チャーンレートとは?計算方法や改善のポイント
近年、KPI(中間目標)としてチャーンレートを採用する企業が増えています。チャーンレートとは解約率を指し、特にサブスクリプション型のビジネスを展開する企業では、チャーンレートは利益の増減や企業成長に関わる重要な指標といえるでしょう。
本記事では、チャーンレートの基本知識や計算方法、改善ポイントなどについて解説します。
チャーンレートは解約率
チャーンレート(Churn Rate)とは解約率を意味し、退会率や離脱率などと呼ばれることもあります。チャーンレートが高いと、自社サービスを解約した人が多く、顧客満足度が低いサービスということになるでしょう。売上や収益が減少につながることから、企業はチャーンレートを注視し、上昇傾向があれば対策を立てなければなりません。特に、ユーザーニーズを定期的に把握し、商品・サービスの品質向上を図ることが重要です。
チャーンレートの平均値は、1ヵ月あたり3~10%というのがひとつの目安とされています。ただし、チャーンレートは業種や業界でも異なるため、注意が必要です。
Recurly Researchが2023年5月に発表した「Churn Rate by Industry」によると、2022年の1ヵ月当たりの平均的なチャーンレートはBtoBでは5%、BtoCでは7%でした。業界別だと、サブスクリプションTV・動画サービスは10.01%、消費財は9.62%と高く、SaaSは4.79%、メディア&エンターテインメントは5.23%と低い傾向があります。
チャーンレートは年度末や決算期など、時期によっても変動しやすくなります。変動に一喜一憂するのではなく、長期的な傾向を分析することが必要です。
チャーンレートとLTV
チャーンレートと関連性が高いのが、LTVです。LTVは、顧客生涯価値を意味し、「ひとりの顧客が自社サービスを利用終了するまでにどれだけ自社に利益をもたらすか」を表す指標です。
例えば、1年間で120万円の利益をもたらす顧客と、3年間で360万円の利益をもたらす顧客では、3年間利用する顧客の方がLTVは高くなります。継続して利用する顧客が増えるほどLTVは高くなり、チャーンレートは下がります。つまり、チャーンレートを改善するためには、LTVの向上が重要です。
なぜチャーンレートが注目される?
多くの企業でチャーンレートが注目されている理由は、下記の3つがあります。
サブスクリプションサービスの一般化
チャーンレートは、サブスクリプションサービスが広く展開されたことで、より重視されるようになりました。
サブクスクリプションとは、月額や年額など定額の料金で利用できるサービスであり、ユーザーは一括購入するより低コストで利用できます。比較的に解約が容易なことも人気の理由ですが、企業側は、顧客の継続的な利用がなければ収益を確保できません。そのため、企業にとってはいかにチャーンレートを下げるかが重要になっています。
顧客獲得コストを下げる
新規獲得コストを下げるためには、チャーンレートの改善が重要です。チャーンレートが高ければ、失った収益を補完するため、新規顧客の獲得が必要になります。
新規顧客を獲得するコストは高く、既存顧客の継続コストの5倍かかるとされる「1:5の法則」なども唱えられています。そのためチャーンレートに着目し、既存顧客の継続利用を促し、顧客のLTV向上を目指す企業が増えています。
商品・サービス改善のきっかけになる
商品・サービスを長く顧客に利用してもらうためには、商品・サービスの定期的な改善が欠かせません。チャーンレートを意識し、解約理由をヒアリングすることで、今まで気づかなかった商品・サービスの改善点を発見できるでしょう。解約者の意見を取り入れて商品・サービスの改善をすることで、既存顧客への顧客満足度の向上にもつながる期待があります。
チャーンレートの種類と計算方法
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは、「顧客数」をベースに算出するチャーンレートのことです。チャーンレートの代表ともいえるもので、チャーンレートというとカスタマーチャーンレートを指す場合もあります。カスタマーチャーンレートでは、解約数はもちろん、有料会員から無料会員にダウングレードしたユーザー数も対象です。
カスタマーチャーンレートの計算式は下記のとおりです。
カスタマーチャーンレート=一定期間で解約した顧客数(ユーザー数)÷期初の顧客数(ユーザー数)×100(%)
アカウントチャーンレート
アカウントチャーンレートとは、「サービス登録数(アカウント数)」をベースに算出するチャーンレートです。顧客数ベースのカスタマーチャーンレートと混同しやすいですが、1人で複数のアカウントを登録できるサービスではアカウントチャーンレートが用いられます。
アカウントチャーンレートの計算式は下記のとおりです。
アカウントチャーンレート=一定期間で解約したアカウント数÷期初のアカウント数×100(%)
アカウント数がベースのため、カスタマーチャーンレートとは異なる数値になります。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは、「収益」をベースに算出するチャーンレートのことです。収益ベースで算出することで、損失した金額を把握できます。また、サービスに複数の価格プランがある場合には、価格帯別のチャーンレートと収益減の把握が可能です。
レベニューチャーンレートは大きく「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」の2つに分けられます。
・グロスレベニューチャーンレート
グロスレベニューチャーンレートとは、解約や有料会員から無料会員にダウングレードにしたなどよる、「損失額」をベースに算出するチャーンレートのことです。計算方法は下記のとおりです。
グロスレベニューチャーンレート=一定期間の損失額÷期初の定期収益額×100(%)
・ネットレベニューチャーンレート(Net Revenue Churn Rate)
ネットレベニューチャーンレートとは、解約やダウングレードによる損失額だけでなく、アップグレードやクロスセルの利益も含めて算出するチャーンレートのことです。
例えば、1ヵ月の解約・ダウングレードによる損失が100万円で、アップグレード・クロスセルの収益が150万円の場合は、収益は50万円となります。一方、ダウングレードの損失が100万で、アップグレード・クロスセルの収益が80万円の場合には、20万円の損失です。このように、一定期間における全体の収益を把握することができるのが特徴です。
ネットレベニューチャーンレートの計算式は下記のとおりです。
ネットレベニューチャーンレート=(一定期間の損失額–期間内の増収額)÷期初の定期収益額×100(%)
チャーンレートを下げるポイント
解約の原因を分析する
チャーンレートを下げるには、解約の原因を調査・分析することが重要です。顧客が解約する理由は、下記のようにさまざまです。
<解約理由の例>
・サービスを使いこなせなかった
・費用対効果が感じられなかった
・予算が確保できなくなった
中には顧客側で予算が確保できないなど、サービス提供会社ではどうにもできない理由もあります。しかしサービスに不満があって解約された場合には、サービスを改善することで解約を回避できる可能性があるでしょう。解約する顧客には解約理由のアンケートを取ることをおすすめします。
商品やサービスの品質向上
「使いにくい」「わかりにくい」など、品質に関する不満が解約理由である場合もあります。この場合は、顧客に商品・サービスの使用感についてヒアリングし、商品・サービスの品質向上をすることでチャーンレートの改善が期待できます。商品・サービスを改善するだけではなく、改善後にも定期的にヒアリングし、PDCAサイクルを回すことで、継続してチャーンレートを下げられるでしょう。
場合によっては、価格や料金プランの改定を視野に入れる必要もありますが、安易に価格を下げると、利益率が下がるだけでなく、競合他社との競争が激しくなることも考えられます。価格の改定は慎重に判断するのがおすすめです。
機能やサービスのわかりやすい提示
商品・サービスの機能の使い方をわかりやすく提示することで、チャーンレートの改善につながる可能性があります。解約者の中には、利用してみたものの「活用しきれなかった」というケースもあります。このケースでは、顧客が利用方法を十分に理解できていないことが考えられます。
Webやアプリのサービスであれば、インターフェイスを分かりやすくし、ユーザーが直感的に使えるよう改善することが重要です。ヘルプページで「よくある質問」や「使い方」のコンテンツを充実させたり、チャットボットでの質疑応答を実装したりするのも有効でしょう。
カスタマーサクセスの強化
カスタマーサクセスを強化することで、チャーンレートを下げることが期待できます。
従来は、コストを最小化するため、顧客からのお問い合わせやクレームに対し、受動的にサポートする企業がほとんどでした。一方、利益を最大化するため、カスタマーサクセスは積極的に顧客と関わり、その成功をサポートします。カスタマーサクセスを強化することで、既存顧客との関係性を維持し、LTVの向上につながるでしょう。
カスタマーサクセスとは?注目される理由や成功のポイントを解説
顧客ロイヤルティの向上
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに愛着や信頼感があることを指します。一般的な顧客は商品・サービスを選ぶときに、価格や機能・性能を重視することがほとんどです。しかし、ロイヤルティが高い顧客は、「この企業(ブランド)だから」という理由で購入します。つまり、一般的な顧客に比べて購入のハードルが低く、長期利用につながりやすくなります。
顧客のロイヤルティを高めるためには、購入後のアフターフォローが欠かせません。効率的に顧客をフォローするには、SFAやCRMといった営業ツールの利用がおすすめです。これらのツールを利用すると、顧客とのコンタクト履歴から解約リスクの高い顧客を特定し、効率的に個別フォローができます。
チャーンレートを改善してLTVを向上させよう
サブスクリプション型のビジネスによって注目されるようになりましたが、売り切り型の商材ビジネスを展開する企業においてもチャーンレートは重要な指標です。チャートレートを下げる方法はさまざまですが、中でも「顧客ロイヤルティ」や「LTV」の向上は必須といえます。
商品やサービスの改善はもちろん、ロイヤルティの高い顧客との関係性や、カスタマーサクセスの強化などにも注力し、チャーンレートの改善を行いましょう。