マーケティングとセールスの関係性と違い
そもそも、マーケティングとは何なのか
セールスとマーケティングとの関係を考える前に、まずはマーケティングというものを理解しておく必要があります。ですがマーケティングという言葉と概念に関しては、多くの誤解や認識不足が根強く残っているように感じます。
実際のところ「マーケティングとは何か?」という質問に対しては、さまざまな答が返ってきます。
・広告やプロモーションを行うこと
・市場のニーズを調べて、それに応える商品を作ること
・ブランドを構築すること
・適切な販路で流通させること
いずれもプロモーションの概念の中では大切なことですが、それらはマーケティングの一部であって、全体を表すものではありません。間違いではないけれども、決して正解とはいえないのです。
マーケティングについてしっかり語ろうとすると、それだけで一冊の本が書けてしまいますので、その内容について具体的にお話しするのは控えましょう。ですが一番大きなくくりで言うならば、マーケティングとは「何らかの価値を市場に提供し、その対価を得ること」、それに関する活動全般を指します。
ですから、人々がどのような価値を求めているのかを調査することや、作り上げた価値を広く市場に知らせること、その価値を届けるためのルートを作ることなど、全てマーケティングの範疇だといえます。
そしてこの価値を「どのように提供するか」という部分が、セールスの領分となります。つまりセールスは独立したものではなく、マーケティングの一部分だというわけです。
もう1つ知っておいていただきたいのは「戦略の階層性」です。何やら漠然とした話のようですが、これを知っておくとマーケティングとセールスとの位置関係がよく理解できるでしょう。
目的と手段が連鎖する、ひと筋の流れ
企業のあらゆる活動には、戦略があります。
「別に戦略なんかないけど、仕事は順調に回っているよ」という企業もあるでしょう。むしろ、そうした企業が大多数かもしれません。ですが企業活動を戦略的にとらえると、いろいろなことが明確になってきます。
例えば、企業にとって最大の目的は企業理念の実現です。
「株式会社ジーニー」の場合は「テクノロジーで新しい価値を創造し、クライアントの成功を共に創る」という理念が、企業としての目的です。そのための手段として、例えば「SFA/CRMツール『GENIEE SFA/CRM』を活用して業績を上げる企業を、10万社つくる」という手段を掲げます。
つまり10万社に自社のツールを使ってもらい、それによって会社の業績を上げてもらおう、というわけです。ここまでが事業戦略です。
すでにお気付きかもしれませんが、企業理念から発生した事業戦略のステップは、目的と手段が明確に、しかも上から下へという階層状に連なっています。
Aという目的を実現するためにBという手段を設定し、そのBを達成するためにCという方法をとる。企業ビジョンを最上位に置いたら、上位階層の手段をさらに下位階層の手段の目的として、順次つなげていく。そうしたひと筋の流れをつくるのです。
階層を意識すれば、企業活動に芯ができる
事業戦略の下には、マーケティング戦略があります。そこでは「どんな価値を・誰に・どのように届けるか」が検討され、その結果がそれぞれ目的として設定されます。
そして「どのように」の部分で「今期目標6万ユーザー、そのうちの4万を営業チャネルで獲得する」という手段が固まったなら、それを下階層に下ろして次の目的とします。そして、「今期4万ユーザーを獲得する」ことを目的としたセールス戦略を検討することになります。
既存顧客のユーザー登録数を増やす。紹介による顧客増を狙う。まったくの新規開拓を行う。いくつかの目的を設定し、さらにそれらを達成するにはどうするかという方法を、それぞれ検討していきます。ここまで来ると、かなり具体的な内容になってきます。
「新規のアポ取りに工数を取られているから、そこはアウトソースしよう」などという提案も出てくるでしょう。こうして、階層を下にたどるほど、目的も手段も具体化していくのです。
まず企業の目的である理念と事業戦略があり、それを実現する手段としてマーケティング戦略があり、さらにそれを達成する手段であるセールス戦略がある。このようにとらえてみると、ほとんどの企業活動に一本の芯が通ります。
悪しき「手段の目的化」を排除しよう
ここまでの内容をひとことで表すと「上位階層の手段が、下位階層の目的となる」ということになります。それぞれの目的の上にはさらに上位の目的があり、それが最終的な企業理念にまでつながっているからです。
逆に好ましくないのは、言ってみれば「目的なき手段の目的化」でしょう。
例えば、営業チャネルで「今期4万ユーザー獲得」という目的は、全社で「今期6万ユーザー獲得」という目的のための手段です。そして「今期6万ユーザー獲得」は「導入企業10万社」への途上の一里塚であり、さらに最終的な目標地点として「テクノロジーで新しい価値を創造し、クライアントの成功を共に創る」というビジョンがあります。
こうした一連のつながりができていなかったり、上位の目的がはっきりしていなかったりすると、いわゆる「手段の目的化」が起こってしまいます。
「新規獲得○件」など、セールスの現場ではノルマや目標値が掲げられるものですが、その数字にさらなる上位の目的があるのかどうか。そこがあやふやでは現場の士気は上がりにくく、また「やらされている感」が蔓延するもとにもなります。
マーケティングからつながる目的と手段の連鎖を意識したセールス戦略こそ、現場にとって必要なものなのです。
東京ディズニーランドの戦略に学ぶ
目的と手段の連鎖がしっかりつながっていると、ブレや迷いが少なくなります。これはセールスにおいてもそうですし、マーケティングの領域ではさらに顕著です。
東京ディズニーランド(TDL)を例にとりましょう。非常に多くの面でお手本とされるTDLですが、そのコンセプトは「夢と魔法の王国」です。TDLでは全ての活動が、このフレーズを実現するために検討され、実践されています。
夢と魔法の王国には、ゴミや吸い殻などは落ちていません。電気配線や配管などは、注意深く隠されています。そんなものは、夢の世界には存在しないからです。スタッフの出入りや資材の搬入なども同様で、来場者の視界から完璧に隠されています。
個々のアトラクションとその配置、施設のデザインや配色、スタッフの教育、その他もれなく全てのものが、「夢と魔法の王国」を実現するために存在している。これがTDLの戦略のほんの一部なのです。
そしてこの戦略に忠実であるために、TDLは常に高い価値を来場者に提供し、同時にブランドとしての価値も維持し続けることができるのです。
日々の業務の中では、時に迷うこともあります。ですが「その先の目的」が明確であれば、迷うこともなくなります。それは同時にブランドとしての価値を高め、維持することにもつながっていくのです。
それぞれの位置関係を見直してみよう
マーケティングはセールス(営業)の上位階層にあり、マーケティングの目的を達成するための手段がセールスです。
この自然な位置関係にねじれがあると、目的と手段の連携までもがねじれた状態になってしまいます。これが悪い意味での「手段の目的化」で、こうなるとマーケティングとセールスの役割分担がうまくいかなくなってしまいます。実は、そうした企業は数多いのではないでしょうか。
ですが、たとえそうした状態であったとしても、それが企業にとって致命的かというと、そうでもありません。それぞれの位置関係がねじれていても、業績が上がるということはもちろんあるでしょう。それゆえ、関係性のねじれに気付きにくいということもいえます。
ですがマーケティングとセールス、それぞれの役割と位置関係を知り、ポジショニングをきちんと整えたうえで目的と手段の階層を設定すれば、企業活動全般に一本の筋が通ります。
その筋に沿ってコミュニケーションプランを立て、セールス戦略を検討すれば、あらゆる活動が「上位階層の目的を達成する」というラインに収束します。TDLが全ての活動を「夢と魔法の王国」を実現するために行っているように、事業効率を飛躍的に高めることにも貢献するはずです。
マーケティングからセールスまでの流れを意識する
マーケティングとセールスは企業が売上を伸ばしていくための車輪の両軸のようなものです。
悲しいことに、それぞれの部署で目指す目的にズレがあったり、マーケターとセールスマンが対立したりすることがあります。しかし、どちらか一方が優れていても、長期的な成長は見込めません。
まずは、自社のマーケティングとセールスの関係性を見直してみましょう。そのうえで「上下階層」に注意しながら、ひとつながりの流れを作り上げてください。
より効率的にセールス活動を行うには?
ここまで、マーケティングの概要とセールスまでの流れを解説しました。より効率的にセールス活動を行うには、どのような方法があるのでしょうか。セールス活動を効率化する方法として、次の3つの方法が挙げられます。
セールス情報の一元管理
まず、セールス情報を一元管理することが重要です。一元管理を行うことで経営資源を横断的に活用できるため、業務効率化が達成できます。
例えば、情報を一元化すると、1人の顧客を営業担当者だけではなく企業全体で管理できるので、問い合わせへの対応などもスムーズになります。また、販売部門と生産部門のデータを共有すれば、余剰や欠品といった事態を未然に防ぐことができ、無駄のない経営ができるのです。
このように、セールス情報を一元管理することで、営業チーム全体の情報をリアルタイムに共有できるようになります。そのため、引き継ぎなどの時間を短縮することができますし、各部署への連携を簡単にすることができます。また、チーム全体で案件の進捗状況や目標達成率、達成状況も把握することが可能となるので、組織力を強化することが可能です。
そして、営業活動のデータは集約され蓄積されていきます。データは商談を行ううえで大切なもので、企業にとっての財産です。従来の営業スタイルでは、これらのデータは一営業担当者の記憶の中にあるだけでした。しかし、情報を一元管理することでデータを管理・活用しやすくなるので、より確度の高い施策を練ることができます。したがって、効率的に売上アップを目指せるのです。
情報の一元管理はExcelでも行うことができますが、共有する人数が多い、情報量が多い場合は向いていません。この場合は、後述するSFAツールを用いるとスムーズな管理が実現します。
スケジュール管理を徹底する
次に、より効率的なセールス活動ができる環境を作るには、スケジュール管理を徹底することも1つの方法です。
例えば、商談や会議などの打ち合わせ時間を管理することはもちろん、移動時間や作業・対応時間などの部分についてもスケジュール化します。そうすることで空き時間の把握が容易となり、実作業とのズレを防げたり、後回しにしがちな業務に取り掛かる時間を確保したりすることに役立ちます。
また、スケジュールを作成する際は、1週間先の短期スケジュールだけではなく、1,2ヶ月程度先までの予定もあらかじめ組んでおくといいでしょう。短い期間だけのスケジューリングを繰り返すことは、目の前のタスクをこなすだけの「作業予定表」になるばかりか、中長期の大きな目標を見失いがちになります。営業目標と照らし合わせながら、中長期的な視野で必要なタスクを想定してスケジュールを立てる意識を持ちましょう。
さらに、始業が開始したら、業務に着手する前に自分のタスクを棚卸しする時間を設けるのがおすすめです。タスク整理を行うことで、頭の中で1日のタスクに対しての準備ができるので、スムーズかつ効率的な業務フローが実現できます。
営業ナレッジを共有する
営業ナレッジを共有すると、効率的にセールス活動を行うことができます。営業ナレッジとは、営業に関するナレッジ(knowledge:知識、知恵)のことです。
例えば、不動産の営業マンが内覧に来てくださったお客様に対して、内覧した家の前で集合写真を撮って、後日メッセージと共に写真を送るというサービスをしたところ、大きな好評を得たという話があります。これも営業ナレッジの1つです。このような個々の社員が持っている知識やノウハウを会社の財産として共有し、有効活用すれば組織全体のスキルが底上げできます。
そのため、情報を含めた営業ナレッジを日ごろから共有できる仕組みを構築しておきましょう。これまでの訪問記録や提案内容、商談情報といった情報を共有することで、過去に上手く行った事例を元に、類似した案件に対して営業のコツやヒントを得ることができます。また、営業ナレッジを新人が見ることで、教育にかかる時間を削減できてより早く新人が育ちます。
このように、営業ナレッジを共有することで、営業力の向上やビジネスチャンスの拡大を図ることができるようになります。しかし、優秀な営業マンの中には、自分で作り上げたノウハウを明かしたがらない人もいます。そのため、ノウハウを気持ち良く公開してもらうように、ノウハウを伝える側にも表彰制度を作るなどのメリットを用意すると良いでしょう。
効率的なセールス活動をサポートするツール
ここまででご紹介した、セールス活動を効率化する方法をまとめて実現できるのが、SFAツールです。次にこのSFAツールとは何かについて解説します。
SFA(営業支援)ツールとは?
SFAとはSales Force Automationの頭文字を取った略語で、SFAツールとは「営業支援ツール」のことです。顧客情報やリードといった、営業に関する情報を記録・管理することで、過去の商談や現在の案件の進捗をツール上で確認できます。そのため、営業の業務を効率化でき、かつ営業活動を見える化することが可能です。
SFAに備わっている主な機能としては、顧客情報管理や営業日報、行動管理、ToDo管理、予定管理、データ分析レポートなどがあります。
また、セールス活動を効率化する方法で述べた「セールス情報の一元管理」「スケジュール管理を徹底する」「営業ナレッジを共有する」を実現できる機能を搭載しています。これらの機能を搭載したSFAは、営業活動を効率化し、業績を伸ばす有益なツールなのです。
以下のコラムでも、SFAについて詳しくご紹介しています。ぜひ、こちらもコラムのご一読ください。
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