情報を管理していると、データベースが複数になって、同一人物・同一法人の情報が、社内に複数存在することも少なくありません。また、結婚や社名変更で名前が変わる、引越しで住所が変わるなどして、同一人物でありながら別々の人物として登録されていることもあります。こうした状況を避け、データの統合を図るために行うのが、名寄せです。
ただし、漢字の入力ミスなど、表記揺れで登録が重複している場合、同一人物・同一企業であっても探し出してまとめるのは簡単ではありません。
名寄せはなぜ必要?
名寄せをしなければならない理由はいくつかあります。ここでは、主な3つの理由を詳しく見ていきましょう。
顧客情報の正確性を担保するため
名寄せをしていないと、データが重複し、同じ人物を別の人物として認識されることがあります。営業とカスタマーサポート、マーケティングなど、複数の部署で同じ人物を別の人物として管理してしまうことで、販売実績やクレーム履歴などの重要な情報が共有できないおそれもあります。そうなると、同じ人物に複数のダイレクトメールを送ったり、複数回のアポ取りの連絡を入れたりといったことが起こりかねません。無駄な接触が増えることで、わずらわしさから企業へのイメージが低下する危険性があるでしょう。
顧客にアプローチしたつもりが、反対に自社の評価を落としてしまっては本末転倒。顧客情報の正確さ、唯一性を保つためにも、名寄せが必要です。
SFA・CRMでの管理が主流になったため
従来、顧客情報は社内の各部署でそれぞれに管理されているのが一般的でした。しかし、最近ではSFAやCRMといったツールで顧客管理を行う企業が増えました。SFAやCRMを利用することで、顧客情報やコミュニケーションの履歴を分析して、最適なアプローチを提案してくれるなど、営業やマーケティングが効率的に行えるでしょう。
しかし、同一人物が複数登録されていれば、正しく分析することができません。顧客へのアプローチにデジタルツールを活用する場合は、その前に顧客情報の名寄せを行っておくことが必要です。
適切なマーケティングを実施するため
社内に散在している顧客データには、それぞれ属性の異なる情報が含まれていることがあります。セールスでは提案の内容や販売履歴、カスタマーサポートでは問い合わせやクレームの履歴などが、別個に保存されているかもしれません。
名寄せをすると、これらの情報が同一人物・同一企業の情報として統合されるため、多くの情報を含んだ詳細なデータとなり、One to Oneマーケティングが可能になるでしょう。
名寄せは、情報管理上の無駄を排し、管理の効率化を図るだけでなく、顧客のパーソナリティや自社との関わりを可視化し、適切なマーケティングを実施するためにも役立ちます。
名寄せに利用できるツール
名寄せを行う場合は、Excelや専用のツールのほか、SFAやCRMの機能を利用する方法があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
Excelやスプレッドシートを利用する
名刺や顧客情報の管理をExcelやスプレッドシートで行っているなら、シート上での名寄せが手軽です。COUNTIF関数、TRIM関数、VLOOKUP関数、DATEDIF関数などを組み合わせることで、整形できるでしょう。
費用をかけずに名寄せができるのはExcelやスプレッドシートのメリットですが、操作には関数の知識と作業時間が必要です。また、名寄せしたデータベースの管理や更新のルールを決めておかないと、混乱が起こることもあります。
専用ツールを利用する
名寄せ専用のツールを使う方法もあります。データの揺れを自動抽出したり、入力した情報とツールの法人情報を照合して修正したりするなど、基本的な機能はほぼ共通です。付加機能や料金体系はツールごとに異なり、SFAやCRMと組み合わせて使用するもの、名寄せした後のデータを営業活動に活用できるMA機能があるものあります。
利用の際は名寄せ機能だけ使いたいのか、既存のツールと組み合わせたいのかなどを加味して検討してみてください。
名寄せ機能のあるSFAやCRMを利用する
SFAやCRMを利用する際に必要になる名寄せですが、ツール自体に名寄せ機能を備えている場合があります。SFAやCRMの導入を検討しているなら、名寄せ機能があるかどうかもチェックするといいでしょう。
名寄せを行う流れ
続いては、Excelなどを利用して名寄せを行う際の流れをご紹介します。専用のツールや機能を使う場合は、このフローを自動で行うことになります。
1.フォーマットを作成する
まず、データを最終的にどのような形にまとめるのか方針を決め、最終形のフォーマットを作ります。
フォーマットを作るためには、名寄せした顧客情報をどのように使うのかを明確にしましょう。そこから逆算して、どのようなデータが必要なのかを考え、フォーマットにまとめます。
2.既存のデータを調査する
名寄せするデータベースから、属性ごとの入力状況を調べます。フォーマットの作成と既存データの調査で、どのデータを抽出すべきかがわかり、不足しているデータをどのように補完するかを検討できます。
3.データを抽出する
データベースから、顧客を特定するために必要な項目をピックアップして、抽出します。
このとき、データベースごとに項目名が違う可能性に注意してください。例えば、データベースAでは「名前」となっている項目が、データベースBでは「氏名」となっているという状況です。同じ属性として統合すべき項目を洗い出しておきましょう。
4.データクレンジングを行う
データクレンジングは、ルールや基準を定めて、データの重複や表記の揺れを見つけ、それを修正したり削除したりすることです。
まず、重複したデータが同じ企業や人物であると判別できれば、1つだけ残して残りを削除します。
次に表記の揺れですが、これは1つの意味を表す言葉に、複数の表記が存在する状態です。統合していくためには、表記規則を定めておかなければなりません。斎藤と斉藤などの異字や、(株)と株式会社などをどう表記するか、アルファベットと数字を半角全角どちらにするかなどのルールを決めて、表記の揺れを修正します。
5.データをマッチングさせる
データクレンジングが済んだら、いくつかキーを設定して同一の情報を割り出すマッチングを行います。
キーを設定するとは、何を参照して同じデータだと判別するかを決めるということです。例えば、名前以外に電話番号が同じというデータが複数あれば、重複している可能性が高いでしょう。この場合、電話番号をキーとして設定し、マッチングするものがないか探します。
また、マッチングしなかったとしても、引越しで住所変更しただけで、同一人物を重複して登録していたというケースもあります。キーは複数設定して、マッチングするか何度か試すことが重要です。
確実な名寄せで、データベースをスマートに
顧客情報の名寄せが不完全だと、同じ顧客に同じ案内を何度も送ったり、確度の高い顧客のリーチタイミングを見逃したりといったことが起こるかもしれません。顧客のデータベースはマーケティングの最重要基盤でもありますから、常に万全の状態にメンテナンスしておくことが大切です。
着実なマーケティングで顧客の獲得や拡大を図るため、顧客情報の名寄せを行って活かせるデータベースにしておきましょう。